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てんかんの薬物治療

執筆者:

Bola Adamolekun

, MD, University of Tennessee Health Science Center

レビュー/改訂 2020年 7月
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単剤で全ての発作型をコントロールできる薬剤はなく,必要になる薬剤は患者毎に異なる。複数の薬剤が必要になる患者もいる。(American Academy of Neurology and the American Epilepsy Societyの難治性てんかんの治療[treatment of refractory epilepsy]に関するガイドラインも参照のこと。)

まれに,ある発作型に効果的な抗てんかん薬が別の型の発作を悪化させる場合もある。

長期治療の原則

抗てんかん薬(抗痙攣薬とも呼ばれる)の使用については,いくつかの一般原則がある:

  • 約60%の患者では,単剤(通常は最初または2番目に試したもの)でてんかん発作をコントロールできる。

  • 発症時から発作のコントロールが難しい場合(30~40%の患者)は,最終的に2剤以上の薬剤が必要になる。

  • 発作が難治性の場合(2剤以上の薬剤を十分に試しても効果が得られなかった場合)は,手術適応の有無を判断するため,患者をてんかん専門施設に紹介すべきである。

一部の薬剤(例,フェニトイン,バルプロ酸)は,静注または経口で投与され,目標治療域まで非常に速やかに到達する。その他(例,ラモトリギン,トピラマート)は比較的低用量で開始して,数週間かけて患者の除脂肪体重に基づく標準的な治療量まで漸増する必要がある。用量は各薬剤に対する患者の耐容性に合わせて個別化すべきである。血中薬物濃度が低くても薬剤による中毒症状が生じる場合もあれば,無症状のまま高濃度に耐えられる場合もある。発作が持続する場合は,1日量を少量ずつ増量する。

適切な用量は,いずれの薬剤でも,全ての発作を止め,かつ血中薬物濃度には関係なく有害作用が最小限となる最小の用量である。血中薬物濃度は指針にすぎない。使用する薬剤で反応が得られることが判明したら,血中濃度を測定するよりも臨床経過を追跡することの方が有用である。

パール&ピットフォール

  • 用量は血中薬物濃度に関係なく,臨床基準を用いて決定する(発作を停止でき,有害作用が最小限となる最小の用量とする)。

発作がコントロールされる前に毒性が生じた場合は,毒性発現前の用量まで減量する。そして,別の薬剤を低用量で追加し,発作がコントロールされるまで徐々に増量する。2つの薬剤が相互作用を起こし,一方の薬剤の代謝分解の速度が変化する可能性があるため,慎重に患者のモニタリングを行うべきである。最初に投与した薬剤は緩徐に減量していき,最終的には完全に中止する。

複数の薬剤の使用については,有害作用の発生率,アドヒアランス不良,および薬物相互作用が有意に増加するため,可能であれば避けるべきである。2剤目の追加は約10%の患者で有用となるが,有害作用の発生率は2倍以上になる。抗てんかん薬の血中濃度は他の多くの薬剤によって変化し,その逆も真である。新たな薬剤を処方する前には,考えられる全ての薬物間相互作用を認識しておくべきである。

発作が一旦コントロールされたら,発作のない状態が少なくとも2年間持続するまで,その薬剤を中断せず継続すべきである。それ以降は,その薬剤の中止を考慮してもよい。これらの薬剤の大半は2週間毎に10%の漸減が可能である。

以下のいずれかに該当する患者では,再発の可能性がより高くなる:

  • 小児期からの痙攣性疾患

  • 発作がない状態を達成するために複数の薬剤が必要

  • 抗てんかん薬服用中の発作の出現

  • 焦点起始発作またはミオクロニー発作

  • 基礎疾患としてstatic encephalopathy

  • 過去1年間の脳波検査での異常

  • 器質的病変(画像検査で認められるもの)

再発する患者のうち,1年以内に再発する患者の割合は約60%で,2年以内では80%である。抗てんかん薬を服用しないと再発がみられる患者には,無期限に治療を継続すべきである。

長期治療での抗てんかん薬の選択

望ましい薬剤は発作型によって異なる(発作型に応じた薬剤の選択 発作型に応じた薬剤の選択 発作型に応じた薬剤の選択 の表を参照)。具体的な薬剤に関する詳細な情報については, 具体的な抗てんかん薬 長期治療での抗てんかん薬の選択 を参照のこと。

従来から,薬剤は使用可能となった時期によって古い群と新しい群に分けられてきた。しかしながら,いわゆる新規抗てんかん薬の一部は,今や使用可能となってからかなりの年月が経過している。

スペクトラムの広い抗てんかん薬(焦点起始発作と様々な型の全般起始発作に効果的)としては以下のものがある:

  • ラモトリギン

  • レベチラセタム

  • トピラマート

  • バルプロ酸

  • ゾニサミド

焦点起始発作および全般起始強直間代発作に対しては,新規抗てんかん薬(例,クロバザム,クロナゼパム,フェルバメート(felbamate),ラコサミド,ラモトリギン,レベチラセタム,オクスカルバゼピン,プレガバリン,チアガビン(tiagabine),トピラマート,ゾニサミド)は確立された薬剤ほど効果的ではない。しかしながら,新規抗てんかん薬は有害作用が少なく,忍容性が高い傾向にある。

てんかん性スパズム(かつての点頭てんかん),脱力発作,およびミオクロニー発作は治療が困難である。バルプロ酸またはビガバトリンが望ましく,クロナゼパムが続く。てんかん性スパズムには,8~10週間のコルチコステロイド投与がしばしば効果的である。至適なレジメンについては議論がある。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)20~60単位,筋注,1日1回を採用してもよい。ケトン食療法(ケトーシスを誘導する非常に高脂肪の食事)が有用となりうるが,持続が困難である。

若年性ミオクロニーてんかんには,通常は生涯にわたる治療が推奨される。カルバマゼピン,オクスカルバゼピン,およびガバペンチンは発作を増悪させる可能性がある。ラモトリギンは,若年性ミオクロニーてんかんに対する第2選択の単剤療法または補助療法として使用できるが,若年性ミオクロニーてんかん患者の一部でミオクロニー発作を悪化させる可能性がある。

熱性痙攣には,患児がその後に発熱性疾患のない状況で発作を起こさない限り,薬剤の使用は推奨されない。かつては,複雑型熱性痙攣の小児に対して非熱性痙攣を予防するために多くの医師がフェノバルビタールやその他の抗てんかん薬を投与していたが,この治療に効果はないとみられており,またフェノバルビタールの長期使用は学習能力を低下させる。

アルコール離脱に伴う痙攣発作には,薬剤の使用は推奨されない。むしろ,離脱症候群の治療が痙攣発作の予防につながる傾向がある。治療には通常,ベンゾジアゼピン系薬剤を含める。

有害作用

抗てんかん薬の様々な有害作用が各患者における抗てんかん薬の選択に影響を及ぼすことがある。例えば,体重増加を引き起こす抗てんかん薬(例,バルプロ酸)は,過体重の患者には最善の選択肢とならない可能性があり,トピラマートやゾニサミドは腎結石の既往がある患者には適さない可能性がある。

抗てんかん薬の一部の有害作用は,用量を漸増することで最小限に抑えられる可能性がある。

全体として新しい抗てんかん薬ほど,忍容性が高い,鎮静作用が弱い,薬物相互作用が少ないなどの利点がある。

抗てんかん薬はいずれも,アレルギー反応として猩紅熱様または麻疹様発疹を引き起こす可能性がある。

特定の抗てんかん薬により悪化することのある発作型もある。例えば,プレガバリンとラモトリギンはミオクロニー発作を悪化させる可能性があり,カルバマゼピンは欠神発作,ミオクロニー発作,および脱力発作を悪化させる可能性がある。

その他の有害作用は薬剤毎に異なる(具体的な抗てんかん薬 長期治療での抗てんかん薬の選択 を参照)。

妊娠中の抗てんかん薬の使用

抗てんかん薬は催奇形性のリスク上昇と関連する。

fetal antiepileptic drug syndrome(口唇裂,口蓋裂,心奇形,小頭症,発育遅滞,発達遅滞,顔面の異常,指の形成不全)は,妊娠中に抗てんかん薬を服用した女性の子供の4%に生じる。

ただし, 妊娠中に全般起始発作 妊娠中の痙攣性疾患 痙攣性疾患により妊孕性が損なわれることがある。しかし,特定の抗てんかん薬は経口避妊薬の効果を弱め,意図しない妊娠をもたらすことがある。 抗てんかん薬の用量は治療濃度を維持するため妊娠中に増量しなければならないことがある。患者が十分に睡眠をとり,抗てんかん薬の血中濃度が治療域内で維持されていれば,通常は妊娠中の痙攣発作の頻度は増えず,妊娠転帰は良好であるが,以下のリスクがわずかに上昇する。... さらに読む がコントロールされないと,胎児の傷害や死につながる可能性があるため,一般に薬物治療の継続が望ましい。女性患者には抗てんかん薬が胎児に与えるリスクを伝えておくべきであり,またリスクは大局的に捉えるべきである;アルコールはどの抗てんかん薬よりも発育中の胎児に対する毒性が強い。妊娠前に葉酸サプリメントを服用することが 神経管閉鎖不全 神経系の先天異常の概要 先天性の脳奇形は通常,重度の神経脱落症状を引き起こし,一部は死に至ることもある。 最も重篤な神経系奇形の一部(例, 無脳症, 脳瘤, 二分脊椎)は,胎生2カ月目までに発生し,神経管形成の異常(癒合不全)を反映する。一方, 滑脳症などその他の神経系奇形は,ニューロンの遊走障害( Professional... さらに読む 神経系の先天異常の概要 のリスクを減少させるのに役立つため,抗てんかん薬を服用する妊娠可能年齢の女性全員にこれを推奨すべきである。

多くの抗てんかん薬は葉酸およびビタミンB12の血清中濃度を低下させるが,この作用はビタミンサプリメントの経口摂取で予防できる。

催奇形性のリスクは,単剤療法では比較的低く,薬剤毎に異なるが,妊娠中の使用が完全に安全な抗てんかん薬はない(発作型に応じた薬剤の選択 妊娠中の痙攣性疾患 痙攣性疾患により妊孕性が損なわれることがある。しかし,特定の抗てんかん薬は経口避妊薬の効果を弱め,意図しない妊娠をもたらすことがある。 抗てんかん薬の用量は治療濃度を維持するため妊娠中に増量しなければならないことがある。患者が十分に睡眠をとり,抗てんかん薬の血中濃度が治療域内で維持されていれば,通常は妊娠中の痙攣発作の頻度は増えず,妊娠転帰は良好であるが,以下のリスクがわずかに上昇する。... さらに読む の表を参照)。カルバマゼピン,フェニトイン,およびバルプロ酸は比較的リスクが高く,これらの薬剤がヒトで先天奇形を引き起こしたという報告がある(妊娠中に有害作用を示す主な薬物 妊娠中に有害作用を示す主な薬物 妊娠中に有害作用を示す主な薬物 の表を参照)。バルプロ酸の使用時には,一般的に使用される他の抗てんかん薬と比べて神経管閉鎖不全のリスクがいくらか高くなる。比較的新しい薬剤の一部(例,ラモトリギン)は,リスクが低いようである。

具体的な抗てんかん薬

特に指定がない場合,成人用量は体重70kgに基づく値である。

アセタゾラミド

アセタゾラミドは難治性の欠神発作に適応がある。

用法・用量

  • 成人:4~15mg/kg,経口,1日2回(最大1g/日)

  • 小児:4~15mg/kg,経口,1日2回(最大1g/日)

治療域および中毒域

  • 治療域:8~14μg/mL(34~59μmol/L)

  • 中毒域:> 25μg/mL(> 106μmol/L)

アセタゾラミドの有害作用としては,腎結石,脱水,代謝性アシドーシスなどがある。

カンナビジオール(cannabidiol)

現在では,高度に精製されたカンナビジオール(cannabidiol)が,レノックス-ガストー症候群およびドラベ症候群における痙攣発作の補助療法として2歳以上の患者に使用可能になっている。作用機序は不明である。

用法・用量

  • 2.5mg/kg,1日2回から開始し,1週間後に維持量の5mg/kg,1日2回まで増量する(最大推奨用量:10mg/kg,1日2回)

カンナビジオール(cannabidiol)の有害作用には,傾眠,アミノトランスフェラーゼ値上昇を伴う肝細胞傷害,食欲不振,疲労,不眠症,下痢などがある。

カルバマゼピン

カルバマゼピンは焦点起始発作,全般起始強直間代発作,および混合型の発作に適応があるが,欠神発作,ミオクロニー発作,脱力発作には適応がない。

用法・用量

  • 成人:200~600mg,経口,1日2回(開始量は通常の錠剤および徐放錠と同じ)

  • 6歳未満の小児:5~10mg/kg,経口,1日2回(錠剤)または2.5~5mg/kg,経口,1日4回(懸濁剤)

  • 6歳以上12歳未満の小児:100mg,経口,1日2回(錠剤)または2.5mL(50mg),経口,1日4回(懸濁剤)

  • 12歳以上の小児:200mg,経口,1日2回(錠剤)または5mL(100mg),経口,1日4回(懸濁剤)

治療域および中毒域

  • 治療域:4~12μg/mL(17~51μmol/L)

  • 中毒域:> 14μg/mL(> 59μmol/L)

カルバマゼピンの有害作用としては,複視,めまい,眼振,消化管障害,構音障害,嗜眠,白血球数低値(3000~4000/μL),重度の発疹(5%)などがある。特異体質性の有害作用として,顆粒球減少,血小板減少,肝毒性,再生不良性貧血などがある。

HLA(ヒト白血球抗原)-B*1502アレルを有する人々(特にアジア人)では,重度の発疹(スティーブンス-ジョンソン症候群または中毒性表皮壊死融解症)が生じるリスクが通常の5%よりも高くなる。そのため,カルバマゼピンを処方する際には,少なくともアジア人では,事前にHLAの検査を行うべきである。

治療開始後1年間は血算値をルーチンにモニタリングすべきである。白血球数の減少と用量依存性の好中球減少(好中球数は1000/μL未満)がよくみられる。ときに,直ちに代用できる薬剤がない場合,用量を減量することで,これらの作用を管理できることがある。しかしながら,急速に白血球数が減少する場合,カルバマゼピンは中止すべきである。

クロバザム

クロバザムは欠神発作に適応があるほか,レノックス-ガストー症候群における強直または脱力発作と,焦点起始両側強直間代発作を伴うまたは伴わない難治性の焦点起始発作に対しては,補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 成人:5~20mg,経口,1日2回

  • 小児:5~10mg,経口,1日2回(30kgを超える小児では20mg,経口,1日2回まで)

治療域は確立されていない。

クロバザムの有害作用としては,傾眠,鎮静,便秘,運動失調,自殺念慮,薬剤依存,易刺激性,嚥下困難などがある。

クロナゼパム

クロナゼパムは,レノックス-ガストー症候群の非定型欠神発作,脱力およびミオクロニー発作,てんかん性スパズムに適応があるほか,エトスクシミドに抵抗性を示す欠神てんかんにも使用できる場合がある。

用法・用量

  • 成人:0.5mg,経口,1日3回で開始し,維持量として5~7mg,経口,1日3回まで増量する(最大量:20mg/日)

  • 小児:0.01mg/kg,経口,1日2回~1日3回(最大量:0.05mg/kg/日)で開始し,発作がコントロールされるか有害作用が生じるまで3日毎に0.25~0.5mgずつ増量する(通常の維持量:0.03~0.06mg/kg,経口,1日3回)

治療域および中毒域

  • 治療域:25~30ng/mL(79~95.01nmol/L)

  • 中毒域:> 80ng/mL(> 253.36nmol/L)

クロナゼパムの有害作用としては,眠気,運動失調,行動異常,有益な効果に対する部分的または完全な耐性(通常は1~6カ月以内)などがあるが,重篤な反応はまれである。

ジバルプロエクス(divalproex)

ジバルプロエクス(divalproex)はバルプロ酸ナトリウムとバルプロ酸の混合製剤であり,適応はバルプロ酸と同じである;すなわち,欠神発作(定型および非定型),焦点起始発作,強直間代発作,ミオクロニー発作,若年性ミオクロニーてんかん,てんかん性スパズム,新生児または熱性痙攣に適応がある。レノックス-ガストー症候群における強直または脱力発作にも適応がある。

用法・用量

  • 小児および成人:10~15mg/kg/日,経口,1日3回(例,5mg,1日3回)で開始し,緩徐に増量する―例えば,特に他の薬剤も投与している場合,1週毎に5~10mg/kg/日(1.67~3.33mg/kg,経口,1日3回)ずつ増量する(最大量:60mg/kg/日)

小児には腸溶錠(徐放錠)で1日1回投与としてもよい。1日投与量の合計は,通常の錠剤より8~20%高くする。ジバルプロエクス(divalproex)の腸溶錠は,有害作用がより少なく,アドヒアランスを向上させる可能性がある。

治療域および中毒域

  • 治療域:午前の投与前に50~100μg/mL(347~693μmol/L)

  • 中毒域:> 150μg/mL(> 1041μmol/L)

ジバルプロエクス(divalproex)の有害作用としては,悪心および嘔吐,胃腸不耐性,体重増加,可逆的脱毛(5%で),一過性の眠気,一過性の好中球減少症,振戦などがある。特異体質性の高アンモニア性脳症が生じることがある。まれに,特に抗てんかん薬の多剤併用療法を受けた神経学的に障害のある若年の小児において,致死的な肝壊死が発生する。ジバルプロエクス(divalproex)の使用時には,一般的に使用される他の抗てんかん薬と比べて神経管閉鎖不全のリスクがいくらか高くなる。

肝臓に対する副作用の可能性があるため,ジバルプロエクス(divalproex)を服用している患者には,肝機能検査を1年間にわたり3カ月毎に行うべきである;トランスアミナーゼまたはアンモニアの血清中濃度が有意に上昇した場合(正常上限の2倍以上)は,投与を中止するべきである。正常上限の1.5倍までのアンモニア値の上昇は安全に耐容できる。

エスリカルバゼピン(eslicarbazepine)

エスリカルバゼピン(eslicarbazepine)には,焦点起始発作に対する単剤または補助療法としての適応がある。カルバマゼピンやオクスカルバゼピンと異なり,エスリカルバゼピン(eslicarbazepine)は1日1回投与であるため,アドヒアランスを改善する可能性がある。エスリカルバゼピン(eslicarbazepine),カルバマゼピン,およびオクスカルバゼピンの効果は同等である。

用法・用量

  • 最初は400mg,経口,1日1回で開始し,1週毎に400mg~600mg/日ずつ増量して,推奨維持量である800~1600mg,1日1回まで到達させる

エスリカルバゼピン(eslicarbazepine)は18歳未満の患者への適応はない。

エトスクシミド

エトスクシミドは欠神発作に適応がある。

用法・用量

  • 成人:250mg,経口,1日2回,4~7日毎に250mgずつ増量(通常の最大量:1500mg/日)

  • 3歳以上6歳未満の小児:250mg,経口,1日1回(通常の最大量:20~40mg/kg/日)

  • 6歳以上の小児:250mg,経口,1日2回で開始し,必要に応じて4~7日毎に250mg/日ずつ増量(通常の最大量:1500mg/日)

治療域および中毒域

  • 治療域:40~100μg/mL(283~708μmol/L)

  • 中毒域:> 100μg/mL(> 708μmol/L)

中毒域は確立されていない。

エトスクシミドの有害作用としては,悪心,嗜眠,めまい,頭痛などがある。特異体質性の有害作用として,白血球減少または汎血球減少,皮膚炎,全身性エリテマトーデス(SLE)などがある。

フェルバメート(felbamate)

フェルバメート(felbamate)は,レノックス-ガストー症候群における難治性の焦点起始発作および非定型欠神発作に適応がある。

用法・用量

  • 成人:開始時は400mg,経口,1日3回(最大量:3600mg/日)

  • 小児:開始時は15mg/kg/日,経口(最大量:45mg/kg/日)

治療域および中毒域

  • 治療域:30~60μg/mL(125~250μmol/L)

  • 中毒域:該当なし

フェルバメート(felbamate)の有害作用としては,頭痛,疲労,肝不全,まれに再生不良性貧血などがある。患者から書面でインフォームド・コンセントを得る必要がある。

ホスフェニトイン

用法・用量

  • 成人:10~20mg/kg PE(フェニトイン当量),静注または筋注,単回(最大投与速度:150PE/分)

  • 小児:成人と同様

ホスフェニトインの用量は,フェニトイン当量(PE)で示される:ホスフェニトイン1.5mgはフェニトイン1mgと同等である。

最大投与速度を採用する場合は,心拍数および血圧をモニタリングしなければならないが,より緩徐に投与する場合は必要ない。

治療域および中毒域

  • 治療域:10~20μg/mL(40~80μmol/L)

  • 中毒域:> 25μg/mL(> 99μmol/L)

ホスフェニトインの有害作用としては,運動失調,めまい,傾眠,頭痛,そう痒,錯感覚などがある。

ガバペンチン

ガバペンチンには,3~12歳の患者における焦点起始発作に対する補助療法として,また12歳以上の患者における焦点起始両側強直間代発作を伴う場合を含む焦点起始発作に対する補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 成人:300mg,経口,1日3回(通常の最大量:1200mg,1日3回)

  • 3歳未満12歳以上の小児:12.5~20mg/kg,経口,1日2回(通常の最大量:50mg/kg,1日2回)

  • 12歳以上の小児:300mg,経口,1日3回(通常の最大量:1200mg,1日3回)

治療域および中毒域は特定されていない。

ガバペンチンの有害作用としては,眠気,めまい,体重増加,頭痛のほか,3歳以上12歳未満の患者では傾眠,攻撃的行動,気分変動,多動などがある。

ラコサミド

ラコサミドには,17歳以上の患者における焦点起始発作に対する第2選択の単剤または補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 成人:100~200mg,経口,1日2回

ラコサミドは17歳未満の小児への適応はない。

治療域および中毒域

  • 治療域:5~10ug/mL

  • 中毒域:確立されていない。

ラコサミドの有害作用としては,めまい,複視,自殺念慮などがある。

ラモトリギン

ラモトリギンには,2歳以上の患者に生じた焦点起始発作,レノックス-ガストー症候群における全般起始発作,および全般起始強直間代発作に対する補助療法としての適応がある。16歳以上の患者では,ラモトリギンは,併用される酵素誘導を起こす抗てんかん薬(例,カルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタール)またはバルプロ酸を中止した後に,焦点起始または焦点起始両側強直間代発作に対する代替の単剤療法として使用される。

ラモトリギンの代謝は,酵素誘導を起こす抗てんかん薬により亢進し,酵素阻害を起こす抗てんかん薬(例,バルプロ酸)により低下する。バルプロ酸は広範囲の肝酵素を阻害する。ラモトリギンは,バルプロ酸と併用すると特殊な相乗作用を示すことがある。

成人における用法・用量

  • 酵素誘導を起こす抗てんかん薬を併用し,バルプロ酸を使用しない場合:50mg,経口,1日1回,2週間で開始した後,50mg,経口,1日2回で2週間,その後は1~2週間毎に100mg/日ずつ通常の維持量(150~250mg,経口,1日2回)まで増量

  • バルプロ酸と併用する場合(酵素誘導を起こす抗てんかん薬との併用は問わない):25mg,経口,2日毎,2週間で開始した後,25mg,経口,1日1回で2週間,その後は1~2週間毎に25~50mg/日ずつ通常の維持量(100mg,経口,1日1回~200mg/日,経口,1日2回)まで増量

16歳未満の患者における用法・用量

  • 酵素誘導を起こす抗てんかん薬と併用し,バルプロ酸を用いない場合:1mg/kg,経口,1日2回,2週間で開始した後,2.5mg/kg,経口,1日2回で2週間,その後は5mg/kg,経口,1日2回(通常の最大量:15mg/kgまたは250mg/日)

  • 酵素誘導を起こす抗てんかん薬およびバルプロ酸と併用する場合:0.1mg/kg,経口,1日2回,2週間で開始した後,0.2mg/kg,経口,1日2回で2週間,その後は0.5mg/kg,経口,1日2回(通常の最大量:5mg/kgまたは250mg/日)

  • バルプロ酸と併用して酵素誘導を起こす抗てんかん薬は使用しない場合:0.1~0.2mg/kg,経口,1日2回,2週間で開始した後,0.1~0.25mg/kg,経口,1日2回で2週間,その後は0.25~0.5mg/kg,経口,1日2回(通常の最大量:2mg/kgまたは150mg/日)

血中濃度と薬理効果の間に有意な関係は観察されていない。

レベチラセタム

レベチラセタムには,4歳以上の患者における焦点起始発作,6歳以上の患者における全般起始強直間代発作,12歳以上の患者におけるミオクロニー発作,および若年性ミオクロニーてんかんに対する補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 成人:500mg,経口,1日2回(最大量:2000mg,1日2回)

  • 小児:250mg,経口,1日2回(最大量:1500mg,1日2回)

血中濃度と薬理効果の間に有意な関係は観察されていない。

レベチラセタムの有害作用としては,疲労,筋力低下,運動失調,気分および行動の変化などがある。

オクスカルバゼピン

オクスカルバゼピンは,4~16歳の患者における焦点起始発作に対する補助療法としての適応があるほか,成人の焦点起始発作にも適応がある。

用法・用量

  • 成人:300mg,経口,1日2回で開始し,必要に応じて1週毎に300mg(1日2回)ずつ,1200mg,経口,1日2回まで増量する

  • 小児:4~15mg/kg,経口,1日2回で開始した後,2週間かけて15mg/kg,経口,1日2回(通常の維持量)まで増量する。

治療域

  • 3~36μg/mL(12~140μmol/L)

オクスカルバゼピンの有害作用としては,疲労,悪心,腹痛,頭痛,めまい,傾眠,白血球減少,複視,低ナトリウム血症(2.5%)などがある。

ペランパネル

ペランパネルには,てんかんのある12歳以上の患者における焦点起始発作および全般起始強直間代発作に対する補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 2mg,経口,1日1回で開始し,1週毎に2mg/日ずつ,臨床反応と耐容性に応じて増量して,推奨維持量である8~12mg,1日1回(焦点起始発作に対して),または8mg,1日1回(一次性の全般発作に対して)まで到達させる

ペランパネルは12歳未満の小児への適応がない。

ペランパネルの有害作用としては,攻撃性,気分および行動の変化,希死念慮,めまい,傾眠,疲労,易刺激性,転倒,頭痛,悪心,嘔吐,腹痛,体重増加,歩行障害などがある。

フェノバルビタール

用法は通常1日1回であるが,分割投与としてもよい。てんかん重積状態を除く全ての適応に対する用量:

  • 成人:1.5~4mg/kg,経口,就寝時

  • 新生児:3~4mg/kg,経口,1日1回で開始した後,増量(臨床反応と血中濃度に基づいて)

  • 乳児:5~8mg/kg,経口,1日1回

  • 1~5歳の小児:3~5mg/kg,経口,1日1回

  • 6~12歳の小児:4~6mg/kg,経口,1日1回

てんかん重積状態に対する用法・用量

  • 成人:15~20mg/kg静注(最大投与速度:60mg/分または2mg/kg/分)

  • 小児:10~20mg/kg静注(最大投与速度:100mg/分または2mg/kg/分)

治療域および中毒域

  • 治療域:10~40μg/mL(43~129μmol/L)

  • 中毒域:> 40μg/mL(> 151μmol/L)

フェノバルビタールの有害作用としては,眠気,眼振,運動失調や,小児における学習障害と奇異性の多動などがある。特異体質性の有害作用として,貧血や発疹などがある。

フェニトイン

てんかん重積状態を除く全ての適応に対する用法・用量

  • 成人:4~7mg/kg,経口,就寝時

  • 新生児:開始時は2.5mg/kg,経口,1日2回(通常の維持量:2.5~4mg/kg,経口,1日2回)

てんかん重積状態に対する用法・用量

  • 成人:15~20mg/kg,静注

  • 生後6カ月から3歳までの小児:8~10mg/kg,静注

  • 4~6歳の小児:7.5~9mg/kg,静注

  • 7~9歳の小児:7~8mg/kg,静注

  • 10~16歳の小児:6~7mg/kg,静注

最大投与速度は,小児(16歳まで)では1~3mg/kg/分,成人では50mg/分である。

治療域および中毒域

  • 治療域:10~20μg/mL(40~80μmol/L)

  • 中毒域:> 25μg/mL(> 99μmol/L)

フェニトインの有害作用としては,巨赤芽球性貧血,歯肉増殖症,多毛,リンパ節腫脹,骨密度の低下などがある。歯肉増殖症は葉酸サプリメント(0.5mg/日)で大幅に軽減することができる。血中濃度が高い場合,フェニトインは眼振,運動失調,構音障害,嗜眠,易刺激性,悪心,嘔吐,および錯乱を引き起こす可能性がある。特異体質性の有害作用として,発疹,剥脱性皮膚炎,まれに発作の増悪などがある。

プレガバリン

プレガバリンには,焦点起始発作に対する補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 成人:50mg,経口,1日3回または75mg,経口,1日2回で開始した後,必要性および忍容性に応じて200mg,経口,1日3回または300mg,経口,1日2回(最大量:600mg/日)まで増量する。

プレガバリンは18歳未満の小児には適応がない。

血中濃度と薬理効果の間に有意な関係は観察されていない。

プレガバリンの有害作用としては,めまい,傾眠,運動失調,霧視,複視,振戦,体重増加などがある。プレガバリンはミオクロニー発作を悪化させる可能性がある。

チアガビン(tiagabine)

チアガビン(tiagabine)には,12歳以上の患者における焦点起始発作に対する補助療法としての適応がある。

用法・用量

  • 成人:4mg,経口,1日1回で開始し,1週毎に4~8mg/日ずつ増量し,28mg,経口,1日2回または14mg,経口,1日4回(最大量:56mg/日)まで到達させる

  • 12歳以上の小児:4mg,経口,1日1回で開始し,必要に応じて1週毎に4mg/日ずつ,16mg,経口,1日2回または8mg,経口,1日4回(最大量:32mg/日)まで増量する

血中濃度と薬理効果の間に有意な関係は観察されていない。

チアガビン(tiagabine)の有害作用としては,めまい,ふらつき,錯乱,思考の鈍化,疲労,振戦,鎮静,悪心,腹痛などがある。

トピラマート

トピラマートには,2歳以上の患者における焦点起始発作,非定型欠神発作に対する適応があるほか,全般起始強直間代発作に対する第2選択の単剤または補助療法としての適応もある。

用法・用量

  • 成人:50mg,経口,1日1回,1~2週間毎に25~50mg/日により増量(通常の最大量:200mg,1日2回)

  • 2~16歳の小児:0.5~1.5mg/kg,経口,1日2回(最大量:25mg/日)

治療域

  • おそらく5~20mg/mL(15~59μmol/L)

トピラマートの有害作用としては,濃度の低下,錯感覚,疲労,言語機能障害,錯乱,食欲不振,体重減少,発汗減少,代謝性アシドーシス,腎結石症(1~5%),精神病状態(1%)などがある。

バルプロ酸

バルプロ酸は,欠神発作(定型および非定型),焦点起始発作,強直間代発作,ミオクロニー発作,若年性ミオクロニーてんかん,てんかん性スパズム,および新生児または熱性痙攣に適応がある。レノックス-ガストー症候群における強直または脱力発作にも適応がある。バルプロ酸は広範囲の肝酵素を阻害する。

用法・用量

  • 10歳以上の小児および成人:10~15mg/kg/日,経口,1日3回(例,5mg,1日3回)で開始し,緩徐に増量する―例えば,特に他の薬剤も投与している場合,1週毎に5~10mg/kg/日(1.67~3.33mg/kg,1日3回)ずつ増量する(最大量:60mg/kg/日)

治療域および中毒域

  • 治療域:午前の投与前に50~100μg/mL(347~693μmol/L)

  • 中毒域:> 150μg/mL(> 1041μmol/L)

バルプロ酸の有害作用としては,悪心および嘔吐,胃腸不耐性,体重増加,可逆的脱毛(5%で),一過性の眠気,一過性の好中球減少症,振戦などがある。特異体質性の高アンモニア性脳症が生じることがある。まれに,特に抗てんかん薬の多剤併用療法を受けた神経学的に障害のある若年の小児において,致死的な肝壊死が発生する。バルプロ酸の使用時には,一般的に使用される他の抗てんかん薬と比べて神経管閉鎖不全のリスクがいくらか高くなる。

肝臓に対する有害作用の可能性があるため,バルプロ酸を服用している患者には,肝機能検査を1年間にわたり3カ月毎に行うべきである;トランスアミナーゼまたはアンモニアの血清中濃度が有意に上昇した場合(正常上限の2倍以上)は,投与を中止するべきである。正常上限の1.5倍までのアンモニア値の上昇は安全に耐容できる。

ビガバトリン

ビガバトリンには,焦点起始発作に対する補助療法としての適応があるほか,てんかん性スパズムにも適応がある。

用法・用量

  • 成人:最初は500mg,経口,1日2回で開始し,必要に応じて1週毎に250mg(1日2回)ずつ,通常の維持量1500mg,経口,1日2回まで増量する

  • 小児:1週間で経口,100mg/kg/日まで漸増した後,通常の維持量である100~150mg/kg/日まで調整する

血中濃度と薬理効果の間に有意な関係は観察されていない。

ビガバトリンの有害作用としては,眠気,めまい,頭痛,疲労,不可逆的な視野欠損(定期的な視野評価を必要とする)などがある。

ゾニサミド

ゾニサミドには,16歳以上の患者における焦点起始発作に対する補助療法としての適応があるほか,レノックス-ガストー症候群における強直または脱力発作に対する代替または補助療法としての適応もある。

用法・用量

  • 成人:100mg,経口,1日1回,2週間毎に100mg/日まで増量する(最大量:300mg,1日2回)

ゾニサミドは16歳未満の小児には一般に使用されない。

治療域および中毒域

  • 治療域:10~40μg/mL(45~180μmol/L;30μg/mL以上では中枢神経系の有害作用が増加する可能性がある)

  • 中毒域:> 40μg/mL

ゾニサミドの有害作用としては,鎮静,疲労,めまい,運動失調,錯乱,認知障害(例,喚語の障害),体重減少,食欲不振,悪心などがある。比較的頻度は低いが,ゾニサミドは抑うつ,精神病状態,尿路結石,および発汗減少を引き起こす。

てんかんの薬物治療についてのより詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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