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潰瘍性大腸炎

執筆者: Aaron E. Walfish, MD, Clinical Assistant Attending, Division of Digestive Diseases;Clinical Instructor, Beth Israel Medical Center;Mount Sinai Medical Center ; David B. Sachar, MD, Clinical Professor of Medicine;Director (Emeritus), Dr. Henry D. Janovitz Division of Gastroenterology, Mount Sinai School of Medicine;The Mount Sinai Hospital

潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起こり、潰瘍を形成する慢性疾患で、出血性の下痢や腹部の激しい痛み、発熱を伴う発作が生じます。長期的には結腸癌のリスクも高まります。

  • この疾患の正確な原因はわかっていません。

  • 発作時の典型的な症状は、腹部のけいれん痛、便意の切迫、下痢(血性が多い)などです。

  • 診断は、S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査)か大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)に基づいて行います。

  • 長期にわたって潰瘍性大腸炎がある人では結腸癌が生じることがあります。

  • 治療は、炎症をコントロールして、症状を軽減し、失われた水分と栄養素を補うことを目的として行います。

どの年齢にも起こりますが、普通は15~30歳で発症します。少数ですが、50~70歳で初めて発作が生じる人もいます。

潰瘍性大腸炎では、通常は大腸壁全層を侵すことはなく、小腸に及ぶこともほとんどありません。この病気は、多くの場合、直腸または直腸とS状結腸(大腸の下端)から始まりますが、最終的には大腸の一部または大腸全体に広がります。

潰瘍性直腸炎は直腸に限局して起こり、比較的良性型の潰瘍性大腸炎で、頻度も多い疾患です。一部の患者では、発症初期から大腸の大部分が侵されます。

潰瘍性大腸炎の原因ははっきりとわかっていません。しかし遺伝と腸の過剰な免疫反応が関係していると考えられています。喫煙は、クローン病には有害ですが、潰瘍性大腸炎のリスクは減らしていると思われます。ただし喫煙はさまざまな健康上の問題を起こす原因となるので、潰瘍性大腸炎のリスクを下げるために喫煙することは軽率です。

症状

潰瘍性大腸炎の症状は再発します。再発は突然重症となることがあり、しばしば血性となる激しい下痢、高熱、腹痛、腹膜炎(腹腔の内膜の炎症)を起こすことがあります。このような発作の間は、患者の体調が非常に悪化します。より多いのは徐々に始まる再発で、便意が切迫するようになり、下腹部が軽くけいれん痛を起こして、便には血と粘液が混じります。再発は数日から数週間にわたって続き、またいつでも再発する可能性があります。

炎症が直腸とS状結腸に限局している場合は、便は正常か硬く乾燥している状態になります。しかし、排便中または排便と排便の間に、大量の赤血球と白血球を含む粘液が直腸から分泌されます。発熱などの全身症状はみられないか、あっても軽度です。

炎症が大腸の上の方へ広がると、便は軟らかくなり、1日に10~20回も排便が生じることがあります。しばしば、腹部の重度のけいれん痛と、便意に伴う不快で痛みのあるけいれんが生じます。夜間も症状は緩和しません。便は水っぽく、膿や血液、粘液を含みます。しばしば便の内容がほぼ血液と膿だけになることがあります。患者には発熱や食欲不振も起こり、体重が減少します。

合併症

出血は最もよくみられる合併症で、しばしば鉄欠乏性貧血を起こします。潰瘍性大腸炎になった人のほぼ10%で、最初の発作が急激に進行して重症になり、大量の出血と穿孔や広範囲の感染が生じます。

中毒性大腸炎は特に重症の合併症で、腸壁の全層に損傷を起こします。この損傷は、腸壁の正常な収縮運動が一時的に止まるイレウス(腸閉塞)と呼ばれる状態を起こし、腸の内容物が前進しなくなり、腹部膨満が起こります。中毒性大腸炎が悪化するにつれ、大腸の筋緊張が失われ、数日、ときにはわずか数時間で大腸が拡張しはじめます。腹部のX線検査では、腸の麻痺した部分にガスが充満しているのが映ります。

中毒性巨大結腸は、大腸が異常に拡張したときに起こります。患者は非常に重篤であり、高熱が出ます。腹痛と腹部の圧痛も生じ、白血球数が増加します。腸が破裂すると、死亡するリスクが非常に高くなります。しかし、腸が破裂する前に迅速な治療を受けた場合、死亡率は2%未満です。

結腸癌は、末期の潰瘍性大腸炎患者のうち、毎年100~200人に1人の割合で発症します。結腸癌のリスクが最も高いのは、病気の症状が活動性でなくても、潰瘍性大腸炎が大腸全体に及んでいる場合と、罹患期間が8年を超えている場合です。潰瘍性大腸炎が8年以上続く場合、大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)を毎年または2年に一度は行うよう勧められます。大腸内視鏡検査の際に、癌の早期の徴候(異形成)がないか調べるために、大腸各所から組織を採取し(生検)、顕微鏡で検査します。異形成が診断された場合、あるいは早期の段階で癌が発見された場合でも、結腸をすぐに切除することでほとんどの人が助かります。

その他の合併症は、クローン病のものと同じです。潰瘍性大腸炎による胃腸症状が再燃すると、関節の炎症(関節炎)、白目の部分の炎症(上強膜炎)、皮膚の結節の炎症(結節性紅斑)、紫色の皮膚のびらんに膿がたまる(壊疽性膿皮症)などの炎症が現れます。潰瘍性大腸炎による胃腸症状の再発がない時期でも、腸の病気とはまったく無関係に、壊疽性膿皮症が生じたり、脊椎に炎症が生じて強直性脊椎炎となったり、骨盤の炎症(仙腸骨炎)や眼の内部の炎症(ぶどう膜炎)が起こることがあります。まれに静脈内に血栓ができることがあります。

潰瘍性大腸炎では、普通軽度の肝機能障害がみられますが、肝臓疾患の症状が現れるのは軽症から重症を含めても1~3%ほどです。重症の肝臓疾患としては、肝臓の炎症(慢性活動性肝炎)や、胆管が狭くなりついには閉塞する胆管の炎症(原発性硬化性胆管炎)、肝臓の機能組織が瘢痕化する(肝硬変)などが生じます。潰瘍性大腸炎の腸症状が現れる何年も前に胆管の炎症が起こることがあります。この炎症は胆管癌のリスクを大幅に高め、また結腸癌のリスクの急上昇とも関係があると考えられています。

診断

患者の症状と便の検査から潰瘍性大腸炎が疑われます。S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査)を行うと、炎症の重症度を直接観察することができ、診断が確定できます。症状がない時期でも、腸が完全に正常にみえることはほとんどなく、組織サンプルの顕微鏡による検査でも通常は慢性炎症が認められます。血液検査で診断を確定させることはできませんが、貧血や、白血球数の増加、アルブミン(血液中のタンパク質)濃度の減少、赤血球沈降速度(ESR)の上昇がみられれば、炎症が活発になっていることを示します。

腹部X線検査では、重症度と病気の広がりがわかります。バリウム注腸後のX線検査や大腸内視鏡検査は、この病気の活動期には通常行いません。しかし大腸全体への炎症の広がりを診断するために、どこかの時点で大腸内視鏡検査を行います。

予後(経過の見通し)と治療

一般に潰瘍性大腸炎は慢性疾患で、良くなったり悪くなったり(再燃と寛解)を繰り返します。全体の約10%で、初期の発作が急激に進行し、重篤な合併症を来します。別の10%では一度の発作だけで完全に回復します。しかし、発作が一度だけですむ人は、真の潰瘍性大腸炎ではなく、見つかっていなかった急性感染症であった可能性があります。結腸の生検がこの点の区別に有用です。

潰瘍性直腸炎の場合は予後が最もよくなります。重篤な合併症はほとんどみられません。しかし、約10~30%では最終的に潰瘍性直腸炎が大腸全体に広がり、潰瘍性大腸炎となります。

治療は、炎症を抑え、症状を軽減し、失われた水分と栄養素を補うことを目的として行います。

食事制限

便中に持続的に血液が失われることで起こる貧血は、鉄剤のサプリメントで改善できます。炎症を起こしている大腸の粘膜が傷つかないように、生の野菜と果物は避けます。食事から乳製品を除くことで、症状が軽減する場合があるので、試してみる価値はありますが、恩恵がなければ続ける必要はありません。

下痢止め薬

比較的症状の軽い下痢には、抗コリン作用薬(多くの抗ヒスタミン薬やある種の抗うつ薬など)、または少量のロペラミドやジフェノキシレート(diphenoxylate)を用います。より激しい下痢には、高用量のジフェノキシレート(diphenoxylate)、脱臭アヘンチンキ、ロペラミド、コデインなどが必要になることがあります。しかし重症のケースでは、これらの薬の服用により中毒性巨大結腸が生じないよう、投与後の状態を慎重に観察する必要があります。

抗炎症薬

潰瘍性大腸炎の炎症を軽減させ、症状の再燃を予防するために、スルファサラジン、オルサラジン(olsalazine)、メサラジン、バルサラジド(balsalazide)などの薬剤を用います。これらの薬は普通は内服しますが(経口投与)、メサラジンは浣腸や坐薬としても使用できます(直腸投与)。経口投与でも直腸投与でも、これらの薬は、軽度から中等度の活動性疾患の治療には、限定的な効果しかありませんが、寛解状態の維持にはより有効で、おそらくは大腸癌の長期的リスクも減らすことができます。

ベッドで安静にしていなくてもよい中等度の患者では、通常はプレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬を経口投与します。高用量のプレドニゾロンを服用すると、しばしば劇的な寛解が得られます。プレドニゾロンで潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールした後に、改善を維持するためにスルファサラジン、オルサラジン(olsalazine)やメサラジンを投与します。プレドニゾロンは徐々に用量を減らしていき、最終的には投与を中止します。コルチコステロイド薬による治療が長びくと、ほぼ必ず副作用が現れます。軽度から中等度の潰瘍性大腸炎が大腸の左側(下行結腸)と直腸に限局している場合には、コルチコステロイド薬やメサラジンの浣腸または坐薬の投与が役立ちます。

症状が重症の場合には、患者は入院して、コルチコステロイド薬と水分の静脈内投与を受けます。直腸に大量の出血がみられる場合は輸血が必要となることがあります。

免疫抑制薬

アザチオプリンやメルカプトプリンなどの薬は、長期のステロイド療法が必要な潰瘍性大腸炎患者で寛解を維持するために使われます。この免疫抑制薬は免疫システムで重要な働きをするT細胞の作用を阻害します。しかしこれらの薬は作用が遅く、1~4カ月間しないと効果がみられません。また、重篤な副作用を起こす可能性があるので、医師による慎重な経過観察が必要です。

シクロスポリンは、重篤な再発を起こしコルチコステロイド療法にも反応しない場合に投与されます。多くの患者が当初はシクロスポリンに反応しますが、一部の人は最終的に手術が必要になります。

モノクローナル抗体から作られ、静脈内投与するインフリキシマブが潰瘍性大腸炎患者に有益な場合もあります。この薬はコルチコステロイド薬に反応しない患者や、他の免疫抑制薬を適切に使っても、コルチコステロイド薬の用量を減らすと必ず症状が出る患者に投与します。

腸の炎症を軽減する主な薬

薬品名

主な副作用

備考

アミノサリチル酸系

  • スルファサラジン

よくみられる:吐き気、頭痛、めまい、疲労感、発熱、発疹、回復可能な男性の不妊症。

まれ:肝臓の炎症(肝炎)、膵臓の炎症(膵炎)、肺の炎症(肺炎)、溶血性貧血。

腹痛、めまい、疲労感は用量と関連する。肝炎と膵炎は用量とは無関係

  • バルサラジド(balsalazide

  • メサラジン

  • オルサラジン(olsalazine

よくみられる:発熱、発疹。

まれ:膵炎、心膜の炎症(心膜炎)、肺炎。

オルサラジン(olsalazine)で水様性下痢。

スルファサラジンでみられる副作用の大半は、他のどのアミノサリチル酸系薬剤でもみられるが、頻度ははるかに少ない。

コルチコステロイド薬

プレドニゾロン

糖尿病、高血圧、白内障、骨粗しょう症、皮膚が薄くなる、精神的症状、急性精神病、気分の変動、感染症、にきび、過剰な体毛(多毛症)、不規則月経、胃炎、消化性潰瘍疾患。

糖尿病と高血圧は他の危険因子を持つ人に起こりやすい。

ブデソニド

糖尿病、高血圧、白内障、骨粗しょう症(骨密度の低下)

プレドニゾロンと同じ副作用だが、程度は軽い

免疫抑制薬

  • アザチオプリン

  • メルカプトプリン

食欲不振、吐き気、嘔吐、感染症、癌、アレルギー反応、膵炎、白血球数の減少、骨髄抑制、肝機能障害。

通常、用量に応じて生じる副作用は骨髄抑制と肝機能障害など。

一定間隔での血液のモニタリングが必要。

シクロスポリン

高血圧、吐き気、嘔吐、下痢、腎不全、ふるえ、感染症、けいれん発作、神経障害、リンパ腫(リンパ系の癌)の発生。

使用が長期化するにつれ副作用が生じやすくなる。

メトトレキサート

吐き気、嘔吐、腹部不快感、頭痛、発疹、口のただれ、疲労感、肝臓の瘢痕形成(肝硬変)、白血球数の減少、感染症。

妊娠中に流産と先天異常を起こす。

肝毒性は用量に依存する。

妊娠中の女性には処方しない。

インフリキシマブ

注入反応、感染症、癌、腹痛、肝機能障害、白血球数の減少。

注入反応とは、注入中にすぐに生じる副作用で、発熱、悪寒、じんま疹、血圧低下、呼吸困難などのことをいう。

治療を開始する前に結核についてスクリーニング検査を行うべき。

アダリムマブ

注射部位の痛みやかゆみ、頭痛、感染症、癌、過敏性反応。

副作用はインフリキシマブと似ているが、アダリムマブは注入反応を起こさない。

過敏性反応では、発疹、じんま疹、そう痒症、皮疹などが生じる。

手術

潰瘍性大腸炎が広範に生じている症例では、約30%で手術が必要となります。大量出血、穿孔、中毒性巨大結腸、血栓を伴う命に関わる急性の発作が生じた場合は緊急手術が必要です。緊急を要しない手術の理由としては、寛解しない慢性疾患で生活に支障を来す場合や、常に高用量のコルチコステロイド薬が必要となる場合などがあります。

大腸の癌が診断されたり、異形成が確認された場合、ときに大腸に狭窄が生じていたり、小児で発育遅滞がみられる場合も、緊急ではない手術を行います。

大腸と直腸をすべて切除することで、潰瘍性大腸炎は恒久的に治癒します。これまで、この治癒には従来、小腸の最後部と腹壁の開口部との間を手術でつなぐ回腸瘻造設術を行い、腸瘻バッグを生涯にわたって使用するという代償が伴いました。しかし、現在では他にもさまざまな代替手段が開発されており、その最も一般的な例が回腸肛門吻合術です。この治療法は、大腸と大部分の直腸を切除し、小腸の外に小さな貯蔵部を形成して、それを肛門のすぐ上の直腸残存部につなぐ手術法です。この治療法では、排泄を調節する機能は維持できますが、貯蔵部の炎症(嚢炎)などの合併症が起こる可能性があります。

潰瘍性直腸炎では手術が必要となることはまれで、余命も正常です。しかし、一部には、どの治療法によっても例外的に症状が改善されない患者もいます。

中毒性巨大結腸は手術を必要とする緊急事態です。中毒性巨大結腸が見つかったり、その疑いがあれば、即座に下痢止め薬は中止して絶食し、胃か小腸に経鼻チューブを挿入して定期的に吸引を行います。水分と栄養、薬はすべて静脈から投与します。患者に腹膜炎や穿孔の徴候がないかどうか、注意深く観察します。時間と患者の状態が許すなら、シクロスポリンやインフリキシマブによる薬物療法を行うことがあります。しかし、これらの処置の効果が不十分であったり、効果がみられない場合は、緊急手術が必要となります。その場合大腸の全体または大部分を切除します。

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