動静脈瘻は,先天性(通常は比較的細い血管が侵される)のものと,外傷(例,銃創または刺傷)または動脈瘤による隣接静脈の侵食の結果として形成される後天性のものがある。 血液透析 血液透析 血液透析では,患者の血液をポンプで血液透析器に送り込むが,透析器は中空糸でできた細管の束またはサンドイッチ状に平行に挟んだ半透膜シートで構成される2つの液体コンパートメントを有する。いずれの構造においても,第1のコンパートメントの血液は半透膜の片側に沿ってポンプで送られ,膜を隔てた他方では電解質輸液(透析液)が別個のコンパートメントで血液... さらに読む を必要とする末期腎臓病患者では,手術で動静脈瘻を作製し,透析に用いるバスキュラーアクセスとする。
動静脈瘻は以下の症状および徴候を引き起こす:
侵された静脈に高圧の動脈血が流入することで生じる 慢性静脈不全症 慢性静脈不全症および静脈炎後症候群 慢性静脈不全症は,静脈還流が障害される病態であり,ときに下肢の不快感,浮腫,および皮膚変化を引き起こす。静脈炎後(血栓症後)症候群は,深部静脈血栓症(DVT)の発生後にみられる症候性の慢性静脈不全症である。慢性静脈不全症の原因は,静脈高血圧を引き起こす疾患であり,通常はDVT後に起こるような静脈の損傷または静脈弁の機能不全によってもたらさ... さらに読む (例,末梢浮腫,下肢静脈瘤,うっ滞による色素沈着)
静脈系から動脈系へと塞栓が移動する(遠位血管に詰まれば潰瘍を引き起こす)ことがあるが,圧の差からこの可能性は低い。動静脈瘻が表層付近にある場合は,腫瘤を触知でき,患部は通常腫脹して温かく,表在静脈は怒張し,しばしば拍動を認める。
動静脈瘻の上では振戦を触知でき,また聴診では収縮期に増強する連続性の大きなto and fro(機械様)雑音が聴取されることがある。
まれに,心拍出量の有意な割合が動静脈瘻を介して右心へ流れると,高拍出性 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む が起こる。
動静脈瘻の診断
臨床的評価
ときに超音波検査
動静脈瘻は,振戦,雑音,その他の徴候の存在に基づいて臨床的に診断される。確定診断にはドプラ超音波検査が最善の検査である。
動静脈瘻の治療
ときに経皮的塞栓術
ときに外科手術
先天性の動静脈瘻は,重大な合併症が発生していない限り,治療は必要ない。必要な場合は,経皮的な血管内手技を用いて,血管内にコイルまたは塞栓子を留置して動静脈瘻を閉鎖することができる。治療が完全に成功することはほとんどないが,合併症はコントロールできる場合が多い。
後天性の動静脈瘻では,単一の大きな交通が生じているのが通常であり,手術により効果的に治療できる。