カポジ肉腫

(カポジ肉腫;多発性特発性出血性肉腫)

執筆者:Gregory L. Wells, MD, Ada West Dermatology and Dermatopathology
レビュー/改訂 2020年 12月
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カポジ肉腫は,ヘルペスウイルス8型によって引き起こされる多中心性の血管性腫瘍である。病型として古典的カポジ肉腫,AIDS関連カポジ肉腫,風土病型(アフリカ型)カポジ肉腫,および医原性カポジ肉腫(例,臓器移植後)がある。診断は生検による。進行の緩徐な表在性病変に対する治療としては,凍結療法,電気凝固術,切除,または電子線照射療法が施行される。さらに広範な病変には放射線療法を用いる。AIDS関連では,抗レトロウイルス薬で最も大きな改善が得られる。

皮膚悪性腫瘍の概要も参照のこと。)

カポジ肉腫は,ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)の感染に対する反応として内皮細胞から発生する。免疫抑制(特にAIDSおよび臓器移植レシピエントに使用される薬剤によるもの)があると,HHV-8感染患者でカポジ肉腫が発生する可能性が著明に増大する。腫瘍細胞は紡錘形で,平滑筋細胞,線維芽細胞,および筋線維芽細胞に類似する。

カポジ肉腫の分類

古典型カポジ肉腫

この病型は,イタリア系,ユダヤ系,および東欧系の高齢男性(60歳以上)に好発する。経過は緩徐で,下肢の皮膚に生じる少数の病変に限局するのが通常であり,内臓病変が生じる割合は10%未満である。通常,この病型で死亡することはない。

カポジ肉腫(古典型)
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カポジ肉腫は,ヒトヘルペスウイルス8型の感染によって引き起こされる血管性腫瘍である。古典型カポジ肉腫は高齢男性に好発し,進行は緩徐で,通常は下肢の皮膚に生じる少数の病変に限局する。皮膚病変は症状を伴わない紫色,ピンク色,または紅色の斑で,融合して青紫色から黒色の局面および結節を形成することがある。
Image provided by Thomas Habif, MD.

AIDS関連カポジ肉腫(流行性カポジ肉腫)

この病型は最も頻度の高いAIDS関連悪性腫瘍であり,古典型カポジ肉腫より進行が速い。典型的には複数の皮膚病変がみられ,顔面および体幹に生じることが多い。粘膜,リンパ節,および消化管病変もよくみられる。ときにカポジ肉腫がAIDSの初発症状となることがある。

カポジ肉腫(AIDS関連)
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カポジ肉腫は,ヘルペスウイルス8型の感染によって引き起こされる血管性腫瘍である。AIDS関連カポジ肉腫は,進行の速い多中心性の腫瘍であり,顔面,体幹,粘膜面,リンパ管,消化管に生じることがある。病変は青色調から紫色調の斑,局面,または腫瘤として出現する。
Image courtesy of Sol Silverman, Jr., via the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.

風土病型カポジ肉腫

この病型はアフリカでみられ,HIV感染とは無関係に生じる。主要な病型が2つ存在する:

  • 思春期前に生じるリンパ節腫脹型:大半が小児に発生する;原発腫瘍はリンパ節に生じ,皮膚病変はある場合とない場合もある。通常は劇症性の経過をとって死に至る。

  • 成人型:この病型は古典型カポジ肉腫と類似する。

医原性カポジ肉腫(免疫抑制型カポジ肉腫)

この病型は典型的には臓器移植の数年後に発症する。免疫抑制の程度に応じて,多少とも劇症性の経過をとる。

カポジ肉腫の症状と徴候

皮膚病変は症状を伴わない紫色,ピンク色,または紅色の斑で,融合して青紫色から黒色の局面および結節を形成することがある。いくらかの浮腫を伴うこともある。ときに,結節が菌状に発育したり,軟部組織を越えて骨に浸潤することがある。頻度は比較的低いが,しばしば内臓病変が口腔,消化管,肺に生じる。症状は侵された臓器によって異なる。粘膜病変は青色調から紫色調の斑,局面,または腫瘤として出現する。消化管病変は出血を来すことがあり,ときに広範にわたるが,通常は無症状である。

カポジ肉腫の診断

  • 生検

カポジ肉腫の診断はパンチ生検により確定される。

AIDSまたは免疫抑制状態の患者では,胸部および腹部CTで内臓病変の評価を行う必要がある。CTが陰性であるが,肺または消化管症状が認められる場合は,気管支鏡または消化管内視鏡検査を考慮すべきである。

カポジ肉腫の治療

  • 外科的切除,凍結療法,電気凝固術,または病変内化学療法のほか,表在性病変にはときにイミキモドの外用も可能

  • 多発性病変,びまん性病変,またはリンパ節病変には局所放射線療法および化学療法

  • 抗レトロウイルス療法に加え,AIDS関連カポジ肉腫には病変の進展範囲に応じて同様の局所治療または化学療法

  • 医原性カポジ肉腫には免疫抑制薬の減量

古典型カポジ肉腫とAIDS関連カポジ肉腫の治療はかなり重なり合う。

進行の緩徐な病変は治療を必要としない場合が多い。1個または数個の表在性病変は,切除,凍結療法,または電気凝固術で除去するか,ビンブラスチンまたはインターフェロンαの病変内注射により治療することができる。イミキモドの外用も効果的と報告されている。多発性病変,びまん性病変,およびリンパ節病変は,局所に10~20Gyを照射する放射線療法と化学療法で治療する。再発がよくみられ,完全な治癒を得るのは難しい。

AIDS関連カポジ肉腫はHAART(highly active antiretroviral therapy)に著明に反応し,これはおそらくCD4陽性細胞数が改善してHIVのウイルス量が減少することによるものと考えられるが,一方で,このレジメンに含まれるプロテアーゼ阻害薬が血管新生を阻害する可能性を示唆したエビデンスもある。進行が緩徐な局所例で,CD4陽性細胞数が150/μLを超え,かつHIV RNAが500コピー/mL未満のAIDS患者には,ビンブラスチンの病変内注射を追加することができる。より進行の緩徐な病変にはポマリドミドも使用できる。さらに広範な病変や内臓病変がある患者には,ペグ化リポソーム化ドキソルビシン20mg/m2の静注を2~3週毎に行ってもよい。パクリタキセルは代替の第1選択の治療法であり,ペグ化リポソーム化ドキソルビシンが無効に終わった場合に投与してもよい。この他に研究段階にある補助的薬剤として,インターロイキン(IL)12,デフェロキサミン,および経口レチノイドがある。大半のAIDS患者ではカポジ肉腫を治療しても生存期間の延長にはつながらないが,これは臨床経過が感染症に左右されているためである。

医原性カポジ肉腫は免疫抑制薬の中止に最もよく反応する。臓器移植患者では,免疫抑制薬を減量することが,しばしばカポジ肉腫病変の縮小につながる。免疫抑制薬の減量が可能でない場合は,他の病型のカポジ肉腫に用いられる従来の局所および全身療法を開始すべきである。シロリムスも医原性カポジ肉腫を改善する可能性がある。

風土病型カポジ肉腫の治療は困難であり,典型的には緩和療法となる。

カポジ肉腫の要点

  • 高齢男性,アフリカ人,臓器移植患者,およびAIDS患者ではカポジ肉腫を考慮する。

  • 免疫抑制患者(AIDSを含む)には転移を検索するための検査を行う。

  • 表在性病変は破壊的方法による局所療法で治療する。

  • 多発性病変,びまん性病変,またはリンパ節病変は,局所放射線療法と化学療法で治療する。

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