嚥下した様々な異物が胃または腸管に詰まることがある。一部の異物は閉塞または穿孔を引き起こす。診断は画像検査または内視鏡検査による。一部の異物は,内視鏡的な摘出が可能である。
(消化管異物の概要も参照のこと。)
胃に到達する異物の80~90%は自然に消化管を通過し,10~20%が手術以外の治療を要し,外科手術を要するのは1%以下である。このため,鋭利でない異物の大半には,無症状であれば保存的管理が適切である。しかしながら,全長が6cmを超えるか,直径が2.5cmよりも大きな異物は,まれにしか胃を通過しない(1)。
薬物が入った包みの嚥下(ボディパッキングとボディスタッフィングを参照)は,薬物の漏出とそれによる過剰摂取のリスクがあるため,大きな懸念となる。包みによって機械的閉塞が起きる可能性もある。
総論の参考文献
1.ASGE Standards of Practice Committee, Ikenberry SO, Jue TL, Anderson MA, et al: Management of ingested foreign bodies and food impactions.Gastrointest Endosc 73:1085–1091, 2011.doi: 10.1016/j.gie.2010.11.010.
胃内および腸管内異物の症状と徴候
食道を通過した異物は,穿孔または閉塞を引き起こさない限り,ほとんどが無症状である。胃または腸管に穿孔が起きれば,腹痛,筋性防御,反跳痛など腹膜炎の症候がみられる。腸管が閉塞すれば,腹痛,腹部膨隆,および/または嘔吐がみられる。
胃内および腸管内異物の診断
画像検査
内視鏡検査
異物を同定するために腹部X線を施行することがあるが,これは消化管内の異物の通過を追跡するのに有用である。腹部X線と同時に胸部X線を施行することも,穿孔の徴候(例,横隔膜下,縦隔内,または皮下の遊離ガス)を同定する上で重要である。とりわけ小児では,ポータブルの金属探知機が金属異物の位置特定に役立つ可能性がある。単純X線で陰性であった場合は,CTが役立つ可能性がある。
ボディーパッカーの疑いがある人物は通常,警察官によって医療機関に連行されてくる。単純X線撮影で消化管内に包みがあることを確認できる場合も多い。X線撮影で陰性であった場合は,CTが役立つ可能性がある。
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Image provided by Alan Gingold, DO.
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内視鏡検査により胃内異物の詳細な同定が可能である。
胃内および腸管内異物の治療
経過観察
ときに内視鏡的摘出術
まれに手術
管理方針は以下のいくつかの因子に依存する:
異物の位置
異物の性質
症状と徴候
胃内異物
鋭利な異物は,穿孔のリスクがあるため,胃にある段階で回収すべきである。円形の小さな異物(例,コイン)は,その性質にもよるが,一定時間は経過観察としてよい。患者は異物が自然に排出されていないか便を観察すべきである。便に異物の排出がみられなければ,48~72時間の間隔を置いてからX線撮影を施行し,それ以降も1週間毎に施行する。以下の異物は内視鏡的に摘出すべきである(1):
消化管損傷の症候を生じさせている電池
消化管損傷の徴候を生じさせていないが,胃内に48時間以上とどまっている円筒型およびボタン電池
先の尖った胃内異物
直径が2.5cmを超える胃内異物
胃内に3~4週間とどまっている異物
内視鏡で到達可能な範囲にある磁石(種類は問わない)
腸管内異物
小腸まで通過した異物の大半は,数週間かかることがあるにしても,通常は問題なく消化管を通過する。それらの異物は十二指腸の最初の弯曲部付近(duodenal sweep)や回盲弁前の生理的狭小化部位で停滞する傾向がある。ときに,爪楊枝や魚の骨などの異物が消化管内に何年も停滞して,肉芽腫や膿瘍の中から発見されることがある。磁石を1つだけ誤飲しても消化管合併症が起きる可能性は低いが,複数の磁石を誤飲すると,腸係蹄を挟んで互いに引き合う可能性があり,そうなると瘻孔形成,閉塞,壊死,穿孔につながりうるため,極めて危険である。
プッシュ式小腸内視鏡検査またはバルーン小腸内視鏡検査は,小腸にアクセスすることができ,一部の患者では小腸異物の治療に役立つことがある。
鋭利でない短い異物のうち,十二指腸より肛門側の小腸内にあって,1週間以上そこから動いておらず,かつ内視鏡的に管理できないもの,また,腸閉塞を起こした患者には,外科的摘出を考慮すべきである。
薬物の包み
薬物の包みを摂取して薬物中毒の症候が現れた患者は,直ちに内科的治療を受けるべきある。交感神経刺激薬の毒性,腸閉塞,穿孔,または薬物の漏出が疑われる場合は,迅速に外科的評価を行うべきである。無症状の患者は,入院させて集中治療室で注意深くモニタリングすべきである。
薬物の包みの摂取に対しては,包みに穴が開くリスクが高いため,内視鏡的摘出術は推奨されない。異物の排出を促進するために下剤としてポリエチレングリコール溶液を経口投与する全身洗浄(whole-body irrigation)を推奨する医師もいる一方,外科的な摘出を勧める医師もいる。最良の方法は明確ではない。
治療に関する参考文献
1.ASGE Standards of Practice Committee, Ikenberry SO, Jue TL, Anderson MA, et al: Management of ingested foreign bodies and food impactions.Gastrointest Endosc 73:1085–1091, 2011.doi: 10.1016/j.gie.2010.11.010.
胃内および腸管内異物の要点
食道を通過した異物は,穿孔または閉塞を引き起こさない限り,無症状である。
画像検査は,異物を同定できる場合があり,消化管内の異物の通過を追跡するのに有用である。
管理方針は異物の性質によるが,鋭利な異物は消化管にある段階で回収すべきである。
消化管に詰まった薬物の包みは,重篤な毒性を引き起こし,死に至る可能性もあるため,たとえ無症状であっても,綿密なモニタリングが必要である。
破裂のリスクが高いため,薬物の包みに対する内視鏡的摘出術は推奨されない。