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クロストリジウム・ディフィシル 誘発性大腸炎

執筆者: David B. Sachar, MD, Clinical Professor of Medicine;Director (Emeritus), Dr. Henry D. Janovitz Division of Gastroenterology, Mount Sinai School of Medicine;The Mount Sinai Hospital ; Aaron E. Walfish, MD, Clinical Assistant Attending, Division of Digestive Diseases;Clinical Instructor, Beth Israel Medical Center;Mount Sinai Medical Center

クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎(抗生物質関連大腸炎や偽膜性大腸炎とも呼ばれます)は、大腸の炎症で、下痢を生じます。この炎症は普通とは違う細菌の増殖によって引き起こされますが、通常は抗生物質の使用が原因です。

  • この大腸炎は普通は抗生物質を服用することで起こります。

  • 典型的な症状は、便が少し軟らかくなる程度から、血性の下痢や腹痛、発熱にまでわたります。

  • 医師はクロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎の症状がみられる人の便を検査し、大腸を調べます。

  • 軽度のクロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎を生じている人の大半は、原因となっている抗生物質の服用を中止すれば治癒しますが、重度の感染症が生じている場合は別の抗生物質が必要となります。

多くの抗生物質が、腸内細菌の量と種類のバランスを崩してしまうため、病原性の細菌が増殖して、他の種類と置き換わってしまいます。過剰に繁殖し感染の原因となる最も一般的な細菌は、クロストリジウム・ディフィシルです。クロストリジウム・ディフィシル感染症では、大腸の保護粘膜に炎症を起こす(大腸炎)2種類の毒素が放出されます。

ほとんどの抗生物質でこの病気が起こることがありますが、クリンダマイシン、アンピシリンやアモキシシリンなどのペニシリン系、セファレキシンなどのセファロスポリン系が最も多くかかわっています。ほかによく関係する抗生物質には、エリスロマイシン、スルファメトキサゾールなどのスルホンアミド系、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ノルフロキサシンなどのキノロン系があります。クロストリジウム・ディフィシル大腸炎は、癌治療用のある種の化学療法薬の使用後にも生じることがあります。

クロストリジウム・ディフィシル感染症は抗生物質を経口投与した場合に最もよく起こりますが、注射や静脈内投与でも起こります。クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎を起こすリスクは、年齢とともに上昇します。ほかの危険因子として、重度の基礎疾患、長期入院、介護施設での生活、消化管手術などがあります。胃液酸性度を低下させる薬や状態、特にプロトンポンプ阻害薬を投与した場合でも、生じやすくなります。

細菌の発生源が患者自身の腸管であることもあります。クロストリジウム・ディフィシルは、新生児の約15~70%、健康な成人の相当な割合の腸内に通常生息しています。保菌者と呼ばれるこのような人たちは、この細菌を持っていますが、病気の徴候は何も示しません。保菌者がリスクを持つ人にこの感染症をうつすこともあります。さらに、この細菌は土壌、水、ペットにごく普通にみられます。しっかり手を洗うことで人から人への感染が防げます。

抗生物質を最近服用していない人では、クロストリジウム・ディフィシル感染症による大腸炎はまれにしか起こりません。手術(胃や腸の手術が典型的)のような肉体的ストレスも、同じように腸内細菌の種類と数のバランスを崩すきっかけとなったり、腸にもともと備わっている防御機構を損なうことがあり、その結果クロストリジウム・ディフィシル感染症や大腸炎が起こります。

知っていますか?

  • 健康な人の多くが腸内にクロストリジウム・ディフィシル菌を持っています。

症状

症状は通常抗生物質の投与開始後5~10日で起こりますが、投与初日に生じることもあります。しかしこの大腸炎を起こす人の3分の1は、治療が終了してから1~10日たつまで症状が現れず、中には2カ月経過するまで症状が現れない場合もあります。

症状は細菌が起こす炎症の程度によって異なり、便が少し軟らかくなる程度から、血性の下痢や腹痛、発熱にまでわたります。吐き気や嘔吐はまれです。最も重症な例では、脱水、血圧低下、中毒性巨大結腸( 合併症を参照)、大腸穿孔などの生命にかかわる症状が起こります。

診断

クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎は、抗生物質の使用後2カ月以内または入院後72時間以内に下痢が生じた場合に疑われます。診断は、クロストリジウム・ディフィシルが産生する毒素の一つが便サンプルから同定されると確定します。この毒素は軽症の抗生物質関連大腸炎の約20%にみられ、重症例では90%以上にみられます。毒素の検出には、便サンプルを2~3回採取することが必要な場合もあります。

医師はS状結腸鏡(硬い、あるいは柔軟な観察用のチューブ)で大腸下部(S状結腸)の炎症を観察し、偽膜性大腸炎と呼ばれる特殊なタイプの炎症を認めた場合も、クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎が診断できます。病変部がS状結腸鏡が届く範囲より上にある場合は、大腸内視鏡(より長い柔軟な観察用チューブ)を使って大腸全体を検査します。しかし、これらの検査法は普通は必要ありません。

治療

クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎の患者で、抗生物質の服用中に下痢が起こる場合は、その抗生物質がどうしても必要でない限り、ただちに服用を中止します。ジフェノキシレート(diphenoxylate)など腸の動きを遅くする薬は、病気の原因である毒素を大腸内にとどめ、大腸炎を長びかせることになるので通常は服用を避けます。クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎の合併症がない場合は、抗生物質の服用中止後10~12日で症状は自然に治ります。この場合、特に治療の必要はありません。しかし、軽度の症状が続く場合は、おそらく毒素と結合して吸着するコレスチラミン樹脂が有効です。

より重症のクロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎の症例の大半については、抗生物質のメトロニダゾールがクロストリジウム・ディフィシルに有効です。バンコマイシンは最も重症なケースや薬に耐性がある場合のために取っておきます。バシトラシンや、体によい酵母菌、サッカロマイセス・ブラウディが必要となる人もいます。この病気の患者の最大20%は再発し、抗生物質による治療が繰り返されます。下痢が繰り返し起こる場合は、抗生物質療法を延長する必要があります。乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)の製剤を経口投与したり、便の物質を腸注して正常な細菌を腸に再定着させたり、ガンマグロブリンの静脈注射により治療することもありますが、非常にまれです。クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎の治療に抗生物質のリファキシミン(rifaximin)が役立つかどうか、またクロストリジウム・ディフィシルに対する予防接種が、難治性(治療抵抗性)症例の治療に有効か、さらにはリスクを持つ人の発症を防ぐことができるかどうかについて研究が進められています。

クロストリジウム・ディフィシル誘発性大腸炎は、まれに重症化することがあり、この場合は入院して輸液で水分と電解質(ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムなど)を補い、輸血を行います。ときには、重症例で救命のために一時的な回腸瘻造設術(小腸と腹壁の開口部を手術でつなぎ、大腸と直腸から便を迂回させる)や、大腸の切除(結腸切除術)が必要になることもあります。

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