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ダウン症候群(21トリソミー)

(ダウン症候群;Gトリソミー)

執筆者:

Nina N. Powell-Hamilton

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2020年 6月
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出生児における全体の発生率は約1/700であり,母体年齢が上がるにつれてリスクが徐々に増大する。母体年齢別の出生児におけるリスクは,20歳で1/2000,35歳で1/365,40歳で1/100である。しかしながら,大半の出生は比較的若年の女性によるものであるため,ダウン症候群児の大多数は35歳未満の女性から出生しており,35歳以上の女性から出生するダウン症候群児は約20%に過ぎない。

ダウン症候群の概要
動画

病因

約95%の症例で21番染色体が1つ余分にみられ(21トリソミー),余分な染色体は一般に母親に由来する。そのような症例では染色体数が正常の46本ではなく47本になっている。

ダウン症候群の約3%は,46本の正常な数の染色体を有するが,21番染色体の過剰部分が他の染色体上に転座している(これによる異常染色体は1本として数える)。

最も頻度の高い転座はt(14;21)であり,この場合,21番染色体の過剰部分は14番染色体に付着している。t(14;21)転座例の約半数は両親とも正常核型であるが,このことは,その転座がde novoであったことを意味している。残る半数においては,一方の親(ほぼ全例で母親)が表現型は正常であるが染色体を45本しか有しておらず,そのうちの1つがt(14;21)となっている。理論的には,保因者である母親の児がダウン症候群を有する確率は1/3であるが,実際のリスクはこれよりも低い(約1/10)。一方,父親が保因者である場合のリスクは1/20に過ぎない。

次に頻度が高い転座はt(21;22)である。このケースでは,保因者である母親の児がダウン症候群を有する確率は約1/10であり,父親が保因者であるときのリスクはこれより低い。

過剰な21番染色体が別の21番染色体に付着した場合に発生する21q21q転座は,上記よりはるかにまれである。親が21q21q転座の保因者またはモザイク(正常な細胞と21q21q転座を伴う染色体数45本の細胞が混在する)であるかどうかを特定することが特に重要となる。このケースでは,転座保因者の児はダウン症候群または21モノソミーのいずれかとなる(後者は典型的には生存不可能である)。親がモザイクの場合も,リスクは同様であるが,染色体が正常な児が産まれる可能性もある。

ダウン症候群のモザイクは,胚内での細胞分裂中の不分離(染色体が分離細胞へ移行できない場合)によって生じるものと推測される。モザイク型ダウン症候群の個人には2つの細胞系列があり,1つは正常な染色体数46本の細胞系列,もう1つは過剰な21番染色体を含む47本の細胞系列である。知能予後および医学的合併症のリスクは脳などそれぞれ異なる組織中の21トリソミー細胞の比率に依存すると考えられる。しかし臨床では,体内の1つ1つの細胞の核型を確認することは不可能なため,リスクを予測できない。モザイク型ダウン症候群の一部では,非常に軽微な臨床徴候しかみられず知能も正常であるが,たとえ検出可能なモザイクがない症例でも,非常に多様な所見を示す可能性がある。片方の親に21トリソミーの生殖細胞系モザイクがある場合は,2人目の罹患児が産まれるリスクが母体年齢に基づくリスク以上に高くなる。

病態生理

染色体不均衡により生じる大半の病態と同様に,ダウン症候群では複数の器官系が侵され,構造的異常と機能的異常の両方が引き起こされる( Professional.see table ダウン症候群の主な合併症* ダウン症候群の主な合併症* ダウン症候群の主な合併症* )。全ての個人に全ての異常がみられるわけではない。

大半の症例でいくらかの認知障害がみられ,重度(IQ20~35)から軽度(IQ50~75)までに及ぶ。粗大運動および言語発達の遅滞も生後早期から明らかとなる。しばしば身長が低く,肥満のリスクが高い。

約5%の症例で消化管奇形,特に十二指腸閉鎖(ときに 輪状膵 輪状膵 十二指腸は閉鎖,狭窄,または腫瘤からの外的圧力によって閉塞する可能性がある。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) この奇形は消化管閉鎖で3番目に頻度が高い。推定発生率は出生5000~10,000人当たり1例である。十二指腸閉鎖の原因は,胎児十二指腸における疎通の異常である。この異常には,虚血または遺伝因子が関連している可能性がある。 十二指腸閉鎖は他の腸閉鎖と異なり,... さらに読む 輪状膵 を合併する)がよくみられる。 ヒルシュスプルング病 ヒルシュスプルング病 ヒルシュスプルング病は,下部腸管(通常は結腸に限定される)の神経支配の先天異常であり,部分的または完全な機能的閉塞を引き起こす。症状は便秘と腹部膨隆である。診断は下部消化管造影と直腸生検による。肛門内圧検査が評価に役立つ可能性があり,内肛門括約筋の弛緩欠如が認められる。治療は手術である。 ( 消化器系の先天異常の概要も参照のこと。) ヒルシュスプルング病は,腸壁のマイスナーおよびアウエルバッハ神経叢が先天的に欠如すること(無神経節症)が... さらに読む ヒルシュスプルング病 セリアック病 セリアック病 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失する。 セリアック病は 吸収不良を引き起こす疾患である。... さらに読む セリアック病 も比較的頻度が高い。多くの症例で甲状腺疾患(甲状腺機能低下症 乳児および小児における甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。乳児の症状としては,哺乳不良や発育不全などがある;児童および青年の症状は成人の症状と類似するが,それらに加えて発育不全,思春期遅発,またはこの両方もみられる。診断は甲状腺機能の検査(例,血清サイロキシン,甲状腺刺激ホルモン)による。治療は甲状腺ホルモンの補充による。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 乳児および幼児における甲状腺機能低下症は,先天性または後天性の場合がある。... さらに読む が最も多い)や 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリン,経口血糖... さらに読む などの内分泌障害が発生する。後頭環椎および環軸椎の過可動性や頸椎奇形によって後頭環椎および頸部不安定性が発生する可能性があり,それにより筋力低下や麻痺が生じることがある。約60%で 先天性白内障 先天性白内障 先天性白内障は,出生時または出生後早期から存在する水晶体の混濁である。 (成人における 白内障も参照のこと。) 先天性白内障は散発例のこともあれば, 染色体異常,代謝性疾患(例, ガラクトース血症),子宮内感染症(例, 風疹),またはその他の妊娠中の母体疾患などによって引き起こされることもある。先天性白内障は,一般的に 常染色体優性で遺伝する孤発性の家族性先天異常の場合もある。... さらに読む ,緑内障, 斜視 斜視 斜視とは眼位の異常で,正常では平行になる注視時の視線に偏位が生じたものである。診断は,角膜光反射の観察や遮閉試験の実施など,臨床的に行う。治療には,眼帯および矯正レンズの装用による視力障害の是正,矯正レンズによる眼位矯正,外科的修復などがある。 斜視は小児の約3%に発生する。無治療で放置すると,斜視患児の約50%で 弱視(視力発達過程における眼の不使用によって引き起こされる機能的な視力低下)に起因する視力障害が発生する。... さらに読む 斜視 屈折異常 屈折異常の概要 正視(正常な屈折)眼では,入射光は角膜および水晶体により網膜上に焦点を結び,鮮明な像が形成されて脳へ送られる。水晶体には弾性があり,若年者ほど弾性が強い。調節中は,像の焦点を正しく合わせるために毛様体筋が水晶体の形を調整する。屈折異常では,網膜上に鮮明な像を結ぶことができず,霧視を生じる(... さらに読む などの眼障害がみられる。大半の症例で難聴がみられ,耳感染症が非常によくみられる。

老化が加速すると考えられている。ここ数十年で,平均寿命の中央値が約60歳まで伸びており,中には80代まで生存する患者もいる。平均寿命を短縮させている併存症として心疾患,易感染性, 急性骨髄性白血病 急性骨髄性白血病(AML) 急性骨髄性白血病(AML)では,異常に分化して長い寿命をもつ骨髄前駆細胞の白血化とその無秩序な増殖により,循環血液中の幼若な血球数が増加し,悪性細胞で正常な骨髄が置換される。症状としては,易疲労感,蒼白,紫斑ができやすい状態,出血しやすい状態,発熱,感染などがある;髄外白血病細胞浸潤による症状は,約5%の患者のみにみられる(皮膚症状として現れることが多い)。末梢血塗抹標本と骨髄の検査で診断に至る。治療としては,寛解に導入する導入化学療法... さらに読む 急性骨髄性白血病(AML) などがある。比較的若年時から アルツハイマー病 アルツハイマー病 アルツハイマー病は進行性の認知機能低下を引き起こし,大脳皮質および皮質下灰白質におけるβアミロイド沈着および神経原線維変化を特徴とする。診断は臨床的に行う;通常,臨床検査および画像検査により,アルツハイマー病を示唆する特異的所見の検索,また認知症の他の治療可能な原因の同定を行う。治療は対症療法である。コリンエステラーゼ阻害薬はときに認知機能を一時的に改善する。 ( せん妄および認知症の概要と... さらに読む のリスク増大がみられ,ダウン症候群の成人の剖検では,脳に典型的な顕微鏡所見が認められる。最近の研究結果から,ダウン症候群の黒人は白人と比べて寿命がかなり短いことが示されている。この知見は,医療,教育,その他の支援サービスへのアクセス不良によるものと考えられる。

ダウン症候群の女性がダウン症候群の胎児をもつ可能性は50%であるが,妊娠の多くが自然流産となる。ダウン症候群の男性は,モザイク型のものを除くと,全例が不妊である。

症状と徴候

全般的な外観

罹患した新生児は,おとなしく,めったに泣かず,筋緊張低下を示すという傾向がある。ほとんどの症例で扁平な側貌(特に鼻根部扁平)がみられるが,出生時には通常とは異なる身体的特徴が目立たず,乳児期になってから特徴的顔貌が顕著になる場合もある。また後頭部扁平,小頭症,および頸部背面周囲の余剰皮膚がよくみられる。目がつり上がり,通常は目頭に内眼角贅皮がみられる。Brushfield斑(虹彩辺縁の周辺にできる塩粒に似た灰色ないし白色の斑点)を視認できることがある。口はしばしば開いたままで,大きな溝状舌(中央の亀裂はみられないことがある)を突き出している。耳介は小さく円形であることが多い。

手は短く幅広いことが多く,しばしば単一手掌屈曲線がみられる。手指はしばしば短く,第5指には斜指症(内弯)がみられ,しばしば指節骨が2本のみである。足では第1趾・第2趾間が離開し(サンダルギャップ[sandal-gap toes]),足底の溝がしばしば足の後方に及んでいる。

ダウン症候群の身体的特徴

成長および発達

成長につれて,身体および精神の発達遅延が顕著になってくる。身長は低いことが多い。平均IQは約50であるが,これには大きな幅がある。小児期には 注意欠如・多動症 注意欠如・多動症(ADD,ADHD) 注意欠如・多動症(ADHD)は,不注意,多動性,および衝動性から構成される症候群である。不注意優勢型,多動性・衝動性優勢型,混合型の3つの病型に分類される。診断は臨床的な基準により下される。治療では通常,精神刺激薬による薬物療法,行動療法,教育的介入などが行われる。 注意欠如・多動症(ADHD)は,神経発達障害と考えられている。神経発達障... さらに読む を示唆する行動がしばしばみられ,自閉的行動の発生率が高い(特に著明な 知的障害 知的能力障害 知的能力障害は,平均を著しく下回る知的機能(しばしば知能指数で70~75未満と表現される)に加えて,適応機能(すなわち,コミュニケーション,自己主導,社会的技能,自己管理,社会資源の利用,自身の安全の維持)において制限がみられるとともに,支援の必要性が実証されていることが特徴である。管理は教育,家族カウンセリング,および社会的支援から構成される。 知的能力障害は,神経発達障害の1つと考えられている。神経発達障害とは,小児期早期,典型的に... さらに読む がある小児の場合)。小児および成人で うつ病 小児および青年における抑うつ障害 抑うつ障害は,機能の障害やかなりの苦悩を発生させるほど重度または持続的な悲しみまたは易怒性を特徴とする。診断は病歴および診察による。治療は,抗うつ薬,支持療法および認知行動療法,またはこれらの治療法の組合せによる。 (成人における 抑うつ障害群の考察も参照のこと。) 小児および青年の抑うつ障害としては以下のものがある: 重篤気分調節症 うつ病 さらに読む のリスクが高い。

心症状

心疾患の症状は,心奇形の種類および程度によって決定される。

先天性心疾患(特に多いのは 心室中隔欠損症 心室中隔欠損症(VSD) 心室中隔欠損症(VSD)は,心室中隔が開口している状態であり,両心室間の短絡を引き起こす。欠損孔が大きい場合,有意な左右短絡の発生につながり,乳児期に哺乳時の呼吸困難および発育不良を来す。胸骨左縁下部で粗大な全収縮期雑音が聴取されることが多い。繰り返す呼吸器感染症や心不全を来すことがある。診断は心エコー検査による。欠損孔は乳児期に自然閉鎖する場合もあれば,外科的修復が必要になる場合もある。... さらに読む 心室中隔欠損症(VSD) および 共通房室弁口 完全型房室中隔欠損症 房室中隔欠損症は,一次孔型心房中隔欠損と共通房室弁で構成される病態で,さらに流入部(房室中隔型)心室中隔欠損(VSD)を伴う場合もある。これらの異常は心内膜床の発育不良が原因で発生する。VSDがないか,VSDは小さく房室弁機能が良好な患者では,無症状に経過することもある。VSDが大きいか,有意な房室弁逆流がある場合には,しばしば哺乳時の呼吸困難,発育不良,頻呼吸,発汗などの心不全徴候がみられる。心雑音,頻呼吸,頻脈,および肝腫大がよくみ... さらに読む )のある乳児は,無症状の場合もあれば,心不全の徴候(例,努力性呼吸,呼吸数増加,哺乳困難,発汗,体重増加不良)がみられる場合もある。

雑音は認識されないこともあるが,いくつかの雑音が聴取されることもある。

消化管の症状

診断

  • 出生前の絨毛採取および/または羊水穿刺による核型分析

  • 出生後の核型分析(出生前核型分析が行われていない場合)

ダウン症候群の診断としては,胎児超音波検査で検出された身体奇形(例,NT[nuchal translucency]肥厚,共通房室弁口,十二指腸閉鎖)に基づいて,あるいは母体血清スクリーニングで測定された第1トリメスター後期の血漿プロテインA,ならびに第2トリメスター早期(妊娠15~16週)のα-フェトプロテイン,β-hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン),非抱合型エストリオール,およびインヒビンの異常値に基づいて,出生前に本症が疑われることがある。母体循環から得られた胎児DNAを検査する 非侵襲的出生前スクリーニング スクリーニング 染色体異常は様々な疾患の原因となる。性染色体(XおよびY染色体)の異常よりも常染色体(男女とも22対ある相同な染色体)の異常の方が多くみられる。 染色体異常はいくつかのカテゴリーに分けられるが,大きく数的異常と構造異常に分けて考えることができる。 数的異常としては以下のものがある:... さらに読む (NIPS)も,感度および特異度が高いことから最近では21トリソミースクリーニングの1つの選択肢となっている。

母体血清スクリーニングや超音波検査によりダウン症候群が疑われる場合,胎児期または出生後の確定診断検査が推奨される。胎児の確定診断の方法には, 絨毛採取 絨毛採取 遺伝学的評価はルーチンの出生前ケアの一環であり,理想的には受胎前に行う。女性がどの程度までの遺伝学的評価を選択するかは以下の要因をどの程度重視するかに関係する: 危険因子および以前の検査結果に基づく胎児異常の可能性 侵襲的な胎児検査による合併症の可能性 結果を知ることの重要性(例,異常が診断された場合妊娠中絶するのか,結果を知らないことで不安になるか) これらの理由から,決定は個人的なものであり,たとえ同様のリスクがある場合であっても,... さらに読む 絨毛採取 および/または 羊水穿刺 羊水穿刺 遺伝学的評価はルーチンの出生前ケアの一環であり,理想的には受胎前に行う。女性がどの程度までの遺伝学的評価を選択するかは以下の要因をどの程度重視するかに関係する: 危険因子および以前の検査結果に基づく胎児異常の可能性 侵襲的な胎児検査による合併症の可能性 結果を知ることの重要性(例,異常が診断された場合妊娠中絶するのか,結果を知らないことで不安になるか) これらの理由から,決定は個人的なものであり,たとえ同様のリスクがある場合であっても,... さらに読む  羊水穿刺 による核型分析などがある。核型分析は転座の合併を除外するための第1選択の検査であり,これにより親は再発リスクに関する適切な遺伝カウンセリングを受けられる。出生前の確定診断検査は,非侵襲的出生前スクリーニングの結果が異常,不確定,または不明な全ての患者に選択肢として提供される。妊娠中絶などの管理に関する決定は,非侵襲的出生前スクリーニングの結果のみに基づいて行うべきではない。

母体年齢を問わず妊娠20週前に出生前ケアのために受診した女性全例に対して,ダウン症候群に対する母体血清スクリーニングおよび診断検査が選択肢としてある。

American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on GeneticsおよびSociety for Maternal–Fetal Medicine Practice Bulletinは,異数性リスクが高い患者にセルフリー胎児DNA検査【訳注:母親の体液中に遊離する胎児組織細胞由来の遊離DNAを用いる検査】を行うよう推奨している。リスクのある患者として,35歳以上の女性,胎児超音波検査所見がリスク増大を示す例などが挙げられる。セルフリー胎児DNAは,絨毛採取または羊水穿刺による出生前検査の精度および診断的正確性に代わるものではないと委員会は勧告している。

出生前に診断されなかった場合,新生児における診断は身体奇形に基づき,細胞遺伝学的検査によって確定する。

併発症

年齢に応じた特定のルーチンスクリーニングが,ダウン症候群の合併症を同定する助けとなる(米国小児科学会[American Academy of Pediatrics]による2011年のGuidelines Health Supervision for Children with Down Syndromeを参照):

  • 心エコー検査:妊婦健診時または出生時

  • 甲状腺スクリーニング(甲状腺刺激ホルモン[TSH]値):出生時,生後6カ月,12カ月,その後は1年毎

  • 聴力検査:出生時,その後は正常な聴力が確立されるまで(4歳頃)6カ月毎,それ以降は1年毎(適応があればより頻回)

  • 眼科検査:生後6カ月までに,その後は5歳まで1年毎;13歳までは2年毎,21歳までは3年毎(適応があればより頻回)

  • 成長:毎回の健診時に身長,体重,および頭囲をダウン症候群用の成長曲線にプロットする

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の睡眠検査:4歳までに完了する

環軸椎不安定性およびセリアック病のルーチンなスクリーニングは,もはや推奨されておらず,臨床的な疑いに基づいて検査を行う。頸部痛,根性痛,筋力低下,脊髄症を示唆する他の神経症状の既往がある患者には中立位の頸椎X線検査が推奨され,疑わしい異常がみられない場合は,屈曲位および伸展位でX線検査を施行すべきである。

治療

  • 具体的な症状や徴候を治療する。

  • 遺伝カウンセリング

原疾患を完治させることはできない。管理方針は個々の合併症や重症度によるが,経過観察の方法は全ての患児で概ね同様である。一部の先天性心奇形は外科的に修復する。甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの補充により治療する。

要点

  • ダウン症候群では,21番染色体の過剰(分離した1本の染色体または別の染色体への転座のいずれか)がみられる。

  • 診断としては,胎児超音波検査で検出された奇形(例,NT[nuchal translucency]肥厚,心臓の異常,十二指腸閉鎖)に基づいて,または母体血中セルフリー胎児DNA分析もしくは第1トリメスター後期の血漿プロテインA,ならびに第2トリメスター早期のα-フェトプロテイン,β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG),非抱合型エストリオール,およびインヒビンといった複数の母体マーカースクリーニングに基づいて,出生前に本症が疑われることがある。

  • 核型分析は,選択すべき確定診断検査であり,第1トリメスターでの絨毛採取または第2トリメスターでの羊水穿刺によって出生前に行うことや,出生後に血液検体を使って行うことができる。

  • 期待余命の短縮につながっている第1の要因は心疾患であるが,感染症,急性骨髄性白血病,および早期発症型アルツハイマー病に対する易罹患性も比較的程度は小さいものの一因となっている;ただし,期待余命はここ数十年で著しく延長し,中には80代まで生存する患者もいる。

  • 合併症(例,心奇形,甲状腺機能低下症)を検出するために年齢に応じたルーチンスクリーニングを行う。

  • 個々の臨床像に応じた治療を行うとともに,社会的支援,教育支援,および遺伝カウンセリングを提供する。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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