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高血圧の概要

執筆者: George L. Bakris, MD, University of Chicago School of Medicine

高血圧とは,安静時の収縮期血圧(140mmHg以上),拡張期血圧(90mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(原発性;以前は本態性高血圧と呼ばれていた)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,慢性腎臓病または原発性アルドステロン症に起因する。高血圧は重症となるか長期間持続しない限り,症状を引き起こさないのが通常である。診断は血圧測定による。原因の同定,障害の評価,その他の心血管系危険因子の同定などを目的として検査を行うこともある。治療としては,生活習慣の改善と利尿薬,β遮断薬,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬などによる薬物療法を行う。

米国では約7500万人の人々に高血圧がみられる。そのうち自身の高血圧を認識している患者は約81%であり,治療を受けている患者は73%のみで,十分に血圧がコントロールされている患者は51%にすぎない。成人では,高血圧は白人(28%)またはメキシコ系アメリカ人(28%)と比べて黒人(41%)で多くみられ,疾患発生率と死亡率も黒人でより高くなっている。

血圧は加齢とともに上昇する。65歳以上の高齢者の約3分の2で高血圧がみられ,55歳で血圧が正常な個人における高血圧の生涯発生リスクは90%である。高血圧の頻度は年齢とともにかなり高くなっていくため,加齢に伴う血圧上昇は無害と認識されることもあるが,血圧が高いほど疾患発生や死亡のリスクが高くなる。妊娠中に高血圧が発生する場合もある( 妊娠中の高血圧および 妊娠高血圧腎症および子癇)。

病因

高血圧には原発性(全症例の85~95%)と二次性がある。

原発性高血圧

血行動態と生理学的要素(例,血漿量,レニン-アンジオテンシン系の活性)が一様でないことから,原発性高血圧が単一の原因で生じる可能性は低いことが示唆されている。たとえ当初は単一の因子によるものであっても,上昇した血圧の維持には,おそらく複数の因子が関与すると考えられる(モザイク説)。全身の輸入細動脈で,平滑筋細胞の筋線維膜がイオンポンプ機能障害を呈することで慢性的な血管緊張増強につながる可能性がある。遺伝は素因の1つであるが,正確な機序は不明である。環境因子(例,食事由来のナトリウム,肥満,ストレス)は,若年時は遺伝的感受性のある個人にのみ作用すると考えられるが,65歳以上の患者では大量の食塩摂取で高血圧が誘発される可能性が高くなる。

二次性高血圧

原因としては,原発性アルドステロン症(最も頻度が高いと考えられる),腎実質性疾患(例,慢性糸球体腎炎または腎盂腎炎,多発性嚢胞腎,結合組織疾患,閉塞性尿路疾患),腎血管障害( 腎血管性高血圧),褐色細胞腫,クッシング症候群,先天性副腎過形成症,甲状腺機能亢進症,粘液水腫,大動脈縮窄症などがある。過度の飲酒と経口避妊薬の使用は,治癒可能な高血圧の最も一般的な原因である。交感神経刺激薬,NSAID,コルチコステロイド,コカイン,甘草の使用は,一般的に血圧コントロールの悪化につながる。

病態生理

血圧は心拍出量と全末梢血管抵抗(TPR)の積に等しいことから,発生機序には以下が関与しているはずである:

  • 心拍出量の増加

  • TPRの上昇

  • その両方

ほとんどの患者では,心拍出量は正常かわずかに増加し,TPRは増大する。このパターンは,原発性高血圧と原発性アルドステロン症,褐色細胞腫,腎血管障害,および腎実質性疾患による二次性高血圧に典型的である。

その他の患者では,心拍出量が増加し(おそらく太い静脈に生じる静脈収縮のため),TPRは心拍出量に対して不自然な正常値となる。病態が進行すると,TPRが増大し,心拍出量は正常化するが,これらはおそらく自己調節による。心拍出量を増加させる一部の疾患(甲状腺中毒症,動静脈瘻,大動脈弁逆流症)には,特に一回拍出量が増加する場合に,孤立性収縮期高血圧を惹起するものもある。一部の高齢患者では,心拍出量が正常または低下した状態で孤立性収縮期高血圧がみられるが,これはおそらく大動脈とその主要分枝の弾性の低下によるものである。拡張期血圧が高く維持されている患者では,しばしば心拍出量が低値となる。

血漿量は血圧の上昇に伴い低下する傾向にあり,まれに血漿量は正常のままか増加する。原発性アルドステロン症または腎実質性疾患に起因する高血圧では,血漿量が増加する傾向にあり,褐色細胞腫に起因する高血圧ではかなりの減少をみることがある。拡張期血圧が上昇して細動脈硬化が発生するとともに,腎血流量が徐々に低下していく。GFRは本症の後期段階まで正常範囲で推移するが,結果的に濾過率は増加する。冠血流量,脳血流量,および筋血流量は,それらの血管床に重度の動脈硬化が併存しない限り維持される。

ナトリウム輸送の異常

高血圧患者の多くでは,Na-Kポンプ(Na+, K+-ATPase)の欠損もしくは阻害,またはNa+透過性の増大により,細胞膜を介するナトリウム輸送に異常を来している。その結果,細胞内のナトリウムが増加し,交感神経刺激に対する細胞の感受性が亢進する。ナトリウムに次いでカルシウムが増加するため,細胞内カルシウムの蓄積が感受性亢進の原因である可能性もある。Na+, K+-ATPaseはノルアドレナリンを交感神経のニューロン内に回収する(したがって,この神経伝達物質を不活性化する) ことができるため,この機序の阻害によってもノルアドレナリンの作用が増強し,血圧が上昇する可能性がある。ナトリウム輸送の障害は,親に高血圧がある正常血圧の小児で発生することがある。

交感神経系

交感神経刺激は血圧を上昇させるが,通常,正常血圧の患者と比較して高血圧前症(収縮期血圧120~139mmHg,拡張期血圧80~89mmHg)または高血圧(収縮期血圧140mmHg以上,拡張期血圧90mmHg以上,またはその両方)患者では,より大きな上昇がみられる。この反応性の亢進が交感神経系と心筋および血管平滑筋のどちらで生じているのかは不明である。安静時脈拍数の増加は,交感神経活性の亢進に起因している可能性があり,高血圧の予測因子としてよく知られている。一部の高血圧患者では,安静時の循環血漿中カテコールアミン濃度が異常高値となる。

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系は血液量,ひいては血圧の調節に関与している。傍糸球体装置で産生される酵素のレニンは,アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIへの変換を触媒する。この非活性産物は主に肺のほか,腎臓および脳においてアンジオテンシン変換酵素(ACE)による開裂を受けて強力な血管収縮物質であるアンジオテンシンIIとなり,これが脳の自律神経中枢も刺激して交感神経の放電を増大させ,アルドステロンおよび抗利尿ホルモン(ADH)の分泌を刺激する。アルドステロンとADHは,ナトリウムと水の貯留を引き起こすことで,血圧を上昇させる。アルドステロンはカリウムの排泄も促進するため,血漿カリウム濃度の低下(3.5mEq/L未満)により,カリウムチャネルの閉鎖を介した血管収縮が亢進する。循環血中に存在するアンジオテンシンIIIは,アンジオテンシンIIと同程度にアルドステロンの分泌を刺激するが,昇圧作用ははるかに弱い。酵素のキマーゼもアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換するため,ACEを阻害する薬剤ではアンジオテンシンIIの産生を完全に抑制することはできない。

レニンの分泌は,互いに排他的でない少なくとも4つの機序によりコントロールされる:(1)腎血管の受容体が輸入細動脈壁の張力変化に反応する;(2)密集斑の受容体が遠位尿細管のNaCl濃度または輸送速度の変化を検出する;(3)血中のアンジオテンシンがレニン分泌に対してネガティブフィードバックをもたらす;(4)交感神経系が腎臓の神経を介してβ受容体を媒介するレニン分泌を刺激する。

腎血管性高血圧では,一般に(少なくとも発症早期には)アンジオテンシンが原因であると一般に考えられているが,原発性高血圧でレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が果たす役割は確立されていない。しかしながら,黒人および高齢の高血圧患者ではレニン濃度が低い傾向がある。高齢者ではアンジオテンシンII濃度も低い傾向がある。

慢性腎実質性疾患による高血圧(腎実質性高血圧)は,レニンに依存する機序と体液量に依存する機序が組み合わさって発生する。大半の症例では,末梢血中でレニン活性の亢進は明白とならない。高血圧は典型的には中等度で,ナトリウムおよび水のバランスに感受性を示す。

血管拡張物質の欠乏

血管収縮物質(例,アンジオテンシン,ノルアドレナリン)の過剰ではなく,血管拡張物質(例,ブラジキニン,一酸化窒素)の欠乏によって高血圧を来す場合もある。腎臓で十分な量の血管拡張物質が(腎実質性疾患や両側腎摘出により)産生されない場合,血圧が上昇する可能性がある。血管拡張物質および血管収縮物質(主にエンドセリン)は内皮細胞でも産生される。したがって,内皮機能障害は血圧に大きな影響を及ぼす。

病理および合併症

高血圧の初期には病理学的変化は起こらない。重症または長期の高血圧は標的臓器(主に心血管系,脳,腎臓)に損傷を与え,以下のリスクを増大させる:

  • 冠動脈疾患(CAD)および心筋梗塞

  • 心不全

  • 脳卒中(特に出血性)

  • 腎不全

  • 死亡

この機序には,全身性の細動脈硬化の発生とアテローム形成の加速が関与している( アテローム性動脈硬化)。細動脈硬化は中膜の肥厚,過形成,および硝子化を特徴とし,細い細動脈で特に明らかとなり,眼および腎臓で顕著に認められる。腎臓では,この変化により細動脈の内腔が狭くなり,TPRが上昇するため,高血圧がさらなる高血圧につながる。さらに,一旦動脈が狭小化すると,すでに肥厚している平滑筋がわずかに短縮するだけで,正常径の動脈 と比較して内腔が大幅に小さくなる。高血圧が長期化するに従い,二次的な原因に対する特異的治療(例,腎血管手術)により血圧が正常化する可能性が低くなっていくことは,これらの作用によって説明することができる。

後負荷の増大により,左室が徐々に肥大していき,拡張機能障害を来すようになる。心室は最終的に拡張し,拡張型心筋症と収縮機能障害による心不全が惹起され,しばしば動脈硬化性CADによって増悪する。胸部大動脈解離は典型的に高血圧の結果として発生し,腹部大動脈瘤患者のほぼ全例に高血圧がみられる。

症状と徴候

高血圧は通常,標的臓器で合併症が発生するまで無症状である。合併症のない高血圧では,めまい,顔面紅潮,頭痛,疲労,鼻出血,神経過敏などは生じない。重症高血圧(高血圧緊急症― 高血圧緊急症)は,心血管系,神経系,腎臓,および網膜に重度の症状(例,症候性の冠動脈硬化症,心不全,高血圧性脳症,腎不全)を引き起こしうる。

IV音は高血圧性心疾患で最も初期にみられる徴候の1つである。

網膜の変化には細動脈の狭小化,出血,滲出性病変などがあり,脳症患者では乳頭浮腫がみられる( 高血圧網膜症)。変化は次の4群に分類され(Keith, Wagener, and Barkerの分類に基づく),後者ほど予後不良である:細動脈の収縮のみ(1度),細動脈の収縮および硬化(2度),血管の変化に加えて出血および滲出性病変(3度),乳頭浮腫(4度)。

診断

  • 複数回の血圧測定による確認

  • 尿検査および尿中アルブミン:クレアチニン比;異常がみられた場合は腎超音波検査を考慮する

  • 血液検査:空腹時脂質,クレアチニン,カリウム

  • クレアチニンが高値の場合は腎超音波検査

  • カリウムが低値の場合はアルドステロン症の評価

  • 心電図検査:左室肥大がある場合は心エコー検査を考慮する

  • ときに甲状腺刺激ホルモンの測定

  • 血液上昇が突然で不安定または重度の場合は,褐色細胞腫または睡眠障害の評価

高血圧は血圧測定により診断および分類される。病歴,身体診察,その他の検査が,病因を同定し,標的臓器の損傷の有無を判断する上で役立つ。

血圧の測定は2回行う必要があり,最初は仰臥位または座位で,次に2分間以上の立位後に測定し,これらを計3日行う。診断には,これらの測定結果の平均値を用いる。血圧は正常,高血圧前症,またはステージ1(軽症)もしくはステージ2の高血圧に分類される( 成人における血圧のJNC7分類)。乳児および小児では,正常血圧が他の年齢層よりもはるかに低い( 身体診察 : 血圧)。

理想的には,血圧は5分以上の安静後に,1日の異なる時点で複数回測定する。血圧計のカフを上腕に巻きつける。適切なカフのサイズは,二頭筋の3分の2を覆う大きさであり,ゴム嚢は上腕周囲長の80%以上を覆える長さがあり,上腕周長の40%以上の幅をもつものを使用する。そのため,肥満患者にはより大きなカフが必要となる。予想される収縮期血圧を超えるまでカフを膨らませ,上腕動脈を聴診しながらゆっくりと空気を抜く。圧力が低下する過程で最初に心拍を聴取できた時点の圧力が収縮期血圧となる。そして,音が完全に消失した時点での圧力が拡張期血圧である。同じ原則に従い,前腕(橈骨動脈)および大腿部(膝窩動脈)でも血圧を測定する。水銀を使用した血圧計が最も正確である。機械的な測定器具には定期的に較正を行うべきであり,自動読取装置はしばしば不正確となる。

血圧は両腕で測定する。15mmHgを上回る血圧の左右差には死亡率上昇との関連がみられ,このような測定結果が得られた場合には,より上位の血管構造の評価が必要である。大動脈縮窄症を除外するため,血圧は大腿部(非常に大きなカフを使用する)でも測定されるが(特に大腿動脈拍動の消失や遅延がみられる場合),縮窄がある場合には,血圧は下肢で有意に低くなる。軽度の高血圧または著明な動揺がみられる場合は,測定回数を増やすことが望ましい。高血圧が持続性になるまでは血圧の測定値が散発的に高くなることがあるが,この現象はおそらく「白衣高血圧」と考えられ,その場合には診察室で測定した血圧値は高いが,家庭での測定や自由行動下血圧モニタリングでは正常値となる。しかしながら,極端な血圧上昇と正常な測定値が交互にみられることはまれであり,褐色細胞腫,睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害,または認識していない薬剤の使用を示唆している可能性がある。

病歴

病歴には,高血圧の罹病期間および過去に記録された血圧値;CAD,心不全,その他の重大な合併症(例,脳卒中,腎機能障害,末梢動脈疾患,脂質異常症,糖尿病,痛風)の病歴または症状;ならびにこれらの疾患の家族歴を含める。社会歴には,運動量および喫煙,飲酒,刺激性薬物(処方薬および違法薬物)の使用を含める。食事歴では,食塩および刺激物(例,紅茶,コーヒー,カフェイン含有炭酸飲料,エナジードリンク)の摂取に焦点を置く。

身体診察

身体診察には身長,体重,ウエスト周囲長の測定,網膜症に対する眼底検査( 高血圧網膜症 : 症状と徴候),頸部および腹部の血管雑音に対する聴診,ならびに徹底的な心臓診察,呼吸器診察,および神経学的診察を含める。腹部を触診して,腎腫大および腹部腫瘤がないか確認する。末梢動脈の脈拍を評価し,大腿動脈拍動が弱いか遅延している場合は,大動脈縮窄症が示唆される(特に30歳未満の患者)。腎血管性高血圧のやせた患者では,片側の腎動脈で雑音を聴取できることがある。

検査

高血圧が重症であるほど,また患者が若年であるほど,より広範な評価を行う。一般に,新たに高血圧と診断した際には,以下を目的としてルーチン検査を施行する:

  • 標的臓器障害の検出

  • 心血管系危険因子の同定

検査には以下のものがある:

  • 尿検査および随時尿の尿中アルブミン:クレアチニン比

  • 血液検査(クレアチニン,カリウム,ナトリウム,空腹時血糖値,脂質プロファイル,しばしば甲状腺刺激ホルモン)

  • 心電図検査

自由行動下血圧モニタリング,腎臓の核医学検査,胸部X線,褐色細胞腫のスクリーニング検査,およびレニン-ナトリウムプロファイルの評価は,ルーチンに必要となるわけではない。血漿レニン活性は診断にも薬剤の選択にも役立たない。

最初の検査と診察の結果に応じて,その他の検査が必要になることがある。尿検査でアルブミン尿(タンパク尿),円柱尿,顕微鏡的血尿が認められた場合,または血清クレアチニン値が上昇している(男性で1.4mg/dL[124μmol/L]以上;女性で1.2mg/dL[106μmol/L]以上)場合は,腎超音波検査による腎臓の大きさの評価で有用な情報が得られることがある。利尿薬の使用と無関係の低カリウム血症のある患者では,原発性アルドステロン症( 原発性アルドステロン症)および食塩摂取量の高値がないか評価する。

心電図では,幅広でノッチのあるP波が心房肥大を示唆し,特異的な所見ではないが,高血圧性心疾患の最も初期にみられる徴候の1つである。左室肥大が遅れて生じることがあり,これは心尖部の持続的な突出とQRS上昇(虚血所見を伴うこともある)によって示唆される。以上の所見のいずれかがみられる場合には,しばしば心エコー検査が行われる。脂質プロファイルの異常またはCADの症状がみられる患者では,その他の心血管系危険因子に関する検査(例,C反応性タンパク)が有用となりうる。

大動脈縮窄が疑われる場合は,胸部X線撮影,心エコー検査,CT,またはMRIが診断の確定に役立つ。

動揺性の著明な血圧上昇を呈し,頭痛,動悸,頻拍,過度の発汗,振戦,蒼白などの症状がみられる患者には,褐色細胞腫のスクリーニングを行う(例,血漿中遊離メタネフリン濃度の測定― 褐色細胞腫 : 診断)。睡眠検査も強く考慮すべきである。

クッシング症候群,結合組織疾患,子癇,急性ポルフィリン症,甲状腺機能亢進症,粘液水腫,先端巨大症,または中枢神経系疾患を示唆する症状がみられる患者には評価を行う(本マニュアルの別の箇所を参照)。

成人における血圧のJNC7分類

分類

血圧

正常

120/80mmHg未満

高血圧前症

120~139/80~89mmHg

ステージ1

140~159mmHg(収縮期)

または

90~99mmHg(拡張期)

ステージ2

160mmHg以上(収縮期)

または

100mmHg以上(拡張期)

JNC = Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure。

予後

血圧が高くなるほど,また網膜の変化や他の標的臓器障害の所見が重度であるほど,予後不良となる。収縮期血圧は拡張期血圧より,致死的または非致死的な心血管イベントをより的確に予測する。無治療の場合,網膜硬化,綿花様白斑,細動脈の狭小化,および出血がみられる患者(3度網膜症)の1年生存率は10%未満であり,以上の変化に加えて乳頭浮腫がみられる患者(4度網膜症)では5%未満である。治療を受ける高血圧患者で最も多くみられる死因はCADである。虚血性または出血性脳卒中は,治療が不十分な高血圧でよくみられる合併症である。一方,高血圧を効果的にコントロールできれば,ほとんどの合併症を予防でき,延命につながる。

一般的治療

  • 減量および運動

  • 禁煙

  • 食事:果物と野菜を増やし,食塩を減らし,アルコールを制限する

  • 血圧が当初から高値(160/100mmHgを上回る)であるか生活習慣の改善に反応しない場合は薬物治療

原発性高血圧は治癒することはないが,二次性高血圧の原因には是正できるものがある。全例で,血圧のコントロールにより望ましくない結果を大幅に制限することができる。理論的な治療の効果にもかかわらず,米国において目標値以下までの降圧が得られている高血圧患者の割合は3分の1のみである。

JNC8では次の治療目標が推奨されている:

  • 全ての患者(腎疾患または糖尿病を有する全患者も含む)において,血圧を140/90mmHg未満に下げることを治療の目標とする

  • 60歳以上の患者では,血圧を150/90mmHg未満に下げることを治療の目標とする

しかしながら,60歳以上の患者には以前(JNC7)の140/90mmHgという目標値の方が適切と考える医師もいる。

たとえ高齢者や虚弱(frail)高齢者でも,60~65mmHg程度の低い拡張期血圧にも十分に耐えられ,心血管イベントが増加することもない。理想的には,血圧測定について患者または家族を指導するとともに,綿密なモニタリングを行い,かつ定期的に血圧計の較正を行うことを前提として,自宅で患者または家族に血圧測定を行わせるのがよい。一部の降圧薬は胎児に害を及ぼす可能性があるため,妊娠中の高血圧治療には特別な配慮を要する( 治療)。

生活習慣の改善

推奨事項としては,1日30分間以上の定期的な有酸素運動を週の大半の日に行う運動,BMI18.5~24.9までの減量,禁煙,果物,野菜および低脂肪乳製品を増やし飽和脂肪および総脂肪含有量を減らした食事,ナトリウム(食塩)摂取量1日2.4g未満(NaClで6g未満)の減塩,男性では29.5mL/日以下,女性では15mL/日以下のアルコール制限などがある。(National Heart Lung and Blood InstituteのDietary Approaches to Stop Hypertension[DASH]Eating Planを参照のこと。)標的臓器障害の徴候がみられないステージ1(軽症)の高血圧では,生活習慣の変更により薬物治療が不要になる場合がある。合併症のない高血圧患者では,血圧がコントロールされている限り,活動を制限する必要はない。食習慣の改善は,糖尿病,肥満,および脂質異常症のコントロールにも有用となりうる。高血圧前症の患者には,生活習慣に関するこれらの推奨に従うことが勧められる。

薬剤

高血圧に対する薬剤も参照のこと。)

生活習慣の改善から6カ月後にも収縮期血圧140mmHg(60歳以上の患者では150mmHg)超または拡張期血圧90mmHg超の状態が続く場合は,降圧薬が必要である。高血圧が重症でない限り,薬剤は通常,低用量から開始する。高血圧に加えて糖尿病,腎疾患,標的臓器障害,または心血管系危険因子がみられる全ての患者と初診時血圧が160/100mmHgを超える患者では,生活習慣の改善と同時に薬物治療を開始する。高血圧緊急症の徴候がみられる場合は,降圧薬の静注による緊急降圧が必要である。

ほとんどの高血圧患者では,最初は単剤で投与を開始する。黒人以外の患者では,糖尿病患者も含めて,初期治療はACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬,サイアザイド様利尿薬(クロルタリドンまたはインダパミド)のいずれかで開始する。黒人患者では,糖尿病患者も含めて,カルシウム拮抗薬またはサイアザイド様利尿薬が初期治療として推奨される。降圧薬の中には特定の疾患が禁忌となるもの(例,喘息患者に対するβ遮断薬)や,特定の疾患を有する高血圧患者が特に適応となるもの(例,狭心症患者に対するカルシウム拮抗薬,タンパク尿を呈する糖尿病患者に対するACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬― 初期治療における降圧薬クラスの選択および 高リスク患者に対する降圧薬)がある。

目標血圧を1カ月内に達成できない場合は,最初の薬剤を増量するか,2剤目を追加することができる(初期治療用に推奨される薬剤から選択する)。ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬は併用してはならない。用量は漸増することが多い。2剤併用でも目標血圧を達成できない場合は,初期治療用の薬剤から3剤目を追加する。3剤目を使用できない患者(例,黒人患者)や3剤併用に耐えられない患者には,他のクラス(例,β遮断薬,アルドステロン拮抗薬)の薬剤を使用することができる(原発性無月経の評価a)。このように血圧コントロールが困難な患者では,高血圧専門医のコンサルテーションが有益となりうる。

初期治療における降圧薬クラスの選択

薬剤

適応

サイアザイド様利尿薬*(クロルタリドンまたはインダパミド)

高齢

黒人

心不全

長時間作用型カルシウム拮抗薬

高齢

黒人

狭心症

不整脈(例,心房細動,発作性上室頻拍)

高齢患者における孤立性収縮期高血圧(ジヒドロピリジン系)*

CADの高リスク(非ジヒドロピリジン系)*

ACE阻害薬

若年

収縮機能障害による左室不全*

腎症を伴う1型糖尿病*

慢性腎臓病または糖尿病性糸球体硬化症の患者における重度のタンパク尿

他の薬剤に起因する勃起障害

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

若年

ACE阻害薬の適応があるが,咳嗽のため患者が耐えられない状態

腎症を伴う2型糖尿病

収縮機能障害を伴う左室不全

二次性の脳卒中

*ランダム化試験で疾患発生率および死亡率の低下を認めた。

内因性交感神経刺激作用をもたないβ遮断薬。

妊娠中は禁忌。

CAD = 冠動脈疾患。

18歳以上の患者における高血圧治療のアルゴリズム

*目標血圧および薬物療法は年齢と糖尿病およびCKDの有無に基づき決定する。

生活習慣に対する介入を治療期間を通じて継続すべきである。

同じ患者にACEIとARBを併用してはならない。

ACEI = アンジオテンシン変換酵素阻害薬,ARB = アンジオテンシンII受容体拮抗薬,CCB = カルシウム拮抗薬,CKD = 慢性腎臓病。

Data from JamesPA, Oparil S, Carter BL, et al: 2014 Evidence-based guideline for themanagement of high blood pressure in adults: Report from the panel membersappointed to the Eighth Joint National committee (JNC 8).JAMA 311 (5): 507-520, 2014.

初診時の収縮期血圧が160mmHgを超える場合は,しばしば最初から2剤が使用される。適切な組合せと用量を決定する;多くは合剤が使用でき,コンプライアンスの改善につながる。重症または難治性高血圧では,3剤または4剤が必要になることもある。

十分な血圧コントロールを得るには,しばしば薬物療法の評価および変更が数回必要となる。血圧が許容可能な水準に低下するまでは,用量の漸増や薬剤の追加に対するためらいを克服しなければならない。患者のアドヒアランスの欠如は,特に生涯にわたる治療が必要であるため,十分な血圧コントロールの妨げとなりうる。治療の成功には,共感と支援を伴う患者教育が不可欠である。

高リスク患者に対する降圧薬

併存症

薬物クラス

心不全

ACE阻害薬

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

β遮断薬

カリウム保持性利尿薬

その他の利尿薬*

心筋梗塞後

β遮断薬

ACE阻害薬

スピロノラクトン,エプレレノン

心血管系危険因子

β遮断薬

ACE阻害薬

利尿薬

カルシウム拮抗薬

糖尿病

利尿薬

ACE阻害薬

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

カルシウム拮抗薬

慢性腎臓病

ACE阻害薬

アンジオテンシンII受容体拮抗薬

再発性脳卒中リスク

ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬

カルシウム拮抗薬

利尿薬

*長期の利尿薬使用は,肺うっ血のない心不全患者では死亡率の上昇につながる可能性がある。

機器および物理的介入

欧州およびオーストラリアでは,腎動脈の交感神経に対する経皮的カテーテル高周波アブレーションが治療抵抗性高血圧に対して承認されている。高血圧における治療抵抗性の定義は,相補的な作用機序を有する3つの降圧薬(1つは利尿薬)の使用にもかかわらず,血圧が依然として160/100mmHgを上回る場合とされる。初期の試験では期待できる結果が報告されたが,最近,大規模な二重盲検試験が実施された。この試験は対照群に偽のアブレーション手技を採用した最初の試験であったが,高周波アブレーションによる便益は示されなかった。このため,交感神経アブレーションは依然として実験的治療とみなすべきであり,欧州またはオーストラリアの経験豊富な施設でのみ施行されるべきである。

2つめの物理的介入は,頸動脈小体周囲に外科的に埋め込んだ機器により頸動脈圧受容器を刺激するというものである。この機器に接続した(ペースメーカーによく似た)バッテリーを用いて圧受容器を刺激し,用量依存的に血圧を低下させる。この手技はこれまでのところ安全かつ効果的であることが確認されているが,経験は限られており,臨床試験が現在進行中である。この機器は高血圧の治療用としてはまだ承認されていない。

要点

  • 米国の高血圧患者のうち治療を受けているのは約4分の3のみであり,十分にコントロールされている患者は半数に過ぎない。

  • 高血圧の大半は原発性で,別の疾患(例,腎実質性疾患,腎血管障害,褐色細胞腫,クッシング症候群,先天性副腎過形成症,甲状腺機能亢進症)により発生する二次性高血圧は5~15%のみである。

  • 重症または長期の高血圧は心血管系,脳,および腎臓に損傷を与え,心筋梗塞,脳卒中,および腎不全のリスクを高める。

  • 高血圧は通常,標的臓器で合併症が発生するまで無症状である。

  • 新たに高血圧と診断した場合は,尿検査,随時尿のアルブミン:クレアチニン比,血液検査(クレアチニン,カリウム,ナトリウム,空腹時血糖値,脂質プロファイル,しばしば甲状腺刺激ホルモン),および心電図検査を施行する。

  • 60歳未満の患者では,腎疾患および糖尿病患者も含めて,全例で血圧を140/90mmHg未満に降下させる。

  • 60歳以上の患者では,全例で血圧を150/90mmHg未満に降下させる。

  • 治療としては,生活習慣の改善,特に低ナトリウム高カリウム食,中途覚醒しない睡眠期間の改善,薬物療法(利尿薬,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬など)を行う。

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