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成人の尿失禁

執筆者: Patrick J. Shenot, MD, Associate Professor and Deputy Chair, Department of Urology, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

尿失禁とは、自分では意図せずに尿が漏れることです。尿失禁は、男女とも年齢を問わず起きる可能性がありますが、女性と高齢者でより多くみられ、高齢女性の約30%、高齢男性の約15%が尿失禁を起こしています。尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化の一部ではありません。尿失禁は、利尿効果のある薬を服用した場合のように突然で一時的なこともあれば、長期にわたって持続すること(慢性)もあります。慢性の尿失禁であっても、ときに軽減することがあります。

小児の尿失禁は別の節で取り扱います。

尿失禁には、いくつかのタイプがあります。

  • 切迫性尿失禁では、切迫した我慢できない尿意の直後にコントロールできない尿漏れが起こります(中等量から大量に)。夜間に尿意を感じて目を覚ますこと(夜間頻尿)や、夜間の尿失禁を起こすことがよくあります。

  • 腹圧性尿失禁は、せきやくしゃみをしたり、笑ったり、体を曲げたり、物を持ち上げたりしたときに腹腔内の圧力が急激に上昇し、それによって引き起こされる尿漏れです。漏れる量は通常は少量から中等度です。

  • 溢流性尿失禁は、過度に充満した膀胱から尿が漏れ出る状態です。通常は少量ですが、持続的に漏れ出すため、総量としては大量の尿が排出されます。

  • 機能性尿失禁は、排尿のコントロールとは無関係の認知機能や身体機能の問題が原因で起こる尿漏れです。例えば、アルツハイマー病による認知症の人は、尿意を認識できなかったり、トイレの場所が分からなかったりします。また、寝たきりの人はトイレに行くことができない場合や、尿びんに手が届かない場合があります。

尿失禁はこのように分類されますが、複数の種類の尿失禁が同時に起きることもよくあります。その場合は、複合性尿失禁であると診断されます。

排尿のコントロール

成人の尿失禁の原因

尿失禁が生じる仕組みはいくつかあります。しばしば複数の仕組みが関連しています。

  • 尿道括約筋または骨盤底筋の筋力低下(膀胱出口部の機能不全)

  • 膀胱からの尿の排出路が何かによって閉塞している(下部尿路閉塞)

  • 膀胱壁の筋肉のけいれんまたは活動亢進(ときに過活動膀胱と呼ばれる)

  • 膀胱壁の筋肉の筋力低下または活動低下

  • 膀胱壁の筋肉と尿道括約筋の協調不全

  • 尿量の増加

  • 機能的な問題

膀胱壁の筋肉の筋力低下や活動低下がある場合、下部尿路閉塞がある場合、または特にその両方がみられる場合は、それにより排尿ができなくなることがあります(尿閉)。尿閉により膀胱が過度に充満して尿の漏出が起こるため、逆説的ですが溢流性尿失禁が生じます。

様々な原因(糖尿病、利尿薬の使用、アルコールやカフェイン含有飲料の過剰な摂取など)で尿量が増加すると、失禁の量の増加、尿失禁の誘発、さらには一過性の尿失禁の発生につながる可能性があります。しかし、尿量の増加により慢性尿失禁が起こることはまずありません。機能的な問題があると、失禁する尿の量が多くなるのが通常です。しかし、機能的な問題だけで永続的な尿失禁が引き起こされることはまれです。

全体として、尿失禁の最も一般的な原因は以下のものです。

  • 小児および若い年成人の過活動膀胱

  • 女性の出産による骨盤底筋の筋力低下

  • 中年男性の下部尿路閉塞

  • 高齢者の脳卒中や認知症などの機能性疾患

尿失禁の主なメカニズム

メカニズム

尿道括約筋または骨盤底筋の筋力低下(膀胱出口部の機能不全)

萎縮性尿道炎、腟炎、またはその両方

薬剤

骨盤底筋の筋力低下(複数回の経腟分娩や骨盤内手術などが原因)

前立腺の手術

閉塞(下部尿路閉塞)

前立腺肥大症(前立腺が大きくなる良性の病気)または前立腺がん

膀胱結石

宿便

薬剤

膀胱壁の筋肉の活動亢進(過活動膀胱)

膀胱の過敏性(感染症、結石、まれにがんが原因)

排尿をコントロールする脳の中枢に影響を及ぼす可能性がある病気(脳卒中、認知症、多発性硬化症など)

頸椎症または脊髄機能障害(脊髄を圧迫し、その結果、膀胱機能が損なわれることがある)

下部尿路閉塞

膀胱壁の筋肉の活動低下

神経損傷(椎間板ヘルニア、その他の脊髄の病気、手術、腫瘍、外傷、糖尿病、アルコール依存症など)

薬剤

長期にわたる下部尿路閉塞

女性では、しばしば原因不明

膀胱壁と尿道括約筋の協調不全

膀胱につながる脊髄または脳神経路の損傷

機能的な問題

認知症

抑うつ

尿意の自覚を低下させる可能性がある向精神薬(抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、鎮静薬や睡眠補助薬のように眠気をもたらす薬、三環系抗うつ薬など)

身体動作の制限(けが、筋力低下、拘束、脳卒中、他の神経疾患、筋骨格系疾患などが原因)

状況的な制限(近くにトイレがない、移動中であるなど)

尿量の増加

糖尿病や尿崩症などの病気

利尿薬の使用(通常はフロセミド、ブメタニド、テオフィリン、ただしサイアザイド系利尿薬は除く)

カフェイン含有飲料(コーヒー、茶、コーラ、その他のソフトドリンク)またはアルコールの過剰摂取

尿失禁を引き起こす可能性がある主な薬剤

メカニズム

尿道括約筋または骨盤底筋の筋力低下(膀胱出口部の機能不全)

アルファ遮断薬(アルフゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、タムスロシン、テラゾシンなど)。尿道括約筋を弛緩させる作用がある。

ホルモン療法(通常は経口によるエストロゲン/プロゲスチン併用療法)。骨盤底筋および支持組織の萎縮に寄与する可能性がある。

ミソプロストール。尿道括約筋を弛緩させる作用がある。

閉塞(下部尿路閉塞)

アルファ作動薬(プソイドエフェドリンなど)。膀胱および前立腺の筋肉を収縮させる可能性がある。

膀胱壁の筋肉の活動低下

抗コリン作用を有する薬(抗ヒスタミン、抗精神病薬、ベンツトロピン、三環系抗うつ薬など)。膀胱の筋肉収縮を阻害する。

カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミルなど)。膀胱の筋肉収縮を阻害する。

オピオイド。膀胱の収縮性を阻害すると考えられる。

知っていますか?

  • 多くの人が、尿失禁は普通の老化現象であると誤解して、放置しています。

成人の尿失禁の診察

尿失禁は通常、生命を脅かす病気を示唆するものではありませんが、困惑のもとになり、不必要に活動の制限をもたらし、生活の質を低下させることがあります。また、まれですが、突然の尿失禁は脊髄の病気の症状である可能性もあります。以下では、どのようなときに医師の診察を受ける必要があるか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

尿失禁がみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要です。具体的には以下のものがあります。

  • 脊髄損傷の症状(脚の筋力低下や感覚消失、性器周辺や肛門周辺の感覚消失)

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに病院の救急外来を受診する必要があります。警戒すべき徴候がない場合は、主治医に電話して相談してください。他の症状や判明している他の既知の病気に基づいて、どれくらい早急に診察を受ける必要があるかを医師が判断します。一般に、尿失禁が唯一の症状である場合、1週間程度の遅れは問題になりません。

ほとんどの人が主治医に尿失禁があると伝えることを恥ずかしいと感じます。なかには尿失禁は加齢に伴う正常な変化と信じている人もいます。しかし、尿失禁は治療によって対処することが可能であり、たとえしばらくの期間にわたって持続していた尿失禁や高齢者で起こる尿失禁も、例外ではありません。尿失禁を煩わしいと感じたり、日常生活の妨げになったり、尿失禁のせいで社会活動を断念したりするようであれば、医師の診察を受ける必要があります。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、尿失禁の原因と必要になる検査を推測することができます。

医師は尿漏れの状況について、その量、発生する時刻、きっかけとなる要因(せき、くしゃみ、いきみなど)などを質問します。さらに、尿意を感じるかどうか、感じる場合は普通の尿意か、それとも突然の切迫した尿意かを尋ねます。また、おおよその尿漏れの量を尋ねることもあります。また、排尿の他の問題があるかどうか、例えば排尿時の痛みや灼熱感、頻尿、尿が出にくい、尿の勢いがないなどの問題がないか尋ねます。

医師は患者に対し、排尿習慣について1日か2日、記録を取るように指示することもあります。この記録は排尿日誌と呼ばれます。排尿のたびに、量と時間を記録します。尿失禁が起きた後には、尿失禁に関連する行為、特に飲食、薬剤使用、睡眠についても記録します。

医師は、尿失禁を引き起こすことが知られている他の病気、例えば認知症、脳卒中、尿路結石、脊髄や他の神経の病気、前立腺の病気などがないかについて質問します。一部の薬は尿失禁を引き起こしたり尿失禁に関与したりすることがあるため、医師は患者が服用している薬を把握する必要があります。女性には、出産回数と出産方法、また合併症についての質問を行います。すべての患者に対し、過去の骨盤や腹部の手術について質問し、男性では特に前立腺の手術について尋ねます。

身体診察により、考えられる原因を絞り込むことができます。脚の筋力、感覚、反射、性器や肛門の周辺の感覚を検査し、尿禁制(排尿のコントロール)を困難にする神経と筋肉の問題を探します。

女性では、内診を行い、萎縮性腟炎や骨盤底筋の筋力低下など、尿失禁の原因になりうる異常を探します。男女ともに直腸診を行い、便秘の徴候や直腸につながる神経の損傷の徴候を探します。男性では、前立腺肥大症やときに前立腺がんが尿失禁の一因である可能性があるため、直腸診の際に前立腺も調べます。腹圧性尿失禁があるかどうかをみるために、膀胱が一杯になった状態でせきをするよう指示されることもあります。女性では、内診中にこの手技を行う場合もあり、骨盤内の構造物を医師が指で支えることで尿漏れが無くなるかどうかをみます。

検査

しばしば、身体診察で得られる所見が尿失禁の原因や寄与している要因の特定に役立ちます。しかし、診断を確定するには、多くの場合いくつかの検査が必要になります。決まって行われる検査には以下のものがあります。

  • 腎機能の血液検査と、ときに他の血液検査

  • 排尿後の残尿量(カテーテルまたは超音波プローブを用いて、排尿後に膀胱内に残っている尿の量を測定する)

  • ときに尿流動態検査

尿流動態検査としては、膀胱容量の測定、尿流率の測定、膀胱内圧の測定などがあり、臨床的な評価と上述の検査で尿失禁の原因が判明しなかった場合に行われます。

  • 膀胱容量の測定は、切迫性尿失禁を確定し、原因が過活動膀胱であるかどうかを判定するために行います。まず膀胱カテーテルを尿道から膀胱に通します。そして膀胱に水を注入していき、患者が強い尿意を感じるか、膀胱が収縮するまでに注入できる水の量を測定します。

  • 最大尿流率の測定は、男性において尿失禁の原因が下部尿路閉塞(通常は前立腺の病気が原因)であるかどうかを調べるために行います。特別な装置(尿流量測定器)に排尿してもらい、尿流の速度と排出された尿量を測定します。

  • 膀胱内圧の測定は、他のいずれの検査でも尿失禁の原因が判明しない場合に行います。膀胱内圧測定は、膀胱を様々な量の水で満たし、膀胱内部の圧力を測定する検査です。膀胱内圧測定は多くの場合、筋電図検査(括約筋の機能を評価できる検査)とともに行われます。特殊な装置がある一部の施設では、括約筋機能や他の膀胱内圧と同時に、膀胱の収縮力も測定することができます。

尿流動態検査は重要ですが、結果から薬物治療に対する反応を常に予測できるわけではなく、また複数の原因の相対的な重要度を評価するものでもありません。

成人の尿失禁の治療

  • 特定の原因の治療

  • ときに特定の種類の尿失禁を治療する薬

  • 尿失禁による不便を軽減する一般的な対策

しばしば尿失禁の具体的な原因に対する治療が可能です。尿失禁の不便を軽減するための一般的な対策がすべての人に提案されます。

薬が原因である場合は、違う薬に切り替えたり投与スケジュールを変更したりすることで、不都合が軽減される場合があります(例えば、近くにトイレがある状況で薬の効果が現れるように、利尿薬の投与時間を変更する)。しかし、薬の服用を中止したり、用量や投与スケジュールを変更したりする前に、主治医に相談する必要があります。

の使用は、一部の種類の尿失禁に対してしばしば有効ですが、一般的な処置の代わりにするのではなく、あくまで補助的に用いるべきです。使用される薬としては、膀胱壁の筋肉を弛緩させるものや、括約筋の緊張を高めるものがあります。切迫性または溢流性尿失禁がある男性では、下部尿路閉塞を治療するために、尿道括約筋を弛緩させる薬を使用する場合があります。

一般的な対策

尿失禁の種類と原因にかかわらず、通常はいくつかの一般的な対策が有用です。

  • 水分摂取の調整

  • 膀胱トレーニング

  • 骨盤底筋の運動

水分摂取のタイミングを制限する場合があります(例えば、就寝前の3~4時間や外出前は摂取を控える)。膀胱を刺激する液体(カフェイン含有飲料など)の摂取を控えるように医師が指示することもあります。しかし、尿が濃縮されると膀胱を刺激するため、1日当たり1500~2000mLの水分を摂取する必要があります。

膀胱トレーニングとは、起きている間は決まったスケジュールに従って排尿する方法です。医師と患者が協力して、2~3時間毎に排尿し、その他の時間はリラックスや深呼吸などにより尿意を我慢するスケジュールを確立します。尿意をうまく我慢できるようになったら、排尿の間隔を少しずつ伸ばしていきます。認知症やその他の認知障害の人を介護している場合は、排尿自覚刺激行動療法と呼ばれる同様の方法を用いることができます。この方法では、排尿する必要があるかどうか、尿失禁をしたかどうかを特定の間隔で尋ねます。

骨盤底筋の運動ケーゲル体操)がしばしば有効で、特に腹圧性尿失禁に対して効果があります。この運動は、正しい筋肉(つまり尿道と直腸周囲の尿流を止める筋肉)を動かしていることを自覚しながら行います。これらの筋肉を1~2秒ほどきつく引き締めた後、約10秒間緩めます。この運動を10回ほど繰り返して1セットとし、1日に3セット行います。筋肉をきつく締めておける時間が徐々に長くなり、やがて毎回約10秒間、収縮を維持できるようになります。正しい筋肉のコントロール法を学ぶことは難しい場合があるため、医師がやり方を指導したり、バイオフィードバックや電気刺激(電流によって正しい筋肉を刺激する骨盤底筋運動)の利用を勧めたりすることがあります。

尿失禁の治療に用いられる主な薬剤

薬剤

作用機序

備考

尿道括約筋または骨盤底筋の筋力低下(膀胱出口部の機能不全)による腹圧性尿失禁が対象

デュロキセチン

尿道括約筋の収縮の増強を促す

他の多くの薬ほど徹底的な研究が行われていない

イミプラミン(三環系抗うつ薬)

尿道括約筋の収縮の増強および過活動膀胱の弛緩を促す(抗コリン作用*)

過活動膀胱および切迫性尿失禁にも使用される

プソイドエフェドリン(アルファ作動薬)

尿道括約筋の収縮の増強を促す

不安、不眠、男性では排尿不能を引き起こす可能性あり

男性の下部尿路閉塞に起因する切迫性または溢流性尿失禁が対象

アルファ遮断薬

  • アルフゾシン

  • ドキサゾシン

  • プラゾシン

  • シロドシン

  • タムスロシン

  • テラゾシン

尿道括約筋の弛緩を促す

尿流速度を高める傾向があり、膀胱の完全な排尿を促す

血圧低下または疲労を引き起こす可能性あり

5アルファ還元酵素阻害薬

  • デュタステリド

  • フィナステリド

肥大した前立腺の縮小を促す

効果が出るまで数週間から数カ月かかる可能性あり

ときに性欲減退または勃起障害の一因になる

ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬

  • タダラフィル

この薬が前立腺肥大症に作用する仕組みは詳細には分かっていない

低用量を毎日服用(勃起障害の治療にも用いられる)

切迫性または腹圧性尿失禁を伴う過活動膀胱に対して

ダリフェナシン

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用

ジサイクロミン

不随意筋を弛緩させる

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用*)

他の多くの薬ほど徹底的な研究が行われていない

フェソテロジン

膀胱の容量を増大し、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用

他の多くの薬ほど徹底的な研究が行われていない

ヒヨスチアミン

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用*)

他の多くの薬ほど徹底的な研究が行われていない

イミプラミン(三環系抗うつ薬)

尿道括約筋の収縮の増強を促す

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用*)

特に夜間の尿失禁に対して有用

ミラベグロン(ベータ作動薬)

膀胱壁を弛緩させる

他の多くの薬ほど徹底的な研究が行われていない

血圧を上昇させることがある

A型ボツリヌス毒素

(ボツリヌス毒素の一種)

膀胱の不随意収縮をもたらす膀胱の筋肉の神経活動を遮断する

膀胱に挿入した膀胱鏡を介して膀胱壁に注射する

神経因性疾患(多発性硬化症など)を原因とする過活動膀胱を有する成人に対し、他の薬が無効であるか、副作用が多発する場合に尿失禁の治療として使用する

オキシブチニン

不随意筋の弛緩や抗コリン作用*など多くの作用があり、膀胱容量を増大させる作用や膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する作用もある

最も有効な薬である可能性がある

錠剤、皮膚パッチ剤、ゲル剤で使用できる

ソリフェナシン

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用

トルテロジン

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用

トロスピウム

膀胱の容量を増大させ、膀胱壁の筋肉のけいれんを軽減する(抗コリン作用*)

溢流性尿失禁を伴う膀胱壁の筋肉の筋力低下が対象

ベタネコール

膀胱壁の筋肉の収縮を促す

通常は効果がない

紅潮、腹部けいれん、心拍数の増加を引き起こす可能性あり

*抗コリン作用(口腔乾燥、便秘、ときにかすみ目または錯乱)は煩わしい場合があり、特に高齢者ではその傾向があります。

これらの薬は泌尿器系を標的とする抗コリン作用があるため、抗コリン作用のある他の薬と比較して、抗コリン作用の副作用が少ないという傾向がみられます。

切迫性尿失禁

治療の目標は膀胱壁の筋肉をリラックスさせることです。まずは、膀胱トレーニング、ケーゲル体操、リラクゼーション法を試します。バイオフィードバックも試すことができます。尿意が切迫したら、リラックスする、立ったまま動かずにいるか腰を下ろす、または骨盤底筋を締めるように努めます。最も多く使用されている薬は、オキシブチニンとトルテロジンです。オキシブチニンは皮膚に貼るパッチ剤、皮膚用のゲル剤、または錠剤で利用可能です。新しい薬として、ミラベグロン、フェソテロジン、ソリフェナシン、ダリフェナシン、トロスピウムなどがあります。

切迫性尿失禁に対する他の治療が無効に終わった場合は、さらなる治療として、ペースメーカーのような装置で仙骨神経に穏やかな電気刺激を与える療法や、膀胱への化学薬品の注入(原因が脊髄または脳の病気の場合)を行うことができ、まれに手術を試みることもあります。

腹圧性尿失禁

通常、治療は膀胱トレーニングおよびケーゲル体操で開始します。尿漏れにつながる身体的ストレス(重い物を持ち上げるなど)を避け、体重を減らすことで、尿失禁をコントロールしやすくなる場合があります。プソイドエフェドリンは、膀胱出口部の機能不全がある女性に有用となる場合があります。イミプラミンは、腹圧性と切迫性の混合性尿失禁にも、それぞれの尿失禁にも使用することができます。デュロキセチンも腹圧性尿失禁に使用します。腹圧性尿失禁の原因が萎縮性尿道炎または腟炎の場合は、エストロゲンクリームがしばしば効果的です。腹圧性尿失禁のある人は、多くの場合、膀胱が満杯にならないように頻繁に排尿することが有効です。

腹圧性尿失禁が薬の使用と行動療法では軽減しない場合は、手術やペッサリーなどの器具が役立つことがあります。経腟的スリング術では、せきやくしゃみをしたときや笑ったときに尿道が開かないよう支持するハンモックを形成します。スリングは合成メッシュ製が最も一般的です。メッシュのインプラントは効果的ですが、メッシュの埋め込みにより少数の人では重度の合併症が発生します。他の方法として、腹壁または脚の組織を用いてスリングを作成することもできます。腹圧性尿失禁のある男性では、メッシュスリングという器具や人工尿道括約筋を尿道の周囲に埋め込むことで、尿漏れを予防することができます。

溢流性尿失禁

治療は、原因が下部尿路閉塞か膀胱壁の筋肉の筋力低下か、あるいはその両方かで異なります。下部尿路閉塞が原因の溢流性尿失禁では、特別な治療法が閉塞を軽減する助けになる場合があります(例えば、前立腺の病気に対する手術や薬の使用、膀胱瘤に対する手術、尿道狭窄に対する拡張またはステント留置など)。

膀胱壁の筋肉の筋力低下による溢流性尿失禁に対する治療としては、膀胱カテーテルを間欠的に挿入するか、まれに膀胱に挿入したカテーテルを留置し、膀胱内の尿量を減少させる処置などが挙げられます。治療の目標は、膀胱のサイズを小さくし、それにより膀胱壁の能力をある程度回復させ、溢流を防ぐことにあります。排尿後に膀胱を空にするための他の手段が助けになる可能性もあります。そのような手段としては、排尿が終わった後にもう一度排尿を試みる(二段排尿)、排尿が終わったときにしゃがむ、下腹部を圧迫するなどがあります。まれに、膀胱からより多くの尿を出すために電気刺激を用いることもあります。

高齢者での重要事項:尿失禁

尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化ではありません。

加齢とともに、膀胱の容量が小さくなり、排尿を遅延する能力が低下し、膀胱の不随意の収縮がより頻繁に発生し、膀胱の収縮力が弱くなります。このため、排尿を我慢することがより難しくなり、また残尿が起きる傾向にあります。骨盤部の筋肉、靱帯、結合組織が弱くなることも尿失禁に寄与しています。閉経後の女性では、エストロゲン濃度が低下して、萎縮性尿道炎や萎縮性腟炎が生じ、尿道括約筋の筋力が低下します。男性では前立腺が大きくなり、部分的に尿道が閉塞するため、膀胱が完全には空にならず、膀胱の筋肉に負担がかかります。これらの変化は、排尿をコントロールできている多くの高齢者でも起こっており、尿失禁を促進する可能性はありますが、尿失禁をもたらすものではありません。

尿失禁があると生活の質が大幅に低下し、人前で恥をかいたり孤立したり、抑うつを引き起こしたりすることがあります。しばしば、尿失禁は高齢者が長期療養施設での介護を必要とする理由となっています。尿は皮膚を刺激するため、寝たきりの人や座ったままの人では、床ずれの発生につながります。切迫性尿失禁のある高齢者は、トイレに急いで行くことが多くなるため、転倒や骨折のリスクが高くなっています。

多くの種類の尿失禁に対し最も効果的な薬には、抗コリン作用があります。抗コリン作用は便秘、口腔乾燥、かすみ目のほか、ときに錯乱として現れ、特に高齢者で問題をもたらします。

要点

  • 尿失禁はよくみられ、その人の生活の質を大きく低下させる可能性があるため、尿失禁がみられる人は医師の診察を受ける必要があります。

  • 尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化ではありません。

  • 一部の原因は、たとえ長期間続いていたものでも、可逆的です。

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