足白癬(みずむし)

執筆者:Denise M. Aaron, MD, Dartmouth Geisel School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 2月
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足白癬は足の皮膚糸状菌感染症である。診断は臨床的な外観のほか,ときにKOH直接鏡検による(特に感染が角質増殖性,潰瘍性,もしくは小水疱性を呈する場合,または趾間型ではない場合)。治療は抗真菌薬の外用のほか,ときに抗真菌薬の内服,湿気の低減,および乾燥剤による。

足の発汗による湿潤が真菌の増殖を促すため,足白癬は最も頻度の高い皮膚糸状菌症となっている。足白癬には4つの臨床型があり,それらが混在することもある:

  • 慢性角質増殖型

  • 慢性趾間型

  • 急性潰瘍型

  • 水疱型

Trichophyton rubrumによる慢性角質増殖型の足白癬では,足底の鱗屑および肥厚がしばしば足底面を越えて拡大し,足底と側面を一体的に侵すモカシン足(moccasin foot)型の分布を呈する特有のパターンで病変が生じる。抗真菌薬療法で期待通りの反応が得られない患者では,比較的頻度の低い別の原因によって足底に発疹が生じている可能性がある。鑑別診断としては,無菌の浸軟(多汗症や通気性の悪い履物が原因),接触皮膚炎(種々の靴の材料,特に接着剤,ゴムを含む履物のチウラム化合物,革製履物に使用されるクロム酸塩のなめし剤などに対するIV型[遅延型]過敏反応が原因),刺激性接触皮膚炎乾癬などがある。

足白癬の臨床像
足白癬(モカシン足)
足白癬(モカシン足)
慢性角質増殖型の足白癬では,足底の鱗屑および肥厚がしばしば足底面を越えて拡大し,足底と側面を一体的に侵すモカシン足(moccasin foot)型の分布を呈する

Image provided by Thomas Habif, MD.

足底の不整な鱗屑を伴う足白癬
足底の不整な鱗屑を伴う足白癬

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足背の鱗屑を伴う足白癬
足背の鱗屑を伴う足白癬
爪真菌症も認められる。

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足部外側の鱗屑および紅斑を伴う足白癬
足部外側の鱗屑および紅斑を伴う足白癬

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はっきりしない足白癬
はっきりしない足白癬
注意深く視診すると,趾間部に鱗屑が見える。

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皮膚の色の濃い患者の足白癬
皮膚の色の濃い患者の足白癬
鱗屑および浸軟が第4趾間に生じている。

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慢性趾間型足白癬は,趾間部および趾の根元の皮膚に生じる鱗屑,紅斑,びらんを特徴とし,外側の3趾に好発する。

急性潰瘍型足白癬(最も頻度の高い原因菌はT. mentagrophytes var. interdigitale)は,典型的には第3および第4趾間に始まり,足背外側および/または足底弓の表面に拡大する。それらの趾間病変は通常浸軟して辺縁に鱗屑を伴う。細菌の二次感染,蜂窩織炎,およびリンパ管炎が頻度の高い合併症である。

水疱型足白癬は,足底に生じた小水疱が融合して水疱を形成する病型であるが,趾間型足白癬の増悪により生じることは少ない;危険因子として,通気性の悪い靴や高温多湿の環境などがある。

足白癬の診断

  • 臨床的評価

  • KOH直接鏡検

足白癬の診断は通常,身体診察と危険因子の検討のみで明らかになる。外観が診断の決め手にならない場合,または感染が角質増殖性,潰瘍性,もしくは小水疱性を呈する場合は,KOH直接鏡検が助けになる。

足白癬の鑑別診断としては以下のものがある:

足白癬の治療

  • 抗真菌薬の外用のほか,ときに内服

  • 蒸れの軽減と薬剤による乾燥

See table 表在性真菌感染症の治療選択肢*

足白癬の最も安全な治療法は抗真菌薬の外用であるが,再発がよくみられ,しばしば長期にわたる治療が必要になる。より長期間持続する反応が得られる治療法としては,イトラコナゾール200mg,経口,1日1回,1カ月間(または200mg,1日2回,1カ月のうち1週間のパルス療法を1~2カ月間)や,テルビナフィン250mg,経口,1日1回,2~6週間などがある。外用抗真菌薬の併用により再発が減少する可能性がある。

再発を予防するためには,足および履物内の蒸れを軽減する必要がある。特に暖かい気候では,通気性が高いか足趾が覆われていない履物の着用と靴下の交換が重要である。入浴後は趾間部を用手的に乾燥させるべきである。薬剤による乾燥も推奨され,その選択肢としては,抗真菌薬のパウダー(例,ミコナゾール),ゲンチアナバイオレット,ブロー液(5%酢酸アルミニウム)への浸漬,20~25%塩化アルミニウム六水和物溶液を毎晩1週間,その後は必要に応じて週1~2回などがある。

足白癬の要点

  • 足の発汗による湿潤が真菌の増殖を促すため,足白癬は最も頻度の高い皮膚糸状菌症となっている。

  • 趾間型,潰瘍性,角質増殖性,または水疱性の病変が足趾および/または足にみられる場合は,本症を考慮する。

  • 異汗性湿疹,掌蹠乾癬,およびアレルギー性接触皮膚炎も考慮する。

  • 抗真菌薬を外用のほか,ときに内服でも使用し,病変部を乾燥させる対策も講じることで治療する。

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