ショック

執筆者:Levi D. Procter, MD, Virginia Commonwealth University School of Medicine
Reviewed ByDavid A. Spain, MD, Department of Surgery, Stanford University
レビュー/改訂 2024年 5月 | 修正済み 2024年 9月
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ショックとは,臓器灌流が低下したことで,細胞に機能障害や損傷が生じている状態のことである。関係する機序は,循環血液量の減少,心拍出量の減少,および血管拡張(ときに毛細血管床をバイパスする血液のシャントを伴う)である。症状としては,精神状態の変化,頻脈,低血圧,乏尿などがある。診断は多くの場合,臨床的になされ,特徴的な徴候および症状(低血圧,頻脈,頻呼吸,乏尿,意識障害など)の組合せに基づくほか,ときに組織灌流低下のマーカー(例,血中乳酸値,塩基欠乏)が裏付けとして用いられる。治療は輸液蘇生(fluid resuscitation)により行い,必要であれば血液製剤の投与,基礎疾患の是正,ときに昇圧薬の投与も行う。

敗血症および敗血症性ショックも参照のこと。)

ショックの病態生理

ショックの基礎となる障害は,主要組織への灌流減少である。灌流が低下し,好気性代謝に十分な酸素が細胞に運搬されなくなると,細胞の代謝は嫌気性代謝に切り替わり,それに伴い二酸化炭素産生が増加し,血中乳酸濃度が上昇する。細胞機能が低下し,ショックが持続すれば,不可逆的な細胞障害および細胞死が生じる。

ショックの間,灌流が低下した領域で炎症カスケードおよび凝固カスケードが活性化されることがある。低酸素状態の血管内皮細胞は白血球を活性化させ,白血球は内皮に付着して,直接障害物質(例,活性酸素,タンパク質分解酵素)および炎症メディエーター(例,サイトカイン,ロイコトリエン,腫瘍壊死因子)を放出する。これらのメディエーターの一部は細胞表面受容体に結合してNFκB(nuclear factor κB)を活性化し,NFκBはさらなるサイトカインおよび強力な血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の産生を促す。これらのカスケードが活性化されることで,ときに播種性血管内凝固症候群(DIC)が発生することもある。

以下に記載するように,ショックには様々な発生機序がある。敗血症性ショックは血液分布異常性ショックの一種であり,細菌毒素,特に内毒素(エンドトキシン)の作用があるために,他の型のショックより炎症反応が促進される可能性がある。

ショックの早期では血圧は必ずしも低くない(ただし,ショックが改善されなければ,最終的には低血圧を来す)。同様に,血圧の「低い」患者が,必ずしもショックを起こしているわけではない。低血圧の程度および影響は,十分な生理的代償が生じるか否かと患者の基礎疾患によって異なる。そのため,若年患者や比較的健康な患者には耐えられる中等度の低血圧でも,動脈硬化がある程度進行した高齢者では脳,心臓,腎臓に重度の機能障害を来すことがある。

ショックに対する代償

酸素運搬能(DO2)が減少するとき,組織は運搬された酸素からの摂取率を高めることによって,まずは代償する。動脈圧が低下するとアドレナリン作動性応答が惹起され,交感神経を介した血管収縮および,しばしば心拍数の増加を来す。初めのうちは血管収縮は選択的であり,血液を内臓循環から心臓および脳に送る。循環血中βアドレナリン性アミン(アドレナリンノルアドレナリン)もまた,心臓の収縮性を増大させ,以下を放出させる。

  • 副腎からコルチコステロイド

  • 腎臓からレニン

  • 肝臓からグルコース

コルチコステロイドはカテコラミンの作用を増強する。レニンは体液貯留および血管収縮を刺激する。増加したグルコースは,ミトコンドリアにおけるピルビン酸の取り込みを亢進させるが,酸素が十分にないと,これは乳酸産生の増加につながる。

ショック軽快後の再灌流

ショックの軽快に伴い,虚血細胞の再灌流によって,さらなる損傷が生じる可能性がある。基質の運搬が再開すると,好中球の活性が高まり,有害なスーパーオキシドおよびヒドロキシルラジカルの産生を増大させることがある。血流が回復すると,局所に集中していた炎症メディエーターが他の臓器に運ばれることになる。

多臓器不全症候群(MODS)

直接的な障害および再灌流による障害は,MODS(生命を脅かす疾患または障害に起因する複数臓器の進行性機能障害)を引き起こす可能性がある。MODSはあらゆる型のショックに続発しうるが,感染症が関与することが非常に多い;臓器不全は敗血症性ショックを定義する特徴の1つである。また,MODSは重症外傷患者の > 10%以上に起こり,24時間を超えて生存している重症外傷患者における死因の第1位である。

パール&ピットフォール

  • 多臓器不全症候群は,生命を脅かす疾患または障害に起因する複数臓器の進行性機能障害である。

あらゆる器官系が侵されうるが,最も標的となることが多い臓器は肺で,肺における膜透過性の亢進により,肺胞への体液貯留およびさらなる炎症が生じる。低酸素症の進行に伴い,酸素投与への抵抗性が増大する。この症状は急性肺損傷と呼ばれ,重症の場合,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる。

腎臓の灌流が著しく低下すると腎臓は障害され,急性尿細管壊死および腎機能不全を来し,血清クレアチニンの進行性の上昇および乏尿を来す。

心臓では,冠灌流の減少および炎症メディエーター(腫瘍壊死因子およびインターロイキン1を含む)の増加により,収縮能が低下し,心筋のコンプライアンスが悪化し,β受容体のダウンレギュレーションが起こりうる。不整脈を起こすこともある。これらの要因により心拍出量が減少し,心筋および全身の灌流の両方がさらに悪化し,悪循環を来してしばしば死に至る。

消化管ではイレウスおよび粘膜下出血が発生しうる。肝臓の灌流が低下すると,局所的または広範囲の肝細胞壊死,トランスアミナーゼおよびビリルビンの上昇,および凝固因子の産生低下を来しうる。

最重症の臨床像である播種性血管内凝固症候群を含めて,凝固機能が障害されることがある。

ショックの病因と分類

臓器灌流低下およびショックにはいくつかの機序がある。ショックは以下の原因による:

  • 循環血液量減少(循環血液量減少性ショック)

  • 血管拡張(血液分布異常性ショック)

  • 心拍出量の一次性低下(心原性ショックおよび閉塞性ショック)

  • 組合せ

循環血液量減少性ショック

循環血液量減少性ショックは,血管内容量の危機的な減少により生じる。静脈還流(前負荷)が減少すると,心室が充満せず,一回拍出量が減少する。心拍数の増加によって代償されない限り,心拍出量は減少する。

一般的な原因は出血(出血性ショック)で,通常,外傷,外科手術,消化性潰瘍,食道静脈瘤,または大動脈瘤破裂によって起こる。出血は顕性(例,吐血,黒色便)のこともあれば不顕性(例,異所性妊娠の破裂)のこともある。

循環血液量減少性ショックはまた,血液以外の体液の大量喪失によって起こる場合(非出血性)もある(体液の喪失を原因とする循環血液量減少性ショックの表を参照)。

表&コラム

循環血液量減少性ショックは不十分な水分摂取に起因することもある(体液喪失の増加を伴う場合と伴わない場合がある)。水が手に入らない場合,神経学的障害により口渇を感じる機構が損なわれている場合,または身体障害のため物理的に摂取が困難な場合がある。

入院患者において,循環不全の初期徴候が誤って心不全と解釈され,輸液を制限されるか,または利尿薬が投与されると,循環血液量減少が悪化しうる。

血液分布異常性ショック

血液分布異常性ショックは,動脈または静脈の拡張により相対的に血管内容量が不十分になることに起因する;循環血液量は正常である。一部の症例では,心拍出量(およびDO2)は高いが,動静脈シャントによって毛細血管床をバイパスする血流が増加する;このバイパスに加え,細胞内酸素運搬の脱共役により,細胞の灌流低下(酸素消費量の減少によって示される)が生じる。また別の状況では,血液が静脈床に貯留し,心拍出量が減少する。

血液分布異常性ショックは以下により生じうる:

  • アナフィラキシー(アナフィラキシーショック)

  • 内毒素(エンドトキシン)放出(敗血症性ショック)または外毒素放出(毒素性ショック)を伴う細菌感染症

  • 重度の脊髄損傷,通常はT4より上(神経原性ショック)

  • 特定の薬剤(例,硝酸薬,オピオイド,アドレナリン受容体遮断薬)または毒性物質の摂取(毒素性ショック)

敗血症性ショックでは,容量血管が拡張し,「相対的」循環血液量減少(すなわち,循環血液量で満たせないほどの血管容量の増大)が起こることで,血液の貯留および低血圧を来す。局所的に血管が拡張すると血液は毛細血管(交換血管)床を通らないことがあり,心拍出量および血圧が正常であるにもかかわらず,局所的な灌流低下が生じる。さらに,過剰な一酸化窒素は,ミトコンドリアを障害してATP(アデノシン三リン酸)産生を減少させるフリーラジカルであるペルオキシナイトライト(peroxynitrite)になる。敗血症性ショックでは,たとえ太い血管の血流が保たれていても,毛細血管を含む微小血管への血流は減少する。このように基質の運搬が減少することは,物理的な微小血管閉塞に伴う現象として少なくとも部分的に説明できる。凝固カスケードの一部として白血球と血小板が内皮に接着することで,フィブリノーゲンからフィブリンへの変換が起こり,血小板血栓が安定化する。

内皮細胞の機能不全と相俟って,多様なメディエーターにより微小血管透過性が著しく亢進し,体液および,ときに血漿タンパク質が間質腔へ滲出する(1, 2, 3)。消化管では,透過性が亢進することにより腸内細菌が管腔から移動することがあり,これにより敗血症または転移性感染症(metastatic infection)を来す可能性がある。

好中球のアポトーシスが阻害されることで,炎症メディエーターの放出が増大する可能性がある。他の細胞ではアポトーシスが促進され,細胞死が増加するので臓器機能が悪化する可能性がある。

アナフィラキシーショックおよび敗血症性ショックは,しばしば循環血液量減少という要素も併せもつ。

心原性および閉塞性ショック

心原性ショックは,一次性心疾患に起因する心拍出量の相対的または絶対的な減少である。閉塞性ショックは,心臓または大血管の充満または駆出を阻害する物理的因子によって,引き起こされる。原因の一覧が心原性および閉塞性ショックの機序の表に記載されている。

表&コラム

病因および分類に関する参考文献

  1. 1.Salmon AH, Satchell SC: Endothelial glycocalyx dysfunction in disease: Albuminuria and increased microvascular permeability.J Pathol 226:562–74, 2012.doi: 10.1002/path.3964

  2. 2.Chelazzi C, Villa G, Mancinelli P, et al: Glycocalyx and sepsis-induced alterations in vascular permeability.Crit Care 19(1):26, 2015.doi:10.1186/s13054-015-0741-z

  3. 3.Martin L, Koczera P, Zechendorf E, et al: The endothelial glycocalyx: New diagnostic and therapeutic approaches in sepsis.Biomed Res Int 2016:3758278, 2016.doi:10.1155/2016/3758278

ショックの症状と徴候

精神状態の変化(例,嗜眠,錯乱,傾眠)はショックの一般的な徴候である。手足は蒼白で冷たく湿り,しばしばチアノーゼを呈し,耳介,鼻,および爪床にもチアノーゼを認める。毛細血管再充満時間は延長し,血液分布異常性ショックを除き,皮膚は灰色または黒ずんだ色になり,湿潤する。著明な発汗を生じることがある。末梢の脈拍は弱く一般的には速い;しばしば,大腿動脈または頸動脈の拍動のみ触知できる。頻呼吸および過換気がみられることがある。血圧は低い(収縮期血圧が90mmHg未満)か測定不能となる傾向にある;動脈カテーテルによる直接測定を行った場合,より高くより正確な値が得られることが多い。尿量は少ない。

血液分布異常性ショックでも同様の症状を呈するが,例外的に皮膚は温かいか紅潮していることがある(特に敗血症の場合)。脈拍は弱いというより跳ねるように触れる(bounding pulse)ことがある。敗血症性ショックでは,発熱(場合によっては悪寒に続いて起こる)がよくみられる。アナフィラキシーショックの患者の中には,蕁麻疹または喘鳴を呈するものもいる。

その他,多くの症状(例,胸痛,呼吸困難,腹痛)が,基礎疾患または続発する臓器不全によって起こりうる。

ショックの診断

  • 病歴聴取および身体診察

  • バイタルサイン

  • 検査結果の傾向

診断は主に臨床的になされ,組織灌流が不十分なことを示す所見(意識障害,乏尿,末梢性チアノーゼ)および代償機構が働いていることを示す徴候(頻脈,頻呼吸,発汗)による。特異的基準には以下のものがある:

  • 意識障害

  • 心拍数 > 100/分

  • 呼吸数(Respiratory rate) > 22回/分

  • 低血圧(収縮期血圧 < 90mmHg)またはベースラインの血圧(baseline blood pressure)から30mmHgの低下

  • 尿量 < 0.5 mL/kg/hour

診断を裏付ける臨床検査所見には,以下のものがある:

  • 乳酸 > 3mmol/L(27mg/dL)

  • 塩基欠乏(base deficit)<4mEq/L

  • PaCO2< 32mmHg(< 4.26kPa)

しかしながら,これらの所見のいずれも単独では診断の役に立たず,身体徴候も含め各所見は傾向(すなわち悪化しているか改善しているか)および総合的な臨床状況により評価される。

近赤外線分光法(NIRS)は,ショックの程度を測定できる可能性がある非侵襲的かつ迅速な手法であるが,この手法の妥当性はまだ大規模には検証されていない。

病因の同定

ショックの原因を認識しておくことは,しばしばショックの型を分類することよりも重要である。原因は明白な場合もあれば,病歴と身体所見に簡単な検査を加えることで,速やかに認識できることもある。

心臓または肺の異常が原因であることがある:

  • 胸痛(呼吸困難の有無は問わない)は心筋梗塞大動脈解離,または肺塞栓を示唆する。

  • 収縮期雑音は,急性心筋梗塞による心室中隔破裂または僧帽弁逆流を示唆している可能性がある。

  • 拡張期雑音は,大動脈基部にかかる大動脈解離による大動脈弁逆流を示唆している可能性がある。

  • 心タンポナーデは頸静脈怒張,心音減弱,および奇脈によって示唆される。

  • ショックを引き起こすほど重度の肺塞栓は,典型的には酸素飽和度を低下させ,長期臥床や手術後など,特殊な状況下でより多くみられる。

これらの心臓または肺に関連した原因について評価ないし鑑別するための検査としては,心電図検査,心筋逸脱酵素測定,胸部X線,動脈血ガス測定,肺シンチグラフィー,ヘリカルCT,心エコー検査などがある。

腹部の問題が原因であることもある:

  • 腹痛,背部痛,または腹部圧痛は,膵炎腹部大動脈瘤破裂,および腹膜炎(例,内臓穿孔による)や,妊娠可能年齢の女性では異所性妊娠破裂を示唆する。

  • 正中部の拍動性腫瘤は,腹部大動脈瘤破裂を示唆する。付属器腫瘤の圧痛は異所性妊娠を示唆する。

典型的に行われる検査としては,腹部CT(状態が不安定な場合はベッドサイド超音波検査が助けになる),血算,アミラーゼ,リパーゼ,妊娠可能年齢の女性での尿妊娠検査などがある。

その他の原因としては以下のものがある:

  • 発熱,悪寒,および局所の感染徴候は敗血症性ショックを示唆し,特に易感染状態の患者ではその可能性が高い。

  • 発熱のみを認める場合は,病歴と臨床状況によっては,熱中症を示唆している可能性がある。

検査には胸部X線,尿検査,血算,ならびに傷,血液,尿,および他の関連する体液の培養などがある。

ごく一部の患者では,原因が臨床的に明らかでない。原因を示唆する局所の症状または徴候がない患者では,心電図,心筋逸脱酵素測定,胸部X線,および動脈血ガスを施行すべきである。これらの検査結果が正常の場合は,ほかに考えられる原因として,薬剤または違法薬物の過剰摂取,不顕性感染(毒素性ショックも含む),アナフィラキシー,閉塞性ショックなどがある。

追加検査

まだ行っていなければ,心電図検査,胸部X線,血算,血清電解質,血中尿素窒素(BUN),クレアチニン,プロトロンビン時間(PT),部分トロンボプラスチン時間(PTT),肝機能検査,ならびにフィブリノーゲンおよびフィブリン分解産物の検査を行って,患者の状態をモニタリングするとともに,得られた結果をベースライン値とする。

血液量の判定が困難な場合には,中心静脈圧(CVP)または肺動脈楔入圧(PAOP)のモニタリングが有用となることがある。CVPが5mmHg未満(7cmH2O未満)またはPAOPが8mmHg未満の場合は循環血液量減少が示唆されるが,循環血液量減少がある肺高血圧症の患者では,CVPがより高くなることがある。

ショックおよび心機能の全般的な評価として,ベッドサイドで(治療担当医が自ら)迅速に心臓超音波検査を施行し,心臓の充満および機能が十分な水準にあることを評価することが多い(レビューについては1, 2)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Ferrada P: Image-based resuscitation of the hypotensive patient with cardiac ultrasound: an evidence-based review.J Trauma Acute Care Surg 80 (3): 511–518, 2016.

  2. 2.Martin ND, Codner P, Greene W, et al: Contemporary hemodynamic monitoring, fluid responsiveness, volume optimization, and endpoints of resuscitation: an AAST critical care committee clinical consensus.Trauma Surg Acute Care Open 5(1):e000411, 2020. doi: 10.1136/tsaco-2019-000411

ショックの治療

  • 支持療法

  • 輸液

  • ショックの種類および原因に応じたその他の管理

ショックの一般的な管理

応急処置として患者を保温する。外出血をコントロールし,気道および換気を確認し,必要であれば呼吸補助を行う。経口では何も与えず,嘔吐が起こった場合の誤嚥を避けるために患者の頭部を横に向ける。

評価と同時に治療を開始する。

フェイスマスクによる酸素投与を行う。ショックが重度である,または換気が不十分である場合,挿管して機械的人工換気を行う必要がある。2本の太い(14~16G)静脈カテーテルを,別々の末梢静脈に挿入する。末梢静脈が速やかに確保できないとき,特に小児では,中心静脈ラインまたは骨髄針が代用される。

典型的には輸液負荷試験を行う;1L(または小児では20mL/kg)の生理食塩水を15分かけて点滴する。大出血では一般に乳酸リンゲル液が使用されているが,電解質輸液の使用は最小限に抑え,血液製剤の輸血(赤血球製剤,新鮮凍結血漿,血小板製剤を1:1:1の比率で)を優先すべきである(1, 2)。臨床パラメータが正常に戻るまで,輸液を継続する。右心負荷が高い徴候(例,頸静脈怒張)がある患者,または急性心筋梗塞の患者に対しては,より低容量(例,250~500mL)が用いられる。

肺水腫の徴候がある患者には,おそらく輸液負荷試験は行うべきでない。さらなる輸液療法は基礎疾患に基づいて行い,CVPまたはPAOPのモニタリングを必要とすることがある。ベッドサイドでの心臓超音波検査によって収縮力および大静脈の呼吸性変動を評価することは,輸液の追加か強心薬による補助のどちらが必要かを決定するのに役に立つことがある。

ショックを来した患者は重篤(critically ill)な状態であり,集中治療室に収容すべきである。モニタリングには以下を含める:

  • 心電図

  • 収縮期,拡張期,および平均血圧(動脈カテーテルによる測定が望ましい)

  • 呼吸の回数および深さ

  • パルスオキシメトリー

  • 尿量(膀胱留置カテーテルによる)

  • 体温

  • 意識(例,グラスゴーコーマスケール[Glasgow Coma Scale]),容積脈波(pulse volume),皮膚温,および皮膚色といった臨床状態

先端バルーン付き肺動脈カテーテルを用いて,CVP,PAOP,および熱希釈法による心拍出量を測定することは,原因不明もしくは病因が複数あるショック,または重度のショックの患者における診断および初期管理に役立ち,特に乏尿もしくは肺水腫を伴う場合に役立つ。心エコー検査(ベッドサイドまたは経食道による)は侵襲性の低い代用手段である。

動脈血ガス,ヘマトクリット,電解質,血清クレアチニン,および血中乳酸を継続して測定すべきである。舌下二酸化炭素測定が利用できるならば,臓器灌流を非侵襲的にモニタリングできる(組織灌流が低下すると値が上昇する)。傾向をモニタリングするためには,よく設計されたフローシートが役に立つ。

組織灌流の低下により筋肉内投与では吸収が確実でなくなるため,注射剤は全て静脈内投与とする。オピオイドは血管拡張を起こしうるため一般的に避けられるが,重度の痛みの治療としてモルヒネ0.1mg/kgを2分間かけて静脈内投与することがあり,必要であればこれを10~15分毎に繰り返す。脳の灌流が低下すると不安を呈することがあるが,患者が挿管されている場合を除き,鎮静薬または精神安定薬はルーチンには投与しない。

初期対応としての蘇生処置の後,背景となる病態の改善に向けて特異的治療が行われる。引き続いて行われる支持療法はショックの型による。

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出血性ショックの治療

  • 出血の外科的コントロール

  • 血液製剤の早期投与

出血性ショックでは,外科的な止血処置が最も優先される。補液は止血のための手術の前ではなく,同時に行う。血液製剤および電解質輸液が蘇生処置として使用される;しかしながら,大量の輸液が必要になる可能性が高い患者では,早期に赤血球製剤,新鮮凍結血漿および血小板製剤が1:1:1の比率で投与されている。反応がなければ,通常,投与量不足または進行中の出血が見逃されていることが示唆される。難治性の出血性ショックでは昇圧薬の投与を試みてもよいが,十分な血液量が回復し,出血がコントロールされてからでなければならない;その前に昇圧薬を投与すると転帰が悪化する可能性がある。

血液分布異常性ショックの治療

  • 電解質輸液

  • ときに強心薬または昇圧薬

  • 敗血症性ショックには抗菌薬

  • アナフィラキシーにはアドレナリン

血液分布異常性ショックがあり,生理食塩水による初期の補液後も著しい低血圧を伴う場合は,強心薬または昇圧薬(例,ドパミン,ノルアドレナリン―変力性および血管作動性のカテコラミン)によって治療されることがある。敗血症性ショックの患者には広域抗菌薬も投与する。アナフィラキシーショックの患者が輸液負荷に反応しない患者(特に気管支収縮を伴う場合)には,アドレナリン0.05~0.1mgを静注した後,アドレナリンを0.02μg/kg/分で持続静注する。

表&コラム
表&コラム

心原性ショックの治療

  • 原因の治療

心原性ショックでは,器質的疾患(例,弁機能不全,中隔破裂)は外科的に修復される。

冠動脈血栓症は,経皮的インターベンション(血管形成術,ステント留置術),冠動脈バイパス手術,または血栓溶解療法のいずれかによって治療される。

頻拍性不整脈(例,頻拍性心房細動,心室頻拍)は,カルディオバージョンまたは抗不整脈薬の使用によりコントロールする。徐脈は経皮または経静脈ペーシングにより治療され,ペースメーカーを留置するまでは,アトロピン0.5mg,静注,5分毎を最大4回まで投与することがある。アトロピンが無効に終わった場合は,イソプレナリン1~4μg/分がときに有用となるが,冠動脈疾患による心筋虚血がある患者に用いることは望ましくない。

急性心筋梗塞後のショックは,PAOPが低いまたは正常であれば循環血液量の増量により治療される;PAOP(肺動脈楔入圧)は15~18mmHgが至適と考えられている。肺動脈カテーテルが留置されておらず,ベッドサイドで心臓超音波検査を施行できない場合は,体液過剰の徴候がないか胸部聴診で頻回に確認しつつ,慎重に輸液(生理食塩水250~500mLのボーラス投与)を試みてもよい。右室梗塞後のショックは通常,循環血液量の増量に部分的に反応するが,昇圧薬が必要になることもある。ベッドサイドでの心臓超音波検査で収縮力と下大静脈の呼吸性変動を評価することが,輸液の追加や昇圧薬の投与の必要性を判断するのに役立つことがあり,心室充満が正常あるいは正常を超える患者では強心薬によるサポートの方がよい。

中等度の低血圧(例,平均動脈圧[MAP]が70~90mmHg)であれば,心拍出量を増大させ,左室充満圧を低下させるためにドブタミンを点滴することがある。ドブタミンの投与中は,特に高用量の場合,ときに頻拍および不整脈が起こり,投与量を少なくすることが必要となる。血管拡張薬(例,ニトロプルシド,ニトログリセリン)は,静脈容量を増加させるまたは体血管抵抗を減少させるため,重度の低血圧がない患者では,障害された心筋にかかる仕事量を軽減させ,また心拍出量を増加させることもある。併用療法(例,ドパミンまたはドブタミンニトロプルシドまたはニトログリセリンを併用)が特に有用な場合もあるが,心電図検査と肺および全身循環の綿密な血行動態モニタリングが必要である。

より重篤な低血圧(MAPが70mmHg未満)の場合,収縮期血圧80~90mmHg(110mmHgを超えないこと)を目標として,ノルアドレナリンまたはドパミンが投与される。

大動脈内バルーンパンピングによるカウンターパルセーションは,急性心筋梗塞の患者で一時的にショックを改善するのに役に立つ。急性心筋梗塞の患者で心室中隔破裂を合併する場合,または重度の急性僧帽弁逆流を合併し > 30分の昇圧薬の投与を必要とする場合,この治療法は,外科的介入の前に心臓カテーテル検査および冠動脈造影を行うための橋渡しとみなすべきである。

閉塞性ショックにおいて,外傷によらない心タンポナーデは迅速な心膜穿刺を必要とするが,処置はベッドサイドで行える。外傷に関連する心タンポナーデは,外科的減圧および修復を必要とする。

緊張性気胸は,第2肋間鎖骨中線上からカテーテルを挿入することで直ちに減圧すべきであり,その後に胸腔ドレーンを挿入する。

ショックを引き起こす広範な肺塞栓は,抗凝固療法および血栓溶解療法,外科的塞栓除去術,または特定の症例では体外式膜型人工肺によって治療される。

治療に関する参考文献

  1. 1.Holcomb JB, Tilley BC, Baraniuk S, et al: Transfusion of plasma, platelets, and red blood cells in a 1:1:1 vs a 1:1:2 ratio and mortality in patients with severe trauma: The PROPPR randomized clinical trial.JAMA 313(5):471-482, 2015.doi:10.1001/jama.2015.12

  2. 2.Cannon JW, Khan MA, Raja AS, et al: Damage control resuscitation in patients with severe traumatic hemorrhage: A practice management guideline from the Eastern Association for the Surgery of Trauma.J Trauma Acute Care Surg 82(3): 605-617, 2017.doi: 10.1097/TA.0000000000001333

ショックの予後

無治療の場合,ショックは通常致死的である。たとえ治療されても,心筋梗塞に続発する心原性ショックの死亡率(60~65%)および敗血症性ショックの死亡率(30~40%)は高い。

予後は,原因,基礎疾患または合併症,発症から診断までの時間,ならびに治療の迅速さおよび適正さに左右される。

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