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新生児一過性多呼吸

(新生児の速い呼吸;新生児湿性肺症候群)

執筆者:

Arcangela Lattari Balest

, MD, University of Pittsburgh, School of Medicine

レビュー/改訂 2021年 7月
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新生児一過性多呼吸は、出生後、肺の中に過剰な液体があるために一時的な呼吸困難が起こって、しばしば血液中の酸素レベルが低くなる病気です。

  • この病気は、早産児と特定の危険因子がある正期産児で発生する可能性があります。

  • この病気の新生児の呼吸は速く、息を吐くときにうめくような音を出す場合があり、血液中に酸素が十分にないと皮膚が青みがかった色に見えることがあります。

  • 診断は呼吸困難に基づいて行い、胸部X線検査によって確定することがあります。

  • この病気の特徴は、一時的(一過性)であることで、患児の多くは2~3日以内に完全に回復します。

  • 酸素投与による治療が必要なケースもあり、少数ですが呼吸の補助を必要とする新生児もいます。

多呼吸とは、呼吸数の増加を意味します。一過性多呼吸とは、一時的な呼吸数の増加を意味します。

新生児一過性多呼吸は、 早産児 早産児 早産児とは、在胎37週未満で生まれた新生児のことです。生まれた時期によっては、早産児の臓器は発達が不十分で、子宮外で機能する準備がまだできていないことがあります。 早産の既往、多胎妊娠、妊娠中の栄養不良、出生前ケアの遅れ、感染症、生殖補助医療(体外受精など)、高血圧などがある場合、早産のリスクが高くなります。 多くの臓器の発達が不十分であるため、早産児では呼吸したり哺乳したりすることが難しく、脳内出血、感染症や他の異常が起こりやすくなり... さらに読む 在胎 在胎期間 新生児の問題は、以下の時期に生じることがあります。 胎児として成長している出生前 陣痛および分娩時 出生後 新生児の約9%は、 早産児であること、胎児期から新生児期への移行時に起きる問題、低血糖、呼吸困難、感染症などの異常ゆえに、出生後に特別なケアを必要とします。専門的なケアは、しばしば... さらに読む 37週より前に出生)や特定の危険因子のある正期産児(在胎37~42週で出生)でより多くみられます。例えば、正期産児における新生児一過性多呼吸は 帝王切開 帝王切開 帝王切開では、母親の腹部と子宮を切開して胎児を外科手術により取り出します。 米国では分娩の最大30%が帝王切開で行われています。 以下のような場合には帝王切開が母体や胎児、あるいはその両方にとって経腟分娩よりも安全であると考えられるため、帝王切開を行います。 遷延分娩(分娩の進行が長引く) 胎児の 姿勢が異常な場合(骨盤位など) さらに読む 帝王切開 が行われた場合、特に母親が帝王切開前に陣痛を経験しなかった場合(つまり、母親が計画的な帝王切開を受けた場合)によくみられます。また、妊娠中に母親が 糖尿病 妊娠中の糖尿病 妊娠前から糖尿病にかかっている女性の場合、糖尿病にかかっている期間や、高血圧や腎障害などの糖尿病の合併症がみられるかどうかによって、妊娠中に合併症を起こすリスクは異なります。妊娠は糖尿病(1型および2型)を悪化させる傾向がありますが、糖尿病の合併症(眼、腎臓、神経の障害)を誘発したり悪化させたりすることはありません。 ( 糖尿病も参照のこと。) 妊婦の少なくとも5%が妊娠中に糖尿病を発症します。これを妊娠糖尿病といいます。妊娠糖尿病は以... さらに読む 喘息 妊娠中の喘息 妊娠が喘息に与える影響は様々です。妊娠すると、症状が改善することより悪化することの方がわずかに多くなりますが、妊婦が重度の喘息発作を起こすことはほとんどありません。 ( 喘息も参照のこと。) 喘息が妊娠に与える影響も様々です。喘息が重度でコントロール不良の場合、以下のリスクが上昇します。 早産 妊娠高血圧腎症(妊娠中に発症する高血圧の一種) さらに読む 、またはその両方を患っていた正期産児でも頻度が高まります。

生まれる前、肺胞は液体で満たされています。この肺胞を空気で満たし、新生児が正常な呼吸ができるようにするためには、生まれた直後にこの液体が肺から取り除かれなくてはいけません。これは、分娩時に分泌されるホルモンが、肺胞の細胞による液体の吸収を促すからです。液体の一部は、経腟分娩の間に胸部にかかる圧力により肺から押し出されます。大半の液体は、肺胞表面の細胞が直接、速やかに再吸収します。この液体の再吸収がすぐに行われないと、肺胞には部分的に液体が残り、新生児は呼吸困難に陥ることがあります。

症状

一過性多呼吸の新生児は、出生後ほぼすぐに呼吸困難(呼吸窮迫)を起こします。最もよくみられる症状は速い呼吸(多呼吸)です。

診断

  • 胸部X線検査

  • 必要に応じて血液検査や血液培養

早産児の血液感染(敗血症 新生児の敗血症 敗血症は、血流を通じて広がった感染に対する全身の重篤な反応です。 敗血症にかかった新生児は、一般に元気がない、つまりぼんやりしていて哺乳が不良であり、多くの場合皮膚が灰色になるほか、発熱または低体温がみられることもあります。 診断は症状と血液、尿、または髄液中の 細菌、 ウイルス、または 真菌の存在に基づいて下されます。 治療では抗菌薬が投与されるほか、支持療法として、輸液、赤血球や血漿の輸血、呼吸補助(人工呼吸器を使用する場合がありま... さらに読む )、 肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む 肺炎の概要 、または 呼吸窮迫症候群 新生児呼吸窮迫症候群 呼吸窮迫症候群は早産児にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が生産されないか不足しているために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こります。 早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなります。 呼吸窮迫症候群の新生児には重い呼吸困難がみられ、血液中の酸素が不足しているため皮膚が青っぽくなります。 診断は、呼吸困難の有無、血液中の酸素レベル、および胸部X線検査の結果に基づい... さらに読む など、その他の病気でも同様の症状がみられる可能性があります。そのため、このような病気を除外するために胸部X線検査や血液検査と血液培養が行われます。

予後(経過の見通し)

一過性多呼吸を起こした新生児の多くは生き延びて回復します。しかし、治療を行っても、少数の乳児では肺の高血圧(遷延性肺高血圧症 新生児遷延性肺高血圧症 新生児遷延性肺高血圧症とは、肺につながる動脈が出生後も狭い(収縮した)状態が続くことが原因で、肺に十分な量の血流が行きわたらず、結果的に血流中の酸素量が不足する重篤な病気です。 この病気は、正期産児または過期産児に重度の呼吸困難(呼吸窮迫)を引き起こします。 呼吸は速く、皮膚や唇は青みがかった色(または灰色がかった蒼白)になります。 診断は心エコー検査で確定します。 高濃度の酸素投与によって肺につながる動脈を開く(拡張する)治療を行いま... さらに読む )または肺の虚脱(気胸 新生児の気胸 気胸とは、肺から空気が漏れて肺の周りの胸腔に空気がたまった状態です。 この病気は、呼吸窮迫症候群や胎便吸引症候群などの肺の病気で持続陽圧呼吸(CPAP)や人工呼吸器を使用している新生児に起こる可能性があります。 肺がつぶれて呼吸困難になり、血圧が下がります。 診断は、呼吸困難の有無、胸部X線検査の結果に加え、通常は新生児の血液中の酸素と二酸化炭素の量に基づいて下されます。 呼吸困難のある新生児には酸素を投与し、ときに針とシリンジまたは胸... さらに読む )が生じます。

治療

  • 酸素

  • ときに、他の方法による呼吸補助

一過性多呼吸を起こした新生児の多くは、2~3日以内に完全に回復します。場合によっては、両鼻腔に入れた二又のチューブから酸素を投与して、室内の空気より高い酸素濃度の空気を吸えるようにする必要があります。

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