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脾腫

執筆者:

Harry S. Jacob

, MD, DHC, University of Minnesota Medical School

レビュー/改訂 2019年 12月
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脾腫とは,脾臓が異常に腫大した状態である。

脾腫はほぼ常に,他の疾患による二次的なものである。脾腫の原因は無数にあるため,可能な分類法も多くある(脾腫の一般的な原因 脾腫の一般的な原因* 脾腫の一般的な原因* の表を参照)。温帯気候で最も一般的な原因は,以下のものである:

熱帯地域で最も一般的な原因は,以下のものである:

脾腫が巨大(肋骨下縁の8cm下方で脾臓が触知可能)になった場合,その原因は通常, 慢性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL) 慢性リンパ性白血病(CLL)は,表現型的に成熟した悪性Bリンパ球が進行性に蓄積していくことを特徴とする。本疾患の原発部位としては,末梢血,骨髄,脾臓,およびリンパ節がある。症状および徴候は,認められない場合もあるが,リンパ節腫脹,脾腫,肝腫大,疲労,発熱,盗汗,意図しない体重減少,早期満腹感などが認められる場合もある。診断は末梢血でのフローサイトメトリーおよび細胞表面マーカー検査による。治療は症状が現れるまで待機し,一般に化学療法と免疫... さらに読む 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫は,リンパ節,骨髄,脾臓,肝臓,および消化管を含むリンパ細網部位においてリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が生じる不均一な疾患群である。通常は,初発症状として末梢のリンパ節腫脹がみられる。ただし,リンパ節腫脹は認められないが,循環血中に異常なリンパ球が認められる患者もいる。ホジキンリンパ腫と比べ,診断時に播種性である可能性が高い。通常は,リンパ節生検,骨髄生検,またはその両方に基づいて診断を下す。管理の戦略としては,経... さらに読む 非ホジキンリンパ腫 慢性骨髄性白血病 慢性骨髄性白血病(CML) 慢性骨髄性白血病(CML)は,多能性造血幹細胞が悪性化してクローン性の骨髄増殖を起こすことで発生し,成熟および幼若顆粒球の著しい過剰産生をもたらす。初期段階では無症状であるが,潜行性に進行し,非特異的な「慢性期」(倦怠感,食欲不振,体重減少)があり,最終的には,脾腫,蒼白,紫斑ができやすいおよび出血しやすい状態,発熱,リンパ節腫脹,皮膚の変化などの,より不良な徴候を呈する移行期または急性転化期に移行する。末梢血塗抹検査,骨髄穿刺,および... さらに読む 真性多血症 真性多血症 真性多血症(PV)は,形態学的に正常な赤血球の増加(疾患の典型的な特徴)だけでなく,白血球および血小板の増加を特徴とする慢性骨髄増殖性腫瘍である。10~30%の患者で最終的に骨髄線維症および骨髄不全が生じ,1.0~2.5%では急性白血病が自然発生する。出血および動脈血栓症または静脈血栓症のリスクが高い。一般的な臨床像には,脾腫,大血管および微小血管イベント(例,一過性脳虚血発作,肢端紅痛症,眼性片頭痛),ならびにaquagenic... さらに読む 原発性骨髄線維症 原発性骨髄線維症 原発性骨髄線維症(PMF)は,骨髄線維化,脾腫,ならびに有核および涙滴赤血球を伴う貧血を特徴とする,慢性の骨髄増殖性腫瘍である。診断には骨髄検査が必要で,骨髄線維化(二次性骨髄線維症)の原因となりうる他の疾患を除外する。治療は支持療法となることが多いが,ルキソリチニブやフェドラチニブなどのJAK2阻害薬により症状を軽減できる場合があり,造血幹細胞移植により治癒が得られる可能性もある。... さらに読む ゴーシェ病 ゴーシェ病 ゴーシェ病は,グルコセレブロシダーゼの欠乏により生じる スフィンゴリピドーシス(遺伝性代謝疾患の1つ)であり,グルコセレブロシドおよび関連化合物の沈着を引き起こす。症状と徴候は病型によって異なるが,最も多いのは肝脾腫または中枢神経系変化である。診断はDNA解析および/または白血球の酵素分析による。治療はグルコセレブロシダーゼによる酵素補充療法である。 詳細については, 主なスフィンゴリピドーシスの表を参照のこと。... さらに読む ,または有毛細胞白血病である。

脾腫の評価

病歴

認められる症状のほとんどは基礎疾患によるものである。ただし,腫大した脾臓が胃を圧迫することで,脾腫自体によって早期満腹感が引き起こされることもある。膨満感および左上腹部痛の可能性もある。突然かつ重度の疼痛は脾梗塞を示唆する。繰り返す感染症,貧血の症状,または出血の症状からは,血球減少症が示唆され,さらに脾機能亢進症の可能性もある。

身体診察

超音波検査で確認される脾臓腫大の診察による検出感度は,触診で60~70%,打診で60~80%である。正常な人で細身の場合,脾臓が触知可能なのは最大3%である。さらに,左上腹部に腫瘤が触知可能でも,例えば副腎腫などの,脾腫以外の問題を示している場合がある。

他に参考になる徴候としては,脾梗塞を示唆する脾臓の摩擦音と肩関節痛のほか,血流量の増加により生じうる心窩部または脾臓の血管雑音などもある。リンパ節腫脹から,リンパ増殖性疾患,感染症,または自己免疫疾患が示唆される場合がある。

検査

触診では不確かなために脾腫の確認が必要な場合,正確性および低コストにより超音波検査が選択すべき検査となる。CTおよびMRIでは,より詳細に臓器硬度が得られる場合がある。MRIは,門脈または脾静脈血栓症の検出に特に有用である。核医学検査は精度が高く,脾臓摘出後にしばしばみられる副脾組織を同定することができるが,これは手術時に見逃された脾髄の「作業肥大」によるものである。

具体的な原因が臨床的に示唆される場合は,適切な検査により確認すべきである。示唆される原因がない場合,早期の治療が感染の転帰に与える影響は,他のほとんどの脾腫の原因に与える影響よりも大きいため,潜在的な感染症の除外が最優先される。地理的に感染症の有病率が高い地域,または患者が罹患していると考えられる場合は,検査を徹底すべきである。血算,血液培養,骨髄検査,および骨髄培養を考慮すべきである。患者に重症感がみられず,脾腫によるもの以外の症状がなく,かつ感染症の危険因子を有していない場合,検査の範囲については議論があるものの,ほぼ確実に血算,末梢血塗抹標本,肝機能検査,および腹部CTが含まれる。リンパ腫が疑われる場合,フローサイトメトリーおよび免疫化学的検査(末梢血および/または骨髄における軽鎖測定など)が適応となる。脾臓辺縁帯のリンパ腫はまれであるが,しばしば C型肝炎 C型肝炎,慢性 C型肝炎は,慢性肝炎の一般的な原因の1つである。慢性肝疾患の症状が現れるまで無症状に経過する場合が多い。HCV抗体陽性の所見がみられ,かつ初回感染から6カ月以上経過してもHCV-RNAが陽性であれば,診断が確定する。治療は直接作用型抗ウイルス薬による;検出可能なウイルスRNAの永続的な排除が可能である。 ( 肝炎の原因, 慢性肝炎の概要,および C型急性肝炎も参照のこと。) 一般に6カ月以上持続する肝炎が慢性肝炎と定義されるが,この期間... さらに読む に関連して発生する(ウイルスの根絶により効果的に治療できるため,検出することが重要である)。

特異的な末梢血所見から基礎疾患が示唆されることがある(例, 慢性リンパ性白血病 慢性リンパ性白血病(CLL) 慢性リンパ性白血病(CLL)は,表現型的に成熟した悪性Bリンパ球が進行性に蓄積していくことを特徴とする。本疾患の原発部位としては,末梢血,骨髄,脾臓,およびリンパ節がある。症状および徴候は,認められない場合もあるが,リンパ節腫脹,脾腫,肝腫大,疲労,発熱,盗汗,意図しない体重減少,早期満腹感などが認められる場合もある。診断は末梢血でのフローサイトメトリーおよび細胞表面マーカー検査による。治療は症状が現れるまで待機し,一般に化学療法と免疫... さらに読む における小細胞リンパ球増多,T細胞顆粒リンパ球[TGL]過形成またはTGL白血病における大顆粒リンパ球増多,有毛細胞白血病における異型リンパ球,他の白血病における白血球増多および未熟白血球)。好塩基球,好酸球,有核赤血球,または涙滴赤血球が過剰な場合は, 骨髄増殖性腫瘍 骨髄増殖性腫瘍の概要 骨髄増殖性腫瘍は,骨髄幹細胞がクローン性に増殖する病態で,循環血中の血小板数,赤血球数,または白血球数の増加として現れることがあり,ときに骨髄の線維化亢進とその結果として髄外造血(骨髄外での血球産生)が生じる。これらの異常に基づき,以下のように分類される: 本態性血小板血症(血小板増多)... さらに読む が示唆される。血球減少症からは, 脾機能亢進症 脾機能亢進症 脾機能亢進症は,脾腫によって引き起こされる血球減少症である。 ( 脾臓の概要も参照のこと。) 脾機能亢進症は,ほぼあらゆる原因による 脾腫から発生しうる二次的過程である( 脾腫の一般的な原因の表を参照)。脾腫が生じると,赤血球に加えて,しばしば白血球および血小板に対する脾臓での機械的な補足および破壊が亢進する。これらの血球系が循環血中で減少すると,代償性の骨髄過形成が起こる。... さらに読む が示唆される。球状赤血球症からは,脾機能亢進症または 遺伝性球状赤血球症 遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症 遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症は,軽度の溶血性貧血を引き起こす可能性のある先天性の赤血球膜障害である。症状は,一般に遺伝性楕円赤血球症の方が軽度であるが,様々な程度の貧血,黄疸,および脾腫がみられる。診断には,赤血球の浸透圧脆弱性の亢進および直接抗グロブリン試験陰性を証明する必要がある。まれに,45歳未満の症状がある患者で脾臓摘出を要する。 ( 溶血性貧血の概要も参照のこと。)... さらに読む 遺伝性球状赤血球症および遺伝性楕円赤血球症 が示唆される。標的赤血球と球状赤血球は,異常ヘモグロビン症を示唆している可能性がある。

肝硬変を伴ううっ血性脾腫では,肝機能検査結果に広範な異常がみられる;血清アルカリホスファターゼ値のみが上昇している場合は,骨髄増殖性疾患,リンパ増殖性疾患, 粟粒結核 粟粒結核 肺以外の結核は通常,血行性播種によって発生する。感染はときに隣接臓器から直接広がる。症状は部位によって異なるが,一般には発熱,倦怠感,体重減少などがみられる。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。 血行性全身性結核としても知られる粟粒結核は,結核病変が血管を侵して何百万もの結核菌が血流に入り全身に播種される場合に発生する。... さらに読む  粟粒結核 ,および慢性真菌感染症(例, カンジダ症 カンジダ症(侵襲性) カンジダ症はCandida属真菌(最も頻度が高いのはC. albicans)による感染症であり,皮膚粘膜病変や真菌血症,ときに複数部位の病巣感染症として発症する。症状は感染部位に依存し,具体的には嚥下困難,皮膚粘膜病変,失明,腟症状(そう痒,灼熱感,分泌物),発熱,ショック,乏尿,腎機能停止,播種性血管内凝固症候群などがみられる。診断は,病理組織学的検査および本来は無菌の部位からの培養によって確定される。治療... さらに読む カンジダ症(侵襲性) ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症は,Histoplasma capsulatumにより引き起こされる肺および播種性感染症であり,しばしば慢性に経過し,無症状の初感染に続いて発症するのが通常である。症状は,肺炎症状または非特異的慢性疾患症状である。診断は,喀痰中もしくは組織中の菌の同定,または特異的な血清および尿中抗原検査による。治療が必要な場合は,アムホテリシンBまたはアゾール系薬剤を使用する。... さらに読む ヒストプラズマ症 )などの肝浸潤が示唆される。

無症状の患者でも,他に有用である可能性のある検査がある。血清タンパク質電気泳動で単クローン性免疫グロブリン血症または免疫グロブリン減少が同定された場合は,リンパ増殖性疾患または アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。 さらに読む アミロイドーシス が示唆され,びまん性の高ガンマグロブリン血症からは,慢性感染症(例, マラリア マラリア マラリアはマラリア原虫(Plasmodium属原虫)による感染症である。症状および徴候としては,発熱(周期熱のことがある),悪寒,振戦,発汗,下痢,腹痛,呼吸窮迫,錯乱,痙攣発作,溶血性貧血,脾腫,腎臓の異常などがある。診断は血液塗抹標本におけるマラリア原虫(Plasmodium属)の観察と迅速診断検査による。治療および予防法は,マラリア原虫(Plasmodium属)の種,薬剤感受性,および患者... さらに読む 内臓リーシュマニア症 リーシュマニア症 リーシュマニア症は,各種のリーシュマニア(Leishmania)により引き起こされる。症候は皮膚,粘膜,および内臓の症候群である。皮膚リーシュマニア症は,無痛性の慢性皮膚病変を生じ,病変は結節から大きな潰瘍まで幅があり,数カ月から数年間持続するが最終的には治癒する。粘膜リーシュマニア症は上咽頭組織を侵し,鼻と口蓋の肉眼的崩壊を引き起こす。内臓リーシュマニア症は,不規則な発熱,肝脾腫,汎血球減少,および多クローン性高ガンマグ... さらに読む リーシュマニア症 ブルセラ症 ブルセラ症 ブルセラ症は,グラム陰性細菌であるBrucella属細菌により引き起こされる。症状は急性熱性疾患として始まり,局所的な徴候はほとんどまたは全くみられず,進行して慢性化すると発熱,脱力,発汗,および漠然とした疼きや痛みの再発を繰り返すようになる。診断は培養(通常は血液培養)による。至適な治療には通常は2剤の抗菌薬(ドキシサイクリンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールとゲンタマイシン,ストレプトマイシン,またはリファン... さらに読む 結核 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 ),うっ血性脾腫を伴う肝硬変, サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常はまず肺病変を理由に本疾患... さらに読む サルコイドーシス ,または結合組織疾患が示唆される。フローサイトメトリーにより,リンパ腫を示唆する少数の単クローン性リンパ球集団を同定することができる。血清尿酸値が高い場合は,骨髄増殖性疾患またはリンパ増殖性疾患が示唆される。白血球アルカリホスファターゼ(LAP)が高値の場合は,骨髄増殖性腫瘍が示唆され,低値の場合は,慢性骨髄性白血病が示唆される。

検査により脾腫以外の異常が認められなければ,6~12カ月間隔または新たな症状が発生したときに再検査すべきである。

脾腫の治療

脾腫の要点

  • 脾腫はほぼ常に,他の疾患による二次的なものである。

  • 脾腫の病因を調べる検査をしても,直ちに明らかな原因がみつからない場合は,感染性の原因を除外することが重要である。

  • 脾腫があるが無症状の患者は,治療を必要としないが,脾破裂のリスクを低減するため,コンタクトスポーツを避けるべきである。

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