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口腔内増殖物

執筆者:

Bernard J. Hennessy

, DDS, Texas A&M University, College of Dentistry

レビュー/改訂 2020年 5月
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増殖物は口腔内および周囲の結合組織,骨,筋,および神経組織を含むいかなる組織からも発生する可能性がある。最も一般的には増殖物は口唇,舌側面,口底,および軟口蓋にみられる。ある種の増殖物は疼痛または不快感を伴う。増殖物は患者自身により,またはルーチンの診察時に発見されることがある。

歯科患者の評価 歯科患者の評価 最初の歯科定期健診は1歳まで,または最初の歯の萌出までに実施すべきである。その後の評価は6カ月毎に,または症状の発生時に随時実施すべきである。口腔の診査は,あらゆる一般身体診察の一部である。様々な全身性疾患における口腔内所見は独特であり,ときには疾患に特徴的であり,疾患の初発徴候であることもある( 全身性疾患における口腔所見の表を参照)。また早期の 口腔癌が発見されることもある。... さらに読む 歯科患者の評価 口腔扁平上皮癌 口腔扁平上皮癌 口腔癌とは,口唇の赤唇縁と,硬口蓋と軟口蓋の移行部または舌の後方3分の1との間に生じるがんを指す。95%を超える口腔扁平上皮癌患者が喫煙,飲酒,または両方を嗜む。早期の治癒可能な病変が症状を呈することはまれであり,したがって,致死的ながんを予防するには,スクリーニングによる早期発見が必要である。治療は手術,放射線,またはその両方によるが,大半の口腔癌の治療では手術の方が大きな役割を担う。全体での5年生存率(全ての部位および病期を合わせて... さらに読む 口腔扁平上皮癌 中咽頭扁平上皮癌 中咽頭扁平上皮癌 中咽頭扁平上皮癌とは,扁桃,舌根および舌後方3分の1,軟口蓋,ならびに咽頭後壁および側壁のがんを指す。中咽頭癌の95%以上を扁平上皮癌が占める。タバコおよびアルコールが主要な危険因子であるが,現在ではヒトパピローマウイルス(HPV)がこれらの腫瘍の大半を引き起こしている。症状としては,咽頭痛,嚥下痛,嚥下困難などがある。治療には放射線,化学療法,またはその両方を用いるが,一次手術が使用される頻度が増え始めている。HPV陽性患者で生存率が... さらに読む ,および カンジダ症[粘膜皮膚] カンジダ症(粘膜皮膚) カンジダ症は,Candida属真菌による皮膚および粘膜感染症であり,その大半がCandida albicansによるものである。感染はあらゆる部位に生じうるが,好発部位は間擦部,指趾間,性器部,爪上皮,および口腔粘膜である。症状と徴候は部位により異なる。診断は臨床的な外観や皮膚擦過物のKOH直接鏡検による。治療... さらに読む カンジダ症(粘膜皮膚) も参照のこと。)

口腔内増殖物の病因

口腔内増殖物は以下の場合がある:

  • 良性

  • 前がん性(異形成)

  • 悪性

良性の口腔内増殖物

ほとんどの口腔内増殖物は良性であり,様々な種類がある。

口腔内増殖物

慢性的刺激により持続的なしこりまたは隆起が歯肉に生じることがある。刺激による良性増殖物は比較的一般的であり,必要であれば外科手術で除去する。刺激が継続することにより10~40%の人では歯肉上の良性増殖物が再発する。ときにこのような刺激が,特に長期にわたる場合,前がん性または悪性への変化につながることがある。

疣贅が口腔内で発生することがある。通常の疣贅(尋常性疣贅 疣贅 疣贅はよくみられる表皮の良性病変であり,ヒトパピローマウイルスの感染によって生じる。疣贅は全身のあらゆる部位に生じ,形態も多彩である。診断は診察による。疣贅は通常は自然消退するが,破壊的方法(例,切除,焼灼,凍結療法,液体窒素)や外用薬または注射薬で治療することもある。 疣贅はほぼ全ての人々に生じる;あらゆる年齢でみられるが,小児で最も頻度が高く,高齢者では比較的少ない。 疣贅は... さらに読む 疣贅 )は指に生じたものを吸ったり,噛んだりすることで口腔に感染することがある。ヒトパピローマウイルス感染(HPV)により引き起こされる 尖圭コンジローマ ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ヒトパピローマウイルス(HPV)は疣贅を形成させる。皮膚に疣贅を形成させる型もあれば,性器に隆起した疣贅や扁平な疣贅(性器の皮膚または粘膜の病変)を形成させる型もある。特定の型のHPV感染はがんの発生につながることがある。外部疣贅の診断は,臨床的な外観に基づく。複数の治療法があるが,数週間から数カ月にわたって繰り返し行わない限り,非常に効果的な治療はほとんどない。性器疣贅は尖圭コンジローマとも呼ばれ,免疫能が正常な患者では無治療で消失す... さらに読む ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 もまたオーラルセックスを通じて口腔内に生じる。

多くの種類の嚢胞が顎の疼痛や腫脹を引き起こす。嚢胞はしばしば埋伏智歯に関連しており,拡張するにつれ下顎骨の広範囲にわたる部位を破壊する可能性がある。ある種の嚢胞は外科的除去の後,再発する可能性が高い。様々な種類の嚢胞が口底にも発生する可能性がある。嚥下の不快感または外見の問題で,多くの場合これらの嚢胞は外科的に切除される。

粘液嚢胞(粘液貯留嚢胞)およびガマ腫は無痛性,良性であり,嚢胞性または偽嚢胞性の唾液腺粘液貯留による口腔内腫脹である。しばしば外傷に起因する。圧倒的に多い病変である粘液嚢胞は,ほとんどの場合,下唇側方の内側に発生し,粘膜下に流出したムチンの存在により,しばしば青みがかった半透明色である。通常これはうっかり(下)唇を噛んだ結果生じ,小唾液腺からの唾液の流れが閉塞されることによって発現する。ほとんどの粘液嚢胞は1,2週間で消失する。ガマ腫は大きく,通常,青みがかった粘液嚢胞であり,口底に生じる。治療は外科的切除である。

骨隆起は円形の骨の突出物であり,硬口蓋の中心線(口蓋隆起)または下顎の舌側(下顎隆起)に発生する。この硬い増殖物は一般的かつ無害である。たとえ大きな増殖物であっても,食事中に傷つける,もしくはその部分を義歯で被覆する必要のある場合を除き,放置してもよい。

ケラトアカントーマ ケラトアカントーマ ケラトアカントーマは,通常は皮膚常色の硬い円形の結節で,境界部に急な傾斜があり,中央には角質塊を入れた特徴的なクレーターがみられる;通常は自然消退するが,高分化型の有棘細胞癌であるものもある。 ( 皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。) ケラトアカントーマは,円形の硬い結節で,境界部に急な傾斜があり,中心部には特徴的なクレーターがみられる。ケラトアカントーマは急速に発生し,典型的には露光部に生じる。原因は不明であるが,高分化型の有棘細胞癌で... さらに読む ケラトアカントーマ は,口唇やその他の露光部(顔面,前腕,手など)に形成される増殖物である。ケラトアカントーマは通常1~2カ月以内に直径1~3cm以上の最大の大きさに成長し,数カ月後には縮小しはじめ,最終的には治療せずとも消失することがある。ケラトアカントーマはかつては全て良性と考えられていたが,現在では縮小しないものは悪性度の低いがん性病変とみなす専門家もおり,そのような病変には生検または切除が推奨されている。

歯牙腫は,歯を形成する細胞が異常増殖したもので,矮小で不正な形の過剰歯のように見える。小児では正常な歯の萌出の妨げとなる可能性がある。成人では正常歯列から歯が押し出されることがある。大きな歯牙腫は,上顎骨または下顎骨の増大を引き起こすこともある。これらは通常外科的に除去する。

唾液腺腫瘍 唾液腺腫瘍 大半の唾液腺腫瘍は良性であり,耳下腺に生じる。無痛性の唾液腺の腫瘤が最も頻度が高い徴候であり,穿刺吸引細胞診によって評価する。CTおよびMRIによる画像検査が役に立つ。悪性腫瘍に対しては,治療は切除および放射線による。長期的結果はがんの悪性度に関連する。 ( 頭頸部腫瘍の概要も参照のこと。) この写真には,唾液腺腺腫(舌下面の小さな腫瘤)が写っている。 この写真には,左顔面に生じた耳下腺腫瘍の拡大像が写っている。... さらに読む 唾液腺腫瘍 はほとんどの場合(75~80%)良性で,緩徐に成長し,無痛性である。これらは通常,正常に見える皮下または口腔粘膜下に単一かつ軟性で可動性の腫瘤として発現する。ときに,中空で液体で満たされている場合に硬くなる。最も頻度の高い腫瘍は良性多形性腺腫(混合腫瘍)で,主に40歳以上の女性に生じる。多形性腺腫は悪性になる可能性があり,外科的に除去する。完全に取り除かない限りこの種の腫瘍は再発の可能性が高い。その他の良性腫瘍も外科的に除去するが悪性化または再発する可能性ははるかに低い。

前がん病変

白色,赤色,または赤白色混合部分が容易には拭き取れず,2週間以上持続し,その他の状態と定義づけられないものは異形成である可能性がある。悪性増殖物と同じ危険因子が異形成に関与し,また異形成変化は除去しないと悪性になりうる。

白板症は平坦な斑点で,口腔粘膜が長期にわたって刺激を受けた場合に出現することがある。口腔粘膜では通常乏しいはずのケラチン層の肥厚により,刺激を受けた部分は白色を呈する。特発性の口腔白板症の発生にしばしば伴う因子には,タバコ使用,飲酒,ビタミン欠乏,および内分泌障害などがある。

紅板症は口腔粘膜が薄くなった場合に結果として生じる赤色で平坦な部位を指す。この部分は下層の毛細血管がより鮮明に見えるため,赤く見える。紅板症は白板症に比べ,はるかに不吉な口腔癌の予測因子である。

混合病変では白板症と紅板症が混在している部分があり,これもがんの予測因子となりうる。

口腔癌

タバコ使用,飲酒,または両方の習慣がある場合, 口腔癌 口腔扁平上皮癌 口腔癌とは,口唇の赤唇縁と,硬口蓋と軟口蓋の移行部または舌の後方3分の1との間に生じるがんを指す。95%を超える口腔扁平上皮癌患者が喫煙,飲酒,または両方を嗜む。早期の治癒可能な病変が症状を呈することはまれであり,したがって,致死的ながんを予防するには,スクリーニングによる早期発見が必要である。治療は手術,放射線,またはその両方によるが,大半の口腔癌の治療では手術の方が大きな役割を担う。全体での5年生存率(全ての部位および病期を合わせて... さらに読む 口腔扁平上皮癌 のリスクが非常に(15倍まで)高くなる。噛みタバコや嗅ぎタバコを使用している場合は,頬と口唇の内側が一般的な発生部位である。その他では,がんの最好発部位は舌側縁,口底,および中咽頭である。 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ヒトパピローマウイルス(HPV)は疣贅を形成させる。皮膚に疣贅を形成させる型もあれば,性器に隆起した疣贅や扁平な疣贅(性器の皮膚または粘膜の病変)を形成させる型もある。特定の型のHPV感染はがんの発生につながることがある。外部疣贅の診断は,臨床的な外観に基づく。複数の治療法があるが,数週間から数カ月にわたって繰り返し行わない限り,非常に効果的な治療はほとんどない。性器疣贅は尖圭コンジローマとも呼ばれ,免疫能が正常な患者では無治療で消失す... さらに読む ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ,特に16型は主に扁桃および舌根部に発生する口腔癌の危険因子であり,これらの部位ではHPV16型がタバコをしのぐ主要原因となっている。口腔内で発見されたがんが肺,乳房,または前立腺からの転移であることはまれである。

口腔癌は多くの異なる外観を示すが典型的には異形成病変と類似している(例,簡単には拭き取れない白色,赤色,または赤白色混合部分)。

口腔内増殖物の評価

病歴

現病歴の聴取では,増殖物の存在期間,疼痛の有無,外傷を受けた部位であるかどうか(例,咬頬,鋭利な歯の切端または歯の修復物による擦過)などに関する質問を含めるべきである。全身性疾患の症状,特に体重減少と倦怠感について患者に尋ねる。

既往歴の聴取では,最近の抗菌薬の使用, 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む ,および HIV感染 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 (またはHIVの危険因子)を含む カンジダ症 カンジダ症(粘膜皮膚) カンジダ症は,Candida属真菌による皮膚および粘膜感染症であり,その大半がCandida albicansによるものである。感染はあらゆる部位に生じうるが,好発部位は間擦部,指趾間,性器部,爪上皮,および口腔粘膜である。症状と徴候は部位により異なる。診断は臨床的な外観や皮膚擦過物のKOH直接鏡検による。治療... さらに読む カンジダ症(粘膜皮膚) の危険因子がないか検討すべきである。飲酒とタバコ使用の量および期間に注意する。

身体診察

身体診察では,口腔および頸部に焦点を置き,舌下部を含む口腔内全体および咽頭の視診および触診を行う。頸部を触診して,がんまたは慢性の感染を示唆するリンパ節腫脹がないか確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 体重減少

  • 頸部腫瘤

  • 持続性の咽頭痛

  • 嚥下困難

所見の解釈

最も重要なのは,口腔癌または異形成病変を良性疾患と取り違えないことである。医師は常に強い疑いをもち,病変が数週間で消失しない場合は生検を依頼する。

検査

カンジダ症 カンジダ症(粘膜皮膚) カンジダ症は,Candida属真菌による皮膚および粘膜感染症であり,その大半がCandida albicansによるものである。感染はあらゆる部位に生じうるが,好発部位は間擦部,指趾間,性器部,爪上皮,および口腔粘膜である。症状と徴候は部位により異なる。診断は臨床的な外観や皮膚擦過物のKOH直接鏡検による。治療... さらに読む カンジダ症(粘膜皮膚) の疑いは,病変から採取した擦過物より10%10%水酸化カリウム湿式マウントで酵母および仮性菌糸を検出することで確定できる。その他の急性病変,特に局所の外傷または刺激の関与が考えられるものは観察となることがある。しかし,数週間以上存在しているほとんどの病変,および存在期間が不明である病変は,がんの可能性を臨床的に排除することは難しいため,生検を施行すべきである。

口腔内増殖物の処置/治療

  • 原因による

治療は増殖物の原因によって決定される。

口腔内増殖物の要点

  • ほとんどの口腔内増殖物は良性である。

  • 疣贅,カンジダ感染,および外傷の繰り返しは良性増殖物の一般的な原因である。

  • 飲酒とタバコ使用は,がんの危険因子である。

  • がんは視診では診断が難しいため,生検が多くの場合必要である。

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