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肢端紅痛症

執筆者:

Koon K. Teo

, MBBCh, PhD, McMaster University

レビュー/改訂 2019年 7月
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肢端紅痛症は,手足のほか,まれながら顔面,耳,膝の細い動脈にみられる,苦痛を伴う発作性の血管拡張であり,灼熱痛,皮膚温の上昇,および発赤を引き起こす。

このまれな病態には,原発性(原因不明)のものと, 骨髄増殖性疾患 骨髄増殖性腫瘍の概要 骨髄増殖性腫瘍は,骨髄幹細胞がクローン性に増殖する病態で,循環血中の血小板数,赤血球数,または白血球数の増加として現れることがあり,ときに骨髄の線維化亢進とその結果として髄外造血(骨髄外での血球産生)が生じる。これらの異常に基づき,以下のように分類される: 本態性血小板血症(血小板増多)... さらに読む (例, 真性多血症 真性多血症 真性多血症(PV)は,形態学的に正常な赤血球の増加(疾患の典型的な特徴)だけでなく,白血球および血小板の増加を特徴とする慢性骨髄増殖性腫瘍である。10~30%の患者で最終的に骨髄線維症および骨髄不全が生じ,1.0~2.5%では急性白血病が自然発生する。出血および動脈血栓症または静脈血栓症のリスクが高い。一般的な臨床像には,脾腫,大血管および微小血管イベント(例,一過性脳虚血発作,肢端紅痛症,眼性片頭痛),ならびにaquagenic... さらに読む 血小板血症 本態性血小板血症 本態性血小板血症(ET)は,血小板数の増加,巨核球の過形成,および出血傾向または微小血管の血栓傾向を特徴とする骨髄増殖性腫瘍である。症状および徴候として,筋力低下,頭痛,錯感覚,出血,および指の虚血を伴う肢端紅痛症がみられることがある。診断は,450,000/μL(450 × 109/L)を超える血小板数,十分な鉄貯蔵の存在下での正常赤血球量または正常ヘマトクリットに加え,骨髄線維症,フィラデルフィア染色体(または... さらに読む ), 高血圧 高血圧 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,原発性アルドステロン症,糖尿病,または肥満に起因する。高血圧は重症となるか長期... さらに読む 高血圧 静脈不全 慢性静脈不全症および静脈炎後症候群 慢性静脈不全症は,静脈還流が障害される病態であり,ときに下肢の不快感,浮腫,および皮膚変化を引き起こす。静脈炎後(血栓症後)症候群は,深部静脈血栓症(DVT)の発生後にみられる症候性の慢性静脈不全症である。慢性静脈不全症の原因は,静脈高血圧を引き起こす疾患であり,通常はDVT後に起こるような静脈の損傷または静脈弁の機能不全によってもたらされる。診断は病歴聴取,身体診察,およびduplex法の超音波検査による。治療法は圧迫,創傷ケア,およ... さらに読む 慢性静脈不全症および静脈炎後症候群 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む 全身性エリテマトーデス 全身性エリテマトーデス(SLE) 全身性エリテマトーデスは,自己免疫を原因とする慢性,多臓器性,炎症性の疾患であり,主に若年女性に起こる。一般的な症状としては,関節痛および関節炎,レイノー症候群,頬部などの発疹,胸膜炎または心膜炎,腎障害,中枢神経系障害,血球減少などがある。診断には,臨床的および血清学的な基準が必要である。重症で進行中の活動性疾患の治療には,コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を必要とする。 全症例のうち,70~90%が女性(通常妊娠可能年齢)に起こる。... さらに読む 全身性エリテマトーデス(SLE) 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む 関節リウマチ(RA) 硬化性苔癬 硬化性苔癬 硬化性苔癬は,原因不明であるが,おそらく自己免疫によるものと考えられている炎症性皮膚疾患で,通常は肛門性器部を侵す。 最も早期に認められる徴候は,皮膚の脆弱化と皮下出血であり,ときに水疱形成もみられる。典型的には,病変により軽度から重度のそう痒が引き起こされる。硬化性苔癬が小児に発生すると,その外観から,性的虐待と混同されることがある。時間とともに患部の組織は萎縮して菲薄化し,色素減少がみられ(炎症後色素沈着による色素斑がみられることも... さらに読む 硬化性苔癬 痛風 痛風 痛風は,高尿酸血症(血清尿酸値が6.8mg/dL[0.4mmol/L]を超える状態)により尿酸一ナトリウム結晶が関節内と関節周囲に析出する疾患であり,ほとんどの場合,急性または慢性関節炎が繰り返し発生する。痛風の最初の発作は通常は単関節性であり,第1中足趾節関節を侵すことが多い。痛風の症状としては,重度の急性疼痛,圧痛,熱感,発赤,腫脹などがある。確定診断には滑液中での結晶の同定が必要である。急性発作の治療は抗炎症薬による。非ステロイド... さらに読む 痛風 ,脊髄疾患, 多発性硬化症 多発性硬化症(MS) 多発性硬化症(MS)は,脳および脊髄における散在性の脱髄斑を特徴とする。一般的な症状としては,視覚および眼球運動異常,錯感覚,筋力低下,痙縮,排尿機能障害,軽度の認知症の症状などがある。典型的には複数の神経脱落症状がみられ,寛解と増悪を繰り返しながら,次第に能力障害を来す。診断には,時間的・空間的に独立した複数の特徴的な神経病変(部位は中枢神経系)を示す臨床所見またはMRI所見を必要とする。治療法としては,急性増悪に対するコルチコステロ... さらに読む 多発性硬化症(MS) などに続発した二次性のものがある。より頻度は低いが,一部の薬剤(例,ニフェジピン,ブロモクリプチン)の使用と関連するものもある。まれにみられる遺伝性の肢端紅痛症は,出生時または小児期から発症する。

足または手に灼熱痛,熱感,および発赤が数分から数時間持続する。ほとんどの患者では,症状は温熱(29~32℃)により誘発され,典型的には冷水に浸すことで軽減する。栄養障害性変化は起こらない。症状は何年も軽度のままのこともあれば,身体機能不全を来すほどに重症化することもある。全身性の血管運動機能不全がよくみられ, レイノー症候群 レイノー症候群 レイノー症候群は,寒冷刺激や精神的ストレスに対する反応として手の一部に生じる血管攣縮で,単一または複数の手指に可逆的な不快感および変色(蒼白,チアノーゼ,紅斑,またはこれらの組合せ)がみられる。ときに,他の先端部位(例,鼻,舌)で発生することもある。この病態には,原発性のものと続発性のものがある。診断は臨床的に行い,検査では原発性と続発性の鑑別に焦点を置く。合併症のない症例の治療法としては,寒冷刺激の回避,バイオフィードバック,禁煙,必... さらに読む レイノー症候群 が発生することもある。

肢端紅痛症の診断は臨床的に行う。検査は原因を検出するために行う。肢端紅痛症は骨髄増殖性疾患に数年先行して発生する場合があるため,継続的な血算の反復が適応となりうる。

鑑別診断としては,外傷後の反射性ジストロフィー,肩手症候群, 末梢神経障害 末梢神経障害 末梢神経障害は,単一または複数の末梢神経(神経系のうち神経根および神経叢より遠位にある部分)の機能障害である。数多くの症候群が含まれ,様々な程度の感覚障害,疼痛,筋力低下および筋萎縮,深部腱反射低下,ならびに血管運動神経症状が単独で,または複数組み合わさって現れるのが特徴である。最初の分類は病歴および身体診察に基づいて行う。筋電図検査および神経伝導検査(電気診断検査)は,病変の局在診断,および病態が主に軸索性(しばしば代謝性)か脱髄性(... さらに読む ,複合性局所疼痛症候群(カウザルギー), ファブリー病 ファブリー病 ファブリー病は,αガラクトシダーゼAの欠損に起因する スフィンゴリピドーシス(遺伝性代謝疾患の1つ)で,被角血管腫,四肢末端の異常感覚,角膜混濁,反復性の発熱発作,および腎または心不全を引き起こす。 詳細については, 主なスフィンゴリピドーシスの表を参照のこと。 遺伝性代謝疾患が疑われる患者へのアプローチも参照のこと。 ファブリー病は,トリヘキソシルセラミドの正常な異化に必要なライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼAの... さらに読む ファブリー病 ,細菌性 蜂窩織炎 蜂窩織炎 蜂窩織炎は皮膚および皮下組織の急性細菌感染で,最も頻度の高い原因菌はレンサ球菌とブドウ球菌である。症状と徴候は疼痛,熱感,急速に拡大する紅斑,および浮腫である。発熱がみられる場合もあるほか,より重篤な感染例では所属リンパ節腫脹を認めることもある。診断は病変の外観によるほか,培養も参考になるが,その結果を待つために治療(抗菌薬投与)を遅らせてはならない。時機を逸することなく治療すれば,予後は極めて良好である。... さらに読む 蜂窩織炎 などがある。

肢端紅痛症の治療は,温熱刺激の回避,安静,四肢の挙上,および患部の冷却である。原発性肢端紅痛症には,ガバペンチンが有益となることがある。続発性肢端紅痛症では,基礎疾患の治療を行うほか,骨髄増殖性疾患を伴う場合はアスピリンが役立つ可能性がある。

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