原発不明がん

執筆者:Robert Peter Gale, MD, PhD, DSC(hc), Imperial College London
レビュー/改訂 2020年 11月
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    1つまたは複数の部位でがんが検出され,その原発巣をルーチンの評価で同定できない場合,その患者には原発不明がんがあるとみなされる。原発不明がんはがん全体の最大7%を占めるが,がんに対する治療法は一般的には原発部位の特異的な組織に応じて決定されることから,治療上のジレンマをもたらす。

    原発巣の部位として最も頻度が高いのは,精巣,肺,結腸,直腸,および膵臓であるため,これらの部位の診察を徹底的に行わなければならない。

    原発巣を同定するために行う検査の種類としては以下のものがある:

    • 臨床検査

    • 画像検査

    • 免疫細胞化学染色および免疫ペルオキシダーゼ染色

    • 組織分析

    臨床検査には,血算,尿検査,便潜血検査,および血清生化学検査(男性における前立腺特異抗原の測定を含む)を含めるべきである。

    画像検査は,胸部X線,腹部CT,およびマンモグラフィーに限定すべきである。便中に血液が認められた場合は,上部および下部消化管の内視鏡検査を行うべきである。

    利用が増加している免疫細胞化学染色は,がん組織の検査に利用できる方法であり,原発部位の特定に役立ち,肺,結腸,または乳房から発生した腫瘍を同定できる可能性がある。さらに,免疫グロブリンに対する免疫ペルオキシダーゼ染色検査,染色体検査,および細胞表面マーカー検査は,様々な亜型の悪性リンパ腫の診断で参考になる場合があり,それらの腫瘍は,認識してリンパ節以外に生じる他の腫瘍(癌腫も含む)と鑑別するのが困難なことがある。α-フェトプロテインまたはβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンに対する腫瘍細胞の免疫ペルオキシダーゼ染色により,確実に治療できる胚細胞腫瘍が示唆されることがある。

    エストロゲンおよびプロゲステロン受容体に対する組織分析は,乳癌の同定に役立ち,PSA(前立腺特異抗原)に対する免疫ペルオキシダーゼ染色は,前立腺癌の同定に役立つ。

    正確な組織学的診断が得られない場合でも,一連の所見から起源が示唆されることがある。若年または中年男性で縦隔もしくは後腹膜に近い領域またはその中線部に発生した低分化癌は,精巣腫瘤が認められない場合でも,胚細胞腫瘍とみなすべきである。この種のがんの患者では,シスプラチンベースのレジメンにより50%近くで長期の無病期間が得られることから,この治療を行うべきである。他のほとんどの原発不明がんでは,このレジメンおよびその他の多剤併用化学療法レジメンに対する反応がわずかで,反応持続期間も短い(例,生存期間の中央値が1年未満)。

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