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発熱

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

レビュー/改訂 2020年 7月
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発熱とは,体温の上昇(例,口腔温 > 37.8℃または直腸温 > 38.2℃)ないしは個人の日常的な正常値を超えた体温上昇のことである。発熱は,身体の温度調節機構(視床下部にある)が正常より高い温度にリセットされることで発生する現象であり,その原因として最も多いのが感染に対する反応である。視床下部の体温設定値(セットポイント)のリセットによって引き起こされたものではない体温の上昇は,一般的に高体温(hyperthermia)と呼ばれる。

多くの患者は「発熱」という言葉をかなり曖昧に使用し,熱っぽい,寒気がする,激しく汗をかくなどの感覚で使用しているだけで,実際には体温を測ってはいない場合も多い。

発熱自体も悪寒,発汗,不快感を引き起こし,患者にほてりや熱感を覚えさせるが,みられる症状は主に発熱の原因となった病態に起因する。

発熱の病態生理

24時間の体温の推移は,早朝の最低水準と午後遅くの最高水準との間で変動する。変動幅の最大値は約0.6℃である。

体温は組織(特に肝臓および筋肉)での熱産生と末梢からの熱放散とのバランスによって決定される。正常では,視床下部の体温調節中枢によって体内温度は37~38℃の範囲で維持されている。発熱は何らかの原因で視床下部の設定値が引き上げられた際に発生し,血管収縮を誘発して末梢からの血流をシャントすることで熱放散を減少させ,ときにはシバリングを惹起して熱産生を増大させる。これらのプロセスは,視床下部に供給される血液の温度が新しい設定値に達するまで持続する。視床下部の設定値が低い値に設定されると(例,解熱薬による),発汗および血管拡張による熱放散が惹起される。

一部の患者(例,アルコール依存症患者,非常に高齢または若年の患者)では熱産生の能力が低下している。

発熱物質とは,発熱を引き起こす物質である。外因性発熱物質は,基本的に微生物やその産生物である。最もよく研究されているのは,グラム陰性細菌のリポ多糖体(一般的には内毒素と呼ばれる)と毒素性ショック症候群を引き起こす黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の毒素である。発熱は,サイトカイン受容体を刺激する内因性発熱物質(インターロイキン1[IL-1],腫瘍壊死因子α[TNF-α],およびIL-6やその他のサイトカインなど)の放出を誘導する外因性発熱物質,あるいはToll-like受容体を直接刺激する外因性発熱物質の作用によって生じる。

プロスタグランジンE2の合成が非常に重要な役割を果たすようである。

発熱の影響

多くの患者は発熱自体が害を引き起こさないかと心配するが,ほとんどの急性感染症による中等度かつ一過性の深部体温の上昇(すなわち38~40℃)は,健康な成人であれば十分に耐えられるものである。

ただし,極度の体温上昇(典型的には41℃を超える場合)では何らかの傷害が生じる可能性がある。そのような体温上昇は,環境による重度の高体温でよくみられるが,ときに違法薬物(例,コカイン,フェンシクリジン),麻酔薬,または抗精神病薬への曝露に起因する場合もある。この体温では,タンパク質の変性が生じ,炎症カスケードを活性化する炎症性サイトカインが分泌される。その結果,細胞機能障害が起こり,多くの臓器の機能障害,そして最終的には機能不全が引き起こされる;さらに凝固カスケードも活性化され, 播種性血管内凝固症候群 播種性血管内凝固症候群(DIC) 播種性血管内凝固症候群(DIC)は,循環血中のトロンビンおよびフィブリンの異常な過剰生成に関係する。その過程で血小板凝集および凝固因子消費が亢進する。緩徐に(数週間または数カ月かけて)進行するDICでは,主に静脈の血栓性および塞栓性の症状がみられる;急速に(数時間または数日で)進行するDICでは,主に出血が生じる。重度で急速進行性のDICは,血小板減少症,部分トロンボプラスチン時間およびプロトロンビン時間の延長,血漿Dダイマー(または血... さらに読む (DIC)へと進展する。

発熱時には37℃を超えて1℃上昇する毎に基礎代謝率が約10~12%上昇するため,心機能または肺機能不全がある成人では発熱は生理的ストレスとなりうる。発熱はまた,認知症患者の精神状態を悪化させることもある。

発熱の病因

発熱は多くの疾患によって引き起こされる。発熱は以下のように大別される:

  • 感染性(最も頻度が高い)

  • 腫瘍性

  • 炎症性(リウマチ性,非リウマチ性,薬剤性を含む)

成人における急性発熱(すなわち持続期間が4日以内)の原因としては,感染の可能性が非常に高い。感染以外の原因による発熱で受診した患者では,その発熱はほぼ常に慢性または反復性である。また,炎症性または腫瘍性疾患の存在が判明している患者の孤発性の急性発熱でも,やはり感染が原因である可能性が最も高い。健常者では,急性発熱が慢性疾患の初発症状である可能性は低い。

感染性の原因

実質的に全ての感染症が発熱を引き起こす可能性がある。ただし,全体的に最も可能性が高い原因は以下のものである:

気道および消化管の急性感染症は大半がウイルス性である。

特定の患者因子や外因性の要因によっても最も可能性の高い原因は変わってくる。

患者因子としては,健康状態,年齢,職業,危険因子(例,入院,最近の侵襲的処置,静脈内または尿路カテーテルの留置,機械的人工換気の使用)などがある。

外因性の要因とは,患者を特定の疾患に曝露する因子のことであり,例えば,感染者との接触,局所的なアウトブレイク,疾患媒介動物(例,蚊,ダニ),疾患媒介物(例,食物,水),地域(疾患流行地域での居住または最近の旅行)などがある。

これらの因子が認められれば,特定の原因が優勢と推測される( Professional.see table 急性発熱の主な原因 急性発熱の主な原因 急性発熱の主な原因 )。

発熱の評価

急性発熱の初期評価では以下の2点が重要となる:

  • 局所症状の同定(例,頭痛,咳嗽):これらの症状は考えられる原因の範囲を絞り込むのに役立つ。局所症状は患者の主訴の一部のこともあれば,具体的に質問して初めて同定できることもある。

  • 患者の疾患が重篤または慢性であるかどうか(特にそのような疾患が見逃されていないかどうか)の判定:健常者に生じる発熱の原因の多くは自然に治癒する病態であり,ウイルス感染症と考えられるものの多くは,具体的に診断するのが困難である。検査対象を重篤な患者や慢性疾患患者に限定すれば,高価で不必要かつしばしば無駄に終わる多くの探索を回避することができる。

病歴

現病歴の聴取では,発熱の程度および持続期間と体温の測定方法を対象に含めるべきである。真の悪寒・振戦(歯がガタガタするほどの振戦を伴う重度の悪寒で,単なる寒気ではない)は,感染による発熱を示唆するが,それ以上の具体的情報は得られない。疼痛は考えられる原因への重要な手がかりの1つであり,患者に耳痛,頭痛,頸部痛,歯痛,咽頭痛,胸痛,腹痛,側腹部痛,直腸痛,筋肉痛,および関節痛について質問すべきである。

その他の局所症状としては,鼻閉および/または鼻漏,咳嗽,下痢,ならびに泌尿器症状(頻尿,尿意切迫,排尿困難)などがある。発疹(性状,部位,および他症状との関連を踏まえた発症時期を含める)およびリンパ節腫脹の存在が診断の参考となることがある。

感染者との接触と接触した感染者の診断を同定すべきである。

システムレビュー(review of systems)では,回帰熱,盗汗,体重減少など慢性疾患の症状を同定すべきである。

既往歴の聴取では,特に以下の点を対象に含めるべきである:

  • 最近の手術

  • 感染の素因となる既知の疾患(例,HIV感染症,糖尿病,がん,臓器移植,鎌状赤血球症,心臓弁膜症[特に人工弁を使用している場合])

  • 発熱の素因となるその他の既知の疾患(例,リウマチ性疾患,全身性エリテマトーデス[全身性エリテマトーデス],痛風,サルコイドーシス,甲状腺機能亢進症,がん)

最近の旅行歴を尋ねる質問には,旅行先,帰ってきてからの経過時間,場所(例,田舎,都市部のみ),旅行前に受けた予防接種,および抗マラリア薬の予防投与(必要であれば)を含める。

考えられる曝露に関する質問を全例で行うべきである。例としては,安全ではない食物(例,無殺菌の牛乳および乳製品,生または加熱調理が不十分な肉類,魚介類)または水,昆虫刺咬(例,ダニ,蚊,または他の媒介節足動物への曝露),動物との接触,無防備な性行為,職業曝露,レジャー活動中の曝露(例,狩猟,ハイキング,ウォータースポーツ)などがある。

ワクチン接種歴(特にAおよびB型肝炎,ならびに髄膜炎,インフルエンザ,または肺炎球菌感染症を引き起こす微生物に対するワクチン)に注意すべきである。

薬歴の聴取では,以下の点について具体的に質問すべきである:

  • 発熱を引き起こすことが知られている薬剤( Professional.see table 急性発熱の主な原因 急性発熱の主な原因 急性発熱の主な原因

  • 感染リスク増大の素因となる薬剤(例,コルチコステロイド,腫瘍壊死因子阻害薬,化学療法薬,拒絶反応抑制薬,その他の免疫抑制薬)

  • 注射薬物の違法使用(心内膜炎,肝炎,敗血症性肺塞栓症,ならびに皮膚および軟部組織感染症の素因となる)

身体診察

身体診察は発熱の確認から始める。発熱は直腸温を測定することで最も正確に診断される。口腔温は正常では約0.6℃低いが,測定直前での冷たい飲み物の摂取,口呼吸,過換気,測定時間の不足(水銀体温計では数分間を要する場合もある)など,多くの理由で過小評価される可能性がある。赤外線センサーによる鼓膜温の測定は直腸温と比べて精度が劣る。温度感受性の結晶を組み込んだプラスチック片を額に当てて皮膚温をモニタリングする方法は,深部体温の上昇を検出する上で感度が不十分である。COVID-19のパンデミックでは,赤外線装置を使用して皮膚温(例,額)を測定し,公共の場所に入る前に発熱のスクリーニングを行うことが一般的になっている。

その他のバイタルサインを評価して,頻呼吸,頻脈,または低血圧がないか確認する。

局所症状のある患者では,本マニュアルの別の箇所で論じているように診察を進める。局所症状のない発熱患者では,あらゆる器官系で診断の手がかりが得られる可能性があるため,全身の診察が必要である。

患者の全般的な外観(脱力,嗜眠,錯乱,悪液質,苦痛など)に注意すべきである。

全身の皮膚を視診して,発疹(特に点状出血,出血性の発疹および病変[例,痂皮],および皮膚または軟部組織感染を示唆する紅斑または水疱から成る領域)がないか確認すべきである。頸部,腋窩,内側上顆,および鼠径部を診察して,リンパ節腫脹がないか確認すべきである。

入院患者では,静脈カテーテル,経鼻胃管,尿道カテーテルをはじめとする留置されたチューブないしラインに注意すべきである。最近手術を受けた患者の場合は,手術部位を徹底的に視診すべきである。

頭頸部の診察では,以下を行うべきである:

  • 鼓膜:診察して感染がないか確認する

  • 副鼻腔(前頭洞および上顎洞):打診

  • 側頭動脈:触診して圧痛がないか確認する

  • 鼻部:視診して鼻閉および鼻漏(清澄または膿性)がないか確認する

  • 眼:視診して結膜炎または黄疸がないか確認する

  • 眼底:視診してRoth斑(心内膜炎を示唆する)がないか確認する

  • 中咽頭および歯肉:視診して炎症または潰瘍(易感染性を示唆するカンジダ症病変など)がないか確認する

  • 頸部:屈曲して不快感,硬直,またはその両方(髄膜炎を示唆する)が生じないか,触診してリンパ節腫脹がないか確認する

肺を診察して,断続性ラ音や肺硬化の徴候がないか確認し,心臓を聴診して,雑音(心内膜炎の可能性を示唆する)がないか確認する。

腹部を触診して,肝脾腫および圧痛(感染症を示唆する)がないか確認する。

側腹部を打診して,腎臓部に圧痛(腎盂腎炎を示唆する)がないか確認する。

女性患者では内診を行い,子宮頸部の移動痛や付属器の圧痛がないか確認する;男性患者では性器の診察を行い,尿道分泌物や局所圧痛がないか確認する。

直腸診を行い,直腸周囲膿瘍(免疫抑制患者では不顕性のこともある)を示唆する圧痛および腫脹がないか確認する。

全ての大関節を診察して,腫脹,紅斑,および圧痛(関節感染症またはリウマチ性疾患を示唆する)がないか確認する。手足を視診して,爪下線状出血,疼痛を伴う指尖部の紅斑性皮下結節(オスラー結節),圧痛を伴わない手掌または足底の出血斑(Janeway病変)など,心内膜炎の徴候がないか確認する。

脊椎を打診して,局所に圧痛がないか確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 精神状態の変化

  • 頭痛,項部硬直,またはその両方

  • 点状出血

  • 低血圧

  • 呼吸困難

  • 有意な頻脈または頻呼吸

  • 40℃を超える高体温または35℃未満の低体温

  • 重篤な疾患(例,マラリア)が流行している地域への最近の旅行

  • 免疫抑制薬の最近の使用

所見の解釈

通常,体温上昇の程度から感染の可能性や感染原因を予測することはできない。発熱パターンは,かつては意義があると考えられていたが,可能性のある例外として三日熱および四日熱の マラリア マラリア マラリアはマラリア原虫(Plasmodium属原虫)による感染症である。症状および徴候としては,発熱(周期熱のことがある),悪寒,振戦,発汗,下痢,腹痛,呼吸窮迫,錯乱,痙攣発作,溶血性貧血,脾腫,腎臓の異常などがある。診断は血液塗抹標本におけるマラリア原虫(Plasmodium属)の観察と迅速診断検査による。治療および予防法は,マラリア原虫(Plasmodium属)の種,薬剤感受性,および患者... さらに読む および回帰性の発熱(例, ブルセラ症 ブルセラ症 ブルセラ症は,グラム陰性細菌であるBrucella属細菌により引き起こされる。症状は急性熱性疾患として始まり,局所的な徴候はほとんどまたは全くみられず,進行して慢性化すると発熱,脱力,発汗,および漠然とした疼きや痛みの再発を繰り返すようになる。診断は培養(通常は血液培養)による。至適な治療には通常は2剤の抗菌薬(ドキシサイクリンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールとゲンタマイシン,ストレプトマイシン,またはリファン... さらに読む )を除き,役に立たつことはめったにない。

重篤な疾患の可能性を考慮する。重篤な疾患が疑われる場合は,直ちに積極的な検査を行う必要があり,しばしば入院が必要となる。

レッドフラグサインは重篤な疾患を強く示唆し,具体的には以下のものがある:

易感染状態についても,それが既知の疾患や免疫抑制薬によって引き起こされたものであれ,診察所見(例,体重減少,口腔カンジダ症)から示唆されたものであれ,他の慢性疾患,注射薬物使用,および心雑音の場合と同様に懸念される。

病歴聴取または身体診察で同定された局所所見を評価して解釈する(本マニュアルの他の箇所を参照)。その他の示唆的な所見として,全身性のリンパ節腫脹および発疹などがある。

全身性リンパ節腫脹は,急性 単核球症 伝染性単核球症 伝染性単核球症は,エプスタイン-バーウイルス(EBV,ヒトヘルペスウイルス4型)により引き起こされ,疲労,発熱,咽頭炎,およびリンパ節腫脹を特徴とする。疲労は数週間から数カ月間続くことがある。気道閉塞,脾破裂,および神経症候群などの重症合併症がときに起こる。診断は臨床的に,またはEBVの血清学的検査により行う。治療は支持療法による。 EBVは5歳未満の50%の小児が感染するヘルペスウイルスである。成人は90%以上がEBVに対して血清反応... さらに読む 伝染性単核球症 の児童および若年成人でみられ,通常は著明な咽頭炎,倦怠感,および肝脾腫を伴う。全身性リンパ節腫脹がみられる患者(ときに関節痛,発疹,またはその両方を伴う)では, 急性HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 (primary HIV infection)または 第2期梅毒 梅毒 梅毒は,スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって引き起こされる疾患で,臨床的に3つの病期に区別され,それらの間には無症状の潜伏期がみられることを特徴とする。一般的な臨床像としては,陰部潰瘍,皮膚病変,髄膜炎,大動脈疾患,神経症候群などがある。診断は血清学的検査のほか,梅毒の病期に基づいて選択される補助的検査による。第1選択の薬剤はペニシリンである。... さらに読む 梅毒 を疑うべきである。HIV感染症は曝露後2~6週間で発生する(ただし,患者が無防備な性的接触やその他の危険因子を常に報告するとは限らない)。第2期梅毒では下疳が先行するのが通常で,全身症状は4~10週間後に出現する。ただし,下疳は痛みを伴わず,直腸内,腟内,口腔内の視界に入らない部位に発生することがあるため,患者が下疳に気づいていない場合もある。

発熱と発疹には,感染および薬剤に由来する原因が数多く存在する。点状出血または紫斑を主体とする発疹は特に注意が必要であり, 髄膜炎菌血症 髄膜炎菌感染症 髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)は,髄膜炎と髄膜炎菌血症を引き起こすグラム陰性球菌である。症状は通常重度で,頭痛,悪心,嘔吐,羞明,嗜眠,発疹,多臓器不全,ショック,播種性血管内凝固症候群などがみられる。診断は臨床的に行われ,培養により確定する。治療はペニシリンまたは第3世代セファロスポリン系薬剤による。 髄膜炎菌は,ナイセリア科に属するグラム陰性好気性球菌である。13の血清群があり,そのうちの6群... さらに読む 髄膜炎菌感染症 ロッキー山紅斑熱 ロッキー山紅斑熱(RMSF) ロッキー山紅斑熱(RMSF)は,Rickettsia rickettsiiによって引き起こされ,マダニによって伝播される。症状は高熱,重度の頭痛,および発疹である。 ( リケッチアとその近縁微生物による感染症の概要も参照のこと。) ロッキー山紅斑熱はリケッチア感染症の一種である。 RMSFの発生は西半球に限られている。RMSFは当初ロッキー山脈諸州で確認されたが,実際には米国全土と中南米各地で発生している。ヒトへの感染は,... さらに読む ロッキー山紅斑熱(RMSF) (特に手掌または足底が侵されている場合),または(頻度はやや低くなるが)一部のウイルス感染症(例, デング熱 デングウイルス感染症 デングウイルス感染症(dengue)は,フラビウイルスの一種によって引き起こされる 蚊媒介性疾患である。デング熱では通常,高熱,頭痛,筋肉痛,関節痛,および全身性リンパ節腫脹が突然発症し,その後無熱期があった後,2度目の発熱に伴い発疹が現れる。咳嗽,咽頭痛,鼻漏などの呼吸器症状が起こりうる。デングウイルスは,出血傾向とショックを伴う致死性の出血熱を引き起こす可能性もある。診断は血清学的検査およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査による。... さらに読む ,出血熱)の可能性を示唆する。その他の示唆的な皮膚病変としては, ライム病 ライム病 ライム病は,スピロヘータの一種であるBorrelia属細菌によって引き起こされるダニ媒介性感染症である。初期症状に遊走性紅斑があり,数週間から数カ月後には神経,心臓,または関節の異常が続発することがある。病初期では主に臨床所見から診断するが,疾患後期に発生する心臓合併症,神経系合併症,およびリウマチ性合併症の診断には血清学的検査が役立つ可能性がある。治療はドキシサイクリンやセフトリアキソンなどの抗菌薬による。... さらに読む ライム病 の古典的な遊走性紅斑, スティーブンス-ジョンソン症候群 スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) スティーブンス-ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死融解症は,重度の皮膚過敏反応である。薬剤,特にサルファ剤,抗てんかん薬,および抗菌薬が最も頻度の高い原因である。斑が急速に拡大して融合し,表皮の水疱,壊死,および剥離へとつながる。診断は通常,当初の病変の外観と臨床的な症状群から明らかである。治療は支持療法であり,シクロスポリン,プラズマフェレーシスまたは免疫グロブリン静注療法,早期のコルチコステロイド療法,および腫瘍壊死因子α阻害薬が用い... さらに読む スティーブンス-ジョンソン症候群 (SJS) および中毒性表皮壊死融解症 (TEN) の標的病変, 蜂窩織炎 蜂窩織炎 蜂窩織炎は皮膚および皮下組織の急性細菌感染で,最も頻度の高い原因菌はレンサ球菌とブドウ球菌である。症状と徴候は疼痛,熱感,急速に拡大する紅斑,および浮腫である。発熱がみられる場合もあるほか,より重篤な感染例では所属リンパ節腫脹を認めることもある。診断は病変の外観によるほか,培養も参考になるが,その結果を待つために治療(抗菌薬投与)を遅らせてはならない。時機を逸することなく治療すれば,予後は極めて良好である。... さらに読む 蜂窩織炎 やその他の軟部組織の細菌感染症でみられる疼痛と圧痛を伴う紅斑などがある。遅延型の 薬物過敏症 薬疹および薬物反応 薬剤は様々な皮疹や皮膚反応を引き起こすことがある。そのうち最も重篤なものとしては,本マニュアルの別の箇所で考察しているように, スティーブンス-ジョンソン症候群と 中毒性表皮壊死融解症, 過敏症症候群, 血清病, 剥脱性皮膚炎, 血管性浮腫, アナフィラキシー, 薬剤性血管炎などがある。 また, 脱毛, 扁平苔癬, 結節性紅斑, 色素病変, 全身性エリテマトーデス, 光線過敏反応,... さらに読む 薬疹および薬物反応 の可能性にも(たとえ長期使用後でも)留意すべきである。

局所所見を認めない場合,急性発熱と非特異的な所見(例,倦怠感,全身の痛み)のみを認める健常者では,感染者との接触歴(新たな無防備な性的接触を含む),疾患媒介動物への曝露歴,または疾患流行地域(最近の旅行など)での曝露歴から別の疾患が示唆されない限りは,自然に軽快するウイルス性疾患である可能性が最も高い。

有意な基礎疾患を有する患者では,不顕性の細菌または寄生虫感染症が生じている可能性がより高い。注射薬物使用者と人工心臓弁を使用している患者では心内膜炎の可能性がある。易感染性患者は特定の微生物による感染症を発症する可能性が高い( Professional.see table 急性発熱の主な原因 急性発熱の主な原因 急性発熱の主な原因 )。

薬剤熱(発疹を伴う場合と伴わない場合がある)は除外診断により診断され,しばしば被疑薬の試験的な中止が必要となる。1つの難しい点は,抗菌薬が原因の場合,その治療対象の疾患もまた発熱の原因となっている可能性があるということである。ときに,元の症状が悪化も再発もすることなく,当初の感染症に臨床的改善がみられた後に発熱や発疹が始まることが手がかりとなる(例,肺炎の治療を受けている患者で,咳嗽,呼吸困難,低酸素症が生じることなく再び発熱がみられる)。

検査

検査は局所所見の有無に依存する。

局所所見を認める場合は,臨床での疑いと所見に基づき(本マニュアルの別の箇所も参照),以下の検査を施行する:

局所所見を認めない場合,他の点では健康で重篤な疾患の疑いもない患者では,通常は検査を行わずに自宅で経過観察とすることが可能であるほとんどの場合,症状は速やかに消失するが,懸念される症状や局所症状が出現する少数の患者には,新たな所見に基づいて再評価と検査を行うべきである。

局所症状のない患者で重篤な疾患が疑われる場合には,検査が必要である。敗血症を示唆するレッドフラグサインを認める患者では,培養(尿および血液),胸部X線,ならびに血清電解質,グルコース,血中尿素窒素(尿素窒素),クレアチニン,乳酸,および肝酵素の測定による代謝異常の評価を行う必要がある。血算は一般的に施行されるが,重篤な細菌感染症を診断する上では感度および特異度がともに低い。ただし,免疫抑制の可能性がある患者では,白血球数が予後予測に重要となる(すなわち,白血球数の低値は予後不良と関連する場合がある)。C反応性タンパク(CRP)の上昇は,敗血症の指標として高感度であるが非特異的である。プロカルシトニン値の上昇は細菌感染を示唆するが,ルーチンの使用を正当化するには感度が不十分である。

特定の基礎疾患を有する患者では,たとえ局所所見を認めず,重篤感がない場合でも,検査が必要になる場合がある。発熱のある注射薬物使用者については,心内膜炎のリスクと心内膜炎発症時に想定される極めて重篤な結果を考慮し,通常は入院させた上で継続的な血液培養としばしば心エコー検査を施行する。免疫抑制薬を服用している患者には血算が必要であり,そこで好中球減少症を認めた場合は検査を開始し,胸部X線を施行するとともに,血液,喀痰,尿,便,および疑わしい皮膚病変の培養を行う。好中球減少症のある患者では,菌血症と敗血症が発熱の原因として頻度が高いことから,培養結果を待つことなく経験的な広域抗菌薬の静脈内投与を速やかに開始すべきである。

発熱の治療

特異的な発熱の原因があれば感染症治療を行い,重篤な感染症が強く疑われる場合は,最も可能性が高い解剖学的部位および病原体に基づいた経験的な感染症治療が必要である。

感染に起因する発熱を解熱薬で治療すべきかどうかについては,依然として議論がある。実験的なエビデンスからは,発熱が宿主の防御能を増強している可能性が示唆されているが,臨床研究ではそのような結果は得られていない。

心機能または肺機能不全や認知症のある成人など,特にリスクの高い特定の患者においては,おそらく発熱は治療すべきと考えられる。

脳のシクロオキシゲナーゼを阻害する薬剤により,効果的に発熱を軽減することができる:

  • アセトアミノフェン650~1000mgを6時間毎に経口投与

  • イブプロフェン400~600mgを6時間毎に経口投与

毒性を回避するため,アセトアミノフェンの1日用量は4gを超えないようにする;アセトアミノフェンを含有する感冒またはインフルエンザのOTC医薬品を同時に服用しないように患者に警告するべきである。その他の非ステロイド系抗炎症薬(例,アスピリン,ナプロキセン)も解熱薬として効果的である。サリチル酸系薬剤は,ライ症候群との関連が報告されているため,ウイルス性疾患の小児患者における発熱の治療に使用してはならない。

体温が41℃以上まで上昇した場合は,他の冷却法(例,微温湯ミストを用いた気化冷却,冷却ブランケット)も開始すべきである。

老年医学的重要事項:発熱

フレイルな高齢者では,感染が生じても発熱が起きる可能性が低く,たとえ感染により体温が上昇した場合でも,標準的な発熱の定義より体温が低いことがある。同様に,局所の疼痛など他の炎症性症状もあまり著明とならないことがある。しばしば, 肺炎 肺炎の概要 肺炎は,感染によって引き起こされる肺の急性炎症である。初期診断は通常,胸部X線および臨床所見に基づいて行う。 原因,症状,治療,予防策,および予後は,その感染が細菌性,抗酸菌性,ウイルス性,真菌性,寄生虫性のいずれであるか,市中または院内のいずれで発生したか,機械的人工換気による治療を受けている患者に発生したかどうか,ならびに患者が免疫能... さらに読む 尿路感染症 尿路感染症 (UTI) に関する序論 尿路感染症(UTI)は,腎臓( 腎盂腎炎)が侵される上部尿路感染症と,膀胱( 膀胱炎),尿道( 尿道炎),および前立腺( 前立腺炎)が侵される下部尿路感染症に分類される。しかしながら,実際には(特に小児では)感染部位の鑑別が困難または不可能な場合もある。さらに,感染はしばしば1つの領域から別の領域へと拡大する。尿道炎と前立腺炎も尿路が侵さ... さらに読む の発症初期に他に精神状態の変化や日常生活機能の低下しかみられないこともある。

疾患の臨床像があまり重症ではないにもかかわらず発熱がみられる高齢者では,発熱がみられる若年成人と比べて,重篤な細菌感染症が生じる可能性が著しく高い。若年成人の場合と同様に,呼吸器感染症または尿路感染症が原因であることもよくある一方,高齢者では皮膚および軟部組織感染症が原因の上位を占めている。高齢者では インフルエンザ インフルエンザ インフルエンザは,発熱,鼻感冒,咳嗽,頭痛,および倦怠感を引き起こす ウイルス性呼吸器感染症である。季節的な流行の際には特に高リスク患者(例,施設入所者,低年齢児と高齢者,心肺機能不全患者,または妊娠後期の妊婦)の間で死亡も起こりうる;パンデミックの間は,健康な若年患者でさえ死に至る可能性がある。診断は通常,臨床的に,また地域の疫学的パターンに基づいて行う。インフルエンザワクチンは禁忌のない6カ月以上の全ての人に毎年接種すべきである。抗... さらに読む COVID-19 COVID-19 COVID-19は,新型コロナウイルスであるSARS-CoV-2によって引き起こされ,ときに重症化する急性呼吸器疾患である。 COVID-19は,2019年後半に中国の武漢で最初に報告された後,世界中に拡大した。感染者数および死亡者数に関する最新の情報については,Centers... さらに読む などのウイルスによる呼吸器感染でも,重篤な症状が現れる可能性がより高くなる。

発熱の要点

  • 健常者における発熱の大半は,ウイルス性の呼吸器または消化管感染症によるものである。

  • 局所症状が評価の指針となる。

  • 局所症状がない場合は,検査対象を重篤感があるか病態が慢性であると思われる患者に限定することが,多くの不必要な評価を回避するのに役立ちうる。

  • 基礎にある慢性疾患を考慮すること(特に免疫系に障害のある患者)。

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