非ホジキンリンパ腫

執筆者:Peter Martin, MD, Weill Cornell Medicine;
John P. Leonard, MD, Weill Cornell Medicine
レビュー/改訂 2020年 6月
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非ホジキンリンパ腫は,リンパ節,骨髄,脾臓,肝臓,および消化管を含むリンパ細網部位においてリンパ系細胞の単クローン性悪性増殖が生じる不均一な疾患群である。通常は,初発症状として末梢のリンパ節腫脹がみられる。ただし,リンパ節腫脹は認められないが,循環血中に異常なリンパ球が認められる患者もいる。ホジキンリンパ腫と比べ,診断時に播種性である可能性が高い。通常は,リンパ節生検,骨髄生検,またはその両方に基づいて診断を下す。管理の戦略としては,経過観察(watch and wait),化学療法,分子標的薬(例,キナーゼ阻害薬),免疫療法(例,モノクローナル抗体,キメラ抗原受容体発現T細胞)などがあり,ときに放射線療法が追加される。少数の例外を除いて,造血幹細胞移植は通常,アグレッシブリンパ腫患者における不完全寛解または再発の後まで温存される。

リンパ腫の概要も参照のこと。)

非ホジキンリンパ腫はホジキンリンパ腫より多くみられる。米国で6番目に多い悪性腫瘍であり,米国で1年間に新たに発生する全ての悪性腫瘍の4%を占め,全てのがん死亡の3%を占めている。年齢層にかかわらず,毎年約70,000例以上の症例が新たに診断される。非ホジキンリンパ腫は1つの疾患ではなく,いくつかの亜型から成る一群のリンパ球悪性腫瘍であり,アグレッシブリンパ腫とインドレントリンパ腫に大別される。発生率は,年齢とともに増加する(年齢の中央値は67歳)。

非ホジキンリンパ腫の病因

非ホジキンリンパ腫の原因は不明であるが,白血病と同様に,ウイルス性の原因(例,ヒトT細胞白血病-リンパ腫ウイルス,エプスタイン-バーウイルスB型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスHIVヒトヘルペスウイルス8型)が示唆されるエビデンスがかなりある。Helicobacter pyloriなどの細菌もリンパ腫のリスクを高める。

非ホジキンリンパ腫のリスクが高いのは以下の患者である:

  • 原発性免疫不全症

  • 続発性免疫不全症(例,リウマチ性疾患や臓器移植後に使用される薬剤などの免疫抑制薬により引き起こされた場合)

  • 特定の化学物質(例,一部の除草剤および殺虫剤)への曝露

  • 慢性炎症および反応性のリンパ節過形成

非ホジキンリンパ腫は,HIV感染患者の悪性腫瘍としては2番目に多くみられるもので,一部のAIDS患者はリンパ腫で医療機関を受診する。実際,非ホジキンリンパ腫患者は総じてHIVおよび肝炎ウイルスのスクリーニングを受けるべきである。

遺伝因子が関与しているようである。最近のエビデンスでは,特定の一塩基多型がリンパ腫のリスクを高めることが示されている。また,ホジキンまたは非ホジキンリンパ腫の第1度近親者も非ホジキンリンパ腫のリスクが高い。

非ホジキンリンパ腫の病態生理

非ホジキンリンパ腫の大半(80~85%)がBリンパ球から発生し,残りはTリンパ球またはナチュラルキラー細胞から発生する。前駆細胞または成熟細胞のいずれにも発生する可能性がある。リンパ球分化のどの段階で発がん事象が生じたかにより,疾患の臨床像と転帰が決まってくる。

ほとんどのリンパ腫は節性であり,骨髄や末梢血への浸潤は一様ではない。末梢血リンパ球増多および骨髄浸潤を伴う白血病様の臨床像が,一部の型の非ホジキンリンパ腫の小児患者の最大50%,成人患者の約20%にみられる。

免疫グロブリンの産生が進行性に低下することで引き起こされる低ガンマグロブリン血症が,診断時点で15%の患者にみられる。これは重篤な細菌感染のリスクを高め,静注用免疫グロブリン製剤による補充療法を必要とする場合がある。

パール&ピットフォール

  • 非ホジキンリンパ腫と白血病の間には共通する点がかなり多い;いずれも末梢血リンパ球増多および骨髄浸潤を伴う場合がある。

非ホジキンリンパ腫の分類

非ホジキンリンパ腫の病理学的分類は改良が続いており,この不均一な疾患群の起源細胞および生物学的背景に関する新たな洞察が反映されている。2016年のWHO分類は,免疫表現型,遺伝子型,および細胞遺伝学的所見を取り入れているために価値が高いが,この他にも数多くの分類法がある(例,Lyon分類)。

非ホジキンリンパ腫は,一般的にインドレントリンパ腫とアグレッシブリンパ腫にも分類される。

  • インドレント:進行が遅く,治療に反応しやすいが,典型的には標準のアプローチで治癒できない。

  • アグレッシブ:急速に進行するが,化学療法に反応しやすく,しばしば根治可能である。

小児における非ホジキンリンパ腫は,ほぼ全てがアグレッシブリンパ腫である。濾胞性リンパ腫とその他のインドレントリンパ腫はまれである。これらのアグレッシブリンパ腫(バーキットリンパ腫,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫,およびリンパ芽球性リンパ腫)の治療には,消化管病変(特に回腸末端の病変);髄膜への進展(髄液浸潤の予防または治療が必要);およびその他の聖域部位の病変(例,精巣,脳)などの特別な懸念がある。さらに,治癒の可能性があるこれらのリンパ腫では,治療成績に加えて,晩期の二次がんのリスク,心肺系の続発症,妊孕性の温存,発達への影響といった治療の有害作用についても考慮しなければならない。現在の研究は,これらの領域に加えて,小児と成人の両方におけるリンパ腫の分子生物学的事象および予測因子にも焦点を当てている。

非ホジキンリンパ腫の症状と徴候

ほとんどの患者で以下がみられる:

  • 症状を伴わない末梢リンパ節腫脹

腫大したリンパ節は,弾性があり分離していることがあるが,後に癒合して腫瘤になる。侵されたリンパ節は通常痛みを伴わず,ウイルス感染でしばしばみられる圧痛のあるリンパ節とは異なる。一部の患者では,リンパ節病変が限局性であるが,いくつかの領域に影響がみられる患者がほとんどである。最初の身体診察で,頸部,腋窩,鼠径部,および大腿部のリンパ節を慎重に調べるべきである。

一部の患者では,腫大した縦隔および後腹膜リンパ節により圧迫症状が生じる。そのうち以下が最も重要である:

  • 上大静脈の圧迫:息切れおよび顔面浮腫(上大静脈症候群

  • 肝外胆管の圧迫:黄疸

  • 尿管の圧迫:水腎症

  • 腸閉塞:嘔吐および便秘

  • リンパ液の排出障害:乳び胸水,腹水,または下肢のリンパ浮腫

一部の非ホジキンリンパ腫では皮膚が侵される。B細胞性非ホジキンリンパ腫は頭皮(濾胞性非ホジキンリンパ腫)または下肢(大細胞型非ホジキンリンパ腫)を侵すことがあり,典型的には,わずかに隆起した紅斑性結節を生じさせる。皮膚T細胞非ホジキンリンパ腫では,皮膚病変がびまん性の触知不能な紅斑や,不連続な丘疹,局面,または腫瘍を呈することがある。

一部の患者では,全身症状(例,疲労,発熱,盗汗,体重減少)が最初にみられることがあり,アグレッシブリンパ腫で最も多く生じる。このような患者は,リンパ節腫脹に気付かなかったり,体表の触知可能な病変がなかったりすることがあり,その場合は病変の検出にCTまたはPET(陽電子放出断層撮影)が必要になる。

貧血は,初期に約33%の患者でみられるが,最終的には多くの患者にみられる。貧血の原因として可能性のあるものには,消化管リンパ腫に起因する出血(血小板数減少症を伴う場合も伴わない場合もある);脾機能亢進症またはクームス陽性溶血性貧血に起因する溶血;リンパ腫による骨髄浸潤;または化学療法もしくは放射線療法に起因する骨髄抑制がある。

一部の特殊なリンパ腫の症状

成人T細胞白血病/リンパ腫は,ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)が関連する病態で,臨床的には皮膚浸潤,リンパ節腫脹,肝脾腫,および白血病を呈する急激な経過をたどる。この白血病細胞は悪性T細胞で,曲がった形の核がみられることが多い。高カルシウム血症は,直接的な骨浸潤よりも,むしろ体液性因子に関連して発現することが多い。

未分化大細胞型リンパ腫では,急速に進行する皮膚病変,リンパ節腫脹,および内臓病変が生じることがある。この疾患は,ホジキンリンパ腫または転移した未分化癌と誤診されることがある。

非ホジキンリンパ腫の診断

  • リンパ節生検

  • しばしば片側の骨髄穿刺および骨髄生検

  • 病期診断のための胸部,腹部,および骨盤部のFDG-PET/CT

  • 神経症状がある場合,脳および/または脊髄MRI

ホジキンリンパ腫と同様に,非ホジキンリンパ腫も通常,以下の所見がある患者で疑われる:

  • 無痛性のリンパ節腫脹

  • 別の理由で行われた胸部X線またはCTで検出された縦隔リンパ節腫脹

無痛性のリンパ節腫脹は,伝染性単核球症トキソプラズマ症サイトメガロウイルス感染症,最初のHIV感染,または白血病により発生することもある。

肺癌サルコイドーシス,または結核でも同様の胸部X線所見がみられることがある。

まれに,非特異的症状に対して施行した血算で,末梢血リンパ球増多症の所見により発見される患者がいる。このような症例における鑑別診断としては,白血病エプスタイン-バーウイルス感染症,Duncan症候群(X連鎖リンパ増殖症候群)などがある。

診断に必要な検査に続いて,病期を確定し,病因と予後を判定するための検査を行う(1)。

診断検査

腫大したリンパ節の生検を行う。リンパ節が触知可能であれば,最初に画像検査は必要ないが,以降の検査を適切に計画するのに,CTまたは超音波検査が必要になる場合がある。

病変が容易に触知可能であれば,切除生検が望ましい。病変が肺または腹部にある場合は,CTまたは超音波ガイド下でコア針生検(18~20ゲージ針)を行うことで,診断に十分な検体が得られることが多い。穿刺吸引生検(経皮または気管支鏡下)では十分な検体が得られないことが多く,特に最初の診断には不十分となりやすいため,安全と考えられる場合はコア生検が望ましい。

リンパ腫の診断経験が豊富な病理医が生検結果を確認すべきである。この確認が施設内でできない場合は,血液病理学を専門とする基準となる検査施設に検体スライドを送付すべきである。治療計画の策定には,非ホジキンリンパ腫の適切な分類が不可欠である。非ホジキンリンパ腫は治癒が望めるが,正確に診断しなければ,至適治療を選択できない可能性がある。

生検に関する組織学的基準は,正常なリンパ節構造の破壊に加え,被膜および近隣の脂肪組織への特徴的な腫瘍細胞浸潤である。起源細胞を決定する細胞表面マーカー検査は,特異的な亜型を同定し,予後および管理法の決定に役立つという点で大きな価値がある;これらの検査は,細胞が存在すれば末梢血細胞でも可能であるが,典型的には,これらの染色はホルマリン固定パラフィン包埋組織に対して適用される。免疫ペルオキシダーゼによる白血球共通抗原CD45の立証より,転移性のがんが除外され,この方法は「未分化」がんの鑑別診断で多く使用される。白血球共通抗原,大半の表面マーカー検査,および遺伝子再構成(B細胞またはT細胞のクローン性の実証目的)に関する検査は,固定組織で実施可能である。細胞遺伝学的検査およびフローサイトメトリーでは,新鮮組織が必要である。

病期診断検査

リンパ腫と診断したら,病期診断検査を行う。

胸部,腹部,および骨盤部のFDG(フルオロデオキシグルコース)-PET/CTが推奨される。PET/CTでは,正確な病変部位,大きさ(CTより),および腫瘍代謝(FDG-PETより)の情報が得られる。FDG-PET/CT検査が利用できない場合は,胸部,腹部,骨盤部の造影CTを施行する。

非ホジキンリンパ腫患者には,しばしば骨髄穿刺と骨髄生検が施行される。生検は両側の後腸骨稜で行うことができるが,典型的には片側生検で十分である。FDG-PETは骨髄病変に対する感度が高いため,PETを施行した患者では大細胞型非ホジキンリンパ腫の病期診断に骨髄生検は必要ない場合がある。低悪性度(インドレント)非ホジキンリンパ腫またはT細胞性非ホジキンリンパ腫における骨髄評価も,所見により管理方針が変わる場合や血球減少症を評価するために必要とされている場合に限定することができる。

合併症の検査と予後

血液検査には一般的に,血算と白血球分画,腎機能および肝機能検査(血清クレアチニン,ビリルビン,カルシウム,AST,アルブミン,アルカリホスファターゼ,乳酸脱水素酵素を含む),ならびに尿酸,β2ミクログロブリン,およびビタミンDの測定を含める。血清タンパク質電気泳動によるIgG,IgA,IgMの免疫グロブリン値の測定も行う。

その他の検査は所見に応じて行う(例,神経症状に対する脳および/または脊髄MRI)。尿酸値が高い場合,グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症があるとラスブリカーゼ(腫瘍崩壊症候群の予防薬)による治療ができないため,血清G6PD値を確認する。

病因の検査

非ホジキンリンパ腫患者では,最初にHIVならびにB型およびC型肝炎ウイルスのスクリーニングを行う。成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)と診断された患者では,ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)の感染についても確認する。

病期分類

診断後は,病期を判定して治療の指針とする。一般的に用いられているLugano分類(ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫のLugano分類の表を参照)には以下の因子が採用されている:

  • 症状

  • 身体所見

  • 胸部,腹部,および骨盤部CTなどの画像検査ならびにFDG-PETによる機能的画像検査の結果

  • 骨髄生検(選択された症例)

I期の非ホジキンリンパ腫も確かにあるが,典型的には最初に発見された時点で播種が起きている。

表&コラム

診断に関する参考文献

  1. 1.Cheson BD, Fisher RI, Barrington SF, et al: Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: The Lugano classification.J Clin Oncol 32(27):3059-3068, 2014.

非ホジキンリンパ腫の予後

予後は,リンパ腫の病型および病期と個々の患者因子により異なる。一般に,末梢T細胞またはナチュラルキラー(NK)/T細胞リンパ腫の患者は典型的にB細胞性非ホジキンリンパ腫の患者より予後不良である。非ホジキンリンパ腫の各亜型内では,腫瘍細胞の生物学的性質の差が予後に関係する。

最も頻用されている予後スコアリングシステムは,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の国際予後指標(IPI)である。このIPIスコアは,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)にのみ使用される。濾胞性リンパ腫(FLIPI)およびマントル細胞リンパ腫(MIPI)のためのスコアリングシステムもある。同様に非ホジキンリンパ腫の他の亜型でも,予後を推定するための計算ツールがオンラインで利用できる。

IPIでは以下の5つの危険因子を考慮する:

危険因子が多いほど,予後は不良である。最高リスク群の患者(危険因子が4または5つの患者)では,現在の5年生存率が50%である。いずれの危険因子もない患者は,治癒率が非常に高い。オリジナルのIPIスコアには,離散変数として5つの因子が採用されている(例,60歳以上 vs 60歳未満)。最近改定されたDiffuse Large B-cell Lymphoma Prognosis(IPI24)は,診断後24カ月時点で無病状態にある可能性を計算するもので,連続変数として上記の因子が含まれているほか,リンパ球数も組み込まれている。

非ホジキンリンパ腫の治療

  • 経過観察(watch and wait)(インドレントかつ概ね無症候性のリンパ腫が対象)

  • 化学療法

  • 放射線療法(多くは限局期患者であるが,ときに進行期患者でも施行)

  • 免疫療法(例,CD20,CD19,もしくはCD79を標的とするモノクローナル抗体,またはキメラ抗原受容体発現T細胞[CAR-T細胞])

  • 分子標的薬(例,BTK[ブルトン型チロシンキナーゼ]阻害薬,PI3K[phosphoinositide 3-kinase]阻害薬,セレブロン阻害薬)

  • ときに造血幹細胞移植(自家または同種)

細胞型により治療法が大きく異なり,その数があまりにも多いため,ここで詳細な考察はできない。限局期/進行期とアグレッシブ/インドレントで一般化することが可能である。バーキットリンパ腫および皮膚T細胞リンパ腫については,別の箇所で考察されている。インドレントリンパ腫患者でリンパ腫の有意な徴候や症状がみられない場合は,「watch and wait」アプローチ(治療を保留しつつ注意深いモニタリングを行う)を用いてもよい。

限局期(I~II期)

I期のインドレント非ホジキンリンパ腫(ほとんどの患者が診断時点でII期からIV期であるため,I期はまれ)では,外照射療法が唯一の初期治療となっている。局所放射線療法で長期の病勢制御が得られる場合があり,I期患者の約40%では治癒の可能性がある。II期のインドレント非ホジキンリンパ腫は,進行期として治療される場合が大半である。

限局期のアグレッシブ非ホジキンリンパ腫は,化学療法と放射線療法の併用または化学療法単独(B細胞リンパ腫には抗CD20モノクローナル抗体を追加)で管理できる。

I期のリンパ芽球性リンパ腫またはバーキットリンパ腫の患者は,髄膜浸潤予防を伴う強力な多剤併用化学療法で治療する。

進行期(II~IV期)

II期の非ホジキンリンパ腫は,多くの状況で進行期として管理される。II~IV期の非ホジキンリンパ腫では,亜型にかかわらず,大半の患者に化学免疫療法の適応がある。それらの症例では,化学免疫療法のサイクル数を制限するため,または巨大病変の残存部位に対する局所療法を行うために,放射線療法が用いられる場合がある。

インドレントリンパ腫に対する治療は,かなり多い。これらのリンパ腫は治療が成功しやすいものの,確実に治癒を得るのは難しいことから,無症状の患者に対する治療を最初から推奨することはできないが,抗CD20抗体のリツキシマブによる免疫療法の進歩により,こうした患者の一部では免疫療法が単独で施行される場合もある。この戦略により,骨髄抑制を伴う化学療法が必要になる時期を遅らせることができるが,早期の免疫療法のみに全生存期間を延長する効果はないことが示されている。重要臓器にリスクをもたらす症状または巨大病変がある患者は,化学免疫療法で治療する。選択された症例では,放射性標識抗CD20抗体を用いて,腫瘍細胞に放射線を照射することができ,周辺の正常臓器への影響を低減できる可能性がある。

アグレッシブB細胞リンパ腫(例,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の患者に対する標準の薬剤を用いた併用療法は,リツキシマブを追加したシクロホスファミド,ヒドロキシダウノルビシン(ドキソルビシン),ビンクリスチン,およびプレドニゾン(R-CHOP)である。病変の退縮を伴う完全奏効が80%の症例で期待され,全体での治癒率は約60%である。これらの結果はIPIスコアにより有意に異なる。診断後24カ月以上の時点で無病状態にある患者の期待余命は,年齢と性別でマッチングした集団と同程度である。この重要な因子は,この患者集団におけるフォローアップ戦略の指針となる可能性がある。

R-CHOPの使用で治癒率が改善しているため,治療終了時にcomplete metabolic response(PETにより判定)を達成した患者に対して自家移植はアジュバント療法として用いられていない。

末梢T細胞非ホジキンリンパ腫および原発性中枢神経系リンパ腫では,異なるアプローチが採られる。これらのうち初回治療で反応を示した患者では,再発する前に,治癒の可能性を高める目的で自家造血幹細胞移植を施行する場合がある。同様に,初期治療に反応を示したマントル細胞リンパ腫の若年患者の一部では,寛解期間を延長するために自家造血幹細胞移植を施行する場合がある。

リンパ腫の再発

治療終了時に寛解に至らなかったか再発したアグレッシブ非ホジキンリンパ腫の患者は,比較的若く健康状態が良好であれば,二次化学療法レジメンによる治療後に自家造血幹細胞移植を受ける。自家造血幹細胞移植では,末梢血白血球フェレーシスによって患者から幹細胞を採取し,大量化学療法後にそれを輸注して患者の体内に戻す。再発リスクが非常に高く,かつ自家造血幹細胞移植が適さないかすでに不成功に終わった一部の患者では,同胞または非血縁の適合ドナーから採取した幹細胞(同種移植)が効果的となる可能性がある。一般に,高齢では移植合併症の発生率が高いため,患者の年齢が高いほど,同種移植が勧められる可能性は低くなる。

2ライン以上の治療歴があるにもかかわらずリンパ腫が遷延するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者は,キメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞に適格となる場合がある。CAR-T細胞は,腫瘍抗原(例,CD19)を認識するように遺伝子改変されたT細胞(自己由来T細胞が最も多い)である。輸注後,これらは活性化および増幅する。約3分の1の患者は,この治療により持続的な反応が得られる。

上記の治療に適格でない患者と治療が不成功に終わった患者は,様々な治療を受けるが,その目的は症状緩和であることが最も多い。この種の治療法は極めて多様で,新薬が開発されることで絶えず変化している。

インドレントリンパ腫では,リンパ腫関連因子(例,病理組織像,病期,分子生物学的および免疫学的特徴),患者関連因子(例,年齢,併存症)と前治療の種類およびそれに対する反応に応じて,様々な戦略を用いて患者を管理する。一次治療で使用されるものと同じ薬剤の多くが投与される可能性がある。一部の症例では,以前に効果がみられ忍容性が良好であった場合,同じ治療を繰り返すこともある。リンパ腫の高リスクの生物学的特徴(化学療法への反応不良など)を有する患者では,ときに大量化学療法と自家造血幹細胞移植が併用され,治癒の可能性は依然として低いものの,緩和を目的とした二次治療単独よりも寛解導入の点で優れている可能性がある。強度を減弱した前処置による同種移植は,一部のインドレントリンパ腫患者で治癒を期待できる選択肢である。

骨髄破壊的前処置による移植を受けた患者の死亡率は,ほとんどの自家移植手技で1~2%まで,またほとんどの同種移植手技で15~20%まで(年齢に依存),劇的に低下している。

治療の合併症

ほとんどの治療法で生じる急性合併症として,好中球減少の期間中に発生する感染症がある。白血球産生を促す増殖因子製剤の使用は助けになっているが,それでも依然として感染が問題になっている。

化学療法による消化器系の有害作用は,制吐薬と腸管プログラム(bowel program)により大部分が緩和および予防することができる。アントラサイクリン系薬剤を使用している患者では,心筋症および/または不整脈のリスクがある。

治療が成功したら,患者のプライマリケアチームが実施可能なケア計画を策定するために,がんサバイバーシップクリニックに紹介すべきである。この計画は,患者の併存症とそれまでに受けた治療に特異的なリスクに応じて調整される。

薬物および放射線には晩期合併症がある。治療終了後最初の10年間は,特定の化学療法薬による骨髄損傷のために,骨髄異形成または急性白血病のリスクがある。10年後からは,二次がんのリスクが高まり,特に胸部に放射線照射を受けた患者でそのリスクが高い。

非ホジキンリンパ腫の要点

  • 非ホジキンリンパ腫は,リンパ球が関与する一群の悪性腫瘍であり,増殖速度や治療に対する反応に有意なばらつきがある。

  • 通常は診断時点ですでに播種が起きている。

  • 診断および管理には,分子遺伝学的検査と遺伝学的検査が不可欠である。

  • 限局期のインドレントリンパ腫は放射線療法で治療することがある。

  • 進行例は,非ホジキンリンパ腫の亜型および病期に応じて免疫療法,化学療法,造血幹細胞移植,またはこれらの併用で治療する。

非ホジキンリンパ腫についてのより詳細な情報

医師向けの情報と患者向けの支援および情報を提供する英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Leukemia & Lymphoma Society provides educational resources for health care practitioners

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