喉頭の接触性潰瘍

執筆者:Clarence T. Sasaki, MD, Yale University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 7月
意見 同じトピックページ はこちら

    喉頭の接触性潰瘍は,披裂軟骨の声帯突起を覆う粘膜の片側性または両側性のびらんである。

    喉頭の接触性潰瘍は通常,繰り返される声門への鋭い衝撃(発声の始めに声を急に大きくすること)という形での声の酷使によって引き起こされ,しばしば歌手が経験する(職業としての発声を参照)。気管挿管後にも,大きすぎるチューブが軟骨の声帯突起の粘膜を侵食した場合に生じることがある。胃食道逆流もまた,接触性潰瘍を引き起こすまたは増悪させることがある。潰瘍が長引くと非特異的な肉芽腫につながる。

    喉頭疾患の概要も参照のこと。)

    喉頭の接触性潰瘍の症状としては,様々な程度の嗄声や,発声時および嚥下時の軽度の疼痛などがある。

    喉頭の接触性潰瘍の診断は喉頭鏡検査に基づく。癌または結核を除外するための生検が重要である。

    喉頭の接触性潰瘍の治療は6週間以上の声の安静から成る。患者は自らの声の限界を認識し,再発を避けるため,回復後の声の活動を調節することを学ばなくてはならない。抗菌薬による細菌叢の抑制も推奨される。

    再発リスクは胃食道逆流の積極的な治療により減少する。

    職業としての発声

    人前でのスピーチおよび歌唱のために職業的に声を使用する人は,嗄声または気息声,声の高さの低下,音声疲労,乾性咳嗽,持続性の咳払い,および/または咽頭痛として現れる音声障害をしばしば経験する。これらの症状はしばしば,声帯結節,声帯ヒダの浮腫,ポリープ,または肉芽腫などの良性の原因による。このような障害は,通常,声帯ヒダの過剰機能(発声時の喉頭筋の過緊張),および場合によっては胃食道逆流によって引き起こされる。

    大半の症例で用いられる治療法としては以下のものがある:

    • 利用可能であればコンピュータ支援下のプログラムを用いた音の高さおよび強度の評価ならびに音声の音響パラメータの測定などの言語聴覚士または熟練した医師による音声評価

    • 視覚および聴覚的バイオフィードバックを利用するためのコンピュータプログラムを用いた行動療法(発声時における喉頭の筋骨格の緊張を軽減する)

    • 過度の大声,声を長く出すこと(1時間を超える持続的な発声),声帯緊張(発声時の過度の筋緊張),および習慣的な咳払いなど,声を酷使する行動を解消する声の衛生プログラム

    • 適切な場合は逆流防止治療

    • 十分な声門の粘膜波動を促進するために十分な水分補給

    • 声を使用する前の食生活改善および行動変容(アルコール,カフェイン,ならびにタバコの副流煙および他の刺激物の吸入の回避などを含む)

    quizzes_lightbulb_red
    Test your KnowledgeTake a Quiz!
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
    医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS