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持続勃起症

執筆者:

Geetha Maddukuri

, MD, Saint Louis University

レビュー/改訂 2021年 1月
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持続勃起症とは,性的な欲求および興奮とは無関係に疼痛を伴う異常な勃起が持続する状態である。5~10歳の男児と20~50歳の男性で最もよくみられる。

持続勃起症の病態生理

陰茎は3つの海綿体,すなわち,2つの陰茎海綿体と1つの尿道海綿体で構成される。勃起は,平滑筋が弛緩して陰茎海綿体への動脈血流が増加する結果,充血と硬化がもたらされることで生じる。

虚血性持続勃起症

持続勃起症のほとんどの症例では,陰茎の萎縮不全が関与しており,最も頻度の高い原因は静脈流出路の閉塞(すなわちlow flow)であり,虚血性持続勃起症としても知られる。4時間後には虚血による重度の疼痛が生じる。持続勃起症の症状が4時間以上持続すると,海綿体に線維化が生じ,後に 勃起障害 勃起障害 勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,プロスタグランジンの尿道内または海綿体内投与,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。... さらに読む を来したり,陰茎の壊死および壊疽に至ることさえある。

間欠性持続勃起症(stuttering priapism)は,再発を繰り返す虚血性持続勃起症であり,エピソードの間には萎縮期間がある。

非虚血性持続勃起症

頻度はより低くなるが,無秩序な動脈血流(すなわちhigh flow)に起因する持続勃起症であり,通常は外傷後の動脈瘻の形成に起因する。非虚血性持続勃起症は疼痛を伴わず,また壊死を来すこともない。後に勃起障害がよくみられる。

持続勃起症の病因

成人で最も頻度の高い原因(持続勃起症の主な原因 持続勃起症の主な原因 持続勃起症の主な原因 の表を参照)は以下のものである:

小児で最も一般的な原因は以下のものである:

多くの症例では,持続勃起症は特発性かつ再発性となることがある。

持続勃起症の評価

病歴

現病歴の聴取では,勃起の持続期間,部分的または完全な硬直の有無,疼痛の有無,および最近または過去の性器外傷を対象に含めるべきである。薬歴の聴取では,原因薬剤について検討すべきであり,レクリエーショナルドラッグおよび勃起障害の治療薬の使用について患者に率直に尋ねるべきである。

システムレビュー(review of systems)では,原因を示唆する症状がないか確認すべきであり,具体的には 排尿困難 排尿困難 排尿困難とは,排尿に疼痛または不快感を伴うことであり,典型的には鋭い灼熱感が生じる。一部の疾患では膀胱または会陰部に強い疼痛が生じる。排尿困難は女性では極めて頻度の高い症状であるが,男性にもみられ,年齢を問わず生じる。 排尿困難は膀胱三角部または尿道の刺激によって生じる。尿道の炎症または... さらに読む 尿路感染症 尿路感染症 (UTI) に関する序論 尿路感染症(UTI)は,腎臓( 腎盂腎炎)が侵される上部尿路感染症と,膀胱( 膀胱炎),尿道( 尿道炎),および前立腺( 前立腺炎)が侵される下部尿路感染症に分類される。しかしながら,実際には(特に小児では)感染部位の鑑別が困難または不可能な場合もある。さらに,感染はしばしば1つの領域から別の領域へと拡大する。尿道炎と前立腺炎も尿路が侵さ... さらに読む ),排尿遅延または頻尿(前立腺癌 前立腺癌 前立腺癌は通常腺癌である。典型的には,腫瘍の増殖によって血尿や疼痛を伴う閉塞が引き起こされるまで,症状はみられない。診断は直腸指診または前立腺特異抗原測定によって示唆され,経直腸的超音波生検によって確定される。スクリーニングについては議論があり,意思決定の共有が行われるべきである。大部分の前立腺癌患者の予後は,特にがんが限局または局在する場合(通常は症状の発生前),非常に良好であり,前立腺癌で死亡する患者と比較してそれ以外の原因で死亡す... さらに読む ),発熱および盗汗(白血病 白血病の概要 白血病は,未成熟または異常な白血球の過剰産生が起きることで,最終的に正常な血球の産生が抑制され,血球減少に関連する症状が現れる悪性疾患である。 白血化は,自己複製能が少し制限された造血前駆細胞レベルで生じることもあるが,通常は多能性幹細胞の段階で発生する。異常な増殖,クローン性増殖,異常な分化,およびアポトーシス(プログラム細胞死)の低下... さらに読む ),下肢の筋力低下(脊髄の病態)などが挙げられる。

既往歴の聴取では,持続勃起症と関連する既知の病態(持続勃起症の主な原因 持続勃起症の主な原因 持続勃起症の主な原因 の表を参照),特に血液疾患を同定すべきである。異常ヘモグロビン症(鎌状赤血球症 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症( 異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または肺病変(急性胸部症候群)を急性発症し,死に至ることがある。貧血がみられ,通常は末梢血塗抹標本で鎌状... さらに読む 鎌状赤血球症 または サラセミア サラセミア サラセミアは,ヘモグロビン合成障害を特徴とする先天性小球性溶血性貧血の一群である。αサラセミアは,アフリカ,地中海沿岸,または東南アジアに祖先をもつ人々に特に多くみられる。βサラセミアは,地中海沿岸,中東,東南アジア,またはインドに祖先をもつ人々に多くみられる。症状および徴候は,貧血,溶血,脾腫,骨髄過形成の加え,輸血を複数回経験している場合は鉄過剰に起因する。診断は遺伝子検査およびヘモグロビンの定量分析に基づく。重症型に対する治療とし... さらに読む )の家族歴について患者に尋ねるべきである。

身体診察

焦点を絞った性器診察を行って,硬直および圧痛の程度を評価するとともに,亀頭および尿道海綿体も障害されているか否かを特定すべきである。陰茎または会陰部の外傷,ならびに感染,炎症,または壊疽性変化の徴候に注意すべきである。

全身状態の観察では,精神運動性興奮に注意すべきであり,頭頸部の診察では,刺激物の使用と関連する瞳孔の散大がないか検討すべきである。腹部および恥骨上部を触診して,何らかの腫瘤または脾腫がないか確認すべきであり,直腸指診を行って,前立腺腫大やその他の病因がないか確認すべきである。神経学的診察は,脊椎の病態を示唆している可能性のある下肢の筋力低下またはサドル型の分布を示す錯感覚(saddle paresthesias)の徴候を検出する上で有用である。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 疼痛

  • 小児の持続勃起症

  • 最近の外傷

  • 発熱および盗汗

所見の解釈

ほとんどの症例では,病歴聴取により 勃起障害 勃起障害 勃起障害とは,性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できない状態である。大半の勃起障害は血管,神経,精神,または内分泌疾患に関連したものであり,さらに薬剤使用も原因となりうる。評価は典型的には基礎疾患のスクリーニングとテストステロン濃度の測定である。治療選択肢としては,ホスホジエステラーゼ阻害薬の服用,プロスタグランジンの尿道内または海綿体内投与,陰圧式勃起補助具,外科的インプラントなどがある。... さらに読む に対する薬物治療歴,違法薬物の使用,または 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症( 異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または肺病変(急性胸部症候群)を急性発症し,死に至ることがある。貧血がみられ,通常は末梢血塗抹標本で鎌状... さらに読む 鎌状赤血球症 もしくは鎌状赤血球形質の既往が明らかにされ,それらの症例は検査の適応ではない。

虚血性持続勃起症を呈する患者の身体診察では,典型的には陰茎海綿体に疼痛および圧痛を伴う完全硬直が認められ,亀頭および尿道海綿体は正常である。対照的に,非虚血性持続勃起症では疼痛も圧痛もみられず,陰茎の硬直は部分的な場合と完全な場合がある。

検査

原因が明らかでない場合は,異常ヘモグロビン症, 白血病 白血病の概要 白血病は,未成熟または異常な白血球の過剰産生が起きることで,最終的に正常な血球の産生が抑制され,血球減少に関連する症状が現れる悪性疾患である。 白血化は,自己複製能が少し制限された造血前駆細胞レベルで生じることもあるが,通常は多能性幹細胞の段階で発生する。異常な増殖,クローン性増殖,異常な分化,およびアポトーシス(プログラム細胞死)の低下... さらに読む リンパ腫 リンパ腫の概要 リンパ腫は,網内系およびリンパ系から発生する不均一な一群の腫瘍である。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別される( ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の比較の表を参照)。 リンパ腫はかつて, 白血病とは全く異なる疾患と考えられていた。しかし現在では,細胞マーカーとそれらのマーカーを評価するツールについて理解が深まったことで,これら... さらに読む 尿路感染症 尿路感染症 (UTI) に関する序論 尿路感染症(UTI)は,腎臓( 腎盂腎炎)が侵される上部尿路感染症と,膀胱( 膀胱炎),尿道( 尿道炎),および前立腺( 前立腺炎)が侵される下部尿路感染症に分類される。しかしながら,実際には(特に小児では)感染部位の鑑別が困難または不可能な場合もある。さらに,感染はしばしば1つの領域から別の領域へと拡大する。尿道炎と前立腺炎も尿路が侵さ... さらに読む ,その他の原因を対象とするスクリーニング検査を行う:

  • 血算

  • 尿検査および培養

  • 黒人および地中海系の男性ではヘモグロビン電気泳動

多くの臨床医は,薬物スクリーニング,陰茎海綿体の動脈血ガス分析,および duplex法による超音波検査 超音波検査のバリエーション 超音波検査では,信号発生器がトランスデューサーと一体になっている。信号発生器内部の圧電結晶が電気を高周波の音波に変換し,これが組織内に送られる。組織は音波を様々な程度で散乱,反射,および吸収する。反射されて返ってきた音波(エコー)が電気信号に変換される。コンピュータがこの信号を分析し,画面上に解剖学的画像を表示する。 超音波検査は機器の持ち運びが可能であり,広く利用でき,比較的安価で,安全である。放射線は使用しない。... さらに読む 超音波検査のバリエーション も施行している。Duplex法による陰茎超音波検査により,虚血性持続勃起症では海綿体血流がほとんどまたは全く認められず,非虚血性持続勃起症では正常から高度の海綿体血流が示される。超音波検査で海綿体動脈瘻や仮性動脈瘤などの解剖学的異常が明らかにされることもあり,これらは通常,非虚血性持続勃起症を示唆する。ときに,造影MRIが 動静脈瘻 動静脈瘻 動静脈瘻とは,動脈と静脈の間に異常な交通が生じた状態である。 動静脈瘻は,先天性(通常は比較的細い血管が侵される)のものと,外傷(例,銃創または刺傷)または動脈瘤による隣接静脈の侵食の結果として形成される後天性のものがある。 血液透析を必要とする末期腎臓病患者では,手術で動静脈瘻を作製し,透析に用いるバスキュラーアクセスとする。... さらに読む または 動脈瘤 大動脈瘤の概要 動脈瘤とは,動脈壁の脆弱化により動脈が異常に拡張した状態である。一般的な原因としては,高血圧,動脈硬化,感染,外傷,遺伝性または後天性の結合組織疾患(例,マルファン症候群,エーラス-ダンロス症候群)などがある。動脈瘤は通常無症状であるが,疼痛を引き起こしたり,虚血,血栓塞栓症,自然解離,破裂を来して致死的となることもある。診断は画像検査(... さらに読む 大動脈瘤の概要 の確定診断に有用となる。

持続勃起症の治療

治療はしばしば困難となり,ときに不成功に終わることもあり,病因が判明している場合も同様である。可能であれば常に,患者を救急診療部に紹介すべきであり,緊急に泌尿器科医が診察および治療を行うのが望ましい。他の疾患も治療すべきである。例えば,鎌状赤血球症の疼痛発作を治療することで,しばしば持続勃起症が消失する。持続勃起症自体の治療に用いられる方法は病型によって異なる。

虚血性持続勃起症

直ちに治療を開始すべきであり,典型的にはヘパリンを添加していないシリンジを用いて一方の陰茎海綿体の基部から血液を吸引するほか,しばしば生理食塩水の灌流とα受容体作動薬フェニレフリンの海綿体注射を行う。フェニレフリンの注射では,生理食塩水19mLに1%フェニレフリン(10mg/mL)1mLを添加して500µg/mL溶液を調製し,症状緩和が認められるか総投与量が1000µgになるまで5~10分毎に100~500µg(0.2~1mL)を注射する。吸引または注射の前に,陰茎背神経ブロックまたは局所浸潤麻酔による麻酔を施す。

これらの処置が無効に終わる場合,または持続勃起症が48時間以上持続している(したがって前述の処置では消失する可能性が低い)場合は,陰茎海綿体と亀頭との間または尿道海綿体と別の静脈との間に外科的にシャントを作製する治療法が可能である。

間欠性持続勃起症

間欠性持続勃起症は,急性の場合には,他の病型の虚血性持続勃起症と同じように治療する。 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症( 異常ヘモグロビン症)は,ほぼ黒人だけに生じる慢性溶血性貧血である。ヘモグロビンS遺伝子がホモ接合性に遺伝することによって生じる。鎌状の赤血球は血管の閉塞を引き起こし,溶血を起こしやすいことから,重度の疼痛発作,臓器虚血,および他の全身性合併症につながる。急性増悪(クリーゼ)が頻繁に起こることがある。感染症,骨髄無形成,または肺病変(急性胸部症候群)を急性発症し,死に至ることがある。貧血がみられ,通常は末梢血塗抹標本で鎌状... さらに読む 鎌状赤血球症 が原因であったいくつかの症例において,シルデナフィルの経口単回投与が奏効したことが報告されている。間欠性持続勃起症の再発予防に役立つ可能性がある治療法としては,ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト,エストロゲン,ビカルタミド,フルタミド,ホスホジエステラーゼ5阻害薬,およびケトコナゾールによる抗アンドロゲン療法がある。抗アンドロゲン療法の目標は,血漿テストステロン濃度を正常の10%未満まで低下させることである。これまでにジゴキシン,テルブタリン,ガバペンチン,およびヒドロキシカルバミドも試されており,いくらかの成功を収めている。

非虚血性持続勃起症

保存的治療(例,アイスパックおよび鎮痛薬)が通常奏効するが,無効の場合は選択的塞栓療法または手術の適応となる。

難治性持続勃起症

その他の治療が無効に終わった場合は,陰茎プロステーシスの挿入が可能である。

持続勃起症の要点

  • 持続勃起症には緊急の評価および治療が必要である。

  • 薬剤(処方薬およびレクリエーショナルドラッグ)および鎌状赤血球症が最も頻度の高い原因である。

  • 急性期の治療はα作動薬,穿刺による除圧,またはその両方による。

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