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アルコール性ケトアシドーシス

執筆者:

Erika F. Brutsaert

, MD, New York Medical College

レビュー/改訂 2020年 9月
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アルコール性ケトアシドーシスはアルコール摂取および飢餓の代謝性合併症で,高ケトン体血症およびアニオンギャップ増大を伴う代謝性アシドーシスを特徴とし,有意な高血糖は伴わない。アルコール性ケトアシドーシスは悪心,嘔吐,および腹痛を引き起こす。診断は病歴,および高血糖を伴わないケトアシドーシスの所見による。治療は生理食塩水およびブドウ糖液の静注である。

アルコール性ケトアシドーシスの病態生理

アルコール性ケトアシドーシスの症状と徴候

アルコール性ケトアシドーシスの診断

  • 臨床的評価

  • アニオンギャップの算出

  • 他の疾患の除外

診断には強く疑うことが必要である; アルコール使用障害 アルコール使用障害とリハビリテーション アルコール使用障害では,飲酒のパターンが生じ,典型的には渇望と耐性(tolerance)の症状および/または心理社会的な悪影響のある離脱症状が伴う。アルコール依存症およびアルコール乱用は一般的であるが,あまり厳密に定義されていない用語であり,アルコール関連の問題を有する人に適用される。 アルコール使用障害は非常に一般的である。米国では,12カ月間で13.9%の成人にみられると推定される。有病率は若年成人で最も高く,加齢とともに減少する。... さらに読む の患者では, 急性膵炎 急性膵炎 急性膵炎は,膵臓(および,ときに隣接組織)の急性炎症である。最も頻度が高い誘因は胆石および飲酒である。急性膵炎の重症度は,局所合併症および一過性または持続性の臓器不全の有無に基づいて,軽症,中等症,重症に区分される。診断は臨床像,血清アミラーゼおよびリパーゼ値,ならびに画像検査に基づく。治療は支持療法であり,輸液,鎮痛薬,栄養サポートを行う。急性膵炎の全死亡率は低いが,重症例における合併症発生率および死亡率はかなり高い。... さらに読む 急性膵炎 ,メタノール中毒,エチレングリコール中毒(特定の毒物の症状と治療法 の表を参照),または 糖尿病性ケトアシドーシス 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は糖尿病の急性代謝性合併症で,高血糖,高ケトン血症,および代謝性アシドーシスを特徴とする。高血糖は浸透圧利尿を引き起こし,体液と電解質の有意な減少をもたらす。DKAは主に1型糖尿病で生じる。悪心,嘔吐,および腹痛を引き起こし,脳浮腫,昏睡,および死亡に進展する恐れがある。DKAの診断は,高血糖の存在下で高ケトン血症およびアニオンギャップ増大を伴う代謝性アシドーシスを検出することによる。治療は循環血液量の... さらに読む (DKA)によっても同様の症状が生じることがある。患者がアルコール性ケトアシドーシスを呈すると,しばしば血中アルコール濃度はもはや上昇しない。アルコール性ケトアシドーシスが疑われる患者では,血清電解質(マグネシウムを含む),血中尿素窒素(BUN)およびクレアチニン,グルコース,ケトン体,アミラーゼ,リパーゼ,ならびに血漿浸透圧を測定すべきである。尿中のケトン体を検査すべきである。重篤な容態の患者およびケトン体が陽性の患者では,動脈血ガスおよび血清乳酸濃度の測定を行うべきである。

典型的な臨床検査所見としては以下のものがある:

嘔吐による 代謝性アルカローシス 代謝性アルカローシス 代謝性アルカローシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の増加で,二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の上昇を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは高値またはほぼ正常範囲内である。一般的な原因としては,遷延性の嘔吐,循環血液量減少,利尿薬の使用,低カリウム血症などがある。アルカローシスが持続するためには,腎臓からのHCO3の排泄障害が存在しなければならない。重症例の症状および徴候には,頭痛,嗜... さらに読む が同時に存在し,それによりpHが比較的正常化することでアシドーシスの検出が難しくなることがある;主な手がかりはアニオンギャップの上昇である。アニオンギャップ上昇の原因としてアルコールの乱用が病歴から除外されなければ,メタノールおよびエチレングリコールの血清中濃度を測定すべきである。尿中のシュウ酸カルシウム結晶からもエチレングリコール中毒が示唆される。肝臓での血流低下および酸化還元反応の平衡異常が原因で,乳酸濃度はしばしば上昇する。

アルコール性ケトアシドーシスの治療

  • チアミンおよび他のビタミンとマグネシウムの静注

  • 5%ブドウ糖含有生理食塩水の静注

ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症 ウェルニッケ脳症は, チアミン欠乏による錯乱,眼振,部分的眼筋麻痺,および運動失調の急性発症を特徴とする。診断は主として臨床的に行う。本障害は治療により寛解することもあれば,持続することもあり,また悪化して コルサコフ精神病を呈することもある。治療はチアミン療法と支持療法から成る。 ウェルニッケ脳症は,チアミンの不十分な摂取や吸収に加え,炭水化物の継続的な摂取により生じる。一般的な基礎疾患の1つが重度の... さらに読む または コルサコフ精神病 コルサコフ精神病 コルサコフ精神病は,持続的なウェルニッケ脳症の晩期合併症であり,記憶障害,錯乱,および行動変化を引き起こす。 コルサコフ精神病は, ウェルニッケ脳症の未治療患者の80%に発生し,重度の アルコール依存症が基礎にあるのが一般的である。コルサコフ精神病が一部のウェルニッケ脳症患者にのみ発現する理由は不明である。最初に典型的なウェルニッケ脳症の発作が生じるか否かにかかわらず,アルコール離脱に関連する... さらに読む の発生を予防するため,まずチアミン100mgを静注する。次に生理食塩水に5%ブドウ糖を混ぜたものを点滴する。初期の輸液には水溶性ビタミンおよびマグネシウムを追加すべきであり,必要に応じてカリウムを補充する。

ケトアシドーシスおよび消化管症状は通常迅速に反応する。インスリンの使用は,非典型的な糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合,または300mg/dL(16.7mmol/L)を上回る高血糖の場合のみ妥当である。

アルコール性ケトアシドーシスの要点

  • アルコール性ケトアシドーシスはアルコールおよび飢餓がグルコース代謝に与える相加作用に起因し,高ケトン体血症およびアニオンギャップ増大を伴う代謝性アシドーシスを特徴とし,有意な高血糖は伴わない。

  • 血清中および尿中のケトンおよび電解質を測定し,血清アニオンギャップを計算する。

  • まず,ウェルニッケ脳症またはコルサコフ精神病を予防するためにチアミンの静注で治療し,その後生理食塩水にブドウ糖を混ぜたものの静注で継続する。

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