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動脈ガス塞栓症

(空気塞栓症)

執筆者: Alfred A. Bove, MD, PhD, Temple University School of Medicine

動脈ガス塞栓症は,悲惨な転帰を招きうる病態であり,気泡が動脈に入るか,動脈内で形成されることで血流に閉塞が生じ,組織の虚血を来す。動脈ガス塞栓症は中枢神経系の虚血を引き起こす可能性があり,急速な意識消失,その他の中枢神経系症候,またはその両方を来しうる;他の臓器も侵すことがある。診断は臨床的に行い,おそらく画像検査により裏付けされる。治療は緊急的再加圧である。

ガス塞栓は,以下のいずれかの経路を介して動脈循環内に入る可能性がある:

  • 肺の圧外傷後,破裂した肺胞から

  • 減圧症が重度であれば,動脈循環自体から

  • 静脈循環(静脈塞栓)から,右左短絡(卵円孔開存,心房中隔欠損)を介して,または肺のフィルター能を超えることにより移動

無症候性の静脈ガス塞栓でさえ,右左短絡が存在する場合重篤な症候(例,脳卒中)を引き起こす可能性がある。動脈循環に入らない静脈ガス塞栓は,それほど重篤ではない。

脳塞栓症が最も重篤な臨床像と考えられるが,動脈ガス塞栓症はその他の臓器(例,脊髄,心臓,皮膚,腎臓,脾臓,消化管)にも重大な虚血を来しうる。

症状と徴候

症状は浮上して数分以内に発現し,精神状態の変化,不全片麻痺,局所的な運動または感覚障害,痙攣発作,意識消失,無呼吸,およびショックなどがありうる;その後,死に至ることもある。肺の圧外傷( 肺の圧外傷)またはII型減圧症( 症状と徴候)の徴候を認めることもある。

動脈ガス塞栓症によるその他の症状は以下の臓器に生じる:

  • 冠動脈(例,不整脈,心筋梗塞,心停止)

  • 皮膚(例,皮膚の斑状チアノーゼ,舌の局所的蒼白化)

  • 腎(例,血尿,タンパク尿,腎不全)

パール&ピットフォール

  • 意識のないダイバーは全てガス塞栓症があると想定し,直ちに再加圧すべきである。

診断

  • 臨床的評価

  • ときに画像検査による確定

診断は主として臨床的に行う。ダイバーが浮上中または浮上直後に意識消失を来した場合,本症を強く疑う必要がある。検査を行う前に,侵された動脈から空気が再吸収されることがあるため,診断の確定は困難である。しかしながら,診断を支持しうる画像検査(いずれも感度は限られている)には以下のものがある:

  • 心エコー検査(房室内の空気を示す)

  • 換気血流シンチグラフィー(肺塞栓と合致する結果を示す)

  • 胸部CT(局所肺損傷または出血を示す)

  • 頭部CT(血管内ガスおよびびまん性浮腫を示す)

ときに減圧症でも同様の症状および徴候を認めることがある(特徴の比較については, ガス塞栓症と減圧症の比較を参照)。

ガス塞栓症と減圧症の比較

特徴

ガス塞栓症

減圧症

症状と徴候

よくみられる:意識消失,しばしば痙攣を伴う(意識のないダイバーは全てガス塞栓症があると想定し,直ちに再加圧すべきである

比較的まれ:より軽度の脳の症候,肺の圧外傷の徴候(例,縦隔気腫または皮下気腫,気胸)

極めて多様―ベンズ(疼痛,多くは関節内または関節付近),ほぼ全ての型および程度の神経症状,ならびにチョークス(呼吸窮迫とそれに続く循環虚脱—極度の緊急事態),単独または他の症状とともに生じる

発症

突然,通常浮上中または浮上後数分以内

徐々にまたは突然,約50%で浮上後1時間を越えて発症;水深10m(33フィート)を超える潜水*または2 atm absを超える高圧曝露の後では,最大で24時間以内に発症

誘因

一般的:浮上中の息止めもしくは気道閉塞(特に急速に浮上する場合は2,3フィート[60~90cm]の深さからでも起こりうる),または圧力上昇状態からの減圧

一般的:減圧不要限界を超え,適切な減圧停止を伴わない潜水または高圧曝露

ときに:減圧不要限界内である,または適切な減圧停止を伴う潜水または高圧曝露;低圧曝露(例,潜水後の飛行)

機序

一般的:肺過膨張による肺血管への遊離ガスの流入と,それに続く脳血管の塞栓

ときに:不特定の部位からの遊離ガスによる冠循環,腎循環,皮膚循環の閉塞

外部の圧が低下すると,血液または組織中に過剰に溶解したガスから気泡が形成される

緊急治療

必要に応じて基本的緊急措置(例,気道確保,止血,CPRまたは機械的人工換気)

最寄りの再圧チャンバーへの迅速な搬送

水平位

密着させたマスクによる100%O2投与

患者に意識があれば経口による水分補給;なければ静注による補液

必要に応じて基本的緊急措置(例,気道確保,止血,CPRまたは機械的人工換気)

最寄りの再圧チャンバーへの迅速な搬送

密着させたマスクによる100%O2投与

患者に意識があれば経口による水分補給;なければ静注による補液

*しばしば反復潜水が関わる。

atm abs = 絶対気圧。

治療

  • 即時の100%O2投与

  • 再圧治療

ガス塞栓症が疑われるダイバーはすぐに再加圧すべきである( 再圧治療)。重要度の低い処置よりも,再圧チャンバーへの搬送を優先する。飛行機による搬送は時間を大幅に短縮できるのであれば適切であるが,高所での減圧環境への曝露は最小限にしなければならない( 減圧症 : 治療)。

搬送に先立ち高流量100%O2を投与すると,肺および体循環の間の窒素分圧較差が拡がることによりN2のウォッシュアウトが促進され,塞栓性の気泡の再吸収が加速する。脳塞栓のリスクを下げるため,患者を仰臥位に保つべきである。機械的人工換気,昇圧薬,および大量輸液を必要に応じて用いる。患者を左側臥位(Durant手技)またはトレンデレンブルク体位にすることは,もはや推奨されていない。

要点

  • 浮上後数分以内の神経症状またはその他の臓器の虚血症候があれば,動脈ガス塞栓症を強く疑う。

  • 陰性の検査結果に基づき,動脈ガス塞栓症を除外しない。

  • ガス塞栓症が疑われれば,高流量100%O2を開始し,再圧チャンバーへの搬送を始める。

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