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伝染性単核球症

執筆者: Kenneth M. Kaye, MD, Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School

伝染性単核球症は,エプスタイン-バーウイルス(EBV,ヒトヘルペスウイルス4型)により引き起こされ,疲労,発熱,咽頭炎,およびリンパ節腫脹を特徴とする。疲労は数週間から数カ月間続くことがある。気道閉塞,脾破裂,および神経症候群などの重症合併症がときに起こる。診断は臨床的に,またはEBVの血清学的検査により行う。治療は支持療法による。

EBVは5歳未満の50%の小児が感染するヘルペスウイルスである。宿主はヒトである。

病態生理

初期に上咽頭で増殖した後,ウイルスはB細胞に感染する。形態学的に異常な(異型)リンパ球が,感染症に反応するCD8陽性T細胞から主に発生する。

初感染後には,EBVは宿主内の主にB細胞に終生残存し,症状を伴わないまま中咽頭から間欠的に排出される。このウイルスは,EBV血清反応陽性の健康成人の15~25%で中咽頭分泌物中に検出される。ウイルス排出の頻度および力価は,易感染性患者(例,臓器同種移植レシピエント,HIV感染者)では上昇する。

EBVが環境中から検出されたことはなく,EBVの感染力はあまり高くない。伝播は血液製剤の輸血を介しても起こりうるが,無症候性にウイルスを排出しているEBV血清反応陽性者とのキスを介して非感染者に伝播する頻度の方がはるかに高い。急性感染症の患者からEBVに感染する患者は全体の約5%に過ぎない。幼児期の感染伝播は,社会経済的状態が低い集団と密集した環境で,より高頻度に起こる。

合併症

EBVには,バーキットリンパ腫,易感染性患者でみられる特定のB細胞腫瘍,および上咽頭癌との間で統計学的な関連が認められ,これらの原因となっている可能性が高い。EBVは慢性疲労症候群を引き起こさない。しかしながら,ときに発熱,間質性肺炎,汎血球減少,およびぶどう膜炎からなる症候群(慢性活動性EBV感染症)を引き起こすことがある。

症状と徴候

ほとんどの幼児において,EBVの初感染は無症状に経過する。伝染性単核球症の症状は,より年長の小児および成人で発生することが最も多い。

潜伏期間は約30~50日である。発熱,咽頭炎,およびリンパ節腫脹の三徴がほとんどの患者に現れる。疲労は数カ月間続くことがあるが,通常は最初の2~3週間で最大となる。発熱は通常,午後または夕方早くに39.5℃付近でピークとなるが,40.5℃まで達することもある。咽頭炎は重度で有痛性,および滲出性のことがあり,レンサ球菌咽頭炎に類似することがある。リンパ節腫脹は通常は対称的で,どのリンパ節群にも起こりうるが,特に前頸部および後頸部リンパ節に多い。リンパ節腫脹が唯一の症候である場合がある。

脾腫が約50%の症例にみられ,第2~3週目に最大となるが,通常は脾臓の端が触知できる程度にとどまる。軽度の肝腫大および肝の叩打痛を認めることがある。眼窩周囲浮腫および口蓋の点状出血を呈することがある。比較的頻度の低い所見としては,斑状丘疹状の発疹や,まれに黄疸などがある。

合併症

通常は完全に回復するが,合併症が劇的となることがある。

神経系合併症はまれであるが,具体的には脳炎,痙攣発作,ギラン-バレー症候群,末梢神経障害,無菌性髄膜炎,脊髄炎,脳神経麻痺,精神病などがある。脳炎は小脳機能障害を呈することもあれば,単純ヘルペス脳炎に類似した全脳性かつ急速進行性の経過を辿ることもあるが,通常自然治癒する。

血液系の合併症は,通常自然治癒する。具体的には顆粒球減少,血小板減少,溶血性貧血などがある。一過性で軽度の顆粒球減少または血小板減少は,約50%の患者に起こる;細菌感染または出血を伴う重症例の頻度はより低い。溶血性貧血はしばしば抗i特異抗体による。

脾破裂は重大な転帰を来しうる。脾腫および被膜腫脹に起因しうるが,両者は発症10~21日後に最大となる。外傷歴は,約半数にしか存在しない。破裂は通常有痛性であるが,ときに無痛性の低血圧を引き起こす。治療は 脾損傷 : 治療を参照のこと。

呼吸器合併症としては,まれに咽頭または気管傍リンパ節腫脹による上気道閉塞などがみられ,呼吸器系の合併症はコルチコステロイドに反応する可能性がある。臨床的には無症候性の間質性肺浸潤は小児に最もよくみられ,通常X線検査で確認できる。

肝合併症としては,アミノトランスフェラーゼ値の上昇(正常の約2~3倍,3~4週間かけて正常に戻る)などがあり,このような合併症は約95%の患者に発生する。黄疸またはより重度の酵素上昇があれば,肝炎の他の原因が調査されるべきである。

EBVによる劇症感染症は散発的に起こるが,家族内で群発することもあり,特にX連鎖リンパ増殖症候群を有する家族に多い( X連鎖リンパ増殖症候群)。EBVによる一次劇症感染症の生存者は,無ガンマグロブリン血症またはリンパ腫を発症するリスクがある。

診断

  • 異種親和性抗体検査

  • ときにEBV血清学的検査

典型的な症状および徴候を有する患者では,伝染性単核球症が疑われるべきである。滲出性咽頭炎,前頸部リンパ節腫脹,および発熱は,A群β溶血性レンサ球菌によって引き起こされるものと臨床的に鑑別できないことがある。しかしながら,後頸部または全身のリンパ節腫脹もしくは肝脾腫があれば,伝染性単核球症が示唆される。さらに,中咽頭からレンサ球菌が検出されても,伝染性単核球症を除外できない。

急性HIV感染症(primary HIV infection)( ヒト免疫不全ウイルス (HIV))は,急性EBV感染症に類似した病像を呈する。患者にHIV感染の危険因子がある場合は,HIV RNAウイルス定量的測定,p24抗原分析,およびCD4陽性細胞数測定に加え,EBV血清学的検査を行うべきである。HIV酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)/ウェスタンブロット法は通常,急性感染の間は陰性となるため,急性HIV感染症の初期には有用とならない。

パール&ピットフォール

  • 急性HIV感染症は,急性EBV感染と類似していることがある;HIV感染の危険因子を有する患者では,HIV RNAウイルス定量的測定およびp24抗原分析検査を行うべきである(ELISA/ウェスタンブロット法は通常急性HIV感染症の間は陰性となる)。

サイトメガロウイルス(CMV)は,伝染性単核球症に類似した症候群を引き起こし,肝脾腫および肝炎に加えて異型リンパ球の増加を来すが,通常は重度の咽頭炎を伴わない。トキソプラズマ症,B型肝炎,風疹,または薬物有害反応に伴う異型リンパ球増多も伝染性単核球症様症候群を引き起こす。これらの症候群は通常,他の臨床的特徴もしくは特異的な検査によって鑑別が可能である。

臨床検査による診断では通常,血算およびEBV血清学的検査を行う。形態学的に異型のリンパ球が白血球の最大30%を占める。個々のリンパ球は白血病リンパ球に類似することがあるが,全体としてリンパ球は均一ではなく,白血病でこのような不均一性がみられる可能性は低い。異型リンパ球は,HIVまたはCMV感染症,B型肝炎,B型インフルエンザ,風疹,その他のウイルス性疾患でもみられる,診断には血清学的検査が必要である。しかしながら,異型リンパ球数の著明な高値は,典型的にはEBVおよびCMVの初感染時のみにみられる。急性EBV感染症の診断に2つの血清学的検査が用いられる:異種親和性抗体検査およびEBV特異抗体検査である。

異種親和性抗体は,各種カード凝集(monospot)試験により測定される。しかしながら,異種親和性抗体は5歳未満の患者では50%にしか認められず,青年および成人でも保有率は約80~90%である。重要なのは,異種親和性抗体検査は,一部の急性HIV感染症患者で偽陽性となる可能性があることである。異種親和性抗体の力価および保有率は疾患の第2および第3週目に上昇する。したがって,この疾患が強く疑われるものの異種親和性抗体検査が陰性の場合は,発症の7~10日後に検査を繰り返すことが妥当である。それでも陰性のままであれば,EBVに対する抗体を測定すべきである。EBVウイルスカプシド抗原(VCA)に対するIgM抗体の存在は,EBVの初感染を意味する(これらの抗体は感染後3カ月以内に消失する)。急性EBV感染症では,その後(おそらくは8週間後)EBV VCA-IgG抗体が出現し,生涯持続する。EBV抗体価が陰性である,または過去の感染が示唆される(すなわち,IgG抗体が陽性でIgM抗体が陰性である)場合は,他の診断(例,急性HIV感染症,CMV感染症)を考慮すべきである。

予後

伝染性単核球症は通常自然治癒する。罹病期間は一定でないが,急性期は約2週間持続する。一般に,20%の患者は1週間以内に学校または職場へ復帰でき,50%は2週間以内に復帰できる。疲労はさらに数週間持続することもあれば,1~2%の症例では数カ月間続くこともある。死亡率は1%未満であり,大半が合併症(例,脳炎,脾破裂,気道閉塞)に起因する。

治療

  • 支持療法

  • 重症例にはコルチコステロイドが有益となる可能性がある

治療は支持療法による。急性期の患者には安静が勧められるが,発熱,咽頭炎,および倦怠感が和らげば,活動を再開することができる。脾破裂を予防するため,発症後1カ月間および脾腫(超音波検査によるモニタリングが可能)が消失するまでは,力仕事およびコンタクトスポーツを避けるべきである。

コルチコステロイドは解熱を早め,咽頭炎を軽減するが,一般に合併症のない症例に使用すべきではない。コルチコステロイドは切迫した気道閉塞,重度の血小板減少,溶血性貧血などの合併症に役立つことがある。アシクロビルの経口または静脈内投与は中咽頭からのEBV排出を減少させるが,その臨床使用を肯定できる説得力のあるエビデンスはない。

要点

  • EBV感染症は非常に頻度が高く,ウイルスは宿主内に生涯とどまり,中咽頭から間欠的かつ無症候性に排出される。

  • 急性感染症の患者からEBVに感染する患者は全体の約5%に過ぎない。

  • 典型的な臨床像としては,疲労(ときに数週間,まれに数カ月間持続する),発熱,咽頭炎,脾腫,リンパ節腫脹などがある。

  • 頻度の低い重度の合併症として,脳炎および他の神経症候,脾破裂,扁桃腫大による気道閉塞,溶血性貧血,血小板減少,黄疸などがある。

  • 異種親和性抗体検査と,まれにEBV特異抗体検査を行う。

  • 支持療法を行うとともに,力仕事やコンタクトスポーツを避けることを推奨する;抗ウイルス薬の適応はない。

  • 切迫した気道閉塞,重度の血小板減少,溶血性貧血などの合併症には,コルチコステロイドを考慮する。

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