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ガストリノーマ

(ゾリンジャー-エリソン症候群;Z-E症候群)

執筆者: Elliot M. Livstone, MD, FACP, FACG, AGAF, Emeritus Staff Physician, Sarasota Memorial Healthcare System

ガストリノーマはガストリン産生腫瘍で,通常膵臓または十二指腸壁に発生する。結果として胃酸の過剰分泌と進行の速い難治性の消化性潰瘍が生じる(ゾリンジャー-エリソン症候群)。診断は血清ガストリン濃度の測定による。治療はプロトンポンプ阻害薬および外科的切除による。

ガストリノーマは,膵島細胞から発生する膵内分泌腫瘍( 膵内分泌腫瘍の概要)の一種であるが,十二指腸および,はるかにまれであるが,体内の他の部位のガストリン産生細胞から発生することもある。ガストリノーマの80~90%は膵臓または十二指腸壁に発生する。残りは脾門,腸間膜,胃,リンパ節,または卵巣に発生する。約50%の患者では複数の腫瘍がみられる。ガストリノーマは通常,小さく(直径1cm未満),増殖は緩徐である。約50%は悪性である。ガストリノーマ患者の約40~60%に多発性内分泌腫瘍症が認められる( 多発性内分泌腫瘍 (MEN) 症候群)。

症状と徴候

ゾリンジャー-エリソン症候群は,典型的には進行の速い消化性潰瘍として現れ,潰瘍は非定型的な位置に形成される(最大25%が十二指腸球部より遠位)。しかしながら,最大25%の患者は診断時に潰瘍が認められない。典型的な潰瘍症状および合併症(例,穿孔,出血,閉塞)が起こりうる。患者の25~40%では下痢が初発症状である。

診断

  • 血清ガストリン値

  • CT,シンチグラフィー,またはPETによる局在診断

ガストリノーマは病歴によって疑われ,特に症状が標準的な胃酸分泌抑制療法に抵抗性を示す場合に疑われる。

最も信頼できる検査は血清ガストリンである。全ての患者が150pg/mL超を示し,診断は著しい高値(1000pg/mL超)が,臨床的特徴に矛盾がなく胃酸の過剰分泌(15mEq/時を超える)を示す患者でみられた場合に確定される。しかしながら,中等度の高ガストリン血症は,低酸状態(例,悪性貧血,慢性胃炎,プロトンポンプ阻害薬の使用),ガストリンクリアランスの低下を伴う腎機能不全,広範囲の腸切除,褐色細胞腫において起こりうる。

ガストリン濃度が1000pg/mL未満の患者では,セクレチン負荷試験が有用な可能性がある。セクレチン2μg/kgを急速静注で投与し,血清ガストリン濃度を継続的に測定する(投与の10分前,1分前,2分後,5分後,10分後,15分後,20分後,30分後)。ガストリノーマに特徴的な反応は,ガストリン濃度の上昇で,この反応は胃前庭部のG細胞過形成または典型的な消化性潰瘍の患者で起こる反応とは逆である。また,Helicobacter pylori感染の評価を行うべきであり,この感染症では一般的に消化性潰瘍と中等度のガストリン分泌過剰が引き起こされる。

診断が確定した時点で,腫瘍の局在診断を行う必要がある。最初の検査は腹部CTまたはソマトスタチン受容体シンチグラフィーであり,これらにより原発巣と転移巣を同定できることがある。PETまたは拡大およびサブトラクションを伴う選択的動脈造影も有用である。転移の徴候が認められず,原発巣が不明である場合は,超音波内視鏡検査を行うべきである。代わりの方法として選択的動脈内セクレチン注入法がある。

予後

5年および10年生存率は,孤立性腫瘍を外科的に切除した場合には90%を超えるが,不完全切除の場合は,5年生存率が43%,10年生存率が25%である。

治療

  • 胃酸分泌抑制

  • 限局例には外科的切除

  • 転移例には化学療法

胃酸分泌抑制

プロトンポンプ阻害薬が第1選択薬であり,オメプラゾールまたはエソメプラゾールを40mg,経口,1日2回で投与する。症状が消失し,胃酸分泌が低下した時点で,用量を漸減してもよい。維持量を投与する必要があり,患者は手術を受けなければ,これらの薬剤を無期限に服用する必要がある。

オクトレオチド注射剤100~500μg,皮下,1日2回~1日3回の投与によっても胃酸分泌が低下することがあり,プロトンポンプ阻害薬があまり奏効しない患者において症状が緩和する可能性がある。長時間作用型オクトレオチド製剤(20~30mg,筋注,月1回)を使用してもよい。

手術

明白な転移のない患者では,外科的切除を試みるべきである。手術時には,十二指腸切開術と術中の内視鏡光源の管外からの透見または超音波検査が腫瘍の局在診断に役立つ。ガストリノーマが多発性内分泌腫瘍症候群の一部でなければ,患者の20%で外科的切除により治癒する可能性がある。

化学療法

転移例には,ストレプトゾシンとフルオロウラシルまたはドキソルビシンとの併用が膵島細胞腫瘍に対する望ましい化学療法である。腫瘍量の減少(患者の50~60%)と血清ガストリン濃度の低下が得られる可能性があり,オメプラゾールの補助として有用である。インスリノーマを対象に検討されている新規の化学療法として,テモゾロミドをベースとするレジメン,エベロリムス,スニチニブなどがある。転移例は化学療法では治癒は得られない。

要点

  • ほとんどのガストリノーマは消化性潰瘍の症状を呈するが,一部の患者は下痢を認める。

  • 約半数の患者が多発性のガストリノーマを有し,約半数の患者が多発性内分泌腫瘍症候群であり,ガストリノーマの半数は悪性である。

  • 通常は血清ガストリン値が診断に有用であるが,数値上昇が境界線上の場合は,セクレチン負荷試験が必要になることがある。

  • 通常はCT,ソマトスタチン受容体シンチグラフィー,またはPETにより腫瘍の局在を同定する。

  • 胃酸分泌は,外科的切除までの間,プロトンポンプ阻害薬,ときにオクトレオチドの併用によって抑制する。