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骨パジェット病

(変形性骨炎)

執筆者:

Julia F. Charles

, MD, PhD, Brigham and Women's Hospital

レビュー/改訂 2019年 3月
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骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート)が含まれる。

米国では40歳以上の成人の約1%にパジェット病がみられ,3:2の比で男性患者が多い。有病率は年齢とともに増加する。しかし,全体の有病率は減少しつつあるように思われる。本疾患は,欧州(スカンジナビアを除く),オーストラリア,およびニュージーランドで最もよくみられる。

骨パジェット病の病因

パジェット病患者の約10%にSQSTM1(セクエストソーム1)遺伝子の変異がみられ,その結果としてNF-κβ(nuclear factor κβ)活性が上昇し,破骨細胞の活性が高まる(1 病因論に関する参考文献 骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート)が含まれる。... さらに読む 病因論に関する参考文献 )。パジェット病と関連がある他のいくつかの変異が同定されており,その多くが破骨細胞の発生および活性に重要なRANK(receptor activator of nuclear factor κβ)シグナル伝達経路に影響を及ぼす。パラミクソウイルス感染細胞にみられるものと類似した病的破骨細胞中の核内封入体が電子顕微鏡で観察されているため,麻疹などのウイルス性の病因が提唱されている。ウイルス性の原因は証明されていないが,遺伝的素因を有する患者において,まだ同定されていないウイルスが破骨細胞の異常な活性を引き起こすという仮説が立てられている。

病因論に関する参考文献

骨パジェット病の病態生理

あらゆる骨が罹患しうる。最も罹患することが多い骨は,骨盤,大腿骨,頭蓋骨である。罹患する頻度がそれほど高くない他の骨は,脛骨,脊椎,鎖骨,および上腕骨である。

罹患部位では骨代謝回転が亢進する。パジェット病の病変は代謝が活発であり,非常に血管に富む。過度に活性が高い破骨細胞は大型であることが多く,多数の核を含む。骨芽細胞による修復も過度に活性化し,粗い網状の厚くなった層板および骨梁を生じる。骨の腫大および骨硬化領域があるにもかかわらず,このような異常な構造は骨を脆弱にする。

合併症

骨パジェット病の最も頻度の高い合併症は以下のものである:

変形性関節症は最大50%の患者に起こり,罹患骨に隣接する関節に発生する。局所的な骨の脆弱化による病的骨折もよくみられる。

まれな合併症には最大1%の患者における 骨肉腫 骨肉腫(骨原性肉腫) 原発性骨腫瘍は転移性骨腫瘍よりはるかに頻度が低く,特に成人でその傾向がある。原発性骨腫瘍には, 多発性骨髄腫, 骨肉腫, アダマンチノーマ, 軟骨肉腫, 脊索腫, 骨のユーイング肉腫, 線維肉腫および未分化多形肉腫, 骨のリンパ腫, 悪性巨細胞腫などがある。( 骨と関節の腫瘍の概要および... さらに読む 骨肉腫(骨原性肉腫) への転化などがある。血管に富む骨が整形外科手術の最中に過剰に出血することがある。ごくまれに, 高カルシウム血症 高カルシウム血症 高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,がんなどがある。臨床的特徴としては多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡などがある。診断は,イオン化カル... さらに読む が動くことのできない患者に発生することがあるが,歩行可能な患者における高カルシウム血症は 副甲状腺機能亢進症 原発性副甲状腺機能亢進症 高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,がんなどがある。臨床的特徴としては多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡などがある。診断は,イオン化カル... さらに読む の併存を示唆する。大きな病変または多数の病変による高拍出性心不全が報告されている。

骨パジェット病の症状と徴候

骨パジェット病は通常無症状である。症状が発生する場合,痛み,こわばり,疲労,および骨変形を伴って潜行性に発生する。骨痛はうずくような深部の痛みで,ときに重度であり,夜間に増悪することがある。痛みはまた,圧迫性神経障害または変形性関節症から生じることもある。頭蓋骨が侵されている場合,頭痛および聴覚障害がみられることがある。

徴候には,両側頭部および前頭部の頭蓋骨腫大(前頭隆起),頭皮静脈拡張,片耳もしくは両耳の神経性難聴または回転性めまい,頭痛などがある。長管骨の内反または変形性関節症により変形が生じることがある。病的骨折が最初の臨床像であることもある。骨肉腫が増大する重度の疼痛によってしばしば示唆される。

骨パジェット病の診断

  • 単純X線

  • 血清中のアルカリホスファターゼ,カルシウム,およびリン

  • 病変の範囲および部位を確定するための骨シンチグラフィー

以下がみられる患者でパジェット病を疑うべきである:

  • 説明のつかない骨痛または変形

  • X線上の示唆する所見

  • 他の理由で行った臨床検査での説明のつかない血清アルカリホスファターゼの高値,特にγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT/γ-GTP)が正常の場合

  • 臥床中に発生する高カルシウム血症,特に高齢の患者

  • 高齢の患者における骨肉腫

パジェット病が疑われる場合,単純X線ならびに血清アルカリホスファターゼ,カルシウム,およびリンの値の測定を行うべきである。診断を確定するにはX線での確認が必要である。特徴的なX線所見としては以下のものがある:

  • 骨硬化の増加

  • 皮質の粗い骨梁形成または皮質の肥厚を伴う異常構造

  • 内反

  • 骨の腫大

脛骨または大腿骨の外側の微小な疲労骨折がみられることがある。

骨病変の程度を判定するため,テクネチウムで標識したホスホネートを用いた骨シンチグラフィーをベースライン時に行うべきである。

特徴的な臨床検査所見には,血清アルカリホスファターゼの高値(骨のタンパク質同化作用の活性が増大)があるが,通常はγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)および血清リンの値は正常である。血清カルシウムは通常は正常であるが,不動状態もしくは副甲状腺機能亢進症のために増加することもある。アルカリホスファターゼが高値でない場合,または血清アルカリホスファターゼの高値が骨由来かどうか不明である場合(すなわち,アルカリホスファターゼに比例してGGTが増加している場合),骨に特異的な分画を測定することがある。インタクトI型プロコラーゲン-N-プロペプチド(PINP)および架橋C-テロペプチド(CTX)などの骨代謝回転の血清マーカーが上昇することがある(1 診断に関する参考文献 骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート)が含まれる。... さらに読む 診断に関する参考文献 )。ときに,骨のコラーゲン代謝回転の尿マーカー(例,ピリジノリン架橋断片)の上昇で示される骨の異化作用活性の増大が骨代謝回転亢進の確定に役立つ。

パール&ピットフォール

  • アルカリホスファターゼが高値であるがGGT値は正常である高齢者では,骨パジェット病を考慮すること。

診断に関する参考文献

  • 1.Shankar S, Hosking DJ: Biochemical assessment of Paget's disease of bone.J Bone Miner Res 21 Suppl 2:P22–P27, 2006.doi: 10.1359/jbmr.06s204.

骨パジェット病の治療

  • 症状および合併症に対する支持療法

  • 骨に合併症のリスクがあり疾患が症候性または活動性である場合,ビスホスホネート

骨パジェット病の支持療法には,痛みに対する鎮痛薬またはNSAIDなどがある。内反した下肢により引き起こされた歩行異常の矯正には矯正器具が有用である。一部の患者には整形外科手術が必要である(例,人工股関節置換術または人工膝関節置換術,脊髄の除圧術)。荷重負荷を奨励すべきであり,床上安静は避けるべきである。

限局性かつ無症状の場合は治療を必要としないことがある。

薬物療法

薬物療法は破骨細胞の活性を抑制する。以下の目的で適応となる:

  • 合併症の進行を予防または遅らせるため(例,難聴,変形,変形性関節症,脊椎のパジェット病に関連する不全対麻痺もしくは対麻痺,または他の神経脱落症状,特に手術の候補として不適切な場合)

  • 別の原因(例,変形性関節症)ではなくパジェット病の経過に明らかに関連する痛みを治療するため

  • 整形外科手術中に起こりうる出血を予防または最小限に抑えるため

  • (骨由来の)血清アルカリホスファターゼ値が正常値の2倍を超えた場合に,症状がなくとも,過剰な破骨細胞の活性を抑えるため

疾患の進行が遅くなることはあるが,既存の障害(例,変形,変形性関節症,難聴,神経の絞扼)は元に戻らない。

いくつかのビスホスホネートが使用可能であり,第1選択の薬剤となっている( Professional.see table パジェット病の薬物療法 パジェット病の薬物療法 パジェット病の薬物療法 )。アミノビスホスホネート(窒素原子を含むビスホスホネート,特に,ゾレドロン酸)は,疾患活動性のマーカーをより効果的に抑制し,より長期の反応をもたらす(1 治療に関する参考文献 骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート)が含まれる。... さらに読む 治療に関する参考文献 )。アミノビスホスホネートは骨パジェット病の第1選択薬であるのに対し,単純なビスホスホネート(窒素原子を含まないビスホスホネート)は第2選択薬である。

合成サケカルシトニンは,ビスホスホネートに耐えられないまたは抵抗性の患者に対する代替薬である。ビスホスホネートが禁忌の患者には,デノスマブもビスホスホネートの代替薬となる可能性があることが症例報告から示唆されている(2 治療に関する参考文献 骨パジェット病は,限局した部位で骨代謝回転が亢進する成人の骨格の慢性疾患である。正常な基質が,軟化し腫大した骨に置き換わる。本疾患は無症候性のこともあれば,骨痛または変形が徐々に発症することもある。診断はX線による。治療には対症的な処置としばしば薬物(通常はビスホスホネート)が含まれる。... さらに読む 治療に関する参考文献 )。

骨代謝回転が亢進しているため,患者は十分なカルシウムおよびビタミンDの摂取量を確保すべきであり,しばしば補給が必要である。

治療に関する参考文献

  • 1.Reid IR, Lyles K, Su G, et al: A single infusion of zoledronic acid produces sustained remissions in Paget disease: Data to 6.5 years.J Bone Miner Res 26(9):2261–2270, 2011.doi: 10.1002/jbmr.438.

  • 2.Reid IR, Sharma S, Kalluru R, Eagleton C: Treatment of Paget's disease of bone with denosumab: Case report and literature review.Calcif Tissue Int 99(3):322–325, 2016.doi: 10.1007/s00223-016-0150-6.

骨パジェット病の要点

  • 骨パジェット病はよくみられるしばしば無症状の異常であり,特に高齢者でよくみられる。

  • 合併症としては,変形性関節症,骨折,神経圧迫,骨肉腫,およびまれに高カルシウム血症などがある。

  • 骨パジェット病のビスホスホネートによる治療の合併症には,副甲状腺機能亢進症および低カルシウム血症などがある。

  • 確定は通常,骨硬化,皮質の粗い骨梁形成または皮質の肥厚,および骨の内反または腫大などの所見を示すX線による。

  • 第1選択薬はゾレドロン酸または他のアミノビスホスホネート(アレンドロン酸,パミドロン酸,またはリセドロン酸)である。

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