Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

honeypot link

羊水塞栓症

執筆者:

Julie S. Moldenhauer

, MD, Children's Hospital of Philadelphia

レビュー/改訂 2021年 7月
プロフェッショナル版を見る

羊水塞栓症では、胎児の細胞や組織が含まれる羊水が母体の血流に入り、母体に重篤な反応を引き起こします。(羊水とは、子宮内の胎児の周囲を満たしている液体のことです。)この反応は肺や心臓に損傷を与え、過度の出血を引き起こすことがあります。

羊水塞栓症は極めてまれです。通常、妊娠後半に起こりますが、第1または第2トリメスター【訳注:第1トリメスターは日本でいう妊娠初期に、第2トリメスターは妊娠中期にほぼ相当】に妊娠が中絶された際に起こることもあります。

危険因子

多くの女性は陣痛中や分娩中に胎児の細胞や組織にさらされており、リスクを増大させる状態は羊水塞栓症が発生する頻度よりもはるかに多くみられます。したがって、羊水塞栓症が一部の女性で発生し、他の女性では発生しない理由はよく分かっていません。

以下の場合にリスクが上昇します。

症状

羊水や胎児の組織は母体に重篤な反応を引き起こします。反応は通常、陣痛および分娩中か、その直後に起こります。心拍数の増加、不整脈、低血圧、呼吸困難などが起こる可能性があります。呼吸が止まったり(呼吸不全 呼吸不全 呼吸不全は、血液中の酸素レベルが危険なほど低くなったり、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど高くなる病気です。 呼吸不全の原因としては、気道をふさぐ病気、肺組織を損傷する病気、呼吸を制御する筋肉を衰えさせる病気、呼吸を促す仕組みが抑制される病気などがあります。 激しい息切れ、皮膚の青みがかった変色、錯乱または眠気などの症状がみられることがあ... さらに読む )、心臓が止まったり(心停止 心停止と心肺蘇生 心停止とは、心臓から脳やその他の臓器および組織に血液と酸素が送り出されなくなった状態です。いったん心停止が起きても、特に直ちに治療が開始された場合は、ときに蘇生できる可能性があります。しかし、酸素を多く含む血液が脳に供給されない時間が長くなるほど、蘇生の可能性は下がっていき、蘇生できた場合も脳に障害が残る可能性が高くなります。... さらに読む 心停止と心肺蘇生 )する可能性もあります。羊水塞栓症の20%の女性が死亡します。

診断

  • 医師による評価

羊水塞栓症は迅速な診断と治療が不可欠です。

医師は、症状に基づいて羊水塞栓症の診断を下しますが、特に以下の症状がみられる場合に診断されます。

  • 突然の心停止

  • 突然の呼吸困難

  • 低血圧

  • コントロール不能な広範囲の出血

治療

  • 支持療法

母体には輸血および血液成分の投与が行われることがあります。血液凝固因子(血液の凝固を助ける)の投与により救命につながることがあります。妊婦に呼吸補助を行ったり、心臓の収縮を助ける薬剤を投与しなければならないこともあります。

胎児を直ちに鉗子または吸引器を用いて娩出する場合や、帝王切開を行う場合があります。このような娩出による母体の経過については改善することも悪化することもないとみられています。しかし、胎児が子宮の外で生存するのに十分な週齢である場合には、胎児の救命につながります。

プロフェッショナル版を見る
プロフェッショナル版を見る
quiz link

医学知識 クイズにチャレンジ

Take a Quiz! 
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS
TOP