大半の指の脱臼は近位指節間(PIP)関節で起こる;通常は過伸展により生じるため,通常は背側脱臼である。
指の脱臼は,背側脱臼,側方脱臼,または掌側脱臼の場合がある。支えている靱帯を様々な組合せで破壊することがある。ほとんどの場合,疼痛および腫脹に加え,明らかな変形を引き起こす。
X線前後像,側面像,および斜位像を撮影する。側面像は,患指を明確に他の指と離して撮影すべきである。
大半の脱臼に対して,指神経ブロック後に非観血的整復を行う。全てのPIP脱臼で,脱臼の整復後,負荷試験により側方の靱帯の安定性を評価する。
(脱臼の概要を参照のこと。)
背側脱臼
背側脱臼は過伸展により生じる。ときに掌側の関節構造が関節内へ転位する(掌側板損傷)。
掌側板損傷では,ときにX線撮影で中節骨から剥離した小さな骨片が認められる。
背側脱臼は,軸方向の牽引および掌側へ力をかけることにより整復する。掌側板損傷が疑われる場合,または非観血的整復が困難な場合(掌側板損傷を示唆)は,観血的整復が必要になることがある。
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背側脱臼には通常,15°に屈曲した状態での副子固定を3週間行う。
側方脱臼
伸ばした指関節に外転力または内転力が加わったときに,側方脱臼が起こる可能性がある。
関節には圧痛があり,側方からストレスが加わると不安定である。
関節を整復した後,35°屈曲して副子固定する。
掌側脱臼
掌側脱臼はまれであり,回旋した指関節に掌側への力が加わったときに起こる。
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通常,伸筋腱の中央索が断裂し,ボタン穴変形が生じる。
掌側脱臼は,軸方向の牽引と背側へ力を加えることにより整復した後,伸展位で1~2週間副子固定する。その後患者を評価して,断裂した伸筋腱の中央索を修復するために手術が必要かどうかを判定すべきである。
要点
指の脱臼(背側,側方,または掌側)は,支えている靱帯を様々な組合せで破壊することがある。
通常,変形が明らかである。
X線前後像,側面像,および斜位像を撮影して診断し,側面像では患指を他の指と離す。
大半の脱臼は,指神経ブロックを行った後に徒手整復する。
整復後,負荷試験を行い全てのPIP脱臼の安定性を評価する。