このまれな疾患は,転写活性化因子FOXP3の変異により,制御性T細胞の機能不全およびそれに続く 自己免疫疾患 自己免疫疾患 自己免疫疾患では,免疫系が内因性抗原(自己抗原)に対する抗体を産生する。以下の過敏反応が関与することがある: II型:抗体で覆われた細胞が抗体で覆われた異物粒子と同様に 補体系を活性化して,組織損傷を引き起こす。 III型:損傷の機序に抗原抗体複合体の沈着が関与する。 IV型:損傷がT細胞介在性である。 ( アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む が引き起こされることに起因する。
IPEX症候群は,二次リンパ器官の重度腫大,1型 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む , 湿疹 アトピー性皮膚炎(湿疹) アトピー性皮膚炎は,遺伝的感受性,免疫および表皮バリアの機能障害,ならびに環境因子が複雑に関与して繰り返し発生する慢性炎症性皮膚疾患である。そう痒が主たる症状であり,皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化,紅皮症まで様々である。診断は病歴および診察による。治療法としては,適切なスキンケアについてのカウンセリング,誘因の回避,コルチコステロイドや免疫抑制薬の外用などがある。そう痒および重複感染のコントロールも重要である。重症例では免疫抑制薬... さらに読む , 食物アレルギー 食物アレルギー 食物アレルギーは,食物成分,通常はタンパク質に対する過剰な免疫応答である。臨床像には大きな幅があり,アトピー性皮膚炎,消化管または呼吸器症状,アナフィラキシーなどがみられる。診断は病歴に加え,ときにアレルゲン特異的血清IgE検査,皮膚テスト,および/またはアレルゲン除去食による。治療は反応を誘発する食品の除去およびときに経口クロモグリク酸(cromolyn)による。 ( アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む ,および感染症として現れる。続発性の腸疾患は持続性下痢につながる。
IPEX症候群の診断は,臨床的特徴から示唆され,遺伝子解析によって確定する。
IPEX症候群の治療
造血幹細胞移植
無治療では,IPEX症候群は通常生後1年以内に致死的となる。 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍( 白血病, リンパ腫, 骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症, 再生不良性貧血, 骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。造血幹細胞移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。( 移植の概要も参照のこと。) 造血幹細胞移植は,以下の機序によって寛解に導く:... さらに読む が効果的であることが示されている。造血幹細胞移植で治療したIPEX症候群の患者は長期間のフォローアップを継続する(1 治療に関する参考文献 IPEX(免疫調節異常[immune dysregulation],多腺性内分泌障害[polyendocrinopathy],腸疾患[enteropathy],X連鎖[X-linked])はX連鎖劣性遺伝性症候群であり,急速に進行する自己免疫が関与する。 このまれな疾患は,転写活性化因子FOXP3の変異により,制御性T細胞の機能不全およびそれに続く... さらに読む )。
治療に関する参考文献
Nademi Z, Slatter M, Gambineri E, et al: Single centre experience of haematopoietic SCT for patients with immunodysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked syndrome.Bone Marrow Transplant 49(2):310–312, 2014.