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Dr. Bakris

高血圧患者の治療--論評

2017/03/07 George L. Bakris, MD, Professor of Medicine, University of Chicago School of Medicine

多くの人は、高血圧が重篤な健康上のリスクを引き起こすことを知りません。高血圧は、「サイレントキラー」です。高血圧は、自覚症状がなく発現することが多いにもかかわらず、米国の成人では、1日に約1,100人が死亡する原因となっています。

米国では、成人3人中1人が高血圧に罹患しています。しかし、米国疾病予防管理センター(the Centers for Disease Control and Prevention)によると、高血圧に罹患している成人のうち、血圧値をコントロールできている患者は54%に過ぎません。

患者と高血圧を低下させる重要性を強調すること、さらに、効果的な治療法を突き止め、最新の推奨事項に対応することが医療従事者に任せられています。

高血圧治療における血圧目標値

最近、医学会では、高血圧治療における血圧目標値について、意見の相違が認められています。2014年には、米国高血圧合同委員会第8次報告(JNC 8、the Eighth Joint National Committee)が、60歳超の多くの患者に対する血圧目標値を150/90 mm Hg未満に変更しました。60歳未満の患者、糖尿病患者、または慢性腎障害患者では、140/90 mm Hg未満を目標値にして治療を行うことを推奨しています。

しかし、2015年に、the Systolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT試験)により、より低い血圧目標値の方が一定の群には適していることが示されました。この試験では、冠動脈疾患のリスク(75歳超、臨床心血管病、慢性腎臓病、またはフラミンガムリスク15%超と定義)にある50歳超の患者9,000例が、集中血圧治療(収縮期血圧120未満)または標準血圧治療(収縮期血圧140未満)のいずれかに無作為化されました。糖尿病患者または脳卒中歴のある患者は除外されました。この試験では、集中治療群に主要評価項目(心筋梗塞、急性冠動脈症候群、脳卒中、心不全、および心血管死)のリスク低下が認められました。1つの主要転帰を予防するために治療が必要となったのは61例で、死亡を予防するために治療が必要とったのは90例でした。SPRINT試験における75歳超の患者を対象にしたサブグループ解析では、高齢者集団において心血管事象および心血管死の割合が低いことが確認されました。

血圧測定方法が異なることにより、治療標的に影響を及ぼすのに十分な結果の変動が生じることがありますので、注意が必要です。SPRINT試験における測定方法は、診療時に医師が患者を治療する際に用いる測定方法とは異なっていました。医師は、特に副作用が発現する水準まで血圧を下げることのできる薬を処方する場合、上記のような測定の差を認識する必要があります。一般に、臨床設定で測定される患者の収縮期血圧の目標範囲は、SPRINT試験での説明よりも5~10 mmHg高くなります。測定値の矛盾に関する詳細は、Circulation誌のオンライン版に掲載されているこの論評 をご参照ください。

SPRINT試験に基づき、一部の医師は、ほとんどの高血圧患者に対して、血圧目標値を125~130 mm Hg未満(標準的な外来診察室の手動の血圧計により血圧を測定した場合)、または120~125 mm Hg(自動のデジタルモニターで血圧を測定した場合)として治療することを推奨しています。これには、SPRINT試験の被験者基準を満たす患者が含まれます。さらに、一部の臨床医は、糖尿病性腎症や蛋白尿を呈している場合の糖尿病患者では、収縮期血圧を125~130 mm Hg未満とすべきであると考えています。

血圧の集中治療戦略の恩恵は、リスクと比較考察すべきです。リスクには、腎機能の悪化、失神、電解質異常などが含まれます。医師は患者と協力して、副作用を最小化する個別の治療プロトコルを追及すべきです。

高血圧の治療

生活習慣の変更は、もちろん血圧コントロールにおいてきわめて重大な要素です。生活習慣の変更には、定期的な運動、体重の減量、DASH食、塩分およびアルコール摂取の制限などが含まれます。

生活習慣の変更が十分ではない場合、抗高血圧療法が必要になります。75%以上の患者は、血圧目標値を達成するために2種類以上の薬が必要になります。マニュアルは、血圧降下に効果を示している薬の概要を説明しています。

患者に処方する薬を決定する場合、患者が変更可能な生活習慣に注目することも必要です。例えば、レニンーアンジオテンシン系の阻害剤は、塩分摂取を減少できない患者では有効性が著しく減少します。

高血圧のコントロールについて患者と話し合う

患者が来院している間に、高血圧の危険性を詳しく述べるための時間を作ることは、多くの医師にとって困難です。しかし、患者には教育が必要です。高血圧が何故サイレントキラーと呼ばれるのかを明瞭に伝えることは、患者が生活習慣への介入を実行する動機付けには効果的な方法です。多くの人に心不全または脳卒中で亡くなった近親者がいますので、このことも強い動機付けになる可能性があります。

新しい治療を開始した後に、看護師または医師の助手に、患者へ電話連絡してもらうことも有効です。この連絡は、患者の改善に医師が責任を負っていることを患者に示すことにもなり、患者が正確に治療に従っているのかを確認する機会にもなります。