Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

honeypot link

菌血症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

レビュー/改訂 2020年 7月
ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します

菌血症とは,血流中に細菌が存在する状態のことである。特定の組織感染を契機として,泌尿生殖器または静脈内にカテーテルを留置しているとき,あるいは歯科,消化管,泌尿生殖器,創傷などに対する処置を施行した後に,自然に発生する可能性がある。菌血症は心内膜炎などの転移性感染症を引き起こすことがある(特に心臓弁膜異常の患者で)。一過性の菌血症は無症状のことが多いが,発熱の原因となりうる。その他の症状の出現は通常,敗血症や敗血症性ショックなどのより重篤な感染症を示唆する。

( Professional.See page 新生児敗血症 新生児敗血症 新生児敗血症は,新生児期に発生する侵襲性感染症であり,通常は細菌性である。徴候は非特異的なものが多数あり,具体的には自発運動の減少,哺乳力低下,無呼吸,徐脈,体温調節障害,呼吸窮迫,嘔吐,下痢,腹部膨隆,jitteriness,痙攣,黄疸などがある。診断は臨床所見と培養結果に基づいて行う。治療は,まずアンピシリンをゲンタマイシンまたはセフォタキシムと併用し,できるだけ速やかに起因菌に応じた薬剤に変更する。... さらに読む および Professional.see page 乳幼児における潜在性菌血症および原因不明の発熱 乳幼児における潜在性菌血症および原因不明の発熱 潜在性菌血症とは,発熱があるものの明らかな感染巣がなく,元気そうに見える幼児の血流中で細菌が認められる状態である。診断は血液培養と病巣感染の除外による。治療は抗菌薬により入院または外来で行い,一部の患児には血液培養の結果を待たずに治療を開始する。 潜在性菌血症の原因,評価,および管理は小児の年齢および予防接種状況によって変わる。 乳児および小児の発熱も参照のこと。 結合型ワクチンが普及する前は,局所的異常のない発熱性疾患(すなわち,原因... さらに読む

菌血症は一過性で続発症を引き起こさないこともあれば,転移性または全身性に影響を及ぼすこともある。全身的な影響としては以下のものがある:

菌血症の病因

菌血症には考えられる原因が数多くあるが,以下のものが挙げられる:

  • 感染した下部尿路へのカテーテル留置

  • 膿瘍または感染創の外科的治療

  • 留置器具(特に静脈および心臓カテーテル,尿道カテーテル,ならびにストーマ器具およびチューブ)への定着

感染に続発したグラム陰性菌の菌血症は通常,泌尿生殖器または消化管や 褥瘡 褥瘡 褥瘡(pressure ulcer)とは,骨突出部と体外の硬い表面の間で軟部組織が圧迫された領域に生じる壊死および潰瘍である。持続的な機械的圧迫に摩擦,ずれ力,湿潤が組み合わさって生じる。危険因子としては,年齢65歳以上,循環および組織灌流の障害,体動不能,低栄養,感覚低下,失禁などがある。重症度としては,圧迫しても消退しない皮膚の紅斑か... さらに読む 褥瘡 患者の皮膚に由来する。慢性疾患や易感染状態のある患者では,グラム陰性菌の菌血症を起こすリスクが高い。また,グラム陽性球菌や嫌気性菌による菌血症も発生しやすく,真菌血症のリスクも高い。ブドウ球菌菌血症は注射薬物使用者,静脈カテーテル留置患者,および複雑性皮膚・軟部組織感染症患者でよくみられる。Bacteroides菌血症は,腹部および骨盤(特に女性性器)に感染がある患者で発生する。腹腔内の感染から菌血症が生じている場合は,原因微生物は グラム陰性桿菌 グラム陰性桿菌に関する序論 グラム陰性桿菌は数多くの感染症の原因となる。一部は共生微生物で腸内常在菌叢中に存在する。これらの共生微生物に加えて,動物または環境病原巣に存在する他の微生物が疾患を引き起こす場合もある。 尿路感染症, 下痢, 腹膜炎,および 血流感染症は,一般的にグラム陰性桿菌によって引き起こされる。... さらに読む である可能性が最も高い。横隔膜より上の感染から菌血症が生じている場合は,原因微生物はグラム陽性桿菌である可能性が最も高い。

菌血症の病態生理

一過性または持続性の菌血症は,髄膜または漿膜腔(心嚢や大関節など)の転移性の感染につながる可能性がある。転移性膿瘍はほぼ全ての部位で起こりうる。ブドウ球菌菌血症では多発性の膿瘍形成が特によくみられる。

菌血症は 心内膜炎 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は,心内膜の感染症であり,通常は細菌(一般的にはレンサ球菌またはブドウ球菌)または真菌による。発熱,心雑音,点状出血,貧血,塞栓現象,および心内膜の疣贅を引き起こすことがある。疣贅の発生は,弁の閉鎖不全または閉塞,心筋膿瘍,感染性動脈瘤につながる可能性がある。診断には血液中の微生物の証明と通常は心エコー検査が必要である。治療... さらに読む 感染性心内膜炎 を引き起こすことがあり,ブドウ球菌,レンサ球菌,腸球菌菌血症で最もよくみられるが,グラム陰性菌の菌血症および真菌血症ではそれほど多くない。構造的心疾患(例,心臓弁膜症,一部の先天奇形)を有する患者と人工心臓弁などの血管内器具を使用している患者では,心内膜炎が発生しやすい。ブドウ球菌は細菌性心内膜炎を引き起こすことがあり(特に注射薬物使用者),通常は三尖弁を侵す。ブドウ球菌(Staphylococcus)は,血行性に拡大する 化膿性脊椎炎 骨髄炎 骨髄炎は,細菌,抗酸菌,または真菌に起因する骨の炎症および破壊である。よくみられる症状は,全身症状を伴う(急性骨髄炎)または全身症状を伴わない(慢性骨髄炎),限局性の骨痛および圧痛である。診断は画像検査および培養による。治療は抗菌薬およびときに手術による。 骨髄炎は以下によって生じる: 感染組織または 感染した人工関節からの連続した進展 血液由来の微生物(血行性骨髄炎) 開放創(汚染された開放骨折または骨の手術による) さらに読む 骨髄炎 および椎間板炎の最も一般的な原因でもある。

菌血症の症状と徴候

無症状の患者や軽度の発熱のみの患者もある。

頻呼吸や悪寒戦慄,長く続く発熱,感覚異常,低血圧,消化管症状(腹痛,悪心,嘔吐,下痢)などの症状の出現は敗血症または敗血症性ショックを示唆する。敗血症性ショックは有意な菌血症のある患者の25~40%に発生する。遷延性の菌血症は転移巣の感染や敗血症につながることがある。

菌血症の診断

菌血症の治療

  • 抗菌薬

菌血症が疑われる患者では,適切な培養検体を採取した後,抗菌薬を経験的に投与する。適切なレジメンの抗菌薬で菌血症を早期に治療すれば生存率が改善するようである。

継続治療では培養および感受性試験の結果に従って抗菌薬を調整して,全ての膿瘍を外科的に排膿するほか,通常は細菌の供給源と疑われる体内の器具を抜去する。

菌血症の要点

  • 菌血症は,一過性で何の続発症も引き起こさないこともあれば,病巣の転移や敗血症につながることもある。

  • 菌血症は侵襲的処置(特に器具や材料を留置するもの)の施行後に発生頻度が高くなる。

  • 菌血症が疑われる場合は,潜在的な細菌供給源および血液の培養検体を採取した後,抗菌薬を経験的に投与する。

ここをクリックすると、 家庭版の同じトピックのページに移動します
家庭版を見る
quiz link

Test your knowledge

Take a Quiz! 
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS
TOP