過食性障害

執筆者:Evelyn Attia, MD, Columbia University Medical Center;
B. Timothy Walsh, MD, College of Physicians and Surgeons, Columbia University
レビュー/改訂 2020年 6月
意見 同じトピックページ はこちら

過食性障害は,自制心の喪失を感じながら大量の食物を摂取する反復するエピソードを特徴とする。その後には,自己誘発性嘔吐または下剤乱用などの不適切な代償行動はみられない。診断は臨床的に行う。治療は認知行動療法か,ときに対人関係療法またはリスデキサンフェタミンによる。

摂食障害群に関する序論も参照のこと。)

一般集団では女性の約3.5%,男性の2%が生涯のうちに過食性障害に罹患する。神経性過食症とは異なり,過食性障害は過体重者と肥満者において最も頻度が高く,過剰なカロリー摂取につながる;本障害は何らかの減量プログラムに参加している患者の30%以上に存在する可能性がある。神経性やせ症患者または神経性過食症患者と比べて,過食性障害患者は年齢が高く,男性が多い。

過食性障害の症状と徴候

過食エピソードの間,患者は大半の人が同様の状況で同程度の時間内に食べることが予想される量より明らかに多くの食物を摂取する。過食中および過食後には,患者は自制心を失ったように感じる。過食の後に排出(嘔吐の誘発,下剤,利尿薬または浣腸の乱用による),過度の運動,絶食が続くことはない。過食は断続的に起き,過度の摂食(「間食」)が絶えずみられるわけではない。

過食性障害患者は,本疾患により苦痛を感じている。過食性障害の肥満患者では,過食をしない同程度の体重の人と比べて,軽度から中等度の抑うつおよび体型,体重,またはその両方に対するとらわれがより高頻度に認められる。

過食性障害の診断

  • 臨床基準

過食性障害の臨床診断基準では,以下が要求される:

  • 3カ月にわたり,少なくとも平均週1回の頻度で過食がみられる

  • 食事をコントロールできないという感覚を患者が有している

さらに,以下の症状が3つ以上認められなければならない:

  • 通常よりもはるかに速く食べる

  • 不快なほど満腹になるまで食べる

  • 身体的に空腹を感じていないときに,大量の食物を摂取する

  • 恥ずかしさから1人で食べる

  • 過食した後に,自己嫌悪,抑うつ感,または罪悪感を抱く

過食性障害は,代償行動(例,自己誘発性嘔吐,下剤または利尿薬の使用,過度の運動,絶食)がみられないことで神経性過食症(やはり過食が生じる)と鑑別される。

過食性障害の治療

  • 認知行動療法

  • ときに対人関係療法

  • 薬物療法(通常は選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]またはリスデキサンフェタミン)の検討

認知行動療法は,最もよく研究されており,過食性障害に対して最も証左がある治療法である。しかし,対人関係療法も同等に効果的とみられ,どちらも60%以上の寛解率をもたらし,通常は得られた改善が長期にわたり良好に維持される。これらの治療は肥満患者では有意な減量につながらない。

従来の減量を目的とする行動療法は,過食を軽減する有効性は短期的であったが,患者は再発する傾向がある。抗うつ薬(例,SSRI)も過食の解消に短期的な有効性を示すが,長期的な有効性については不明である。リスデキサンフェタミンは中等度から重度の過食性障害の治療として承認されている。同薬剤は過食の日数を減らすことができ,若干の体重減少をもたらすとみられるが,その長期的な有効性については不明である。食欲抑制薬(例,トピラマート)または減量薬(例,オルリスタット)が役立つ場合がある。

過食性障害の要点

  • 過食性障害患者は過体重や肥満であることが多い。

  • 過食性障害の診断は臨床基準(3カ月にわたり平均週1回以上の頻度で過食をし,食事に関する自制心の喪失感を伴うなど)に基づいて行う。

  • 認知行動療法または対人関係療法のほか,ときに薬剤(例,SSRI,リスデキサンフェタミン)により治療する。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS