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肺水腫

執筆者: J. Malcolm O. Arnold, MD, Professor of Medicine;Cardiologist, University of Western Ontario;University Hospital, London Health Sciences Center

肺水腫は,肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留(alveolar flooding)を伴った重度の急性左室不全である。所見は,重度の呼吸困難,発汗,喘鳴,ときに泡沫状の血痰である。診断は臨床的に行われ,胸部X線による。治療は,酸素投与,硝酸薬の静注,利尿薬,ときにモルヒネおよび短期間の陽性変力薬の静注,気管挿管,ならびに機械的人工換気による。

左室充満圧が突然上昇すると,血漿成分が肺毛細血管から間質および肺胞内へと急速に移動する結果,肺水腫が引き起こされる。誘発因子は年齢および国によって異なるが,約半数の症例は急性冠虚血に起因し,一部は高血圧による拡張機能障害主体の心不全など基礎にある有意な心不全の代償不全の結果として発生する;残りは不整脈,急性弁膜症,またはしばしば輸液を原因とする急性の体液量過剰から生じる。服薬または食事に関するアドヒアランス不良がしばしば関与する。

症状と徴候

患者は極度の呼吸困難,不穏,および窒息感を伴う不安により受診する。血痰を伴う咳嗽,蒼白,チアノーゼ,および著明な発汗がよくみられ,一部の患者では口腔内に泡沫が生じる。明らかな喀血はまれである。脈拍は速く低容量であり,血圧は一定しない。著明な高血圧は心予備能が大きいことを意味し,収縮期血圧100mgHg未満の低血圧は予後不良の徴候である。吸気時の捻髪音が両肺野の前胸部および背部で広範囲に聴取される。著明な喘鳴(心臓喘息)が生じることがある。努力呼吸の音が大きいため,心臓の聴診はしばしば困難となるが,重合奔馬調律(summation gallop)―III音およびIV音の重なったもの―が認められることがある。右室不全の徴候(例,頸静脈怒張,末梢浮腫)がみられることもある。

診断

  • 臨床的評価で明らかになる重度の呼吸困難と断続性ラ音

  • 胸部X線

  • ときに血清脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN-terminal-pro BNP(NT-pro-BNP)

  • 心電図検査,心筋マーカー,および必要に応じて病因に対するその他の検査

COPDの増悪が左室不全による肺水腫に類似することがあり,肺性心( 肺性心)が生じている場合は,さらに両室不全による肺水腫に類似することもある。肺水腫は心疾患の既往のない患者において主症状となる場合もあるが,そうした重度の症状があるCOPD患者にはCOPDの既往があるのが通常である(ただし,呼吸困難があまりに重度なために患者がそのことを伝えられない場合もある)。

胸部X線を直ちに施行すれば,通常は診断が得られ,著明な間質性浮腫が認められる。ベッドサイドでの血清BNP/NT-proBNP値の測定(肺水腫では上昇し,COPDの増悪では正常)は,診断に疑いがある場合に有用である。心電図検査,パルスオキシメトリー,および血液検査(心筋マーカー,電解質,BUN,クレアチニン,重症患者では動脈血ガス)を施行する。心エコー検査は肺水腫の原因(例,心筋梗塞,弁機能障害,高血圧性心疾患,拡張型心筋症)を同定する上で有用となる可能性があり,治療法の選択に影響を及ぼすこともある。低酸素血症が重度となる可能性がある。CO2蓄積は二次性低換気の後期にみられる予後不良の徴候である。

治療

  • 原因の治療

  • 酸素投与

  • 利尿薬の静注

  • 硝酸薬

  • 強心薬の静注

  • モルヒネ

  • 換気補助

初期治療としては,原因の同定,非再呼吸式マスクによる100%酸素投与,起座位,フロセミド投与(0.5~1.0mg/kgの静注または5~10mg/時の持続注入),ニトログリセリン投与(0.4mgを5分毎に舌下投与し,その後は10~20μg/分で点滴静注,収縮期血圧が100mmHgを超える場合は必要に応じて最大300μg/分まで5分毎に10μg/分ずつ漸増)などを行う。モルヒネ(1~5mgを1回または2回静注)が重度の不安および呼吸仕事量を軽減するために長年にわたり使用されてきたが,低酸素症が重度の場合には二相性気道陽圧法(BiPAP)による非侵襲的な換気補助が有用であることから,その使用は減ってきている。CO2蓄積が認められるか意識障害がある場合は,気管挿管および補助換気が必要となる( 気道確保および管理 : 気管挿管)。

特異的な追加治療は病因に依存する:

  • 急性心筋梗塞またはその他の急性冠症候群には,血栓溶解療法または直接的な経皮的冠動脈形成術を単独もしくはステント留置と併用で施行する

  • 重症高血圧には,血管拡張薬を静注する

  • 上室または心室頻拍に対しては,カルディオバージョン

  • 頻拍性心房細動にはカルディオバージョンが望ましい。心室拍数を低下させるには,β遮断薬の静注,ジゴキシンの静注,またはカルシウム拮抗薬静注の慎重投与

急性心筋梗塞患者では,肺水腫発生前の体液の状態は通常は正常であるため,利尿薬は急性代償不全を呈する慢性心不全患者の場合より有用性が低く,低血圧の誘因となりうる。収縮期血圧の100mmHg未満への低下またはショックがみられる場合は,ドブタミンの静注および大動脈内バルーンパンピング(カウンターパルセーション)が必要となることがある。

一部の新規薬剤,例えば静注のBNP(nesiritide)やカルシウム感受性陽性変力薬(levosimendan,ピモベンダン),ベスナリノン,イボパミンなどは,当初は有益な作用をもたらす可能性があるが,標準療法と比較して転帰を改善しないようであり,死亡率は上昇する可能性がある。

患者の状態が安定化したら,長期的な心不全治療を開始する( 心不全 (HF) : 治療)。

要点

  • 急性肺水腫は,急性冠動脈虚血,基礎にある心不全の代償不全,不整脈,急性弁膜症,または急性の体液量過剰によって発生する可能性がある。

  • 症状としては,重度の呼吸困難,発汗,喘鳴,ときに泡沫状の血痰がみられる。

  • 通常は身体診察と胸部X線で十分に診断可能であり,原因の同定を目的として,心電図検査,心筋マーカー,ときに心エコー検査を施行する。

  • 原因を治療し,酸素および静注フロセミドおよび/または硝酸薬を必要に応じて投与する;まず非侵襲的な換気補助を試し,必要であれば気管挿管と補助換気を行う。