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慢性腹痛と反復性腹痛

執筆者: Norton J. Greenberger, MD, Clinical Professor of Medicine;Senior Physician, Harvard Medical School;Brigham and Women's Hospital

慢性の腹痛は、3カ月以上持続する痛みです。常に痛みがあることも、痛みが現れたり消えたりする(反復性)こともあります。慢性腹痛は通常は小児にみられ、5歳以降に現れます。5~16歳の約10~15%(特に8~12歳)に慢性腹痛または反復性腹痛がみられます。男児と比べ女児にやや多いようです。成人の約2%(主に女性)に慢性腹痛がみられます。

慢性腹痛がある場合、原因に応じて他の症状がみられることもあります。

原因

通常は、腹痛が3カ月以上持続する時点までに医師による評価を受けており、腹痛を引き起こす典型的な病気( 急性腹痛)はすでに特定されています。この時点までに評価が行われていて原因が特定されていない場合、具体的な身体の病気が認められる人は約10%に過ぎません( 慢性腹痛の身体的原因と特徴)。残りの90%は、いわゆる機能性の腹痛です。

機能性疼痛は、実際の痛みが6カ月以上持続するもので、具体的な体の病気(消化性潰瘍など)の証拠が認められなくても発生します。また、身体機能(月経、排便、食事など)、薬、毒性物質とは関連していません。機能性疼痛は重症化することがあり、一般的に生活に支障が生じます。この痛みの正確な原因は不明です。しかし、ほとんどの人にとって苦にならない感覚(消化管の正常な動きなど)に対して消化管の神経が過敏になることがあります。遺伝的要因、生活面でのストレス、性格、社会的状況、または基礎にある精神障害(うつ病や不安など)は、すべて機能性疼痛の一因になる可能性があります。小児における慢性腹痛は、注意を引きたい場合(兄弟姉妹が生まれた場合や家族の引っ越しがあった場合など)、就学開始のストレス、乳糖不耐症、またはときに小児虐待に関連することがあります。

一般的な身体的原因

身体の病気の多くが慢性腹痛を引き起こします( 慢性腹痛の身体的原因と特徴)。最も一般的な原因は年齢により異なります。

小児で最も一般的な原因は以下のものです。

  • 乳糖不耐症(乳糖は乳製品に含まれる糖分)

  • 便秘

  • 胃食道逆流症

若い成人で一般的な原因としては以下のものがあります。

  • 消化性潰瘍またはアスピリンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの薬による消化不良(消化障害)

  • 胃の不快感(アスピリンやNSAID、コーラ飲料[酸性度]、香辛料の効いた食品に起因)

  • 肝炎などの肝疾患

  • 胆嚢炎などの胆嚢疾患

  • 膵炎などの膵疾患

  • ジアルジア症などの寄生虫感染症

  • クローン病などの炎症性腸疾患

  • 過敏性腸症候群

成人では、がん(胃がん、膵臓がん、結腸がん、卵巣がんなど)がより一般的になります。さらに、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、子宮内膜症などの病気がある女性が更年期になると、腹部症状が増加します。

評価

医師はまず、痛みが機能性疼痛なのか、病気、薬、または毒性物質により生じたものかに注目します。これを区別することは困難な場合があります。しかし、警戒すべき徴候がみられる場合は、機能性疼痛の可能性は低くなります(まったくないわけではありません)。

警戒すべき徴候

以下の症状には注意が必要です。

  • 発熱

  • 食欲不振と体重減少

  • 夜間に目が覚めるほどの痛み

  • 吐血、血便、または血尿

  • 重度または高頻度の嘔吐や下痢

  • 黄疸

  • 腹部や脚の腫れ

  • 嚥下困難

受診のタイミング

慢性腹痛のある患者に警戒すべき徴候が現れた場合、直ちに医師の診察を受ける必要がありますが、警戒すべき徴候が食欲不振、黄疸、または腫れだけの場合は例外です。食欲不振、黄疸、もしくは腫れがみられる場合、または悪化する痛みが持続する場合は、数日中から1週間以内に医師の診察を受ける必要があります。これらの警戒すべき徴候がみられる場合、身体的原因の可能性が非常に高くなります。警戒すべき徴候がみられない場合は、頃合いを見て医師の診察を受ける必要はありますが、数日程度の遅れは問題になりません。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、痛みの原因と必要になる検査を推測することができます( 慢性腹痛の身体的原因と特徴)。

医師は、痛みが和らいだり、強くなったりする活動(食事、排尿、排便など)について特に質問します。乳糖不耐症が多くみられる(特に黒人)ことから、腹痛やその他の消化器系の不調が乳製品を食べたり飲んだりした後に発生するかどうかが重要です。医師は、他の症状(嘔吐、下痢、便秘など)、食事、腹部に及ぶ手術、使用している薬、腹痛に対して受けた検査や治療についても尋ねます。腹痛を起こす病気がある家族がいるかどうかも重要です。

身体診察では、特に腹部を中心に、圧痛がある場所、腫瘤または臓器腫大がないか確認します。通常は、直腸診が行われ、便に血が混じっていないか調べます。女性では内診が行われます。医師は、皮膚が黄色くなっていないか(黄疸)、脚に発疹や腫れがないかに注意します。

患者は、初回来院からフォローアップの来院までに、痛み、排便、食事、痛みのきっかけと思われる活動、試みた治療、治療の効果に関する情報を記録するよう指示されることがよくあります。

慢性腹痛の身体的原因と特徴

原因*

一般的な特徴

検査

消化管の病気

セリアック病

小児で、予想より成長が遅い(発育不良)

腹部膨満としばしば下痢または脂肪便に見えることもある明色の大量で異臭のある便

小麦製品(グルテン含有)を含む食品を食べると症状が悪化する

セリアック病の患者がグルテンを含む食品を食べた際に産生される抗体の量を測定する血液検査

しばしば小腸上部の生検

胆嚢炎(胆嚢の炎症)、慢性の場合

右上腹部にけいれん性の痛みが繰り返す

胆石がないか調べる超音波検査

放射性物質(放射性核種)を静脈内注射してから行う胆嚢の画像検査

結腸がん

通常不快感はないが、結腸が部分的に閉塞すると、けいれん性の不快感が生じる可能性がある

ときに血便(血液が目に見えるか、または医師の診察で検出される)

大腸内視鏡検査

CT検査や直腸にバリウムを注入してから行うX線検査などの画像検査(下部消化管造影検査)

便秘

便が硬く、排便の頻度が少なく排便困難

下腹部にけいれん性の痛みが生じ、排便後に緩和する

ときに排便時の痛み

詳しい食事歴を含む医師の診察

クローン病

発熱、食欲不振、体重減少、下痢を伴う激しい痛みが繰り返し発生する

CT検査または大腸内視鏡検査

小腸のX線検査

胃食道逆流症(ときに食道裂孔ヘルニアに関連)

胸やけ(上腹部で始まり、のどへ移動する灼熱痛で、ときに口の中に酸っぱい味覚を伴う)

ときに胸痛

ときにせきや声がれ

ときに横になると症状が悪化する

制酸薬で緩和する

しばしば、医師の診察と、酸の産生を抑制する薬による治療だけを試みる(症状が緩和したら、原因はおそらく胃食道逆流症)

ときに、上部消化管の内視鏡検査(観察用の柔軟な管状の機器による食道と胃の検査)またはバリウムを経口投与してから行う上部消化管のX線検査(食道造影)

肝炎、慢性の場合

右上腹部の不快感

全身のだるさ(けん怠感)

食欲不振

黄疸(まれ)

ときに急性肝炎を経験したことがある患者にみられる

肝機能を評価し、肝炎ウイルスがないか調べる血液検査

乳糖不耐症

乳製品摂取後の腹部膨満、けいれん、放屁(鼓腸)、下痢

ときに、乳糖を含む食べものが未消化であることを示す水素を検出するための呼気試験

乳糖を含む食べものが症状のきっかけかどうかを確認するために、それらを排除した食事(除去食)

膵臓がん

上腹部の重度の持続痛、背部に放散することが多い

体重減少

ときに黄疸

CT検査

磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)検査

膵炎、慢性の場合または膵仮性嚢胞を伴う場合

中上腹部の重度の痛み

ときに下痢と脂肪便

通常は急性膵炎を経験したことがある患者にみられる

膵臓で産生される酵素の量を測定する血液検査

CT検査またはMRCP検査などの画像検査

寄生虫感染症(特にジアルジア症)

最近の発展途上国への旅行、小川や湖からの水の摂取、または感染した人との接触

腹部けいれん、鼓腸、下痢

寄生虫やその卵がないか調べる便検査

消化性潰瘍

食事や制酸薬の服用で軽減する胃痛

夜に目覚めることがある

NSAIDの使用により生じることがある

内視鏡検査と生検によるヘリコバクター(H)ピロリ(消化性潰瘍を引き起こすことがある細菌)の検査

ときに呼気試験によるピロリ菌の検査

腹部手術を受けた場合に腸の周囲に生じる瘢痕組織(癒着)

吐き気やときに嘔吐を伴うけいれん性の不快感

画像検査(CT検査など)

胃がん

消化不良または軽度の痛み

しばしば便中にごく少量の血液(医師の診察でのみ検出可能)

典型的には高齢者にみられる

食道と胃の内視鏡検査

潰瘍性大腸炎

間隔をあけて数回発生する血性下痢を伴う、けいれん性の痛み

典型的には若い成人にみられる

S状結腸内視鏡検査または大腸内視鏡検査

直腸や結腸の生検

腎臓と尿路の病気

尿路の先天異常

頻繁な尿路感染症

典型的には小児にみられる

排泄性尿路造影検査またはCT検査

超音波検査

腎結石

しばしば結石が確認されている人にみられる、現れたり消えたりする横腹(側腹部)の痛み

ときに発熱

暗色尿または血尿

尿検査

CT検査または排泄性尿路造影検査

生殖器系の病気(女性の場合)

子宮内膜症

主に月経の前または月経中の不快感

腹腔鏡検査

卵巣嚢胞

下腹部の漠然とした不快感

骨盤部の超音波検査

卵巣がん

腹部膨満

ときに医師の診察で骨盤部に腫瘤が検出される

骨盤部の超音波検査

全身性疾患

家族性地中海熱

この病気の家族がいる

しばしば発熱を伴い、48~72時間持続する腹痛

小児期または青年期から現れる

遺伝子検査

食物アレルギー

魚介類などの特定の食べものを食べた後にのみ症状が現れる

除去食

IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)

腕、脚、殿部、足の甲の赤紫色の小さな点状の発疹(点状出血)または大きな斑(紫斑)

圧痛と腫れを伴う関節痛

吐き気、嘔吐、下痢

医師の診察で検出される血便

患部皮膚の生検

鉛中毒

けいれん性の腹痛

注意持続時間の短縮、錯乱、行動の変化などの精神状態変化

食欲不振、嘔吐、便秘

関節痛

通常は鉛にさらされる作業員のみにみられる

築30年を超える家(鉛を含む塗料が使用されていることがある)に住む幼児に多い

鉛の量を測定する血液検査

ポルフィリン症

重度の腹痛と嘔吐の発作が繰り返す

ときに筋力低下、けいれん発作、精神障害(過敏や興奮など)

ポルフィリン症の一部の種類で、太陽光にさらされたときに皮膚の水疱形成

発作時に産生される物質(ポルフィリン)がないか調べる尿検査と血液検査

鎌状赤血球症

1日中持続する重度の腹痛

背部、胸、腕、脚などの腹部以外の場所に痛みが繰り返し発生する

典型的には、この病気の家族がいる黒人の小児にみられる

鎌状赤血球症の特徴である鎌状の赤血球や異常なヘモグロビンがないか調べる血液検査

*身体的原因が慢性腹痛の原因となるのは約10%に過ぎません。ほとんどの場合が機能性腹痛です。

この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここに示されている特徴は典型的なものですが、常に当てはまるわけではありません。

ほとんどの慢性腹痛患者に対して、医師は一般的に血算、肝機能や膵臓機能を評価する血液検査など、基本的な血液検査と尿検査を行います。これらの検査と診察の結果を基に他の検査が行われます。

CT = コンピュータ断層撮影、MRCP = 磁気共鳴胆道膵管造影、NSAID = 非ステロイド系抗炎症薬

検査

通常は、医師が特定の検査を行います。この検査には、尿検査、血算、肝臓と膵臓の機能を調べる血液検査、赤血球沈降速度(赤沈)を測定する血液検査などがあります。赤沈は、体のどこかで炎症が起こっていないかを調べる一般的な検査です。通常は患者が50歳以上の場合に、大腸内視鏡検査も推奨されます。患者が50歳未満の場合に腹部のCT検査を推奨する医師もいますが、特定の症状が現れるまで待つ医師もいます。病歴聴取と身体診察の結果に応じて、他の検査が行われます( 慢性腹痛の身体的原因と特徴)。

いずれかの検査結果が異常な場合、新たな症状が現れた場合、または診察中に新たな異常が検出された場合は、追加の検査が行われます。

治療

治療法は原因によって異なります。例えば、乳糖不耐症の場合、乳糖を含まない(ミルクとその他の乳製品を除去した)食事が役立つことがあります。便秘の場合は、数日間にわたり下剤を使用し、食事の食物繊維を増やすことが役立つ可能性があります。

機能性疼痛

治療は通常の日常生活に戻れるよう支援すること、また不快感を和らげることに重点を置いて行われます。通常は、複数の方法を組み合わせて治療が行われます。最善の組合せを決定するには、数回の来院が必要になる場合があります。医師はしばしば患者の都合に応じて週1回、月1回、2カ月に1回などのフォローアップのための来院を予定します。来院は問題が解消してから十分な時間が経過するまで続けます。

機能性疼痛の診断が下されると、実際に痛みがあるものの深刻な原因はなく、ストレスなどの心理的要因が体に影響を及ぼしていることを医師は強調します。詳しい検査を行っても症状の身体的原因が明らかにならなかった場合、医師は検査を繰り返すことを避けようとします。

機能性の慢性腹痛を治癒させる治療法はありませんが、役に立つ手段が多く利用できます。そのような手段は、医師と患者、その家族との間の信頼し共感できる人間関係に基づいたものです。医師は、臨床検査などの検査結果から患者が危険な状態にないと示されていることを説明します。また、機能性腹痛がどのように起こるか、患者がどのようにして痛みを感じるかも説明します。例えば、ストレスを受けると痛みを感じる傾向があります。医師は、仕事、学校、社会的活動への参加を勧めます。このような活動により状態が悪化することはなく、独立性や自立心が高まります。日常生活をしなくなると、生活により症状を抑制するのではなく、むしろ症状により生活が左右されるリスクがあります。

医師は、痛みの緩和にアセトアミノフェンまたはその他の強くない鎮痛薬を推奨します。食物繊維の多い食事や食物繊維のサプリメントも役に立つ可能性があります。多くの薬が試験的に使用されていて、成功の程度は様々です。そうした薬としては、消化管の筋れん縮を軽減したり止めたりする薬(鎮けい薬)、ハッカ油、シプロヘプタジン(抗ヒスタミン薬の1つ)、胃酸の産生を抑える薬などがあります。

ストレスや不安の原因は、可能なかぎり少なくします。親やその他の家族は、痛みに注意しすぎることで、痛みを強くしないようにすべきです。不安感が続く場合、医師は抗うつ薬や不安を軽減する薬を処方することがあります。リラクゼーション訓練、バイオフィードバック、催眠法などの行動を変えるのに役立つ治療法も不安の軽減に役立ち、より痛みに耐えられるようになる場合があります。

小児では、親による支援が不可欠です。親は、子どもが自立するように促し、子どもに当然の責任(特に学校への出席)を果たさせるように指導されます。子どもが活動を避けることを許すと、実際には子どもの不安が増す場合もあります。親は、子どもの自立や責任ある行動を褒めてご褒美を与えることで、日常生活での痛みの管理を手助けすることができます。例えば、子どもとの特別な時間や特別な外出を計画することで、子どもにご褒美を与えることができます。学校の職員を関わらせることも役立つ可能性があります。登校した日も保健室で少し休んでから15~30分後に授業に戻ることができるように、取り決めることができます。養護教諭には、アセトアミノフェンなどの強くない鎮痛薬を小児に投与する権限が与えられることがあります。養護教諭は、ときに小児が親に電話することを許可してもよく、この場合、親は子どもが学校に残るよう励ますべきです。

要点

  • 通常、慢性または反復性の腹痛は機能性疼痛で、しばしばストレス、不安、または食事に関連しています。

  • 直ちに医師の診察を受ける必要がある症状には、高熱、食欲不振、体重減少、目が覚めるほどの痛み、血便、血尿、黄疸、脚や腹部の腫れがあります。

  • 通常は血液検査と尿検査が行われ、痛みの原因となる病気がないか調べます。

  • 異常な検査結果、警戒すべき徴候、または特定の病気の症状が認められた場合にのみ、追加の検査が必要です。

  • 機能性疼痛に対する治療としては、ストレスを最小限に抑えることの習得、通常の日常生活への参加、痛みの緩和(強くない鎮痛薬で)、ときに不安を軽減するための薬の服用や行動変容療法の使用、または食事の変更を行います。

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