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手疾患の概要および評価

執筆者:

David R. Steinberg

, MD, Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania

レビュー/改訂 2020年 5月
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本ページのリソース

一般的な手疾患には,様々な変形, ガングリオン ガングリオン ガングリオンは,通常は手(特に手関節背側)に生じる嚢胞性の腫脹である。症状のあるガングリオンに対しては吸引または切除が適応となる。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) この写真には,手関節背側に生じたガングリオンが写っている。 ガングリオンは,手および手関節を侵す軟部組織の慢性腫脹の約60%を占める。通常20~50歳の成人に自然発... さらに読む ガングリオン 感染症 手の感染症 一般的な手疾患には,様々な変形, ガングリオン, 感染症, キーンベック病, 神経圧迫症候群(nerve compression syndrome), 非感染性の腱鞘滑膜炎,および 変形性関節症などがある。( 複合性局所疼痛症候群[反射性交感神経性ジストロフィー]と 手の外傷も参照のこと。)... さらに読む 手の感染症 キーンベック病 キーンベック病 キーンベック病は月状骨の阻血性骨壊死である。症状は,手関節の疼痛および圧痛などである。診断は画像検査による。治療は様々な外科的手技による。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) キーンベック病は20~45歳の男性(通常は激しい肉体労働者)の利き手に最もよく起こる。全体として,キーンベック病は比較的まれである。その原因は不明である。最... さらに読む キーンベック病 神経圧迫症候群(nerve compression syndrome) 手の神経圧迫症候群 一般的な手疾患には,様々な変形, ガングリオン, 感染症, キーンベック病, 神経圧迫症候群(nerve compression syndrome), 非感染性の腱鞘滑膜炎,および 変形性関節症などがある。( 複合性局所疼痛症候群[反射性交感神経性ジストロフィー]と 手の外傷も参照のこと。)... さらに読む 手の神経圧迫症候群 非感染性の腱鞘滑膜炎 非感染性の腱鞘滑膜炎 一般的な手疾患には,様々な変形, ガングリオン, 感染症, キーンベック病, 神経圧迫症候群(nerve compression syndrome), 非感染性の腱鞘滑膜炎,および 変形性関節症などがある。( 複合性局所疼痛症候群[反射性交感神経性ジストロフィー]と 手の外傷も参照のこと。)... さらに読む 非感染性の腱鞘滑膜炎 ,および 変形性関節症 変形性関節症(OA) 変形性関節症は,関節軟骨の破綻および潜在的な減少,加えて骨肥大(骨棘形成)など他の関節変化を特徴とする慢性の関節症である。症状としては,活動によって増悪するまたは誘発される徐々に発生する疼痛,覚醒時および安静後に30分未満続くこわばりなどのほか,ときに関節の腫脹がみられる。診断はX線によって確定する。治療には,理学療法,リハビリテーション... さらに読む 変形性関節症(OA) などがある。(複合性局所疼痛症候群 複合性局所疼痛症候群(CRPS) 複合性局所疼痛症候群(CRPS)は,軟部組織もしくは骨損傷後(I型)または神経損傷後(II型)に発生して,当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する,慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として,自律神経性の変化(例,発汗,血管運動異常),運動機能の変化(例,筋力低下,ジストニア),萎縮性の変化(例,皮膚または骨萎縮,脱毛,関... さらに読む [反射性交感神経性ジストロフィー]と 手の外傷 骨折の概要 骨折とは,骨が破損することである。ほとんどの骨折は,正常な骨に単一の大きな力が加わることで生じる。 骨折以外の筋骨格系損傷には以下のものがある: 関節脱臼および亜脱臼(部分的な関節脱臼) 靱帯捻挫,筋挫傷,および腱損傷 筋骨格系の損傷はよくみられる現象であるが,その受傷機転,重症度,および治療法は様々である。四肢,脊椎,骨盤のいずれにも発... さらに読む 骨折の概要 も参照のこと。)

手の変形

手の感染症

一般によくある細菌性の手の感染症には, 爪囲炎 急性爪囲炎 爪囲炎とは爪周囲組織の感染症である。急性爪囲炎では,爪縁に沿って発赤,熱感,および疼痛が生じる。診断は視診による。治療はブドウ球菌に有効な抗菌薬の投与と排膿である。 ( 爪疾患の概要も参照のこと。) 爪囲炎は通常急性であるが, 慢性例もある。急性爪囲炎の起因菌は,通常は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus... さらに読む 急性爪囲炎 感染した咬傷 手の感染した咬傷 小さな刺創(特にヒトまたはネコによる咬傷)は,腱,関節包,または関節軟骨に重大な損傷を伴う可能性がある。ヒトによる咬傷で最も頻度の高い原因は,口を殴った結果,歯による中手指節関節への損傷(手拳損傷[clenched fist injury])である。ヒトの口腔細菌叢には,Eikenella... さらに読む ひょう疽 ひょう疽 ひょう疽は指先の指腹腔の感染症であり,通常はブドウ球菌およびレンサ球菌による。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) 最も一般的な部位は末端の指腹部であり,その中心,側方,または先端部が侵される。通常,指腹腔の間の隔壁が感染の拡がりを制限し,その結果膿瘍が生じ,それにより隣接組織の圧迫および壊死が生じる。その下の骨,関節,または屈筋... さらに読む ひょう疽 手掌の膿瘍 手掌の膿瘍 手掌の膿瘍は,手掌における深部腔の化膿性感染症であり,一般的にはブドウ球菌またはレンサ球菌による。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) 手掌の膿瘍には,カラーボタン様の膿瘍(2本の指の指間部から生じる),母指腔の膿瘍,および手掌中央腔の膿瘍などがある。膿瘍は手掌の深部コンパートメントのいずれにも発生することがあり,手掌中央腔から背... さらに読む ,および 感染性の屈筋腱腱鞘滑膜炎 感染性の屈筋腱腱鞘滑膜炎 感染性の屈筋腱腱鞘滑膜炎は,屈筋腱腱鞘内の急性感染症である。診断はKanavel徴候により示唆され,X線により確定する。治療は外科的ドレナージおよび抗菌薬投与による。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) 感染性の屈筋腱腱鞘滑膜炎における通常の原因は,腱鞘の穿通および細菌の播種である。... さらに読む などがある。 ヘルペス性ひょう疽 ヘルペス性ひょう疽 ヘルペス性ひょう疽は,単純ヘルペスウイルスにより引き起こされる手指遠位面の皮膚感染症である。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) ヘルペス性ひょう疽は,強い痛みを引き起こすことがある。指腹部はあまり緊張していない。末節骨の掌側または背側に小水疱が発生するが,痛みが始まってから2~3日経過するまで現れないことが多い。強い痛みは... さらに読む ヘルペス性ひょう疽 は,手のウイルス感染症である。感染症は強い持続性の拍動痛で始まることが多く,通常は身体診察で診断する。一部の感染症(例,咬傷,感染性の屈筋腱腱鞘滑膜炎)では隠れた異物を検出するためにX線撮影を行うが,小さい物体またはX線透過性の物体は検出されないことがある。

大半の手の感染症に対する治療としては,外科的処置と抗菌薬投与が行われる。市中感染型および院内感染型のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)の検出率上昇を考慮に入れるべきである(1 総論の参考文献 一般的な手疾患には,様々な変形, ガングリオン, 感染症, キーンベック病, 神経圧迫症候群(nerve compression syndrome), 非感染性の腱鞘滑膜炎,および 変形性関節症などがある。( 複合性局所疼痛症候群[反射性交感神経性ジストロフィー]と 手の外傷も参照のこと。)... さらに読む 総論の参考文献 )。合併症のないMRSA感染症は,切開排膿で治療するのが最善である(2 総論の参考文献 一般的な手疾患には,様々な変形, ガングリオン, 感染症, キーンベック病, 神経圧迫症候群(nerve compression syndrome), 非感染性の腱鞘滑膜炎,および 変形性関節症などがある。( 複合性局所疼痛症候群[反射性交感神経性ジストロフィー]と 手の外傷も参照のこと。)... さらに読む 総論の参考文献 )。MRSAの発生率が高く感染症が重症である場合,入院およびバンコマイシンまたはダプトマイシン(静注療法用)が推奨され,同様に感染症専門医へのコンサルテーションも推奨される。外来患者に対しては,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,クリンダマイシン,ドキシサイクリン,またはリネゾリド(経口療法用)を投与することができる。培養および感受性試験の結果によりMRSAが除外されれば,ナフシリン(nafcillin),クロキサシリン,ジクロキサシリン,または第1もしくは第2世代セファロスポリン系薬剤を投与することがある。より亜急性の炎症がみられる患者では非結核性抗酸菌感染症を考慮すべきであり,特に免疫抑制がある患者では強く考慮すべきである。

手の神経圧迫症候群

よくみられる神経圧迫症候群には, 手根管症候群 手根管症候群 手根管症候群は,手関節の手根管を通る位置での正中神経の圧迫である。症状としては,正中神経の分布領域における疼痛および錯感覚などがある。症状および徴候によって本症が示唆され,神経伝導速度検査によって確定される。治療には,人間工学的な改善,鎮痛,副子固定,およびときにコルチコステロイド注射または手術などがある。... さらに読む 肘部管症候群 肘部管症候群 肘部管症候群は,肘関節における尺骨神経の圧迫または牽引である。症状としては,肘関節痛および尺骨神経の分布領域における錯感覚などがある。症状および徴候ならびにときに神経伝導検査によって本症が示唆される。治療法としては,副子固定のほか,ときに外科的な圧迫解除などがある。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。)... さらに読む 肘部管症候群 ,および 橈骨神経管症候群(radial tunnel syndrome) 橈骨神経管症候群 橈骨神経管症候群は,前腕近位部における橈骨神経の圧迫である。症状としては,前腕痛や肘関節痛などがある。診断は臨床的に行う。治療法としては,副子固定のほか,ときに外科的な圧迫解除などがある。 ( 手疾患の概要および評価も参照のこと。) 外傷, ガングリオン, 脂肪腫, 骨腫瘍,または腕橈関節(肘関節)の滑膜炎の結果,肘関節における圧迫が起き... さらに読む などがある。神経の圧迫は錯感覚を引き起こすことが多い;(通常は検者の指先で)圧迫された神経を叩打することによってその錯感覚をしばしば再現できる(ティネル徴候)。神経圧迫が疑われる場合,運動および知覚の神経伝導を正確に測定する 神経伝導速度 神経伝導検査 筋力低下が神経,筋肉,神経筋接合部のいずれの疾患によるものか判断することが臨床的に困難である場合には,これらの検査によって侵されている神経および筋肉を同定することができる。 筋電図検査では,針を筋に刺入し,筋が収縮および静止している間の電気的活動を記録する。正常では,静止時の筋は電気的に無活動であり,わずかに収縮すると単一運動単位の活動電... さらに読む および遠位潜時の検査により確認できる。初期治療は通常保存的であるが(例,安静,職場環境の修正,副子固定,コルチコステロイド注射),保存的な処置が無効である場合または運動もしくは感覚の著明な障害がある場合は,外科的な圧迫解除が必要なこともある。

非感染性の腱鞘滑膜炎

総論の参考文献

  • 1.O'Malley M, Fowler J, Ilyas AM: Community-acquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections of the hand: Prevalence and timeliness of treatment.J Hand Surg Am 34(3):504–508, 2009. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.11.021.

  • 2.Chen WA, Plate JF, Li Z: Effect of setting of initial surgical drainage on outcome of finger infections.J Surg Orthop Adv 24(1):36–41, 2015.

手疾患の評価

手疾患では,しばしば病歴と身体所見から診断が可能である。

病歴

病歴には,症状と関連する可能性がある外傷または他の事象に関する情報を含めるべきである。変形および運動障害の有無および期間に注意する。障害の有無,期間,重症度,および痛みを増悪または軽減する因子を聞き出す。発熱,腫脹,発疹, レイノー症候群 レイノー症候群 レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性... さらに読む レイノー症候群 ,錯感覚,および筋力低下などの随伴症状も記録する。

身体診察

診察には,発赤,腫脹,または変形がないかの視診,および圧痛がないかの触診を含めるべきである。自動可動域を検査し,考えられる腱損傷がないか確認すべきである。他動可動域の評価により,固定化した変形を検出でき,特定の動きで疼痛が増悪するかどうかを評価できる。ペーパークリップの両端を使用した2点識別によって感覚を検査することがある。運動機能検査には,橈骨神経,正中神経,尺骨神経によって支配される筋肉を含める。血管の診察には,毛細血管再充満の評価,橈側および尺側の脈拍,ならびに アレンテスト 動脈血ガス分析 を含めるべきである。特定の靱帯損傷が疑われる場合には ストレステスト 身体診察 捻挫は靱帯の損傷であり,筋挫傷は筋肉の損傷である。断裂は腱にも生じうる。 筋骨格系の損傷には,捻挫,筋挫傷,および腱損傷に加えて以下のものがある: 骨折 関節脱臼および亜脱臼 筋骨格系の損傷はよくみられる現象であるが,その受傷機転,重症度,および治療法は様々である。四肢,脊椎,骨盤のいずれにも発生する。 さらに読む が役立つ(例, gamekeeper's thumb 尺側側副靱帯の捻挫 母指の尺側側副靱帯の捻挫は一般的であり,ときに生活に支障を来すものとなる。 ( 捻挫およびその他の軟部組織損傷の概要も参照のこと。) 尺側側副靱帯は母指の基節骨の基部と母指の中手骨関節を尺側でつないでいる。通常の受傷機転は母指の橈側偏位であり,スキーのストックをもっている際に手から落ちる転倒によることが多い。... さらに読む における尺側側副靱帯)。誘発試験は腱鞘滑膜炎および神経圧迫症候群の診断に有用なことがある。

手の診察
動画

検査

臨床検査は炎症性の関節疾患(例, 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見... さらに読む 関節リウマチ(RA) )の診断に有用なことがあるが,他の点では役割が限られる。しかしながら, 結晶誘発性関節炎 結晶誘発性関節炎の概要 関節炎は,関節内に以下の結晶が沈着することで発生することがある: 尿酸一ナトリウム ピロリン酸カルシウム二水和物 塩基性リン酸カルシウム(アパタイト) まれに他の結晶(シュウ酸カルシウムなど) さらに読む (例, 痛風 痛風 痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹な... さらに読む 痛風 または ピロリン酸カルシウム関節炎 ピロリン酸カルシウム関節炎 ピロリン酸カルシウム関節炎では,関節内および/または関節外にピロリン酸カルシウム二水和物(CPPD)結晶の沈着がみられる。臨床像は多彩であり,最小限の症状のみのこともあれば,間欠的な急性関節炎の発作(偽痛風や急性ピロリン酸カルシウム関節炎とも呼ばれる)および重度であることが多い退行性の関節症がみられることもある。診断には滑液中でのCPPD... さらに読む ピロリン酸カルシウム関節炎 )と 感染性関節炎 急性の感染性関節炎 急性の感染性関節炎は,数時間または数日にわたって進行する関節の感染症である。感染が滑膜組織または関節周囲組織に存在し,通常は細菌性(若年成人では高い頻度で淋菌[Neisseria gonorrhoeae])である。しかし,非淋菌性の細菌感染も起こることがあり,関節構造を急速に破壊することがある。症状としては,急激な疼痛,関節... さらに読む 急性の感染性関節炎 の確定診断には 滑液の分析 関節液の検査 筋骨格系疾患の中には,主として関節を侵し,関節炎を引き起こすものがある。その他にも,主として骨を侵すもの(例, 骨折, 骨パジェット病, 腫瘍),筋肉または他の関節外軟部組織を侵すもの(例, リウマチ性多発筋痛症, 筋炎),関節周囲軟部組織を侵すもの(例, 滑液包炎, 腱炎, 捻挫)がある。関節炎には,感染症,... さらに読む が必要である。

MRIおよび超音波検査は,腱の構造および完全性の評価や深部膿瘍の検出に役立つ可能性がある。高分解能超音波検査はリアルタイムの動きにおける画像検査が可能であり,特に腱および滑膜炎を評価するために役立つ。

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