先天性ネフローゼ症候群

執筆者:Frank O'Brien, MD, Washington University in St. Louis
レビュー/改訂 2020年 1月
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    先天性および乳児ネフローゼ症候群は,生後1年内に発症するものである。これには,びまん性メサンギウム硬化症およびフィンランド型ネフローゼ症候群が含まれる。

    ネフローゼ症候群の概要も参照のこと。)

    先天性および乳児ネフローゼ症候群は,一般的にまれな遺伝性の糸球体濾過の異常である。中心となる症状は,タンパク尿,浮腫,および低タンパク血症である。これらの疾患は,臨床像および病理組織像が十分に特異的でないため,遺伝子変異による診断が最適である。早期には,積極的な治療として,タンパク尿に対してアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,および非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例,インドメタシン);浮腫に対して利尿薬,静注アルブミン,および水分制限;ならびに抗菌薬,抗凝固療法,および栄養投与を用いることがある。腎摘出術,およびその後の透析または腎移植が,タンパク尿を止めるために必要になることがある。

    びまん性メサンギウム硬化症

    このネフローゼ症候群はまれである。遺伝形式は様々である。ホスホリパーゼCεをコードするPLCE1遺伝子の変異に起因する。2歳または3歳までに末期腎不全に進行する。

    重度のタンパク尿がある患者では,重度の低アルブミン血症のために両側腎摘出術が必要になることがあり,栄養欠乏を改善して発育不良を軽減するため,早期に透析を開始すべきである。本疾患は通常,移植腎で再発する。

    フィンランド型ネフローゼ症候群

    本症候群は,フィンランドの新生児に1/8200の頻度で発生する常染色体劣性遺伝疾患であり,足細胞のスリット膜タンパク質(ネフリン)をコードするNPHS1遺伝子の突然変異に起因する。

    フィンランド型ネフローゼ症候群は急速進行性であり,通常は1年以内に透析が必要となる。大部分の患児は1年以内に死亡するが,少数は腎不全が起こるまで栄養的にサポートされ,その後は透析または移植によって管理される。しかしながら,本疾患は移植腎で再発する可能性がある。

    その他の先天性ネフローゼ症候群

    その他にも,いくつかのまれな先天性ネフローゼ症候群が,現在では遺伝学的に特徴づけられている。そのような疾患としては以下のものがある:

    • ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(ポドシンをコードするNPHS2遺伝子の異常)

    • 家族性巣状分節性糸球体硬化症(αアクチン4をコードするACTN 4遺伝子の異常)

    • Denys-Drash症候群(WT1遺伝子の異常で,びまん性メサンギウム硬化症,男性の仮性半陰陽,ウィルムス腫瘍を特徴とする)

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