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無痛性陰嚢腫瘤

執筆者:

Geetha Maddukuri

, MD, Saint Louis University

レビュー/改訂 2021年 1月
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無痛性陰嚢腫瘤は,患者自身によって発見される場合が多いが,ルーチンの身体診察で偶然発見される場合もある。

陰嚢痛 陰嚢痛 陰嚢痛は,新生児から高齢男性に至るまで,あらゆる年齢の男性で発生する可能性がある。 陰嚢痛の最も頻度の高い原因としては以下のものがある: 精巣捻転 精巣垂捻転 精巣上体炎/精巣精巣上体炎 さらに読む および陰嚢の疼痛を伴う腫瘤または腫脹は, 精巣捻転 精巣捻転 精巣捻転とは,精巣が回転して絞扼が起きる結果,血液供給が遮断されることで生じる,緊急を要する病態である。症状は陰嚢の急性疼痛および腫脹と悪心および嘔吐である。診断は身体診察に基づき,カラードプラ超音波検査により確定される。治療は即時の用手的整復とその後の外科的介入である。 精巣鞘膜および精索の発生異常によって,精巣鞘膜への精巣の固定が不完全になることがある(bell-clapper変形―... さらに読む ,精巣垂捻転, 精巣上体炎 精巣上体炎 精巣上体炎は精巣上体の炎症で,ときとして精巣の炎症を伴う(精巣精巣上体炎)。陰嚢の疼痛および腫脹が通常は片側性に生じる。診断は身体診察に基づく。治療は抗菌薬,鎮痛薬,および陰嚢サポーターによる。 大半の精巣上体炎(および精巣精巣上体炎)は細菌感染によって引き起こされる。炎症が精管に及べば,精管炎となる。また全ての精索構造が侵されれば,診断は精索炎となる。まれに精巣上体膿瘍,陰嚢の精巣上体外部の膿瘍,膿瘤(陰嚢水腫内での膿の蓄積),精巣梗... さらに読む 精巣上体炎 ,精巣精巣上体炎,陰嚢膿瘍,外傷,絞扼性 鼠径ヘルニア 腹壁ヘルニア 腹壁ヘルニアは,腹壁の後天的または先天的な脆弱または欠損部位から腹腔内臓器が脱出した状態である。多くのヘルニアは無症状であるが,一部のヘルニアは嵌頓または絞扼状態となり,疼痛を引き起こし,直ちに手術を行う必要がある。診断は臨床的に行う。治療は待機的な外科的修復である。 ( 急性腹痛も参照のこと。) 腹部ヘルニアは,極めて頻度が高く,特に男性に多くみられ,米国では毎年約70万件の手術が施行されている。... さらに読む 腹壁ヘルニア 精巣炎 精巣炎 精巣炎は精巣の感染症で,典型的にはムンプスウイルスに起因する。症状は精巣痛および腫脹である。診断は臨床的に行う。治療は対症療法による。細菌感染が同定された場合に限り,抗菌薬を投与する。 単独の精巣炎(すなわち,精巣に限局した感染症)はほぼ常にウイルスに起因し,ほとんどの症例で原因はムンプスである。まれな原因として,先天梅毒,結核,ハンセン病,エコーウイルス感染症,リンパ球性脈絡髄膜炎,コクサッキーウイルス感染症,伝染性単核球症,水痘,B... さらに読む 精巣炎 ,またはフルニエ壊疽が原因である可能性がある。

無痛性陰嚢腫瘤の病因

無痛性陰嚢腫瘤には,いくつかの原因があるが(無痛性陰嚢腫瘤の主な原因 無痛性陰嚢腫瘤の主な原因 無痛性陰嚢腫瘤の主な原因 の表を参照),最も頻度が高いのは以下のものである:

  • 陰嚢水腫

  • 非還納性鼠径ヘルニア

  • 精索静脈瘤(成人男性の最大20%でみられる)

比較的まれな原因としては,精液瘤,陰嚢血腫,体液過剰などがあり,ときに精巣腫瘍も原因となりうる。 精巣腫瘍 精巣腫瘍 精巣腫瘍は陰嚢腫瘤として発生し,通常は無痛性である。診断は超音波検査による。治療は組織型および病期によって異なり,精巣摘除術およびときにリンパ節郭清,放射線療法,化学療法,またはこれらの組合せによる。 米国では,毎年約9560例の精巣腫瘍が新たに発生し,約410例が死亡している(2019年の推定値) (1)。精巣腫瘍は15~35歳の男性で最も頻度の高い悪性固形腫瘍である。発生率は... さらに読む 精巣腫瘍 は無痛性陰嚢腫瘤の原因のうち最も懸念されるものである。前述の他の原因と比較するとまれであるが,40歳未満の男性では最も頻度の高い悪性固形腫瘍であり,治療に対する反応が良好であることから,速やかな発見が重要である。

無痛性陰嚢腫瘤の評価

病歴

現病歴の聴取では,症状の持続期間,立位および腹腔内圧上昇が及ぼす影響,ならびに疼痛など関連症状の有無および特徴を評価すべきである。

システムレビュー(review of systems)では,考えられる原因を示唆する症状がないか検討すべきであり,具体的には腹痛,食欲不振,または嘔吐(間欠的絞扼を伴う 鼠径ヘルニア 腹壁ヘルニア 腹壁ヘルニアは,腹壁の後天的または先天的な脆弱または欠損部位から腹腔内臓器が脱出した状態である。多くのヘルニアは無症状であるが,一部のヘルニアは嵌頓または絞扼状態となり,疼痛を引き起こし,直ちに手術を行う必要がある。診断は臨床的に行う。治療は待機的な外科的修復である。 ( 急性腹痛も参照のこと。) 腹部ヘルニアは,極めて頻度が高く,特に男性に多くみられ,米国では毎年約70万件の手術が施行されている。... さらに読む 腹壁ヘルニア );呼吸困難および下肢の腫脹(右心不全);腹部膨隆(腹水 腹水 腹水とは,腹腔内に液体が貯留した状態のことである。最も一般的な原因は門脈圧亢進症である。症状は通常,腹部膨隆により生じる。診断は身体診察のほか,しばしば超音波検査またはCTに基づく。治療法としては,食塩制限,利尿薬,腹腔穿刺などがある。腹水に感染が起こることもあり( 特発性細菌性腹膜炎),しばしば疼痛と発熱を伴う。感染の診断には腹水の分析および培養が必要である。感染は抗菌薬で治療する。... さらに読む );性欲減退,女性化,および不妊症(両側精索静脈瘤を伴う精巣萎縮)などが挙げられる。

既往歴の聴取では,腫瘤を形成する可能性がある既存の疾患(例,右 心不全 心不全 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 ,両側性リンパ浮腫をもたらす腹水),既知の陰嚢疾患(例, 精巣腫瘍 精巣腫瘍 精巣腫瘍は陰嚢腫瘤として発生し,通常は無痛性である。診断は超音波検査による。治療は組織型および病期によって異なり,精巣摘除術およびときにリンパ節郭清,放射線療法,化学療法,またはこれらの組合せによる。 米国では,毎年約9560例の精巣腫瘍が新たに発生し,約410例が死亡している(2019年の推定値) (1)。精巣腫瘍は15~35歳の男性で最も頻度の高い悪性固形腫瘍である。発生率は... さらに読む 精巣腫瘍 または 精巣上体炎 精巣上体炎 精巣上体炎は精巣上体の炎症で,ときとして精巣の炎症を伴う(精巣精巣上体炎)。陰嚢の疼痛および腫脹が通常は片側性に生じる。診断は身体診察に基づく。治療は抗菌薬,鎮痛薬,および陰嚢サポーターによる。 大半の精巣上体炎(および精巣精巣上体炎)は細菌感染によって引き起こされる。炎症が精管に及べば,精管炎となる。また全ての精索構造が侵されれば,診断は精索炎となる。まれに精巣上体膿瘍,陰嚢の精巣上体外部の膿瘍,膿瘤(陰嚢水腫内での膿の蓄積),精巣梗... さらに読む 精巣上体炎 による陰嚢水腫),骨盤内手術または骨盤照射の既往歴,および鼠径ヘルニアを同定すべきである。

身体診察

身体診察には,浮腫を引き起こす可能性がある全身性疾患(例,心不全,腹水)の評価と鼠径部および性器の詳細な診察を含める。

鼠径部および性器の診察は,立位と臥位で行うべきである。鼠径部を視診および触診して,特に還納性の腫瘤がないか確認する。精巣,精巣上体,および精索を触診して,腫脹,腫瘤,および圧痛がないか確認すべきである。注意深く触診すれば,通常は独立した腫瘤の位置をこれらの構造物のいずれかに同定することが可能である。非還納性腫瘤では,嚢胞性か充実性かを判定する上での参考にするため,透光性の有無を確認すべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 非還納性腫瘤により正常の精索構造が不明瞭になっている

  • 腫瘤が精巣の一部であるか,または精巣に付着しており,透光性が認められない

所見の解釈

その他の臨床的特徴から重要な手がかりが得られることもある(無痛性陰嚢腫瘤の主な原因 無痛性陰嚢腫瘤の主な原因 無痛性陰嚢腫瘤の主な原因 の表を参照)。例えば,透光性を示す腫瘤はおそらく嚢胞性である(例,陰嚢水腫,精液瘤)。臥位をとると消失または縮小する腫瘤は,精索静脈瘤,鼠径ヘルニア,または交通性陰嚢水腫を示唆する。陰嚢水腫が存在する場合,他の陰嚢腫瘤を診察で評価することは困難になる。まれに,精索静脈瘤が臥位でも持続したり,右側に認められたりすることがあるが,どちらの所見も下大静脈閉塞を示唆する。

検査

臨床的評価で診断に至る場合もあるが(例,精索静脈瘤, リンパ浮腫 リンパ浮腫 リンパ浮腫は,リンパ管形成不全(原発性)またはリンパ管の閉塞もしくは破綻(続発性)により生じる四肢の浮腫である。症状と徴候は,単一または複数の四肢に生じる肥厚した線維性の非圧痕性浮腫である。診断は身体診察による。治療は運動,圧迫ドレッシング,マッサージ,およびときに手術から構成される。治癒はまれであるが,治療により症状の軽減,進行の遅延,合併症の予防が得られる可能性がある。本症の患者では蜂窩織炎,リンパ管炎,まれにリンパ管肉腫のリスクが... さらに読む リンパ浮腫 鼠径ヘルニア 腹壁ヘルニア 腹壁ヘルニアは,腹壁の後天的または先天的な脆弱または欠損部位から腹腔内臓器が脱出した状態である。多くのヘルニアは無症状であるが,一部のヘルニアは嵌頓または絞扼状態となり,疼痛を引き起こし,直ちに手術を行う必要がある。診断は臨床的に行う。治療は待機的な外科的修復である。 ( 急性腹痛も参照のこと。) 腹部ヘルニアは,極めて頻度が高く,特に男性に多くみられ,米国では毎年約70万件の手術が施行されている。... さらに読む 腹壁ヘルニア ),そうでない場合は,一般的には検査が行われる。以下の場合は超音波検査を施行する:

  • 診断が不確かである

  • 陰嚢水腫が存在する場合,通常(原因の陰嚢病変を診断するため)

  • 腫瘤が透光性を示さない

  • β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン値(hCG)

  • α-フェトプロテイン値

  • 乳酸脱水素酵素値

  • 腹部CT

無痛性陰嚢腫瘤の治療

無痛性陰嚢腫瘤の要点

  • 非還納性腫瘤によって正常の精索構造が不明瞭になっている場合,嵌頓鼠径ヘルニアが示唆される。

  • 充実性の腫瘤,透光性のない腫瘤,およびこの両方に該当する腫瘤には,精巣腫瘍を想定した評価が必須である。

  • 陰嚢水腫は原因を同定する必要がある。

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