(足および足関節の疾患の概要 足および足関節の疾患の概要 大部分の足の問題は,解剖学的障害または関節構造もしくは関節外構造の機能の異常に起因する( 足の骨の図を参照)。あまり多くないものの,足疾患は全身性疾患を反映している場合がある( 全身性疾患の足の臨床像の表を参照)。 糖尿病患者および末梢血管疾患の患者では,少なくとも年に2回,血行が十分保たれているかおよび神経学的に正常であるかを評価すると... さらに読む も参照のこと。)
足の骨
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中足趾節関節痛は, 中足骨痛 中足骨痛 中足骨痛は,中足趾節関節部に生じる疼痛を総称する用語である。( 足および足関節の疾患の概要も参照のこと。) 最も一般的な原因は以下のものである: フライバーグ病 趾間神経の痛み(モートン病) 中足趾節関節の疼痛 さらに読む の一般的な原因である。中足趾節関節痛は,最も一般的には足の生体力学的変化による関節面のアライメント異常が原因であり,関節亜脱臼,底側板(flexor plate)断裂,関節包のインピンジメント,および関節軟骨破壊(変形性関節症)を引き起こす。アライメント異常の関節は,滑膜のインピンジメントを引き起こすことがあり,熱感および腫脹は伴うことがあってもごくわずかである(変形性関節症の滑膜炎)。
第2中足趾節関節が最もよく侵される。通常,第1足趾列(第1楔状骨および第1中足骨)の不十分な機能は,過度の回内(足が内側に回転し後足部が外側に向くかまたは外反する)に起因し,関節包炎および 槌趾 槌趾変形 槌趾は,中足趾節関節の背側の亜脱臼に起因するZ型の変形である。診断は臨床的に行う。治療は,履物の修正および/または矯正器具による。 ( 足および足関節の疾患の概要も参照のこと。) 槌趾変形の通常の原因は,足の生体力学的異常および腱の拘縮をもたらす遺伝的素因による関節面のアライメント異常である。その他の原因としては, 関節リウマチ(RA)のほか,シャルコー-マリー-トゥース病(... さらに読む 変形につながることが多い。凹足(ハイアーチ)および足関節の尖足(足関節の背屈を制限するアキレス腱短縮)の変形を有する患者では,脛前方の筋肉が過剰に活動するため,足趾が(鉤爪状に)後方に引かれ中足骨頭下の後方への圧力および疼痛が増加するとともに背側の関節の亜脱臼が引き起こされる傾向がある。
中足趾節関節の亜脱臼は,さらに慢性炎症性の関節疾患(特に 関節リウマチ[RA] 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む )の結果としても生じる。荷重負荷による中足趾節関節痛および朝のこわばり感は,早期RAの重要な初期徴候の可能性がある。RAにおける炎症性滑膜炎および骨間筋萎縮は,第2~5中足趾節関節の亜脱臼にもつながり,結果として槌趾変形が生じる。結果的に,通常は歩行する際に中足骨と趾間神経の間のストレスを和らげる中足骨の脂肪体が足趾の下で遠位に移動し,結果として モートン病 モートン病 趾間神経の刺激(神経痛)や長期間持続する神経周膜の良性腫脹(神経腫)によって疼痛が生じることがあり,その性状は非特異的であったり,灼熱痛や電撃痛であったり,異物感であったりすることもある。診断は通常,臨床的に行う。治療法としては,履物の修正や局所注射のほか,ときに外科的切除などがある。 ( 足および足関節の疾患の概要も参照のこと。) モートン病は 中足骨痛の一般的な原因の1つである。足の趾間神経は,中足骨の下と中足骨の間を走行して,遠位... さらに読む が起こることがある。緩衝作用の消失を補うために,二次的に胼胝および滑液包が発生することがある。底屈状態の中足骨頭の下またはその近くに併存するリウマチ結節により疼痛が増すことがある。
中足趾節関節痛はまた,第1中足趾節関節の他動および自動関節運動を制限する機能的制限母趾(functional hallux limitus)に起因することがある。患者は通常,足の回内障害を有し,これにより荷重負荷時に第1足趾列がもち上がり内側縦アーチが低下する。第1足趾列がもち上がる結果として,母趾の基節骨が第1中足骨頭から自由に伸長できなくなる;その結果,関節背部で動かなくなり,変形性関節症性変化および関節可動域の喪失に至る。時間の経過とともに疼痛が発生することがある。可動域の制限による第1中足趾節関節痛のさらなる原因は,短母指屈筋の狭窄(通常は足根管内に生じる)を伴う直接的外傷である。疼痛が慢性である場合,消耗性のことがある関節症(強剛母趾)で関節の可動性が低下することがある。
急性関節炎が, 痛風 痛風 痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹などがある。確定診断には滑液中での結晶の同定が必要である。急性発作の治療は抗炎症薬による。非ステロイド... さらに読む , RA 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む ,および 脊椎関節症 血清反応陰性脊椎関節症の概要 血清反応陰性脊椎関節症(血清反応陰性脊椎関節炎)では,特定の臨床的特徴(例,炎症性背部痛,ぶどう膜炎,消化管症状,発疹)が共通してみられる。一部はヒト白血球抗原B27(HLA-B27)アレルと強く関連する。臨床的類似性および遺伝子の類似性から,同様の原因または病態生理も共有していることが示唆される。脊椎関節症では通常,リウマトイド因子(RF)が陰性である(それゆえに血清反応陰性脊椎関節症と呼ばれる)。脊椎関節症には,... さらに読む などの全身性関節炎に続発して起こることがある。
中足趾節関節痛の症状と徴候
中足趾節関節痛の症状としては,歩行時の疼痛などがある。関節の足背および足底の圧痛が通常は触診時および他動可動域の評価時にみられる。軽微な熱感を伴う軽度の腫脹が,変形性関節症の滑膜炎で生じる。著明な熱感,腫脹,または発赤は,炎症性の関節疾患または感染症を示唆する。
中足趾節関節痛の診断
主に臨床的評価
炎症の徴候がある場合,感染症または関節疾患の除外
中足趾節関節痛は,通常は灼熱感,しびれ,ピリピリ感,および趾間痛がないことで趾間神経の神経痛または神経腫と鑑別できるが,これらの症状は関節の炎症に起因することがある;その場合,触診が鑑別に役立つことがある。
単関節の熱感,発赤,および腫脹は,他の原因ではないと証明されない限り感染症を示唆するが,痛風である可能性の方が高い。熱感,発赤,および腫脹が複数の関節にみられる場合,リウマチ性疾患の評価法(例,抗環状シトルリン化ペプチド[抗CCP]抗体,リウマトイド因子[RF],赤血球沈降速度)による関節の炎症の全身的原因についての評価(例,痛風,RA,乾癬性関節炎,ウイルス関連関節炎,腸炎性関節炎)が適応となる。
中足趾節関節痛の治療
矯正器具
中足骨パッド付きの足の矯正器具が,炎症を起こしていない関節からの圧力を分散して軽減するのに役立つことがある。距骨下の外転が過剰な場合,または足が高度にアーチ状の場合は,それらの異常なアライメントを矯正する矯正器具を処方すべきである。ロッカーソールに修正した靴も役立つことがある。機能的制限母趾(functional hallux limitus)に対しては,装具による修正が第1足趾列の底屈をさらに助け中足趾節関節の動きを改善し疼痛を軽減することがある。第1足趾列のもち上がりがこれらの手段で軽減できない場合,第1足趾列の持ち上がりを抑えるためのパッドが役立つことがある。より重度の第1中足趾節関節の動きの制限または疼痛に対しては,関節の動きを減らすために,硬性の矯正器具,炭素繊維の板,または靴の外側に装着するバーもしくはロッカーソールの使用が必要になることがある。
保存療法が無効である場合は手術が必要なこともある。炎症(滑膜炎)がある場合,コルチコステロイド/麻酔薬の混合剤の局所注射が有用なことがある。
中足趾節関節痛の要点
中足趾節関節痛は関節面のアライメント異常に起因することが最も多く,軽微な熱感および腫脹のみを伴って滑膜のインピンジメントを引き起こすが,関節リウマチの最初の症状であることがある。
関節の足背および足底の圧痛がみられ,通常は急性炎症の軽微な徴候を伴う。
灼熱感,しびれ,ピリピリ感,および趾間痛(モートン病を示唆する)がみられないこと,ならびに触診によって中足趾節関節痛と診断する。
矯正器具で足の生体力学を矯正する。