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Dr Michael Levin

多発性硬化症の治療選択肢の探索-コラム

2017/04/11 Michael C. Levin, MD, Multiple Sclerosis Research Chair, Professor of Neurology, University of Saskatchewan

医師及び研究者にとって、多発性硬化症には今なお多くの課題があります。たとえば、診断は難しく過去のエピソード(増悪)について患者が報告する症状に左右される可能性がある点、治療で治癒が得られない点が挙げられます。しかし、脳及び脊髄のMRIによって、診断は以前に比べて大幅に精度が高まり、多くの場合容易になっています。また、この数十年に多くの新規疾患修飾薬が開発され、それ以外にも有望な治療法が間もなく利用可能になると予測されます。

現在のところ、一次進行型多発性硬化症の治療法はまだ確立していません。しかし、最近、ocrelizumab(CD20陽性B細胞を選択的に除去するヒト化モノクローナル抗体)の第3相試験が、一次進行型多発性硬化症を対象に薬物の有効性を明らかにする最初の試験として実施されています。

ほとんどの多発性硬化症治療は、再発寛解型多発性硬化症を標的にしています。現在、12を超える薬物が利用可能です。

全体的な治療目標には次のようなものがあります。

  • 急性増悪期間の短縮
  • 増悪頻度の低減
  • 症状の緩和
  • 患者の歩行能力の維持

多発性硬化症の治療選択肢の進展

1990年代初頭、増悪を遅延させ予防する免疫調節療法が、インターフェロンβ-1a及び-1b、並びにグラチラマー酢酸塩など「プラットフォーム薬(基本的な免疫調節薬)」として知られる自己注射薬から始まりました。これらの薬剤は現在でも利用可能であり、再発リスクを約1/3低下させることが明らかになっています。

その後、すぐにフィンゴリモドなどの経口薬が続き、特に自己注射を苦痛に感じる患者にとって大きな進歩となりました。その他の多発性硬化症第一選択薬には、ナタリズマブや、さらに新しいアレムツズマブ(Lemtrada、抗CD52ヒト化モノクローナル抗体)などの静注用抗体があります。これらの静注薬は投与頻度が少ないものの(アレムツズマブの場合年1回)、重大な副作用、たとえば頭痛、関節痛、疲労、尿路感染、四肢の疼痛、下痢、及び発疹などが発現することがあります。より重篤な副作用として、進行性多巣性白質脳症(ナタリズマブの場合)、自己免疫疾患及び癌(アレムツズマブの場合)が発現する可能性があります。

他覚的な欠損を引き起こし、機能不全をもたらす急性増悪の症状(例:視神経炎)に対しては、短期コルチコステロイド治療を行います。多くの場合コルチコステロイドは増悪の期間短縮及び低減に役立ちますが、(特に頻用又は長期使用の場合に)顕著な副作用を伴い、疾患進行の遅延にはほとんど効果がないことを患者が理解することが重要です。場合によっては、重度の増悪を抑えるために、コルチコステロイド治療不応例に血漿交換を行うことがあります。

患者の免疫系の「再起動」

最近の研究によって、再発多発性硬化症及び二次進行性多発性硬化症といった進行の早い症例を治療する場合、自家造血幹細胞移植が有効である可能性が示唆されています。この治療法は、まず免疫系を除去(細胞傷害性化学療法薬を3、4回大量投与)した後、免疫系除去前に患者から採取した造血幹細胞を注入することにより、免疫系を「再起動」させようとするものです。注入された造血幹細胞は、うまくいけば多発性硬化症の原因である自己免疫反応を引き起こす細胞のプログラミングなく、骨髄に生着し、免疫系を再構築し始めます。

先月JAMA Neurologyに発表された国際共同治験の結果報告によれば、全ての評価可能患者を対象にした治療後5年無増悪生存率は46%でした。移植から100日以内に報告された8件の死亡例(2.8%)は、移植関連死とみなされました。副作用が今なお大きな障害であり、また、転帰が良好であったのは、再発型多発性硬化症で神経障害が軽度であり免疫療法歴が少ない若年患者でした。米国及びカナダでの大規模臨床試験によって、この開発中の治療の見通しが、おそらく3~5年以内にさらに明らかになるはずです

共同意思決定による治療選択肢の選択

医師の間で、どの疾患修飾性免疫調節療法が望ましいか、見解が分かれています。個々の患者にとってどの治療法が最善であるかを決定する際、患者と共同での意思決定は、一つの有効な戦略です。

医師は、多発性硬化症の種類と進行、患者教育、及び治療に関する希望などの要素に基づき、いくつかの推奨事項を念頭に置いておく必要があります。患者個別の臨床的特徴に基づいて考慮すべき多くの要素の中には、重篤で長期的な副作用のリスク、特定の治療に随伴する可能性のある短期的な不快感、利便性(例:経口薬を注射薬と比較)、及び予後があります。その後に、最善の進路を決定するため医師が患者との話し合いをもつことができます。研究が進んだことで、この方法が望ましく有効であることが裏付けられており、より多くの患者が話し合いを望むようになってきています。

ビタミンDのサプリメントが多発性硬化症患者にさらに広まりつつあります。しかし、ビタミンDの補給が多発性硬化症に有効な治療法であることを示す明確なエビデンスはありません。また、特にビタミンD不足が記録に裏付けられていない場合、補給によるリスク、及びリスクとベネフィットのバランスは明らかではありません。

患者に、蜂刺療法や食事療法から低用量ナロキソンに至るまで、その他の代替療法の選択肢に関する質問があることは少なくありません。共同意思決定の際、医師は、患者が検討している代替療法について患者に尋ねることが必ず必要であり、ほとんどの場合、多発性硬化症と闘う最も有効な方法として、適切な薬物療法とともに活動的で健康的な生活習慣に集中するよう患者を確実に導かなければなりません。

翻訳: 翻訳:TransPerfect