後天性血小板機能異常症

執筆者:David J. Kuter, MD, DPhil, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2020年 6月
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    後天性血小板機能異常症はよくみられ,アスピリン,その他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),または全身性疾患により発生する場合がある。

    血小板疾患の概要も参照のこと。)

    血小板機能の後天的な異常は非常に多くみられる。原因としては以下のものがある:

    • 薬剤

    • 全身性疾患

    • 体外循環

    後天性血小板機能異常症は,異常出血または持続性の出血がみられる場合に疑われ,可能性のある他の診断(例,血小板減少症,凝固異常)を除外することで確定する。血小板凝集能検査の必要はない。

    薬剤

    アスピリン,その他のNSAID,血小板P2Y12 ADP(アデノシン二リン酸)受容体阻害薬(例,クロピドグレル,プラスグレル,チカグレロル),および糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害薬(例,アブシキシマブ,エプチフィバチド[eptifibatide],チロフィバン[tirofiban])は,血小板機能異常症を誘導することがある。この作用は,ときに偶発的に生じ(例,これらの薬剤を疼痛および炎症の緩和に用いる場合),ときに治療により生じる(例,アスピリンまたはP2Y12阻害薬を脳卒中または冠動脈血栓症の予防に用いる場合)。

    アスピリンおよびNSAIDは,シクロオキシゲナーゼ媒介性のトロンボキサンA2産生を阻害する。この作用は,5~7日間持続する可能性がある。健常者では,アスピリンにより出血がわずかに増加するが,高齢患者および基礎疾患として血小板機能異常症または重度の凝固障害を有する患者(例,ヘパリン投与を受けている患者,重度の血友病患者)では,著しく出血が増加する恐れがある。クロピドグレル,プラスグレル,およびチカグレロルは,いずれも血小板機能を著しく低下させ,出血を増加させる可能性がある。

    その他にもいくつかの薬剤が血小板機能異常症を引き起こすことがある(1)。

    全身性疾患

    多くの疾患(例,骨髄増殖性腫瘍骨髄異形成疾患,尿毒症,マクログロブリン血症多発性骨髄腫肝硬変全身性エリテマトーデス)が血小板機能を低下させる可能性がある。

    尿毒症では,未知の機序によって出血が延長する。尿毒症患者で臨床的に出血が認められた場合は,集中的な透析,クリオプレシピテートの投与,またはデスモプレシンの点滴で出血を抑えられることがある。必要であれば,輸血またはエリスロポエチンの投与によりヘモグロビン濃度が10g/dLを上回るようにすることによっても出血が抑えられる。

    体外循環

    体外循環中には,血液が人工心肺装置を介して循環するため,血小板が機能障害を起こし,出血が長引くことがある。その機序は,血小板表面での線溶の活性化であると考えられており,その結果として,糖タンパク質Ib/IXがフォン・ヴィレブランド因子と結合する部位が失われる。血小板数にかかわらず,体外循環後に過度の出血がみられる患者には,血小板輸血を行うことが多い。体外循環時に抗線溶薬を投与することで,血小板機能が保たれ,輸血の必要性が少なくなる可能性がある。

    総論の参考文献

    1. Scharf RE: Drugs that affect platelet function.Semin Thromb Hemost 38(8): 865–883, 2012.doi: 10.1055/s-0032-1328881 Epub 2012 Oct 30.

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