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慢性肝炎

執筆者: Anna E. Rutherford, MD, MPH, Assistant Professor of Medicine;Clinical Director of Hepatology, Harvard Medical School;Brigham and Women’s Hospital

慢性肝炎は、肝臓の炎症が最低6カ月以上持続する病気です。

  • 一般的な原因としては、B型およびC型肝炎ウイルス、特定の薬などがあります。

  • 多くの場合は無症状ですが、全身のだるさ、食欲不振、疲労などの漠然とした症状がみられることもあります。

  • 慢性肝炎が肝硬変に進行すると、脾臓の腫大、腹部への体液の貯留、および脳機能の異常をきたすことがあります。

  • 診断を確定するために生検が行われます。

  • 抗ウイルス薬やコルチコステロイドなどの薬を用いたり、進行した症例には肝移植が必要になったりすることがあります。

慢性肝炎は、急性肝炎と比べてはるかに少ない病気ですが、数年間、ときには数十年間も続くことがあります。多くの場合かなり軽症で、重大な肝傷害は引き起こしません。しかし、一部の患者では、持続的な炎症によって少しずつ肝臓が損傷していき、最終的には肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化— 肝硬変)や肝不全( 肝不全)に至り、ときに肝臓がん(原発性肝臓がん)が発生することがあります。

C型肝炎ウイルスは1989年に初めて特定されました。人によってはこの年よりも前にそれと知らずに感染していた可能性があります。気づかないうちに感染している可能性があるため、C型肝炎について年齢層別に調査する研究が実施されました。その結果、米国の成人では、C型慢性肝炎全症例の約4分の3は、1945年から1965年までに生まれた人で発生していることが明らかになりました。

原因

慢性肝炎は、通常いずれかの型の肝炎ウイルスにより引き起こされます( 肝炎ウイルス)。

慢性肝炎の約60~70%はC型肝炎ウイルスに起因し、C型急性肝炎の少なくとも75%が慢性肝炎になります。

B型肝炎(ときにD型肝炎にも同時感染することがあります)のうち約5~10%は慢性化します。(D型肝炎は単独では起こらず、B型肝炎との同時感染としてのみ起こります。)

まれですが、臓器移植の後に免疫系を抑制する薬を服用している人、がんの治療薬を服用している人、HIVに感染している人など、免疫系が弱っている人にE型肝炎ウイルスによる慢性肝炎がみられることがあります。

A型肝炎ウイルスは慢性肝炎を引き起こしません。

特定の薬は、特に長期にわたって服用する場合、慢性肝炎を引き起こすことがあります。具体的には、イソニアジド、メチルドパ、ニトロフラントインなどがあります。

その他の原因には、アルコール性肝炎および飲酒が関連しない脂肪性肝疾患(非アルコール性脂肪肝炎)などがあります。頻度は低いですが、アルファ1-アンチトリプシン欠乏症(遺伝性疾患)、セリアック病、甲状腺疾患、または小児や若い成人ではウィルソン病(肝臓に銅の異常な蓄積を伴うまれな遺伝性疾患)が原因で慢性肝炎が起こることもあります( ウィルソン病)。

慢性肝炎の患者の中には原因がはっきりしない人もたくさんいます。一部の患者でみられる慢性炎症は、身体が自己の組織を攻撃することによって生じる炎症(自己免疫反応— 自己免疫疾患)に似ています。自己免疫性肝炎と呼ばれるこの種の炎症は、男性よりも女性に多くみられます。

同じウイルスや薬でも、実際に慢性肝炎を発症するかどうか、また発症した場合の重症度は人によって異なりますが、その正確な理由は分かりません。

知っていますか?

  • 慢性肝炎は肝硬変に進行するまで疑われないことがあります。

症状

約3分の2の患者では慢性肝炎は徐々に発生し、多くの場合、肝硬変になるまで肝疾患の症状はみられません。残りの3分の1は、急性ウイルス性肝炎の発生後(多くは数週間後)に肝炎が継続するか再発して、慢性肝炎になります。

多くみられる症状は、漠然とした体調不良(けん怠感)、食欲不振、疲労などです。ときに微熱や上腹部の不快感もみられますが、黄疸はまれです。

多くの場合、最初の具体的な症状は慢性肝疾患や肝硬変によるものです。例えば、脾臓の腫大、皮膚にみられる小さなくものような血管(くも状血管腫)、手のひらが赤くなる(手掌紅斑)、腹部への体液の貯留(腹水— 腹水)などです。肝機能の低下は、肝性(門脈大循環性)脳症( 肝性脳症)と呼ばれる脳機能の異常や出血傾向(凝固障害)につながることがあります。この脳機能の異常は、有害物質が血液中に蓄積することによるものです。肝臓は正常な状態では、血液中から有害物質を取り除いて分解し、無害な副産物として胆汁中や血液中に排泄していますが( 肝臓の機能)、損傷を受けた肝臓は、有害物質を除去できなくなるためです。

少数の人では、黄疸とかゆみ、脂っぽく悪臭がある色の薄い便(脂肪便)がみられることもあります。これらの症状は、肝臓からの胆汁の流れが遮断されることによるものです。

自己免疫性肝炎では、そのほかにも、全身のほぼすべての器官系に症状が現れることがあります(特に若い女性の場合)。そのような症状には、にきび、月経の停止、関節痛、肺の瘢痕化、甲状腺や腎臓の炎症、貧血などがあります。

多くの人では何年もの間、慢性肝炎の進行はみられません。一部の人では慢性肝炎が徐々に悪化します。その後の見通しは、原因となるウイルスによって異なります。

  • C型慢性肝炎は、治療しない場合、約20~30%の患者で肝硬変を引き起こします。しかし、肝硬変の発生までには何十年もかかることがあります。肝臓がんのリスクは、肝硬変がある場合にのみ増加します。

  • B型慢性肝炎は悪化する傾向があり、ときには急速に、ときには数十年かけて肝硬変に至ります。B型慢性肝炎も肝臓がんのリスクを増加させます。

  • B型肝炎とD型肝炎の慢性的な同時感染では、治療しなければ、最大70%の患者が肝硬変になります。

  • 自己免疫性肝炎は、ほとんどの患者で効果的に治療できますが、一部の患者は肝硬変を発症します。

  • 薬によって引き起こされた慢性肝炎は、その薬の使用を中止すれば完全に解消します。

診断

典型的な症状がみられる患者、他の理由で行われた血液検査で肝酵素が異常に高かった患者、または以前に急性肝炎に罹ったことがある患者では、慢性肝炎が疑われます。また、症状の有無にかかわらず、米国で1945年から1965年までに生まれたすべての人は、一度C型肝炎の検査を受けるべきです。というのも、C型肝炎はこの年齢層でよくみられ、気づかれていないことが多いためです。

血液検査により、肝臓がどの程度機能しているかと、肝臓に損傷が起きているかどうかを評価します(肝機能検査)。この検査は、診断の確定や除外、原因の特定、肝傷害の重症度の判定に役立ちます。また、感染症を引き起こしている肝炎ウイルスの種類を特定するための参考にする目的でも、血液検査を行います。ウイルスが特定されない場合は、自己免疫性肝炎など、他の原因を調べる別の血液検査が必要です。しかし、診断を確定するには肝生検( 肝生検)が必須です。肝生検では、炎症の重症度を判定でき、瘢痕形成や肝硬変の有無を診断できます。肝炎の原因を特定する情報が生検で得られることもあります。

B型慢性肝炎の患者では、肝臓がんのスクリーニングのために6カ月毎に超音波検査を行います。アルファ-フェトプロテイン(胎児の未熟な肝細胞が正常時から作るタンパク)の値は、肝臓がんで上昇することがあるため、肝臓がんのスクリーニングに用いられることがあります。C型慢性肝炎の患者でも同様のスクリーニングを行いますが、肝硬変がみられる場合に限られます。

治療

薬が原因である場合は、その薬の使用を中止します。他の病気が原因の場合は、その治療を行います。

B型肝炎とC型肝炎

B型慢性肝炎またはC型慢性肝炎が悪化しているか、肝酵素の値が高い場合は、通常は抗ウイルス薬を使用します。

B型肝炎に対して、通常はエンテカビルまたはテノホビルが使用されます。これらはいずれも経口薬で、非常に効果が高く、ウイルスが耐性を獲得する可能性はごくわずかです。そのほかに使用できる薬としては、経口投与で使用するテルビブジン(telbivudine)とラミブジンや、皮下注射で使用するインターフェロンアルファとペグインターフェロンアルファなどがあります。

一部の患者では、薬物治療を中止するとB型肝炎が再発する傾向があり、さらに重症化することがあります。したがって、このような患者は抗ウイルス薬を無期限に服用する必要があります。

C型肝炎に対しては、原因となったC型肝炎ウイルスのタイプによって治療法が異なります。C型肝炎ウイルスにはいくつかのタイプがあります(遺伝子型と呼ばれます)。C型肝炎ウイルスの各タイプは、わずかに異なる遺伝物質をもっています。以下の組合せは、そのうちのいくつかのタイプに対して最も効果的な治療法です。

  • ペグインターフェロンアルファ(注射)とリバビリン(経口投与)に加えて、ソホスブビル(経口)またはプロテアーゼ阻害薬(テラプレビル、ボセプレビル[Boceprevir]、シメプレビルなど―経口)

他のタイプのC型肝炎ウイルスに対しては、次の薬が投与されます。

  • ソホスブビルとリバビリンのみ(経口投与)

治療は12週間から48週間続けます。C型肝炎の治療により、体内からウイルスを排除し、炎症を食い止め、肝硬変に至る瘢痕化を予防することができます。

エンテカビル、テノホビル、テルビブジン(telbivudine)、ラミブジンなど、経口投与できる抗ウイルス薬の多くには、いくつかの副作用があります。ラミブジンは、他に比べて副作用が少ない薬です。リバビリン、テラプレビル、ボセプレビル(boceprevir)、シメプレビルは、先天異常を引き起こす可能性があります。そのため、これらの薬を服用しなければならない患者は、性別にかかわらず、治療中および治療終了後6カ月間にわたって避妊を行う必要があります。

ペグインターフェロンアルファは、最初にインフルエンザに似た症状を引き起こすことがあります。その後、疲労、全身のだるさ(けん怠感)、抑うつを引き起こすことがあります。この薬はまた、血球の生産などの骨髄の活動を抑制する可能性があります。妊娠中の使用に関する安全性は確認されていないため、妊婦には通常使用されません。

ペグインターフェロンアルファは、以下のような特定の条件に該当する患者には投与すべきではありません。

  • B型肝炎による進行した肝硬変

  • 臓器移植

  • 腎不全

  • 免疫系の機能低下

  • 赤血球の減少(貧血)など、血球数の減少(血球減少症)

  • 薬物乱用

B型慢性肝炎患者の家族や患者と濃厚な接触がある人で、ワクチンを接種したことがない場合、接種を受ける必要があります( B型肝炎ワクチン)。

B型肝炎の患者の血液に触れてしまった場合は、B型肝炎免疫グロブリンを注射し、B型肝炎ウイルスに対するワクチン接種をしていなければ接種します。このような措置はC型慢性肝炎には無効です。

E型肝炎

リバビリンはE型慢性肝炎に対する有効な治療法であると考えられています。

自己免疫性肝炎

通常はコルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]など)を使用し、免疫抑制薬であるアザチオプリンを併用することもあります。これらの薬は炎症を抑え、症状を和らげ、長期的な生存率を改善します。こうした治療を行っていても、肝臓の瘢痕は徐々に悪化することがあります。治療を中止すると炎症が再発するため、ほとんどの患者は生涯にわたって薬の服用を続ける必要があります。

合併症の治療

慢性肝炎の原因やタイプにかかわらず、合併症の治療が必要です。

例えば、腹水の治療では、塩分の摂取を制限したり、腎臓から尿中へのナトリウムと水の排泄を促す薬(利尿薬— 腹水 : 腹水の治療)を服用したりします。

脳の機能が低下した場合は、原因となる有害物質を体から除去するための薬が投与されることがあります( 肝性脳症 : 治療)。

肝移植

重症の肝不全では肝移植( 肝移植)も考慮されます。しかし、C型肝炎の患者では、移植した肝臓でもほぼ必ずウイルスが再び活性化し、他の理由で行われる移植よりも成功率が低くなります。

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