(マグネシウム濃度の異常の概要 マグネシウム濃度の異常の概要 マグネシウムは,体内で4番目に豊富な陽イオンである。70kgの成人には約2000mEq(1000mmol)のマグネシウムが存在する。約50%が骨に封入されており,他の区画のマグネシウムとは容易に交換されない。細胞外液には,体内総マグネシウムのわずか1%程度が含まれる。残りは細胞内区画に存在する。血清マグネシウム濃度の正常範囲は1.8~2.6mg/dL(0.74~1.07mmol/L)である。... さらに読む も参照のこと。)
症候性の高マグネシウム血症はかなり珍しい。腎不全患者が制酸薬または下剤などのマグネシウム含有薬物を服用して起こることが最も多い。高マグネシウム血症は, 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。診断は典型的な顔貌,嗄声および言語緩徐,乾燥皮膚などの臨床的特徴,ならびに甲状腺ホルモン低値による。サイロキシン投与などにより管理を行う。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能低下症は年齢を問わず生じるが,特に高齢者でよくみられ,その場合症状が軽微で認識しにくい可能性がある。甲状腺機能低下症は以下に分類される: 原発性:甲状腺の疾患に起因する... さらに読む または アジソン病 アジソン病 アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。 ( 副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む の患者にも起こりうる。
腎機能が正常な患者においては,無症状の高マグネシウム血症でさえもまれである。
症状および徴候には,反射低下,低血圧,呼吸抑制,心停止がある。
高マグネシウム血症の診断
血清マグネシウム濃度が2.6mg/dL(1.05mmol/L)を上回る
血清マグネシウム濃度が6~12mg/dL(2.5~5mmol/L)のときは,心電図にPR間隔の延長,QRS幅の増大,およびT波の増高がみられる。
血清マグネシウム濃度が12mg/dL(5.0mmol/L)に近づくと深部腱反射が消失し,高マグネシウム血症が増悪すると低血圧,呼吸抑制,ナルコーシスが生じる。血中マグネシウム濃度が15mg/dL(6.0~7.5mmol/L)を上回ると心停止が生じることがある。
高マグネシウム血症の治療
グルコン酸カルシウム
利尿または透析
重度のマグネシウム中毒の治療では,循環および呼吸の補助ならびに10%グルコン酸カルシウム10~20mLの静注を行う。グルコン酸カルシウムによって,呼吸抑制などマグネシウム誘発性の変化の多くが回復しうる。
腎機能が十分であれば,フロセミドの静注によってマグネシウム排泄を増加できる;体液量は維持すべきである。
血中マグネシウムはタンパク質と結合していないものが比較的多く(約70%),したがって血液透析により除去が可能であるため,重度の高マグネシウム血症では 血液透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液とは反対方向にポンプで送られる。(その他の腎代替療法[RRT]については,... さらに読む が有用となることがある。血行動態が障害され血液透析が施行不能であれば 腹膜透析 腹膜透析 腹膜透析では,腹膜を自然の透過性の膜として用い,これを介して水分と溶質を平衡化することができる。 血液透析と比較して,腹膜透析には以下の特徴がある: 生理学的にストレスが少ない バスキュラーアクセスが不要である 自宅で実施できる 患者にとっての柔軟性がはるかに高い さらに読む という選択肢がある。