RTAは,水素イオンの排泄または重炭酸塩の再吸収が障害される一連の疾患と定義され,アニオンギャップ正常の慢性 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3... さらに読む に至る。高クロール血症が通常は存在し,さらに続発性の異常がカリウム(頻繁)やカルシウム(まれ―[ 病型の異なる尿細管性アシドーシスの特徴* 病型の異なる尿細管性アシドーシスの特徴* の表を参照])などの他の電解質にも起こる。
慢性RTAは,しばしば尿細管に対する構造的な損傷に関連し, 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む へ進行する場合がある。
1型(遠位)RTA
1型は遠位尿細管における水素イオン分泌の機能障害であり,持続的に高い尿pH(5.5超)と全身性アシドーシスが生じる。血漿重炭酸濃度は15mEq/L(15mmol/L)未満であることが多く, 低カリウム血症 低カリウム血症 低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/L(3.5mmol/L)未満となった状態である。最も頻度の高い原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床的特徴としては筋力低下や多尿などがあり,重度の低カリウム血症では心臓の興奮性亢進が生じることがある。診断は血清学的検査による。治療はカリウム投与および原因の管理である。... さらに読む ,高カルシウム尿症,およびクエン酸塩の排泄低下がしばしば存在する。一部の家族性症例では高カルシウム尿症が主要な異常であり,カルシウム誘発性尿細管間質障害によって遠位RTAが引き起こされる。腎石灰化症および 腎結石症 尿路結石 尿路結石とは,泌尿器系内に存在する固形の粒子のことである。結石は疼痛,悪心,嘔吐,および血尿を引き起こすことがあるほか,続発性の感染から悪寒および発熱がみられることもある。診断は尿検査および放射線学的検査のほか,通常は単純ヘリカルCTに基づく。治療は鎮痛薬,感染に対する抗菌薬療法,および薬剤による排石促進療法のほか,ときに衝撃波砕石術また... さらに読む は,尿が相対的にアルカリ性である場合に高カルシウム尿症および低クエン酸尿症で起こりうる合併症である。
この症候群はまれである。散発性症例は成人に好発し,原発性の場合(ほぼ常に女性)と続発性の場合がある。家族性症例は通常は小児期に発症し,ほとんどが常染色体優性である。続発性1型RTAは薬剤, 腎移植 腎移植 腎移植は最もよく行われる実質臓器移植である。( 移植の概要も参照のこと。) 腎移植の主な適応は以下の通りである: 末期腎不全 絶対的禁忌としては以下のものがある: 移植片の生着を危うくしかねない併存症(例,重度の心疾患,悪性腫瘍),これらは徹底的なスクリーニングにより検出可能 さらに読む ,または様々な疾患によって引き起こされる可能性がある:
高ガンマグロブリン血症を伴う自己免疫疾患,特に シェーグレン症候群 シェーグレン症候群 シェーグレン症候群は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。シェーグレン症候群は様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。... さらに読む または 関節リウマチ 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む
腎石灰化症
薬剤(主にアムホテリシンB,イホスファミド,リチウム)
カリウム値は慢性閉塞性尿路疾患または鎌状赤血球貧血の患者では高値の場合がある。
2型(近位)RTA
2型は,近位尿細管における重炭酸イオン再吸収の機能障害であり,血漿重炭酸濃度が正常の場合は尿pH7超,血漿重炭酸濃度が進行中の喪失によりすでに欠乏している場合は尿pH5.5未満がもたらされる。
本症候群は,近位尿細管の全般的な機能障害の一部として生じる場合があり,患者はグルコース,尿酸,リン,アミノ酸,クエン酸,カルシウム,カリウム,タンパク質の尿中排泄量が増加している可能性がある。骨軟化症または骨減少症(小児のくる病を含む)が発生する場合がある。機序としては,高カルシウム尿症,高リン酸尿症,ビタミンD代謝の変化,続発性副甲状腺機能亢進症などが考えられる。
2型RTAは非常にまれであり,以下のうちの1つを有する患者で最も頻度の高い:
様々な薬物曝露(通常はアセタゾラミド,スルホンアミド系薬剤,イホスファミド,期限切れのテトラサイクリン,ストレプトゾシン)
その他の病因を有することもあり,これにはビタミンD欠乏症,続発性副甲状腺機能亢進症を伴う慢性低カルシウム血症, 腎移植 腎移植 腎移植は最もよく行われる実質臓器移植である。( 移植の概要も参照のこと。) 腎移植の主な適応は以下の通りである: 末期腎不全 絶対的禁忌としては以下のものがある: 移植片の生着を危うくしかねない併存症(例,重度の心疾患,悪性腫瘍),これらは徹底的なスクリーニングにより検出可能 さらに読む , 重金属曝露 重金属腎症 重金属やその他の毒性物質への曝露により,尿細管間質性疾患がもたらされる可能性がある。 ( 尿細管間質性疾患の概要も参照のこと。) 重金属(例,鉛,カドミウム,銅)やその他の毒性物質は, 慢性間質性腎炎の一種を引き起こす可能性がある。 鉛が近位尿細管細胞に蓄積することで慢性尿細管間質性腎炎が生じる。 短期の鉛曝露は近位尿細管機能障害をもたらし,これには尿酸分泌の低下と高尿酸血症(尿酸は鉛痛風の素因),アミノ酸尿,腎性糖尿などがある。 さらに読む およびその他の遺伝性疾患(例,フルクトース不耐症, ウィルソン病 ウィルソン病 ウィルソン病では,結果として肝および他の臓器に銅が蓄積する。肝症状または神経症状が出現する。診断は,血清セルロプラスミン濃度の低値,銅の尿中排泄量の高値,およびときに肝生検の結果に基づく。治療は,低銅食およびペニシラミンまたはトリエンチンなどの薬物から成る。 ウィルソン病は,男女ともに罹患する銅代謝の障害であり,約30,000人中1人にみられる。罹患者は,13番染色体に位置する劣性遺伝子変異体がホモ接合型である。人口の約1... さらに読む ,眼脳腎症候群[Lowe症候群],シスチン症)がある。
4型(汎発性)RTA
4型は,アルドステロンの欠乏または遠位尿細管のアルドステロンに対する反応不良に起因する。アルドステロンはカリウムおよび水素と交換にナトリウム再吸収を誘発するため,カリウム排泄が減少し, 高カリウム血症 高カリウム血症 高カリウム血症とは,血清カリウム濃度が5.5mEq/L(5.5mmol/L)を上回ることであり,通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。通常,カリウム摂取の増加,腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤,および急性腎障害または慢性腎臓病など,いくつかの寄与因子が同時に存在する。高カリウム血症は,糖尿病性ケトアシドーシスや,代謝性アシドーシスでも生じる可能性がある。臨床症状は一般に神経筋症状であ... さらに読む および酸排泄の減少をもたらす。高カリウム血症はアンモニアの排泄を低下させる可能性があり, 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3... さらに読む に寄与する。尿pHは通常は血清pHに対して適切である(通常,血清アシドーシスが存在する場合は5.5未満)。血漿重炭酸濃度は通常17mEq/L(17mmol/L)を上回る。本疾患はRTAで最も頻度の高い病型である。典型的には,以下の患者で生じるレニン-アルドステロン-尿細管系の機能障害(低レニン血症性低アルドステロン症)に続発する形で散発的に続発する:
4型RTAに寄与する可能性がある他の因子としては以下のものがある:
ACE阻害薬の使用
アルドステロン合成酵素I型またはII型の欠乏
アンジオテンシンII受容体拮抗薬の使用
慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む ,通常は 糖尿病性腎症 糖尿病性腎症 糖尿病性腎症は,糖尿病による代謝および血行動態の変化に起因する糸球体の硬化および線維化である。悪化する高血圧および腎機能不全を伴って緩徐に進行するアルブミン尿として発症する。診断は病歴,身体診察,尿検査および尿中アルブミン/クレアチニン比に基づく。治療は厳格な血糖コントロール,アンジオテンシン阻害(アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬[ARB]を使用),ならびに血圧および脂質のコントロールによる... さらに読む または慢性間質性腎炎に起因
重篤な疾患
シクロスポリンの使用
ヘパリンの使用(低分子ヘパリンも含む)
間質性腎障害(例,SLE,閉塞性尿路疾患,鎌状赤血球症に起因)
カリウム保持性利尿薬(例,アミロライド[amiloride],エプレレノン,スピロノラクトン,トリアムテレン)
NSAIDの使用
その他の薬剤(例,ペンタミジン,トリメトプリム)
原発性副腎機能不全
症状と徴候
RTAは通常,無症候性である。重度の電解質異常はまれであるが,生命を脅かす可能性がある。
腎結石症 尿路結石 尿路結石とは,泌尿器系内に存在する固形の粒子のことである。結石は疼痛,悪心,嘔吐,および血尿を引き起こすことがあるほか,続発性の感染から悪寒および発熱がみられることもある。診断は尿検査および放射線学的検査のほか,通常は単純ヘリカルCTに基づく。治療は鎮痛薬,感染に対する抗菌薬療法,および薬剤による排石促進療法のほか,ときに衝撃波砕石術また... さらに読む および腎石灰化症が発生する可能性があり,特に1型RTAで可能性がある。
2型RTAでは,電解質排泄を伴う尿への水分喪失から細胞外液量減少の徴候が出現しうる。
1型または2型RTA患者は 低カリウム血症 低カリウム血症 低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/L(3.5mmol/L)未満となった状態である。最も頻度の高い原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床的特徴としては筋力低下や多尿などがあり,重度の低カリウム血症では心臓の興奮性亢進が生じることがある。診断は血清学的検査による。治療はカリウム投与および原因の管理である。... さらに読む の症候を呈する場合があり,具体的には筋力低下,反射低下,麻痺などがみられる。骨障害(例,成人の骨痛および骨軟化症,小児のくる病)が2型のほか,ときに1型RTAでも発生する。
4型RTAは通常,無症候性で軽度のアシドーシスのみを伴うが,高カリウム血症が重度の場合には, 不整脈 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む や麻痺が発生することがある。
診断
アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスを呈する患者と原因不明の高カリウム血症を呈する患者で疑われる
血清および尿pH,電解質値,浸透圧
しばしば,刺激(例,塩化アンモニウム,重炭酸塩,ループ利尿薬)の負荷後に検査
RTAは,アニオンギャップが正常な原因不明の 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3−)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳酸の蓄積,腎不全,薬物または毒素の摂取(高アニオンギャップ),消化管または腎からのHCO3... さらに読む (血漿重炭酸イオン低値および血液pH低値)を呈する全ての患者で疑われる。カリウム製剤,カリウム保持性利尿薬, 慢性腎臓病 慢性腎臓病 慢性腎臓病(CKD)とは,腎機能が長期にわたり進行性に悪化する病態である。症状は緩徐に現れ,進行すると食欲不振,悪心,嘔吐,口内炎,味覚異常,夜間頻尿,倦怠感,疲労,そう痒,精神的集中力の低下,筋収縮,筋痙攣,水分貯留,低栄養,末梢神経障害,痙攣発作などがみられる。診断は腎機能検査に基づき,ときに続いて腎生検を施行する。治療は主に基礎疾患... さらに読む などの顕著な理由がなく,持続性高カリウム血症を呈する患者では,4型RTAを疑うべきである。動脈血ガスの検体を採取しRTAの確定の補助とし,代償性代謝性アシドーシスの原因としての呼吸性アルカローシスを除外する。全患者で血清電解質,BUN,クレアチニン,尿pHが測定される。疑われているRTAの病型に応じて,さらなる検査と,ときに誘発試験を施行する:
1型RTAは,全身性アシドーシス発生中の尿pH5.5超で確定される。アシドーシスは自発的に起こる場合,または酸負荷試験(塩化アンモニウム100mg/kgを経口投与する)によって誘発される場合がある。正常な腎は,アシドーシスの6時間以内に尿pHを5.2未満に低下させる。
2型RTAの診断は,重炭酸塩を点滴(炭酸水素ナトリウム,0.5~1.0mEq/kg/時 [0.5~1.0mmol/L],静脈内)しながらの尿pHおよび重炭酸塩排泄率の測定による。2型では,尿pHは7.5を超えて上昇し,重炭酸塩排泄率は15%超である。重炭酸塩の静脈内投与は低カリウム血症につながる可能性があるため,点滴の開始前に十分量のカリウム製剤を投与すべきである。
4型RTAは,4型RTAに合併しうる病態の既往,長期にわたるカリウム高値,および重炭酸塩値が正常または軽度低下の所見によって確定する。ほとんどの症例で,血漿レニン活性が低く,アルドステロン濃度も低く,コルチゾール値は正常である。
治療
病型によって異なる
しばしばアルカリ療法
カリウム,カルシウム,およびリンの代謝に関連する併発異常の治療
治療は,アルカリ療法によるpHと電解質平衡の是正で構成される。小児のRTAの治療失敗は発育を遅滞させる。
炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウム,クエン酸ナトリウムなどのアルカリ化剤は,比較的正常な血漿重炭酸濃度(22~24mEq/L[22~24mmol/L])を達成する上で有用である。持続性 低カリウム血症 低カリウム血症 低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/L(3.5mmol/L)未満となった状態である。最も頻度の高い原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床的特徴としては筋力低下や多尿などがあり,重度の低カリウム血症では心臓の興奮性亢進が生じることがある。診断は血清学的検査による。治療はカリウム投与および原因の管理である。... さらに読む が存在するか,あるいはナトリウムによりカルシウム排泄が増加することから,カルシウム結石が存在する場合は,クエン酸カリウムで置換することができる。
骨軟化症または くる病 低リン血症性くる病 低リン血症性くる病とは,低リン血症,小腸でのカルシウム吸収不良,およびビタミンD不応性のくる病または骨軟化症を特徴とする疾患である。通常は遺伝性である。症状は骨痛,骨折,および成長障害である。診断はリン,アルカリホスファターゼ,および1,25-ジヒドロキシビタミンD3の血清中濃度による。治療法はリンとカルシトリオールの経口投与であり,X連鎖性低リン血症に対してはブロスマブを投与する。... さらに読む に起因する骨変形を軽減するための補助として,ビタミンD(例,エルゴカルシフェロール,800IU,経口,1日1回)および経口カルシウムサプリメント(カルシウム元素で500mg,経口,1日3回,例えば,炭酸カルシウムで1250mg,経口,1日3回)も必要になる場合がある。
1型RTA
成人に対しては,炭酸水素ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム(0.25~0.5mEq/kg[0.25~0.5mmol/L]経口,6時間毎)を投与する。小児では,1日当たりの総用量は最大2mEq/kg(2mmol/L),8時間毎まで必要になることがあり,この用量は小児の成長に従い調整しうる。カリウム補給は,脱水および続発性アルドステロン症が重炭酸塩療法により是正された場合は通常は必要ない。
2型RTA
血漿中の重炭酸濃度を正常範囲まで回復させることは不可能であるが,低値になると発育遅滞のリスクがあることから,血清重炭酸濃度を約22~24mEq/L(22~24mmol/L)に維持するため,食事の酸負荷を上回る重炭酸塩補充を行うべきである(例,炭酸水素ナトリウム,成人では1mEq/kg[1mmol/L],経口,6時間毎,小児では2~4mEq/kg[2~4mmol/L],6時間毎)。しかしながら,過剰な重炭酸塩補充は,炭酸水素カリウムの尿中喪失を増加させる。したがって,クエン酸塩を炭酸水素ナトリウムの代替とすることが可能であり,忍容性がより良好となる場合がある。
カリウム製剤またはクエン酸カリウムは,炭酸水素ナトリウム投与時に低カリウム血症を呈した患者で必要になる場合があるが,血清カリウム濃度が正常または高値の患者には推奨されない。困難な症例では,低用量のヒドロクロロチアジド(25mg,経口,1日2回)の投与により,近位尿細管の輸送機構が活性化しうる。全般的な近位尿細管障害の場合,低リン血症および骨疾患は,リンおよびビタミンDの補充により血漿リン濃度を正常化することにより治療する。
4型RTA
高カリウム血症は,体液量増加,食事でのカリウム制限,カリウム喪失性利尿薬(例,フロセミド20~40mg,経口,1日1回または1日2回,効果に応じて調節)により治療される。アルカリ化はしばしば必要ない。少数の患者ではミネラルコルチコイドの補充療法(フルドロコルチゾン,0.1~0.2mg,経口,1日1回,低レニン血症性低アルドステロン症患者ではしばしばより高用量)が必要となるが,ミネラルコルチコイドの補充は基礎疾患としての高血圧,心不全,または浮腫を増悪させる可能性があるため,慎重に使用すべきである。
要点
尿細管性アシドーシスは,水素イオンの排泄または重炭酸塩の再吸収が障害される一連の疾患であり,アニオンギャップ正常の慢性代謝性アシドーシスに至る。
RTAは通常,アルドステロンの産生または反応性の異常(4型)か,頻度はより低いが水素イオンの排泄障害(1型)または重炭酸塩の再吸収障害(2型)に起因する。
アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスまたは原因不明の高カリウム血症がみられる場合は,RTAを考慮する。
動脈血ガス,血清電解質,BUN,クレアチニン,尿pHをチェックする。
RTAの病型を確定するために他の検査を行う(例,1型に対する酸負荷試験,2型に対する重炭酸塩の点滴)。
2型のほかときに1型RTAでは,アルカリ療法と血清カリウム低値を是正する対策によって治療し,4型RTAではカリウム摂取制限またはカリウム喪失性利尿薬によって治療する;必要に応じて他の電解質を投与する。