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高血圧

執筆者:

George L. Bakris

, MD, University of Chicago School of Medicine

レビュー/改訂 2021年 3月
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本ページのリソース

高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期間持続しない限り,症状を引き起こさないのが通常である。診断は血圧測定による。原因の同定,障害の評価,その他の心血管系危険因子の同定などを目的として検査を行うこともある。治療としては,生活習慣の改善と利尿薬,β遮断薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬などによる薬物療法を行う。

2017 ACC/AHA Hypertension Guidelinesも参照のこと。)

米国では約7500万人の人々に高血圧がみられる。そのうち自身の高血圧を認識している患者は約81%であり,治療を受けている患者は75%のみで,十分に血圧がコントロールされている患者は51%にすぎない。成人では,高血圧は白人(28%)またはメキシコ系アメリカ人(28%)と比べて黒人(41%)で多くみられ,疾患発生率と死亡率も黒人でより高くなっている。

総論の参考文献

高血圧の病因

高血圧は以下の場合がある:

  • 本態性(全症例の85%)

  • 二次性

本態性高血圧

血行動態と生理学的要素(例,血漿量,レニン-アンジオテンシン系の活性)が一様でないことから,本態性高血圧が単一の原因で生じる可能性は低いことが示唆されている。たとえ当初は単一の因子によるものであっても,上昇した血圧の維持には,おそらく複数の因子が関与すると考えられる(モザイク説)。全身の輸入細動脈で,平滑筋細胞の筋線維膜がイオンポンプ機能障害を呈することで慢性的な血管緊張増強につながる可能性がある。遺伝は素因の1つであるが,正確な機序は不明である。環境因子(例,食事由来のナトリウム,ストレス)は,若年時は遺伝的感受性のある個人にのみ作用すると考えられるが,65歳以上の患者では大量の食塩摂取で高血圧が誘発される可能性が高くなる。

二次性高血圧

一般的な原因としては以下のものがある:

その他のはるかにまれな原因として, 褐色細胞腫 褐色細胞腫 褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常... さらに読む クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた... さらに読む クッシング症候群 先天性副腎過形成症 先天性副腎過形成症の概要 先天性副腎過形成症は遺伝性疾患の一群で,いずれもコルチゾール,アルドステロンまたはその両方の合成が不十分であることを特徴とする。最もよくみられる型では,蓄積されたホルモン前駆体がアンドロゲン産生経路へ流入し,アンドロゲン過剰が生じる;まれな型ではアンドロゲン合成も不十分である。... さらに読む 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類... さらに読む 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。診断は典型的な顔貌,嗄声および言語緩徐,乾燥皮膚などの臨床的特徴,ならびに甲状腺ホルモン低値による。サイロキシン投与などにより管理を行う。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能低下症は年齢を問わず生じるが,特に高齢者でよくみられ,その場合症状が軽微で認識しにくい可能性がある。甲状腺... さらに読む 甲状腺機能低下症 (粘液浮腫), 原発性副甲状腺機能亢進症 副甲状腺機能亢進症 副甲状腺機能亢進症は,1つまたは複数の副甲状腺の活動が過剰になった場合に発生し,副甲状腺ホルモンの血清中濃度を上昇させ,高カルシウム血症をもたらす。患者は無症状のこともあれば,慢性疲労,身体の痛み,睡眠障害,骨痛,記憶障害,集中力低下,抑うつ,頭痛など,様々な重症度の症状を呈することもある。診断は,カルシウムおよび副甲状腺ホルモンの血清中... さらに読む 先端巨大症 巨人症と先端巨大症 巨人症および先端巨大症は,ほぼ常に下垂体腺腫を原因とする成長ホルモン過剰分泌による症候群(hypersomatotropism)である。骨端線閉鎖以前であれば,結果として巨人症が生じる。閉鎖後であれば結果は先端巨大症となり,独特の顔貌およびその他の特徴をもたらす。診断は,頭蓋および手のX線撮影,ならびに成長ホルモンおよびインスリン様成長因... さらに読む 巨人症と先端巨大症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症 大動脈縮窄症は,大動脈内腔の限局的な狭小化によって上肢高血圧,左室肥大,ならびに腹部臓器および下肢の灌流不良が生じる病態である。症状は奇形の重症度に応じて異なり,頭痛や胸痛,四肢冷感,疲労,跛行などから,劇症性心不全やショックに至るまで様々である。縮窄部上で弱い血管雑音が聴取されることがある。診断は心エコー検査またはCTもしくMRアンギオ... さらに読む や,原発性アルドステロン症以外のミネラルコルチコイド過剰症候群などがある。過度の飲酒と経口避妊薬の使用は,治癒可能な高血圧の最も一般的な原因である。交感神経刺激薬,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),コルチコステロイド,コカイン,甘草の使用は,一般的に血圧コントロールの悪化につながる。

病因論に関する参考文献

  • 1.Carey RM, Calhoun DA, Bakris GL, et al: Resistant hypertension: Detection, evaluation, and management: A Scientific Statement From the American Heart Association.Hypertension 72:e53-e90, 2018.doi 10.1161/HYP.0000000000000084

高血圧の病態生理

血圧は心拍出量と全末梢血管抵抗(TPR)の積に等しいことから,発生機序には以下が関与しているはずである:

  • 心拍出量の増加

  • TPRの上昇

  • その両方

ほとんどの患者では,心拍出量は正常かわずかに増加し,TPRは増大する。このパターンは,本態性高血圧と原発性アルドステロン症,褐色細胞腫,腎血管疾患,および腎実質性疾患による二次性高血圧に典型的である。

その他の患者では,心拍出量が増加し(おそらく太い静脈に生じる静脈収縮のため),TPRは心拍出量に対して不自然な正常値となる。病態が進行すると,TPRが増大し,心拍出量は正常化するが,これらはおそらく自己調節による。心拍出量を増加させる一部の疾患(甲状腺中毒症,動静脈瘻,大動脈弁逆流症)には,特に一回拍出量が増加する場合に,孤立性収縮期高血圧を惹起するものもある。一部の高齢患者では,心拍出量が正常または低下した状態で孤立性収縮期高血圧がみられるが,これはおそらく大動脈とその主要分枝の弾性の低下によるものである。拡張期血圧が高く維持されている患者では,しばしば心拍出量が低値となる。

血漿量は血圧の上昇に伴い低下する傾向にあり,まれに血漿量は正常のままか増加する。原発性アルドステロン症または腎実質性疾患に起因する高血圧では,血漿量が増加する傾向にあり,褐色細胞腫に起因する高血圧ではかなりの減少をみることがある。拡張期血圧が上昇して細動脈硬化が発生するとともに,腎血流量が徐々に低下していく。糸球体濾過量(GFR)は本症の後期段階まで正常範囲で推移するが,結果的に濾過率は増加する。冠血流量,脳血流量,および筋血流量は,それらの血管床に重度の動脈硬化が併存しない限り維持される。

ナトリウム輸送の異常

高血圧患者の多くでは,ナトリウム-カリウムポンプ(Na+,K+-ATPase)の欠損もしくは阻害,またはナトリウムイオン透過性の増大により,細胞膜を介するナトリウム輸送に異常を来している。その結果,細胞内のナトリウムが増加し,交感神経刺激に対する細胞の感受性が亢進する。ナトリウムに次いでカルシウムが増加するため,細胞内カルシウムの蓄積が感受性亢進の原因である可能性もある。Na+,K+-ATPaseはノルアドレナリンを交感神経のニューロン内に回収する(したがって,この神経伝達物質を不活性化する)ことができるため,この機序の阻害によってもノルアドレナリンの作用が増強し,血圧が上昇する可能性がある。ナトリウム輸送の障害は,親に高血圧がある正常血圧の小児で発生することがある。

交感神経系

交感神経刺激は血圧を上昇させるが,正常高値または高血圧の患者では通常,正常血圧の患者と比較して,より大きな上昇がみられる。この反応性の亢進が交感神経系と心筋および血管平滑筋のどちらで生じているのかは不明である。安静時脈拍数の増加は,交感神経活性の亢進に起因している可能性があり,高血圧の予測因子としてよく知られている。一部の高血圧患者では,安静時の循環血漿中カテコールアミン濃度が異常高値となる。

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は血液量,ひいては血圧の調節に関与している。傍糸球体装置で産生される酵素のレニンは,アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIへの変換を触媒する。この非活性産物は主に肺のほか,腎臓および脳においてアンジオテンシン変換酵素(ACE)による分断を受けて強力な血管収縮物質であるアンジオテンシンIIとなり,これが脳の自律神経中枢も刺激して交感神経の放電を増大させ,アルドステロンおよびバソプレシンの分泌を刺激する。アルドステロンとバソプレシンは,ナトリウムと水の貯留を引き起こし,血圧を上昇させる。アルドステロンはカリウムの排泄も促進するため,血漿カリウム濃度の低下(3.5mEq/L[3.5mmol/L]未満)により,カリウムチャネルの閉鎖を介した血管収縮が亢進する。循環血中に存在するアンジオテンシンIIIは,アンジオテンシンIIと同程度にアルドステロンの分泌を刺激するが,昇圧作用ははるかに弱い。酵素のキマーゼもアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換するため,ACEを阻害する薬剤ではアンジオテンシンIIの産生を完全に抑制することはできない。

レニンの分泌は,互いに排他的ではない少なくとも4つの機序によって制御される:

  • 腎血管の受容体が輸入細動脈壁の張力変化に反応する

  • 密集斑の受容体が遠位尿細管での塩化ナトリウムの輸送速度または濃度の変化を検出する

  • 血中のアンジオテンシンがレニン分泌に対してネガティブフィードバックをもたらす

  • 交感神経系が(腎臓の神経を介して)β受容体を媒介するレニン分泌を刺激する。

腎血管性高血圧 腎血管性高血圧 腎血管性高血圧は,片側もしくは両側の腎動脈またはその分枝の部分または完全閉塞により血圧が上昇する病態である。長期化しない限り,通常は無症状である。50%未満の患者では,片側または両側の腎動脈に血管雑音が聴取される。診断は身体診察とduplex法による超音波検査,核医学検査,またはMRアンギオグラフィーによる腎画像検査により行う。手術または... さらに読む 腎血管性高血圧 では,一般に(少なくとも発症早期には)アンジオテンシンが関与していると考えられているが,本態性高血圧でレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が果たす役割は確立されていない。しかしながら,黒人および高齢の高血圧患者ではレニン濃度が低い傾向がある。高齢患者ではアンジオテンシンII濃度も低い傾向がある。

慢性腎実質性疾患による高血圧(腎実質性高血圧)は,レニンに依存する機序と体液量に依存する機序が組み合わさって発生する。大半の症例では,末梢血中でレニン活性の亢進は明白とならない。高血圧は典型的には中等度で,ナトリウムと水のバランスに大きく影響を受ける。

血管拡張物質の欠乏

血管収縮物質(例,アンジオテンシン,ノルアドレナリン)の過剰ではなく,血管拡張物質(例,ブラジキニン,一酸化窒素)の欠乏によって高血圧を来す場合もある。

硬化した動脈に起因する一酸化窒素の減少は,塩分感受性高血圧,すなわち大きなナトリウム負荷(例,中華料理の摂取)後の収縮期血圧の10~20mmHgを超える異常上昇と関連している。

腎臓で十分な量の血管拡張物質が(腎実質性疾患または両側腎摘出により)産生されない場合,血圧が上昇する可能性がある。

血管拡張物質および血管収縮物質(主にエンドセリン)は内皮細胞でも産生される。したがって,内皮機能障害は血圧に大きな影響を及ぼす。

病理および合併症

高血圧の初期には病理学的変化は起こらない。重症または長期の高血圧は標的臓器(主に心血管系,脳,腎臓)に損傷を与え,以下のリスクを増大させる:

この機序には,全身性の 細動脈硬化 アテローム性動脈硬化 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む アテローム性動脈硬化 の発生とアテローム形成の加速が関与している。細動脈硬化は中膜の肥厚,過形成,および硝子化を特徴とし,小径の細動脈で特に明らかとなり,眼および腎臓で顕著に認められる。腎臓では,この変化により細動脈の内腔が狭くなり,TPRが上昇するため,高血圧がさらなる高血圧につながる。さらに,一旦動脈が狭小化すると,すでに肥厚している平滑筋がわずかに短縮するだけで,正常径の動脈と比較して内腔が大幅に小さくなる。高血圧が長期化するに従い,二次的な原因に対する特異的治療(例,腎血管手術)により血圧が正常化する可能性が低くなっていくことは,これらの作用によって説明することができる。

後負荷の増大により,左室が徐々に肥大していき,拡張機能障害を来すようになる。心室は最終的に拡張し,拡張型心筋症様となり,しばしば動脈硬化性冠動脈疾患によって増悪する収縮機能障害による心不全が惹起される。胸部大動脈解離は典型的に高血圧の結果として発生し,腹部大動脈瘤患者のほぼ全例に高血圧がみられる。

高血圧の症状と徴候

高血圧は通常,標的臓器で合併症が発生するまで無症状である。合併症のない高血圧では,めまい,顔面紅潮,頭痛,疲労,鼻出血,神経過敏は生じない。重症高血圧(高血圧緊急症 高血圧緊急症 高血圧緊急症は,標的臓器(主に脳,心血管系,および腎臓)障害の徴候を示す重症高血圧である。診断は血圧測定,心電図,尿検査,ならびに血清BUNおよびクレアチニンの測定による。治療法は,静注薬(例,クレビジピン[clevidipine],フェノルドパム[fenoldopam],ニトログリセリン,ニトロプルシド,ニカルジピン,ラベタロール,エス... さらに読む )は,心血管系,神経系,腎臓,および網膜に重度の症状(例,症候性の冠動脈硬化症,心不全,高血圧性脳症,腎不全)を引き起こしうる。

IV音は高血圧性心疾患で最も初期にみられる徴候の1つである。

  • 1度:細動脈の収縮のみ

  • 2度:細動脈の収縮および硬化

  • 3度:血管の変化に加えて出血および滲出性病変

  • 4度:乳頭浮腫

高血圧の診断

  • 複数回の血圧測定による確認

  • 尿検査および尿中アルブミン/クレアチニン比;異常がみられた場合は腎超音波検査を考慮する

  • 血液検査:空腹時脂質,クレアチニン,カリウム

  • クレアチニンが高値の場合は腎超音波検査

  • カリウムが低値の場合はアルドステロン症の評価

  • 心電図検査:左室肥大がある場合は心エコー検査を考慮する

  • ときに甲状腺刺激ホルモンの測定

  • 血液上昇が突然で不安定または重度の場合は,褐色細胞腫または睡眠障害の評価

高血圧は血圧測定により診断および分類される。病歴,身体診察,その他の検査が,病因を同定し,標的臓器の損傷の有無を判断する上で役立つ。

血圧測定

正式な診断に用いる血圧値は,2回または3回の異なる時点で以下の条件で測定した2回または3回の測定値の平均とするべきである:

  • 5分以上にわたり椅子(診察台でなく)に座り,足を床に着け,背中が支えられている

  • 腕を心臓の高さで支え,カフの位置が衣服で覆われていない

  • 運動,カフェイン摂取,または喫煙を30分以上行っていない

最初の来院時には両腕で血圧を測定し,その後の測定では,より高い測定値が出た方の腕で測定すべきである。

適切なサイズの血圧カフを上腕に巻く。適切なカフのサイズは,二頭筋の3分の2を覆う大きさであり,ゴム嚢は上腕周囲長の80%以上を覆える長さがあり,上腕周長の40%以上の幅をもつものを使用する。そのため,肥満患者にはより大きなカフが必要となる。予想される収縮期血圧を超えるまでカフを膨らませ,上腕動脈を聴診しながらゆっくりと空気を抜く。圧力が低下する過程で最初に心拍を聴取できた時点の圧力が収縮期血圧となる。そして,音が完全に消失した時点での圧力が拡張期血圧である。同じ原則に従い,前腕(橈骨動脈)および大腿部(膝窩動脈)でも血圧を測定する。機械的な測定器具には定期的に較正を行うべきであり,自動読取装置はしばしば不正確となる(1 診断に関する参考文献 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 診断に関する参考文献 )。

血圧に15mmHgを上回る左右差があれば,より上位の血管構造の評価が必要であるため,血圧は両腕で測定する

ステージ1の高血圧であるか,血圧に著明な動揺がみられる場合は,測定回数を増やすことが望ましい。高血圧が持続性になるまでは血圧の測定値が散発的に高くなることがあるが,この現象はおそらく「白衣高血圧」と考えられ,その場合,診察室で測定した血圧値は高くなる一方,自宅での測定や自由行動下血圧モニタリングでは正常値となる。ただし,血圧で極端な高値と正常値が交互にみられることはまれであり,そのようなパターンは 褐色細胞腫 褐色細胞腫 褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常... さらに読む ,睡眠時無呼吸症候群などの 睡眠障害 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は,睡眠時に生じ呼吸停止(10秒を超える無呼吸または低呼吸と定義される)を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。症状としては,日中の過度の眠気,不穏状態,いびき,反復性覚醒,起床時の頭痛などがある。診断は睡眠歴および睡眠ポリグラフ検査に基づく。治療は,持続陽圧呼吸療法(CPAP),口腔... さらに読む ,または未確認の薬剤使用を示唆している可能性がある。

病歴

病歴には,高血圧の罹病期間および過去に記録された血圧値; 冠動脈疾患 冠動脈疾患の概要 冠動脈疾患では,冠動脈の血流が障害され,そのほとんどがアテロームに起因する。臨床像としては,無症候性心筋虚血, 狭心症, 急性冠症候群( 不安定狭心症, 心筋梗塞), 心臓突然死などがある。診断は症状,心電図検査,負荷試験,ときに冠動脈造影による。予防法は可逆的な危険因子(例,高コレステロール血症,高血圧,運動不足,肥満,糖尿病,喫煙)の... さらに読む 冠動脈疾患の概要 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 ,睡眠時無呼吸または大きないびきの既往または症状;その他の重大な併存疾患(例, 脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中とは,神経脱落症状を引き起こす突然の局所的な脳血流遮断が生じる多様な疾患群である。脳卒中には以下の種類がある: 虚血性(80%):典型的には血栓または塞栓によって生じる 出血性(20%):血管の破裂によって生じる(例, くも膜下出血, 脳内出血) 明らかな急性脳梗塞の所見(MRIの拡散強調画像に基づく)を伴わない一過性(典型的には1... さらに読む 脳卒中の概要 ,腎機能障害, 末梢動脈疾患 末梢動脈疾患 末梢動脈疾患(PAD)とは,虚血を引き起こす四肢(ほぼ常に下肢)の動脈硬化症である。軽度のPADは無症状のこともあれば,間欠性跛行を引き起こすこともあり,重度のPADは安静時痛とそれに随伴する皮膚萎縮,脱毛,チアノーゼ,虚血性潰瘍,壊疽を引き起こすことがある。診断は病歴聴取,身体診察,および足関節上腕血圧比の測定による。軽度のPADに対す... さらに読む 末梢動脈疾患 脂質異常症 脂質異常症 脂質異常症とは,血漿コレステロール,トリグリセリド(TG)値,もしくはその両方が高値であること,またはHDLコレステロールが低値であることであり, 動脈硬化発生に寄与する。原因には原発性(遺伝性)と二次性とがある。診断は,総コレステロール,TG,および各リポタンパク質の血漿中濃度測定による。治療は食習慣の変更,運動,および脂... さらに読む 脂質異常症 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む 痛風 痛風 痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹な... さらに読む 痛風 )の既往または症状;ならびにこれらの疾患の家族歴を含める。

社会歴には,運動量および喫煙,飲酒,刺激性薬物(処方薬および違法薬物)の使用を含める。食事歴では,食塩および刺激物(例,紅茶,コーヒー,カフェイン含有炭酸飲料,エナジードリンク)の摂取に焦点を置く。

身体診察

身体診察には身長,体重,ウエスト周囲長の測定, 網膜症 症状と徴候 高血圧網膜症は,高血圧に起因する網膜血管の損傷である。徴候は通常,疾患後期に出現する。眼底検査で細動脈の狭小化,網膜血管狭窄(arteriovenous nicking),血管壁の変化,火炎状出血,綿花様白斑,黄色の硬性白斑,および視神経乳頭浮腫を認める。治療では血圧のコントロールを目指し,視力障害が現れたときは,網膜を治療する。... さらに読む 症状と徴候 に対する眼底検査,頸部および腹部の血管雑音に対する聴診,ならびに徹底的な心臓診察,呼吸器診察,および神経学的診察を含める。腹部を触診して,腎腫大および腹部腫瘤がないか確認する。末梢動脈の拍動を評価し,大腿動脈の拍動が弱いか遅延している場合は,大動脈縮窄症が示唆される(特に30歳未満の患者)。 腎血管性高血圧 腎血管性高血圧 腎血管性高血圧は,片側もしくは両側の腎動脈またはその分枝の部分または完全閉塞により血圧が上昇する病態である。長期化しない限り,通常は無症状である。50%未満の患者では,片側または両側の腎動脈に血管雑音が聴取される。診断は身体診察とduplex法による超音波検査,核医学検査,またはMRアンギオグラフィーによる腎画像検査により行う。手術または... さらに読む 腎血管性高血圧 のやせた患者では,片側の腎動脈で雑音を聴取できることがある。

検査

高血圧が重症であるほど,また患者が若年であるほど,より広範な評価を行う。一般に,新たに高血圧と診断した際には,以下を目的としてルーチン検査を施行する:

  • 標的臓器障害の検出

  • 心血管系危険因子の同定

検査としては以下のものがある:

  • 尿検査および随時尿の尿中アルブミン/クレアチニン比

  • 血液検査(クレアチニン,カリウム,ナトリウム,空腹時血漿血糖,脂質プロファイル,しばしば甲状腺刺激ホルモン)

  • 心電図検査

自由行動下血圧モニタリング,腎臓の核医学検査,胸部X線,褐色細胞腫のスクリーニング検査,およびレニン-ナトリウムプロファイルの評価は,ルーチンに必要となるわけではない。

ただし,「白衣高血圧」が疑われる場合は,家庭または 自由行動下血圧モニタリング ホルター心電計 標準的な心電図検査では,四肢・胸壁に装着した陽極・陰極間の電位差によって反映される心臓の電気的活動が12個のベクトルのグラフとして示される。それらのうち6つは前額面(双極肢誘導I,II,IIIと単極肢誘導aVR,aVL,aVFを使用する),6つは水平面(単極胸部誘導V1,V2,V3,V4,V5,V6を使用する)のベクトルである。標準的な1... さらに読む が適応となる。また,「仮面高血圧」(自宅で測定した血圧が外来での測定値よりも高い状態)が疑われる場合にも自由行動下血圧モニタリングの適応となることがあり,典型的には外来での測定では高血圧所見を認めないにもかかわらず高血圧の続発症がみられる患者で行われる。

末梢血での血漿レニン活性は診断にも薬剤の選択にも役立たない。

最初の検査と診察の結果に応じて,その他の検査が必要になることがある。尿検査でアルブミン尿(タンパク尿),円柱尿,顕微鏡的血尿が認められた場合,または血清クレアチニン値が上昇している(男性で1.4mg/dL[124μmol/L]以上;女性で1.2mg/dL[106μmol/L]以上)場合は,腎超音波検査による腎臓の大きさの評価で有用な情報が得られることがある。利尿薬の使用と無関係の低カリウム血症のある患者では, 原発性アルドステロン症 原発性アルドステロン症 原発性アルドステロン症は,副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成,腺腫,または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。症状および徴候には,発作性の筋力低下,血圧上昇,および低カリウム血症がある。診断の際には血漿アルドステロン値および血漿レニン活性の測定などを行う。治療は原因により異なる。腫瘍は可能であれば切除する;過... さらに読む および食塩摂取量の高値がないか評価する。

心電図では,幅広でノッチのあるP波が心房肥大を示唆し,特異的な所見ではないが,高血圧性心疾患の最も初期にみられる徴候の1つである。左室肥大が遅れて生じることがあり,これは心尖部の持続的な突出とQRS上昇(虚血所見を伴うこともある)によって示唆される。以上の所見のいずれかがみられる場合には,しばしば心エコー検査が行われる。脂質プロファイルの異常または冠動脈疾患の症状がみられる患者では,その他の心血管系危険因子に関する検査(例,C反応性タンパク[CRP])が有用となりうる。

動揺性の著明な血圧上昇を呈し,頭痛,動悸,頻拍,過度の発汗,振戦,蒼白などの症状がみられる患者には, 褐色細胞腫 診断 褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常... さらに読む のスクリーニングを行う(例,血漿中遊離メタネフリン濃度の測定)。このような患者と病歴から睡眠時無呼吸症候群が示唆される患者では,睡眠検査も強く考慮すべきである。

クッシング症候群 クッシング症候群 クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた... さらに読む クッシング症候群 ,結合組織疾患, 子癇 妊娠高血圧腎症および子癇 妊娠高血圧腎症は妊娠20週以降の新規発症の高血圧または既存の高血圧の悪化で,タンパク尿を伴うものである。子癇は妊娠高血圧腎症の患者における原因不明の全身痙攣である。診断は臨床的に行い,尿タンパク測定による。治療は通常,硫酸マグネシウム静注および満期での分娩である。 妊娠高血圧腎症は妊婦の3~7%に生じる。妊娠高血圧腎症および子癇は妊娠20... さらに読む 急性ポルフィリン症 急性ポルフィリン症 急性ポルフィリン症は,ヘム生合成経路の特定の酵素の欠損に起因する疾患であり,結果としてヘム前駆体が蓄積し,腹痛および神経症状の間欠的発作が引き起こされる。発作は特定の薬剤やその他の因子によって誘発される。診断は,発作時に尿中に認められるポルフィリン前駆体のδ-アミノレブリン酸およびポルフォビリノーゲンが高値であることに基づく。発作の治療に... さらに読む 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類... さらに読む 甲状腺機能亢進症 粘液水腫 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。診断は典型的な顔貌,嗄声および言語緩徐,乾燥皮膚などの臨床的特徴,ならびに甲状腺ホルモン低値による。サイロキシン投与などにより管理を行う。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能低下症は年齢を問わず生じるが,特に高齢者でよくみられ,その場合症状が軽微で認識しにくい可能性がある。甲状腺... さらに読む 甲状腺機能低下症 先端巨大症 巨人症と先端巨大症 巨人症および先端巨大症は,ほぼ常に下垂体腺腫を原因とする成長ホルモン過剰分泌による症候群(hypersomatotropism)である。骨端線閉鎖以前であれば,結果として巨人症が生じる。閉鎖後であれば結果は先端巨大症となり,独特の顔貌およびその他の特徴をもたらす。診断は,頭蓋および手のX線撮影,ならびに成長ホルモンおよびインスリン様成長因... さらに読む 巨人症と先端巨大症 ,または中枢神経系疾患を示唆する症状がみられる患者には評価を行う。

診断に関する参考文献

高血圧の予後

血圧が高くなるほど,また網膜の変化や他の標的臓器障害の所見が重度であるほど,予後不良となる。収縮期血圧は拡張期血圧より,致死的または非致死的な心血管イベントをより的確に予測する。無治療の場合,網膜硬化,綿花様白斑,細動脈の狭小化,および出血がみられる患者(3度網膜症)の1年生存率は10%未満であり,以上の変化に加えて乳頭浮腫がみられる患者(4度網膜症)では5%未満である。治療を受けている患者で最も頻度の高い死因は冠動脈疾患である。虚血性または出血性脳卒中は,治療が不十分な高血圧でよくみられる合併症である。一方,高血圧を効果的にコントロールできれば,ほとんどの合併症を予防でき,延命につながる。

高血圧の治療

  • 減量および運動

  • 禁煙

  • 食事:果物と野菜を増やし,食塩を減らし,アルコールを制限する

  • 薬剤:血圧と心血管疾患または危険因子の有無に依存する

本態性高血圧が治癒することはないが,二次性高血圧の原因には是正できるものがある。全例において,血圧をコントロールすることで,望ましくない結果の多くを回避することができる。理論的には有効な治療が行われているにもかかわらず,米国で望ましい水準の降圧が得られている高血圧患者は全体の3分の1にすぎない。

腎疾患または糖尿病を有する患者も含めた,一般集団における治療目標は以下の通りである:

  • 80歳未満では年齢にかかわらず,血圧 < 130/80mmHg

血圧を130/80mmHg未満に下げれば,血管合併症のリスクが低下し続けると考えられる。しかしながら,薬物有害作用のリスクを高めることにもなる。そのため,収縮期血圧を120mmHg付近まで低下させることの便益を,めまいやふらつきのリスク増加および腎機能低下の可能性と比較して検討すべきである。これは糖尿病患者で特に懸念され,その場合は収縮期血圧が120mmHg未満であるか拡張期血圧が60mmHgに近づくと,これらの有害事象のリスクが高まる。

たとえ高齢患者(フレイルな高齢患者を含む)でも,60~65mmHg程度の低い拡張期血圧に十分に耐えることができ,心血管イベントが増加することもない。理想的には,血圧測定について患者または家族を指導するとともに,綿密なモニタリングを行い,かつ定期的に血圧計の較正を行うことを前提として,自宅で患者または家族に血圧測定を行わせるのがよい。

一部の降圧薬は胎児に害を及ぼす可能性があるため, 妊娠中の高血圧 治療 の治療には特別な配慮を要する。

生活習慣の改善

正常高値またはあらゆるステージの高血圧の患者全員に生活習慣の改善が推奨される(2017 Hypertension GuidelinesのTable 15. Nonpharmacological Interventionsも参照)。高血圧の予防および治療効果が証明されている最善の非薬物療法として以下のものがある:

食習慣の改善は,糖尿病,肥満,および脂質異常症のコントロールにも有用となりうる。合併症のない高血圧患者では,血圧がコントロールされている限り,活動を制限する必要はない。

薬剤

薬物治療を行うかどうかの判断は,血圧値と動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)またはその危険因子の有無(高血圧の管理への最初のアプローチ 高血圧の管理への最初のアプローチ 高血圧の管理への最初のアプローチ の表を参照)に基づく。糖尿病または腎疾患の存在は,ASCVDリスク評価に含まれるため,個別には検討しない。

継続的な再評価が管理の重要な要素である。目標血圧に達していない場合には,臨床医は薬剤を変更または追加する前にアドヒアランスを最適化するよう努力すべきである。

薬剤の選択はいくつかの因子に基づく。1剤で投与を開始する場合,糖尿病患者も含めて黒人以外の患者には,まずACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬,サイアザイド系利尿薬(クロルタリドンまたはインダパミド)のいずれかを使用する。糖尿病患者も含めて黒人患者では,ステージ3以上の慢性腎臓病がない限り,カルシウム拮抗薬またはサイアザイド系利尿薬がまず推奨される。ステージ3の慢性腎臓病を有する黒人患者では,ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬が適切である。

2剤から開始する場合は,ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬と利尿薬またはカルシウム拮抗薬を組み合わせた配合錠

降圧薬の中には特定の疾患が禁忌となるもの(例, 喘息 喘息 喘息は,様々な誘発刺激により引き起こされ,部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じさせる気道のびまん性炎症疾患である。症状および徴候には,呼吸困難,胸部圧迫感,咳嗽,および喘鳴などがある。診断は病歴,身体診察,および肺機能検査に基づく。治療には誘発因子の制御および薬物療法があり,吸入β2作動薬および吸入コルチコステロイドが最も多く用いら... さらに読む 患者に対するβ遮断薬)または,特定の疾患を有する高血圧患者が特に適応となるもの(例, 狭心症 狭心症 狭心症とは,梗塞を伴わない一過性の心筋虚血によって前胸部に不快感または圧迫感が生じる臨床症候群である。狭心症は典型的には労作または精神的ストレスにより増悪し,安静またはニトログリセリンの舌下投与により軽快する。診断は症状,心電図,および心筋イメージングによる。治療法としては,抗血小板薬,硝酸薬,β遮断薬,カルシウム拮抗薬,アンジオテンシン... さらに読む 患者に対するカルシウム拮抗薬, タンパク尿を呈する糖尿病 糖尿病性腎症 糖尿病患者における長年にわたるコントロール不良の高血糖は,複数の合併症をもたらすが,主なものは血管性の合併症であり,小径血管(微小血管性),大径血管(大血管性),またはその両方が侵される。 血管障害の発生機序としては,以下のものがある: 血清タンパク質および組織タンパク質の糖付加(終末糖化産物の形成を伴う)... さらに読む 糖尿病性腎症 患者に対するACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬― 初期治療における降圧薬クラスの選択 初期治療における降圧薬クラスの選択 初期治療における降圧薬クラスの選択 および 併存疾患のある患者に対する降圧薬 高リスク患者に対する降圧薬 高リスク患者に対する降圧薬 の表を参照)がある。

1カ月で目標血圧が達成されない場合は,アドヒアランスを評価し,治療遵守の重要性を強調する。患者のアドヒアランスが良好な場合は,最初の薬剤を増量するか,2剤目を追加することができる(初期治療用に推奨される薬剤から選択する)。ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬は併用してはならない。用量は漸増することが多い。2剤併用でも目標血圧を達成できない場合は,初期治療用の薬剤から3剤目を追加する。3剤目を使用できない患者(例,黒人患者)や3剤併用に耐えられない患者には,他のクラス(例,β遮断薬,アルドステロン拮抗薬)の薬剤を使用することができる。このように血圧コントロールが困難な患者には,高血圧専門医へのコンサルテーションが有益となりうる。

初診時の収縮期血圧が160mmHgを超える場合は,生活習慣に関係なく最初から2剤を使用すべきである。適切な組合せと用量を決定する;多くの組合せの薬剤が合剤として使用でき,合剤はコンプライアンスの改善につながるため,望ましい。治療抵抗性(3つの降圧薬を使用しても血圧が目標値を上回る)高血圧には,一般的に4つ以上の薬剤が必要となる。

十分な血圧コントロールを達成するには,しばしば薬物療法の評価および変更が何度か必要になる。血圧コントロールのための増量や薬剤の追加に対するためらいは克服しなければならない。患者のアドヒアランスの欠如は,特に生涯にわたる治療が必要であるため,十分な血圧コントロールの妨げとなりうる。治療の成功には,共感と支援を伴う患者教育が不可欠である。

機器および物理的介入

欧州およびオーストラリアでは,腎動脈の交感神経に対する経皮的カテーテル高周波アブレーションが治療抵抗性高血圧に対して承認されている。初期の試験では期待できる結果が報告されたが,最近,大規模な二重盲検試験が実施された(1 治療に関する参考文献 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 治療に関する参考文献 )。この試験は対照群に偽のアブレーション手技を採用した最初の試験であったが,高周波アブレーションによる便益は示されなかった。このため,交感神経アブレーションは依然として実験的治療とみなすべきであり,欧州またはオーストラリアの経験豊富な施設でのみ施行されている。

2つ目の物理的介入は,頸動脈小体周囲に外科的に埋め込んだ機器により頸動脈圧受容器を刺激する方法である。この機器に接続した(ペースメーカーによく似た)バッテリーを用いて圧受容器を刺激し,用量依存的に血圧を低下させる。統計学的検出力のある研究の長期解析により,治療抵抗性高血圧患者に対する圧反射活性化療法について,診察室血圧の低下を持続させる効力が長期間維持され,安全性の面でも大きな問題がないことが示された(2 治療に関する参考文献 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 治療に関する参考文献 )。2017年のAmerican College of Cardiology/American Heart Associationのガイドラインでは,治療抵抗性高血圧の管理にそれらの機器の使用を推奨するには,研究による十分なエビデンスが得られていないと結論された(3 治療に関する参考文献 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 治療に関する参考文献 )。

治療に関する参考文献

高血圧の要点

  • 米国の高血圧患者のうち治療を受けているのは全体の約4分の3のみであり,十分に血圧がコントロールされている患者は半数に過ぎない。

  • 高血圧の大半は本態性で,別の疾患(例,腎実質性疾患,腎血管疾患,睡眠時無呼吸症候群,褐色細胞腫,クッシング症候群,先天性副腎過形成症,甲状腺機能亢進症)により発生する二次性高血圧は5~15%のみである。

  • 重症または長期の高血圧は心血管系,脳,および腎臓に損傷を与え,心筋梗塞,脳卒中,および慢性腎臓病のリスクを高める。

  • 高血圧は通常,標的臓器で合併症が発生するまで無症状である。

  • 新たに高血圧と診断した場合は,尿検査,随時尿でのアルブミン/クレアチニン比の算出,血液検査(クレアチニン,カリウム,ナトリウム,空腹時血漿血糖,脂質プロファイル,しばしば甲状腺刺激ホルモン),および心電図検査を行う。

  • 80歳未満の患者では,腎疾患または糖尿病を有する患者も含めて,全例で血圧を130/80mmHg未満まで低下させる。

  • 治療としては,生活習慣の改善,特に低ナトリウム高カリウム食,高血圧の二次性の原因の管理,薬物療法(利尿薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬など)を行う。

より詳細な情報

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