肝動脈での動脈瘤の発生はまれである。嚢状かつ多発性となる傾向がある。原因には感染, 動脈硬化 アテローム性動脈硬化 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む ,外傷, 血管炎 血管炎の概要 血管炎は血管の炎症であり,しばしば虚血,壊死,および臓器の炎症を伴う。血管炎は,あらゆる血管,すなわち動脈,細動脈,静脈,細静脈,または毛細血管を侵すことがある。具体的な血管炎疾患の臨床像は多彩であり,侵された血管の太さおよび部位,臓器病変の範囲,ならびに血管外の炎症の程度およびパターンによって異なる。... さらに読む などがある。(肝臓の血管障害の概要 肝臓の血管障害の概要 肝臓は二重の血液供給路を備えている。門脈(栄養素に富み,酸素濃度が比較的高い)からは,肝臓への血流の3分の2が供給される。肝動脈(酸素に富む)からは,残り3分の1の血流が供給される。肝静脈は肝臓から下大静脈への流出路である。門脈血流量が増大すると肝動脈血流量が減少し,その逆も成立する(肝動脈緩衝反応)。この相補的な二重の血液供給は,健常者... さらに読む も参照のこと。)
無治療では,動脈瘤が破裂して総胆管(胆道出血を引き起こす),腹膜(腹膜炎を引き起こす),または隣接する管腔臓器に開口し,死に至ることがある。胆道出血は 黄疸 黄疸 黄疸とは,高ビリルビン血症によって皮膚および粘膜が黄色化した状態である。ビリルビン値が約2~3mg/dL(34~51μmol/L)になると,肉眼的に黄疸が明らかとなる。 ( 肝臓の構造および機能と 肝疾患を有する患者の評価も参照のこと。) ビリルビンの大半は,ヘモグロビンが非抱合型ビリルビン(と他の物質)に分解される際に生成される。非抱合型ビリルビンは,血中でアルブミンと結合して肝臓に輸送され,肝細胞に取り込まれ,グルクロン酸抱合を受け... さらに読む ,上部 消化管出血 消化管出血の概要 消化管出血は,口腔から肛門までのいずれの部位でも発生する可能性があり,顕性の場合と不顕性の場合がある。臨床像は出血部位および出血速度によって異なる。( 静脈瘤および 消化管の血管性病変も参照のこと。) 吐血は,鮮紅色の血液を吐出する症状であり,上部消化管出血を示唆し,その出血源は通常,... さらに読む ,右上腹部痛を引き起こすことがある。
典型的な症状を認めた場合と 画像検査 肝臓および胆嚢の画像検査 胆道疾患の正確な診断には画像検査が不可欠であり,巣状の肝病変(例,膿瘍,腫瘍)の検出にも重要である。肝細胞障害によるびまん性疾患(例, 肝炎, 肝硬変)の検出および診断には限界がある。 従来からの超音波検査は,経腹的に施行され,一定時間の絶食を必要とし,構造的な情報は得られるものの,機能的な情報は得られない。一方で胆道系(特に胆嚢)を画像化する検査としては,最も安価で安全かつ最も高感度の方法である。超音波検査は,以下の目的で最善の検査法... さらに読む で動脈瘤を検出した場合は,本症を疑う。確定診断には,ドプラ超音波検査とその後の造影CT が必要である。
治療は塞栓術または外科的結紮術である。