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がんの細胞および分子レベルの基礎

執筆者:

Robert Peter Gale

, MD, PhD, DSC(hc), Imperial College London

レビュー/改訂 2020年 11月
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がんでみられる無秩序な細胞増殖には,その発生や維持において多くの因子が関与している。

細胞動態

世代時間とは,細胞が細胞分裂の1周期(細胞周期 細胞周期 細胞周期 の図を参照)を完了して,2つの娘細胞が生じるまでに要する時間である。がん細胞で,特に骨髄またはリンパ系から発生するものは,世代時間が短いことがあり,通常はG0期(休止期)の細胞比率が小さい。最初に指数関数的に増殖した腫瘍は,細胞死の速度と娘細胞産生速度がほぼ等しくなると,プラトー期に入る。増殖速度の減速は,急速に増殖している腫瘍に対する栄養および酸素の供給が不足するためと考えられる。活発に分裂している細胞の比率は,小さな腫瘍の方が大きな腫瘍よりも高い。

多くの場合,がんの中にある一部の細胞集団は幹細胞の特性を有している。そのため,それらの幹細胞は増殖状態に入ることができる。また,薬剤や放射線照射による傷害を受けにくい。これらの幹細胞により,化学療法および/または放射線療法後にがんが再増殖すると考えられている。

特定のがんの細胞動態は,抗腫瘍薬レジメンの設計において考慮すべき重要事項であり,投与スケジュールおよび治療間隔設定に影響を及ぼす場合がある。代謝拮抗薬などの抗腫瘍薬の多くは,細胞が活発に分裂しているときに最も効果的となる。一部の薬物は細胞周期の特定の相でのみ作用することから,感受性が最大の相にある分裂中の細胞を捉えるには,投与期間の延長が必要である。

細胞周期

G0 = 休止期(細胞増殖なし);G1 = DNA合成前の可変相(12時間~数日);S = DNA合成中(通常2~4時間);G2 = DNA合成後(2~4時間)―細胞内にDNAの四倍体がみられる;M1 = 有糸分裂(1~2時間)。

細胞周期

がんの増殖と転移

がんが増殖する過程では,循環血中からの直接拡散によって栄養が供給される。局所での増殖は,隣接組織を破壊する酵素(例,プロテアーゼ)によって促進される。がんは,体積が増加するにつれて,血管内皮増殖因子(VEGF)などの腫瘍血管新生因子を産生することがあり,それにより,さらなる増殖に必要な新たな血管の形成が促進される。

がんはまた,発生のごく初期段階で細胞を循環血中に放出することもある。動物モデルの実験によると,1cmの腫瘍から24時間当たり100万個を超える細胞が静脈循環血中へ遊出すると推定される。多くの進行がん患者のほか,一部の限局がんの患者においても,循環血中にがん細胞が認められる。循環血中のがん細胞はほとんどが死滅するが,ときに周囲の組織へ侵入し,遠隔部位に転移巣を形成することがある。転移巣は,原発巣とほぼ同じように増殖し,その後さらに転移を起こすことがある。ほとんどのがん患者は,原発巣ではなく転移巣による影響で死亡する。

浸潤し,遊走し,首尾よく定着して,新たな血管の成長を刺激する能力は,いずれも転移を引き起こす細胞の重要な特徴であり,そのような細胞は原発巣の中の細胞集団である可能性が高いことが,実験により示唆されている。

免疫系とがん

がん細胞はしばしば細胞表面に新たな抗原を提示し,これが免疫系によって「非自己」として検出されることで,免疫反応による攻撃が起こる。この機構が有効である限り,がんは発生しないと考えられる。こうした排除が完全に達成される場合もあり,そのような状況ではがんは決して出現しない。しかしながら,一部のがんは免疫系による検知や排除を回避する能力を有しているか獲得し,それにより自らの増殖を可能にしている。

選択圧(例,進化的な圧力)の下では,がん細胞はチェックポイントタンパク質を発現する可能性がある。チェックポイントタンパク質は,それを発現している細胞は正常であって攻撃する必要がないというメッセージをT細胞に伝える細胞表面分子である。PD-L1(programmed death ligand 1)タンパク質がその一例であるが,これはT細胞上のPD-1分子により認識されるリガンドで,PD-L1がT細胞上のPD-1に結合すると,免疫系による攻撃が妨げられる。PD-L1またはPD-1を遮断する免疫チェックポイント阻害薬のモノクローナル抗体を使用するがん治療では,免疫系を刺激して防御下にあるがん細胞を攻撃できるようにする。CTLA-4(Cytotoxic T-lymphocyte associated protein 4)は,免疫系からの攻撃を妨げる別の免疫チェックポイントタンパク質であり,同様に特異的な抗体によって阻害することができる。チェックポイントタンパク質は正常細胞の表面にも発現している可能性があるため,免疫チェックポイント阻害薬による治療は,自己免疫応答も誘導する可能性がある。

遺伝子改変T細胞(キメラ抗原受容体発現T細胞[CAR-T]療法と呼ばれる)も免疫療法に用いることができる。そのプロセスでは,患者からT細胞を採取して,特異的な抗原に対する認識ドメインとT細胞を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインを併せもつ受容体を発現するように遺伝子改変を加える。改変したT細胞を患者に輸注すると,それらの細胞が標的抗原を発現している細胞を攻撃する。通常,標的抗原は細胞系統に特異的なものであり,がんに特異的というわけではない。CAR-T細胞療法は, B細胞性急性リンパ芽球性白血病 急性リンパ芽球性白血病(ALL) 急性リンパ芽球性白血病(ALL)は,最も頻度の高い小児がんであるが,あらゆる年齢の成人にもみられる。異常に分化して長い寿命をもつ造血前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の芽球数が増加し,悪性細胞による正常な骨髄の置換,中枢神経系および精巣への白血病細胞浸潤の可能性が生じる。症状としては,易疲労感,蒼白,感染,骨痛,中枢神経系症状(例,頭痛),紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態などがある。通常は,末梢血塗抹標本と骨髄の... さらに読む 急性リンパ芽球性白血病(ALL) B細胞リンパ腫 非ホジキンリンパ腫 非ホジキンリンパ腫は,リンパ節,骨髄,脾臓,肝臓,および消化管を含むリンパ細網部位においてリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が生じる不均一な疾患群である。通常は,初発症状として末梢のリンパ節腫脹がみられる。ただし,リンパ節腫脹は認められないが,循環血中に異常なリンパ球が認められる患者もいる。ホジキンリンパ腫と比べ,診断時に播種性である可能性が高い。通常は,リンパ節生検,骨髄生検,またはその両方に基づいて診断を下す。管理の戦略としては,経... さらに読む 非ホジキンリンパ腫 形質細胞骨髄腫 多発性骨髄腫 多発性骨髄腫は,形質細胞の悪性腫瘍で,単クローン性免疫グロブリンを産生し,隣接する骨組織に浸潤し,それを破壊する。一般的な臨床像としては,骨痛および/または骨折を引き起こす溶骨性骨病変,腎機能不全,高カルシウム血症,貧血,繰り返す感染症などがある。典型的には,Mタンパク質(ときに尿中にみられ,血清中に認められない場合があるが,まれに全く認められない場合もある)および/または軽鎖タンパク尿,および骨髄中の過剰な形質細胞の証明が診断に必要で... さらに読む 多発性骨髄腫 (多発性骨髄腫)などのB細胞性のがんに対して最も効果的である。一般的な悪性固形腫瘍に対するCAR-T細胞療法の効力はまだ確立されていない。

分子生物学的異常

がん細胞の発生には遺伝子変異が関与しており,そのため,全てのがんに何らかの遺伝子変異が存在する。それらの変異により,細胞増殖,細胞分裂,およびDNA修復を調節するタンパク質産物の量または機能が変化する。変異した遺伝子は以下の2つに大別される:

  • がん遺伝子

  • がん抑制遺伝子

がん遺伝子

がん遺伝子は,細胞増殖および分化の様々な面を調節する正常な遺伝子(がん原遺伝子)に異常が生じたものである。これらの遺伝子に変異が起きると,細胞増殖,細胞分裂,細胞代謝,DNA修復,血管新生,その他の生理学的プロセスを制御している経路(例,細胞表面の増殖因子受容体,細胞内のシグナル伝達経路,転写因子,分泌される増殖因子)が直接かつ持続的に刺激されるようになる場合がある。

ヒト細胞の腫瘍化に寄与しうるがん遺伝子が100以上知られている。例えば,RAS遺伝子はrasタンパク質をコードしているが,このタンパク質は膜結合型受容体からのシグナルを細胞核に至るRAS-MAPKinase経路の下流まで伝達することにより,細胞分裂を調節している。この遺伝子に変異があると,rasタンパク質の不適切な活性化につながり,無秩序な細胞増殖に至ることがある。ヒトのがんの約25%でrasタンパク質の異常がみられる。

その他にもがん遺伝子が特定のがんに関与していることが明らかになっている。具体的には以下のものがある:

  • HER2(乳癌および胃癌のほか,頻度は低くなるが肺癌でも増幅がみられる)

  • BCR-ABL1(慢性骨髄性白血病および一部のB細胞急性リンパ性白血病でみられるキメラ遺伝子)

  • CMYC(バーキットリンパ腫)

  • NMYC(小細胞肺癌,神経芽腫)

  • EGFR(肺腺癌)

  • EML4ALK(肺腺癌でみられるキメラ遺伝子)

特定のがん遺伝子が診断,治療,および予後に重要な意味をもつことがある(具体的ながん種に関する個々の考察を参照)。

がん遺伝子は典型的には以下によって生じる:

  • 体細胞に後天的に生じた点変異(例,化学発がん物質によるもの)

  • 遺伝子増幅(例,正常な遺伝子のコピー数の増加)

  • 転座(異なる遺伝子の一部同士が融合して固有の塩基配列を形成する)

これらの変化が起きると,遺伝子産物(タンパク質)の活性が亢進したり,機能が変化したりすることがある。ときには,生殖細胞の遺伝子変異ががん素因の遺伝につながる場合もある。

がん抑制遺伝子

TP53BRCA1BRCA2などの遺伝子は,正常な細胞分裂やDNA修復に関与しており,細胞内の不適切な増殖シグナルやDNA損傷の検出に極めて重要である。遺伝的または後天的な突然変異の結果として,これらの遺伝子が機能しなくなると,DNAの統合を監視している機構が無効になるため,偶発的な遺伝子変異が生じた細胞が生き残って増殖するようになり,その結果として腫瘍が発生する。

ほとんどの遺伝子と同様に,がん抑制遺伝子についても,それらをコードするアレルが2つずつ存在する。あるがん抑制遺伝子の一方のコピーが欠陥のある状態で遺伝すると,がん抑制遺伝子として機能するアレルは1つだけになる。ここで,もう一方の機能しているアレルに後天的に変異が起きると,そのがん抑制遺伝子による正常な保護機構が失われる。

重要な調節タンパク質であるp53は,正常細胞内の損傷したDNAの複製を妨げるとともに,異常なDNAを有する細胞で細胞死(アポトーシス)を促進する。p53が不活化または変異していると,異常なDNAを有する細胞が生存および分裂できるようになる。TP53変異は娘細胞に受け継がれ,変異が起きやすいDNAが複製される確率が高くなる結果として,腫瘍への形質転換が起きる。ヒトの多くのがんでTP53の欠損がみられる。

機能を低下させるBRCA1およびBRCA2の変異は,乳癌および卵巣がんのリスクを高める。

別の例では,網膜芽細胞腫(RB)遺伝子はRbタンパク質をコードしているが,このタンパク質はDNA複製を停止させることによって細胞周期を調節している。RB遺伝子ファミリーの変異はヒトのがんの多くにみられ,変異が起きた細胞は絶えず分裂できるようになる。

がん遺伝子と同様に,生殖細胞系でTP53RBのようながん抑制遺伝子が変異すると,垂直伝播が生じて,子孫におけるがん発生率が高くなることがある。

染色体異常

染色体の欠失,転座,重複,または他の機序を介して, 染色体異常 染色体異常症の概要 染色体異常は様々な疾患の原因となる。性染色体(XおよびY染色体)の異常よりも常染色体(男女とも22対ある相同な染色体)の異常の方が多くみられる。 染色体異常はいくつかのカテゴリーに分けられるが,大きく数的異常と構造異常に分けて考えることができる。 数的異常としては以下のものがある:... さらに読む が生じることがある。それらの変異によって複数の遺伝子が活性化または不活化されると,正常細胞を上回る増殖優位性が獲得される結果として,がんが発生する可能性がある。多くのヒトのがんで染色体異常がみられる。一部の先天性疾患(ブルーム症候群,ファンコニ貧血,ダウン症候群)では,DNA修復過程が欠損しており,染色体の断裂が高頻度でみられることから,このような小児では,急性白血病およびリンパ腫の発生リスクが高くなる。

他の影響

ほとんどの上皮性悪性腫瘍は,腫瘍化をもたらす一連の遺伝子変異に起因している可能性が高い。例えば,家族性ポリポーシスにおける結腸癌の発生は,上皮の過剰増殖(5番染色体上の抑制遺伝子の欠損),初期の腺腫(DNAメチル化における変化),中期の腺腫(がん遺伝子RASの過剰活性化),後期の腺腫(18番染色体上の抑制遺伝子の欠損),そして最終的ながん(17番染色体上の遺伝子の欠損)というように,一連の遺伝学的事象を経ながら進行する。転移には,さらなる遺伝子変異が必要になる場合がある。

テロメアは,染色体の両末端に位置する核タンパク質複合体で,染色体の完全性を維持している。正常な組織では,テロメアの短縮(加齢による生じる)によって細胞分裂の回数が制限されている。テロメラーゼという酵素が腫瘍細胞内で活性化されると,テロメアが新たに合成され,がん細胞の恒久的な増殖が可能となる。テロメアの再生を司る遺伝子に先天性の異常があると,テロメアが短縮し,皮膚,消化器,および骨髄のがんリスクが高まる。

環境因子

感染症

一部のヒトのがんの発生機序にはウイルスが関与している(がん関連ウイルス がん関連ウイルス がん関連ウイルス の表を参照)。その発生は,ウイルスの遺伝要素が宿主DNAに組み込まれることでもたらされる場合がある。それらの新たな遺伝子は,宿主によって発現され,細胞の増殖および分裂に影響を及ぼしたり,細胞の増殖および分裂の制御に欠かせない正常な宿主遺伝子の機能を妨げたりすることがある。また一方で,ウイルス感染により,免疫機能障害を来し,早期の腫瘍に対する免疫監視機能が低下することもある。HIV感染はいくつかのがんのリスクを高める(HIV感染患者によくみられる悪性腫瘍 HIV感染患者によくみられる悪性腫瘍 HIV感染患者におけるAIDS指標がんは以下の通りである: カポジ肉腫 リンパ腫,バーキット(または同等の用語) リンパ腫,免疫芽球型(または同等の用語) リンパ腫(原発性,中枢神経系) さらに読む を参照)。

細菌ががんを引き起こすこともある。Helicobacter pyloriの感染は,いくつかの悪性腫瘍(胃腺癌,胃リンパ腫,粘膜関連リンパ組織[MALT]リンパ腫)のリスクを高める。

ある種の寄生虫ががんを引き起こす可能性もある。ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)は膀胱で慢性炎症と線維化を引き起こし,その病変が悪性化することがある。肝吸虫(Opisthorchis sinensis)は,膵癌および胆管癌との関連が報告されている。

放射線

紫外線は,DNAを損傷することで皮膚悪性腫瘍(例,基底細胞癌,扁平上皮癌,黒色腫)を誘導することがある。このDNA損傷はチミジン二量体の形成で,それにより正常なDNA鎖の切断と再合成が回避されることがある。DNA修復に遺伝的な欠陥がある患者(例,色素性乾皮症)や,薬物または基礎疾患のために免疫機能が抑制されている患者では,紫外線曝露による皮膚悪性腫瘍の発生が特に起こりやすい。

電離放射線には発がん性がある。例えば,広島と長崎の原爆投下の生存者では,白血病やその他の悪性固形腫瘍の発生率が予測よりも高くなっている。同様に,治療目的での放射線曝露も,その数年後に白血病,乳癌,肉腫,その他の悪性固形腫瘍の発生につながることがある。診断目的の画像検査で生じるX線曝露は,がんのリスクを高めると考えられている(医療放射線のリスク 医療放射線のリスク 電離放射線( 放射線曝露および汚染も参照)には以下のものがある 高エネルギー電磁波(X線,γ線) 粒子線(α粒子,β粒子,中性子) 電離放射線は,放射性元素,ならびにX線および放射線療法機器などの装置から放出される。 電離放射線を用いる診断検査(例,X線,CT,核医学検査)のほとんどで,患者は一般に安全とみなされている比較的低線量の放射線... さらに読む を参照)。職業曝露(例,鉱山労働者のウラン曝露)には肺癌発生との関連が認められる(特に喫煙者)。職業上の放射線や体内に蓄積した二酸化トリウムへの長期にわたる曝露は,血管肉腫および急性骨髄性白血病の素因となる。

土壌から放出される放射性ガスであるラドンに曝露すると,肺癌のリスクが高まり,特に喫煙者で顕著である。通常であれば,ラドンは大気中に急速に拡散され,無害である。しかしながら,ラドン含有量が高い土壌の上に建物がある場合,ラドンが蓄積して,ときに害が生じるほどに室内濃度が上昇することがある。

薬剤および化学物質

経口避妊薬に含まれるエストロゲンは,乳癌のリスクをわずかに高める場合があるが,このリスクは時間とともに低下していく。ホルモン補充療法としてエストロゲンを単独で使用すると,子宮体がんのリスクが高まる。エストロゲンとプロゲステロンを併用すると,エストロゲン単独の場合と同様に乳癌および卵巣がんのリスクが高まる。これらによって高まるリスクはさほど大きくはない。

ジエチルスチルベストロール(DES)は,この薬剤を服用した女性で乳癌のリスクを高めるとともに,出生前の曝露により,それらの女性の娘において腟がんのリスクを高める。

タンパク質同化ステロイドの長期使用は,肝癌のリスクを高め,前立腺癌の増殖を加速させる場合がある。

化学療法薬単独または化学療法薬と放射線療法を併用するがん治療では,臓器移植のために免疫抑制薬が投与される場合と同様に,二次がんの発生リスクが高まる。免疫抑制薬により最も増加する悪性腫瘍は,骨髄異形成症候群と急性骨髄性白血病である。ヒドロキシカルバミドは,日光曝露による皮膚悪性腫瘍のリスクを高め,加えてヒドロキシカルバミドによる長期治療を受けている骨髄増殖性疾患(例,真性多血症,血小板血症)患者において急性白血病のリスクを高める。

化学発がん物質は,遺伝子変異を誘導して,細胞の無秩序な増殖と腫瘍の形成を引き起こすことがある(一般的な化学発がん物質 一般的な化学発がん物質 一般的な化学発がん物質 の表を参照)。その他に発がん補助物質と呼ばれるものがあり,本来は発がん能がほとんどないか全くないが,他の物質と同時に曝露した場合は,その発がん作用を高める。

食物中の物質

食物から摂取された特定の物質ががんのリスクを高めることがある。例えば,脂肪分が多く含まれる食事は,結腸癌および乳癌のリスク上昇との関連が報告されており,前立腺癌のリスクとも関連している可能性がある。大量のアルコールを摂取する人では,頭頸部がんや食道癌など,様々ながんの発生リスクが高い。薫製食品および漬物,または高温で調理した肉が多い食事では,胃癌の発生リスクが高まる。過体重または肥満の人は,多くのがん種,特に乳癌,子宮内膜癌,結腸癌,腎癌,および食道癌のリスクが高い。

身体的因子

皮膚,肺,消化管,または甲状腺の慢性炎症は,がん発症の素因となる場合がある。例えば,炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)が長期にわたる患者では,大腸癌のリスクが高い。太陽光および日焼け用光線への曝露は皮膚悪性腫瘍および黒色腫のリスクを高める。

免疫疾患

遺伝子変異の遺伝,後天性疾患,加齢,または免疫抑制薬使用の結果として生じる免疫系の機能障害は,早期の腫瘍に対する正常な免疫監視機構に干渉し,結果としてがんの発生率を高める。がん関連免疫疾患として,以下のものが知られている:

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