神経筋接合部疾患の概要

(神経筋伝達の病気)

執筆者:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center
レビュー/改訂 2022年 4月
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    神経と筋肉の接続部を神経筋接合部といいます。神経筋接合部では、神経線維の末端が、運動神経終板と呼ばれる筋膜上の特殊な部位とつながっています。神経信号を伝えるため、神経はアセチルコリンという化学物質(神経伝達物質)を神経筋接合部に放出します。運動神経終板にはアセチルコリンの受容体があり、筋肉はこれを介してアセチルコリンに反応します。接合部で神経が筋肉を刺激すると、筋肉内に電気信号が流れて、収縮が起こります。アセチルコリンが信号を伝えた後は、それ以上筋肉が刺激され続けないようアセチルコリンは分解されます。

    末梢神経系の概要も参照のこと。)

    知っていますか?

    • 化学兵器に用いられる神経ガスは、神経と筋肉の間の信号の伝達を妨げます。

    神経筋接合部の機能不全が起こる病気としては、以下のものがあります。

    さらに、多くの薬物が神経筋接合部の機能障害を引き起こす可能性があります。そのよう薬物としては、極めて高用量で使用した場合の一部の抗菌薬や、特定の殺虫剤(有機リン)、化学兵器(サリンガスやノビチョクなど)、クラーレなどがあります。ノビチョクはロシアで開発され、暗殺目的で使用されています。クラーレは手術中に筋肉を弛緩させるのに役立つほか、毒矢の先端に塗って対象を麻痺させ殺傷する目的で使用されています。これらの物質のいくつかは、信号が神経から筋肉に伝えられた後に起こるべきアセチルコリンの分解を妨げます。

    神経筋接合部疾患は、典型的には神経細胞の活動を低下させ、筋力低下を引き起こしますが、感覚には影響を及ぼしません(すなわち、感覚を失わせることもなければ、ピリピリやチクチクなどの異常感覚を引き起こすこともありません)。

    神経筋接合部疾患の中には、神経の活動を低下させて筋力低下を引き起こす病気もあれば、以下のように神経の活動を高める病気もあります。

    • スティッフパーソン症候群:体が生産した抗体が、脳や脊髄にある神経細胞を攻撃し、これらの神経細胞による筋肉の運動の調節を妨げます。その結果、筋肉が刺激され続け、硬くなります。

    • アイザックス症候群:神経から筋肉に繰り返し電気信号が送られるようになります。その結果、筋肉が絶えず過剰に刺激されます。筋肉は硬くなりピクピクした動きが生じ、運動や日常的な身体活動が難しくなったりできなくなったりします。

    スティッフパーソン症候群の原因になる変化は主に脳と脊髄(中枢神経系)で起きますが、神経筋接合部にも影響を及ぼします。その結果として、筋肉に持続的な刺激と収縮が起こります。

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